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男達が農作業をしている間、女子達が何をしているかというと、薬、魔法薬作りと従魔達の世話だ。
ちなみに俺も農機具を作ってからはこちらに来ている。後衛なので体力作りは程々に、だ。
今までも薬、魔法薬作りはしていたが、材料が豊富にあったのでそこまで品質等にこだわらず作っていたが、ギルドの依頼で材料を消費するようになり、採取が困難になり始めたので『量より質』で作ることにしたのだ。
元々薬は孤児院用に作っていたので品質は気にしたことはなかった。採取をする前は薬なんか使えなかったからだ。今はちょっとしたかすり傷にさえ薬を使ったりしている。
そんなにあるなら売ればいいと思うかもしれないが、売るには商業ギルドへの登録をしなくてはいけないし、個人的に売るにしても今までお世話になってる薬屋さんや錬金術師のおばあさんに悪いので売れないのだ。
ということで、さっそく薬を作ってみる。
ちなみに普通の薬は品質が上中下とあり、魔法薬は上中下級のポーションでそれぞれ上中下の品質、つまり9段階の種類がある。
ただ、鑑定の無い人や不親切な店では品質の表記はなく、当たり外れがあるそうだ。
知り合いのお店は当然品質中か上しか置いてなかった。
品質や等級が上なほど回復力が高いらしいが具体的にどれだけ回復するのかはわからない。ゲームのようにHP◯◯回復、とはならないからだ。
また、当然のように腕が生えたり足が生えたりといった回復もしない。上級の品質が上の薬なら指や耳位なら生えるらしいが…。
逆にそんな回復薬も存在する。エリクサーと呼ばれる物だ。おばあさんは当然のように作れるし、持ってもいた。
材料が高価であるし、そこまでの技術が無いので俺達にはまだ関係無いものだ。
とりあえずは皆で品質上の薬を目指す。
魔法薬は魔力を必要とするので、俺と冒険者予定の二人が、通常の薬は妹ちゃんイリヤちゃんとサクヤちゃんが挑戦することになった。
調薬と並行して女子チームは仕事があった。
ビッグコッコ、ミルホーンの世話だ。
この二種はお菓子の材料となるので、むしろ率先して世話をしてくれている。
数が多く世話は大変だが、その分卵、ミルクが多く手に入るため、お菓子以外にも料理にも使えるようになった。栄養的にも子供達には必要だろうから正直ありがたくもある。
少し位は孤児院で世話をしても良いかも?
ある時事件は突然起こった。
「おにいちゃ~ん」
ビッグコッコの世話をしていると妹ちゃんが泣きながら俺の方へ走ってきたのだ。
「どうしたの?」
俺は妹ちゃんの頭を撫でながら聞いてみた。
「とりさんがいじめるの~…」
なんでも卵を回収しているときにビッグコッコの近くの卵を取ろうとしたら威嚇されたのだそうだ。他の卵、ビッグコッコは平気だったのに。
よくわからないので実際にそこへ行ってみることにした。
現場へ着くと妹ちゃんを見つけたビッグコッコが威嚇してきた。
「コケ~ッ!!」
「おいおい、どうしたんだ?」
「コケッ、コ~、コケッコ~!」
「えっ!?本当に!?」
「おにいちゃんどうしたの?」
「どうやらあの鳥さんの卵に赤ちゃんがいるらしいよ」
「あかちゃん!!」
「だからあの鳥さんは赤ちゃんを守るために怒ってたみたいだよ。」
俺の話を聞いた妹ちゃんは少し何かを考えたあとビッグコッコに近づき
「とりさん、さっきはごめんなさい。」
と謝った。
ビッグコッコも理解したようで威嚇を止めて卵を温め始めた。
いまだにどうやってモンスターが生まれるかの条件はわからんが、ヒヨコで生まれるのか鶏で生まれるのか楽しみだ。
「赤ちゃんが元気に生まれるように気を付けて世話してあげようね。」
「あい!」




