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ちゃんとした後日談 8

 研究所から戻ってきたら、そろそろ昼になりそうだった。


 もう少ししたら、今日もまた昨日のように妃教育を実施する時間となる。


 といっても、昨日は午前中のみ実施していた。


 いずれは、一日丸々妃教育に使用することになるだろう。


 なら、そうなったら、出来る限り少女の側にいるように努めなければならないな、とエルクウェッドは考える。


 なので、さっさと自分の仕事を終わらせるため、彼は宰相の執務室に向かったのだった。




 ♢♢♢




「――これは、皇帝陛下。お呼びいただければ、こちらから伺わせていただくつもりでございましたのに」

「良い。構わん。ちょうど、近くを通ったからな」

「なるほど、そうでございましたか」


 宰相は、「どうぞ、おかけになってください」と、椅子を差し出す。


 エルクウェッドは、頷いて座ったのだった。


「それで、どうだ? 有力貴族たちの現状は」

「はい、私見としましては、予想よりかは落ち着いているように思えました」

「なるほど、反発は出たか?」

「少しばかりは。ですが、そこまで目に見えて大きなものはございませんでした。皇帝陛下が、五十番目の妃様をお選びになったことについては、少し愚痴のような形では幾つかありましたが。それと、暗殺者に捕らえられていた妃の方々の実家には、ある程度の慰謝料を送る予定でございます」

「それについては、こちらの落ち度だ。任せる」

「はい、御心のままに」


 宰相は、恭しく一礼する。


 そして、現在の課題や解決した事柄について、エルクウェッドに報告するのだった。


「ここまで、貴族たちの反応が小さいのは、おそらく皇帝陛下の人徳によるものだと思われます」

「そうか、それは良かった。どうやら、私は今までの自分に救われたようだな」

「はい。それに加えて、暗殺者たちを壊滅させたのも、大きな要因となっていると思われます。あの暗殺者たちは、いくつかの他国からかなりの懸賞金をかけられておりましたので」


 エルクウェッドは、昔に、暗殺者の一人を捕らえたことがある。その時も目に見えて評価が上がった。特に、その暗殺者を疎んでいた国からの評価が、である。


 あの暗殺者の集団は、それ以来衰退してしまったという話を暗殺者の女性自らがしていたが、どうやらまだ莫大な懸賞金がかかっていたらしい。


「なるほどな、道理で私は英雄のような扱いを受けているわけだ」


 彼は納得するのだった。


 流石に、あの事件を民衆に誤魔化すことなど出来ない。

 ゆえに、迅速に詳細な情報を発表した結果、エルクウェッドは、民衆から――特に他国の者から、再度高い評価を受けることとなったのだった。


 それは、事件からまだ八日しか経っていない今であっても、如実に分かるほどのものだ。


 何しろ、いくつもの国から、感謝状やら支援金やらが、届いているのだから。

 現在は、近隣の国からだけだが、おそらく、今後まだまだ増えていくことだろう。


 それと早速、彼のことを歌にして歌う吟遊詩人もいるらしい。


 もはや、先日の事件が英雄譚扱いをされていたのだった。


 彼の功績を讃えるために、他国からの招待状も来ていたし、今後はより忙しくなりそうだ、と予感する。


「宰相、これは初対面の異性に対して、『おもしれー女』と、言っている暇が無いかもしれんぞ」

「そうかもしれませんが、皇帝陛下も最愛のソーニャ様とお会いになる時間が減ってしまうかもしれませんね?」

「……」

「……」


 その直後、二人は、素早く互いに視線を交わした。


 そして、すぐさま協力体制を取ることを同時に承諾する。

 何事も、力を合わせて素早く済ませてしまおうと。


 二人は、歳が違えども、長年の経験により息がぴったりと合っていたのだった。


 そして、その後、色々と意見を交わした後、エルクウェッドは、思い出したように、またいつものように尋ねる。


 ――「宰相、貴様、どのような時に『幸せ』を感じる?」と。


 その問いかけに対し、宰相は目を閉じて、少しした後に答えた。


「それは、真の『おもしれー女』と出会う時でございますね――」


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― 新着の感想 ―
[良い点] 宰相、現役で真のおもしれー女、求めてるんですか?やべえやつばっかりだ!
[良い点] >真の『おもしれー女』 こんなパワーワードが登場するのはこの作品でしかあり得なくて笑うしかない
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