リアンの特異体質
「あっ……イヤッ……痛い……でも、何か変に……」
「じっとしてろ、リアン。すぐに終わる」
俺は理性を抑えながら治療を続ける。
やはりリアンの体調不良の原因は魔力過多だったようで、俺がリアンの魔力をイメージしてリカバリーで魔力を初期化したらリアンの体調は戻った。
そして、体調の戻ったリアンに話を聞くと、捕まって奴隷になるまでの小さい時は、毎日エルフの大人から治療を受けていてようだ。
でも、なんで治療を受けていたのかは聞かされていなかったのと、奴隷になってから治療を受けなくても、何も具合が悪くならなかったから自分の身体はどこも悪くないと思っていたらしい。
おそらくだけど、隷属の首輪に対抗する事で魔力を消費していたのだろう。
でも、隷属の首輪が取れた事でリアンの身体の中の魔力が溜まっていった……という事だと思う。
リアンは魔力を人並み以上……いや、人並み以上というような生易しいものではないくらい魔力を精製する特異体質なのだろう。
普通の人間なら魔力を精製しても、自然と身体から抜けて消費したり、魔法とかで消費した魔力を補おうと身体が一時的に負荷をかけて精製し、だいたい一定に保とうとするのだが、リアンの場合は精製する魔力の量が圧倒的に多いって事だ。
だから、俺はリカバリーで魔力を初期化した後、リメイクでリアンの体質を変えようとした。
ちなみに胸に手を当てたのは、魔力は心臓から精製されていると聞いたから、より魔力と場所をイメージして失敗のないようにしようとしたからだ。
ミーアには物凄く疑いの目で見られたけど。
そして、リメイクで体質を変えようとしているのだが、リメイクは自分の身体を変えるので、痛気持ち良いような感覚になる為、リアンが声を上げるのだが、それがまた誤解を招くような声で、また俺の理性を奪おうとする。
俺はそれに必死に耐えているのだが、ミーアは白い目で俺を見ている。
「……今日はここまでだ」
「はぁ……はぁ……ありがとう、タクト君」
初めて気づいた事だが、自分の素質をリメイクするのと違い、他人の素質や目に見えないところをリメイクするのは、一筋縄ではいかない。
外面や素質のリカバリーは見た目のイメージ、無に返すという事でイメージしやすいけど、今のリアンみたいに、目に見えない魔力の調整や合わせてしていた、素質のリメイクってのはイメージもしにくい。
だから、完璧には終わっていない。
リアンのリメイクを使っている感覚で手探りしながら少しずつ調整しているので、時間もかかるし、自分の素質をリメイクした時みたいに一気には出来なかった。
「じゃあ続きはまた明日」
「うん……お願い、タクト君」
修復魔法は万能だと思っていたけど、自分の事や他人の外見はともかく、他人の内面に関しては初期化以外は一人一人持っている素質も違うからいろいろリメイクが難しい。
「ちょ、ちょっと!! リアンちゃん! お願いタクト君ってまた頼むんですか!?」
「うん」
「で、でも、こんな事されるんですよ!? 本当は一回で治るのを小分けにされてるかもしれませんよ!?」
「なんでそうなる!?」
俺は俺なりに必死にリアンの事を思って治療してるのに、自分の力が及ばず、歯痒い思いをしてるのにあんまりだ!
「だって、タクト君、リアンちゃんにリメイクをかけている間、目付きがいやらしかったです!」
「それは……仕方ないだろっ!!」
ミーアに言われた事は完全には否定出来ない事なので、俺は開き直る。
「開き直りですか!? やっぱりケダモノですっ!!」
「ケダモノ違うわ! 正常な男の反応だ!」
「さらに開き直りっ!? リアンちゃん、タクト君はこんな男ですよ!?」
そう言ってミーアはリアンに視線を送る。
「……タクト君ならいい」
「「なんでそうなる(んですか)!?」」
俺とミーアの声が重なる。
そして、このままだといろいろまずいと思った俺はとりあえず話を終わらせて寝る事にした。
リアンの体調不良が体質による魔力過多だとしたら、俺がリメイクをちゃんとしない限り、リアンは苦しむ事になる。
なんとか治してあげたいけど、思ったより他人の素質、体質をリメイクをするのは負担がかかるみたいだし、無理は出来ない。
一日一回ってところか?
とりあえず今日はもう夜も遅いし、寝てゆっくり休んでもらった方がいいだろう。
そうして、寝る事にしたのだが、寝る場所の配置の事とかでゴタゴタしたのは言うまでもない。




