【書籍化記念番外編】皇帝視点 10.1ぐらい
本日4/15 小説2巻発売です。
コミカライズも発売中です。
よろしくお願いします。
皇都の城にて開催されている夜会の中、内心十九歳となったエルクウェッドは、ずっとブチ切れていた。
なぜなら、丁度深夜の零時になると、その瞬間に時間が巻き戻ってしまうからだ。
そう、当然のように何度も。
今回の夜会は、建国日を祝うパーティーであった。
毎年恒例のイベントであり、参加者は深夜の零時――建国記念日となる『明日』になると、思い思いの方法でリィーリム皇国が建国されたことを喜び、今日まで繁栄してきたことを祝い合うのである。
だが、残念なことにこの場においてはエルクウェッドだけが『明日』にたどり着くことが出来ずにいた。
『――殿下、殿下! 一緒に零時になる直前でジャンプしませんか?』
一度目。
デビュタント直後であろう年若い貴族の子息や令嬢が彼に駆け寄ってきて、そう無邪気に声をかけてきた。
初めて聞く。かなり珍しい祝い方だ。しかし、たまにはそうしてみるのも悪くはないだろう。
そう考えて彼は二つ返事で了承した。
そして親である貴族たちが微笑ましい様子で見つめる中、エルクウェッドたちは皆で手を繋いで一緒に『せーのっ!』と、ジャンプするも――その直後、彼だけが前日の零時に戻ってしまう。
彼のみ地面に着地出来なかったのだ。
いや、実のところ前日のその時間はちょうど偶然にも自室でバク宙の練習をしていたので、なんか良い感じに「ダンッ!」と床に両足で着地することは出来てしまったけれど。
だがそれが何だと言うのか。
彼は状況を理解するやいなや「よくも貴様ァーッ!」と叫ぶことになるのだった。
『――殿下ー! みんなでジャンプしましょう、ジャンプ!』
二度目の夜会。
彼は再度了承する。
そして、当然のように手を繋ぎながら、「ぴょんっ」とジャンプして――その直後、前日に勢いよく「ダンッッ!!」と誰もいない自室にて着地してしまうのであった。
彼は、巻き戻った自室にて、静かに呼吸を整えて、残心する。
そして、前回と同様にすぐさま叫んだ。
「なあ、おい。今のところ明日を全く祝える気がしないんだがチクショウめええええ!!!」
……そして三度目。
『――ねえ、殿下! 一緒にジャンプしましょうよぉ!』
気がつけば、自室。
ダン!!!!
「アアーッ! 何一つ目出たくないんだがァッ! ア゛アァーッ!!」
四度目。
自室でダンッッ!!!!!!
「貴様は知らんかもしれんが、建国記念日当日は朝から式典もあるんだぞ、チクショウメッーっェ!!!」
五度目……。
ダンンンンッッッッ――!!!!
「アアッーッ! アアアーっ!? アアアあーッッ!!!」
そして、無情にも回数は増えていき――
二十回目となる。
――タン。
エルクウェッドの着地は一周回って、まるで羽根のような軽さを見せていたのだった。なんか急にコツを掴んでしまったみたいである。
彼は目を瞑り、両手を広げて、自室の床に降り立つ。
その姿は、地上に舞い降りた天使のよう。
そして、彼は悪魔認定した相手に語りかける。
「……おい。これでもう二十回なんだが? いつになったら、バク宙から解放されるんだ? なあ、一体全体何考えているんだ貴様……! いい加減にしろッッッ!!」
悲しいことに着地は軽やかになっても、心の中は軽くなってはくれない。
人知れずバク宙の技量が上がってしまった彼は、そのままの勢いで「アアアアッッッ!! よくも貴様ァアアア!!!」と、ブチ切れながらジャンプして氷上を華麗に滑るかのごとく空中横回転の練習も始める。
そして、ようやく『明日』を迎える頃には椅子に座ったままでもバク宙や横三回転半(※密かに練習していた)が可能なところまで到達してしまうのであった……。
数話掲載予定です。




