リアンの体調不良
「今日はタクト君の奢りだからいつも以上に美味しいです!」
俺の正面で、ミーアが美味しそうに肉を口に運ぶ。
俺たちは無事に街へ着いて、盗賊の事をギルドへ伝えてひと段落したので、酒場で夕飯を食べている。
と言っても、夕飯だけじゃなくて酒も飲んでいる
。
そのせいもあってミーアはご機嫌だ。
さらに、俺の奢りってのもあるからだろう。
盗賊の事をギルドへ伝えたら、最初は俺の冒険者ランクで信じてもらえなかったけど、ミーアの言葉でギルド職員も信じてくれた。
というのも、ミーアはAランク冒険者というかなりの高ランク冒険者だったので、ミーアの言葉をギルド職員は信じてくれたのだ。
と言っても、そのまま俺の実績という訳ではなく、ミーアとの臨時パーティーという事で俺の実績にも入り、俺たちが言った場所に職員が派遣され、盗賊が確認された時点で臨時パーティーとして報酬を受ける事になった。
なので、何故かミーアのおかげ(?)って部分もあるので、俺の奢りで酒場に来ている。
ちなみにリアンはこの先どうなるか分からないけど、俺と一緒に行動するからには冒険者登録はしておいた方がいいだろうって思って俺がお金を立て替えてした。
もちろん、そのお金は貸しって言葉にしたのだが、リアンは何故か少し喜んでいた。
まぁそんなこんなで、今日のところはいろいろあったし、臨時収入も入るだろうから、俺の奢りって事になっている。
「ったく、ミーアはいつも肉ばっかり食べてて太るぞ?」
「にゃっ!? 何を失礼な事言ってるんですか!! だから、炎狼族は太らないって言ってるじゃないですか!!」
「本当か? じゃあ炎狼族は一人も太った奴はいないんだな?」
「うっ……それは……うぅ〜……」
俺の言葉にミーアは炎狼族の誰かを思い浮かべたのだろう、頭を抱えて左右に振っている。
きっと、炎狼族にも太った人はいるのだろう。
「ったく、なぁ、リアン。ミーアも……ってリアン大丈夫か?」
俺とミーアがバカみたいな話をしていると、リアンはグラスに手を添えたまま動きが止まっていた。
その身体は少し震えている。
「……大丈夫。ちょっと疲れただけ……」
「リアン!?」
「リアンちゃん!?」
すると、突然リアンは意識を失い椅子から倒れて落ちた。
◇◆◇◆◇◆
「タクト君、リアンちゃんは!?」
俺とミーアは倒れたリアンを部屋まで運んでベッドに寝かした。
そして、リペアをかけたのだが……。
「ダメだ、効かない」
リペアの効果は全然なくて、リアンは今も苦しそうに呻きながら汗を流している。
「なんでですか!? タクト君のリペアが効かないなんて……」
俺のリペアは毒とかの状態異常も治せる。
でも、それが効かないなんて……。
「リアンちゃん大丈夫ですか!? リアンちゃん頑張ってください!」
ミーアはリアンの横で励ましている。
くそ、何が修復魔法使いだ!
身近な人も治せないのに!!
「リアン! どこがシンドイ!? 痛いところは!?」
かと、諦める事は絶対しない!
絶対治してやる!
俺とミーアは何度もリアンに呼び掛ける。
すると、リアンはうっすら目を開けた。
「リアン!?」
「リアンちゃん!?」
「……身体の奥が……熱い……」
「身体の奥が熱い……?」
俺とミーアにリアンが伝えたのは、『身体の奥が熱い』という事だった。
もし、風邪とか毒ならリペアで治る。
リペアで治らなくて身体に変調子をきたすもの……
「っ!? もしかして魔力か!?」
魔力は枯渇すれば、意識を失ったりする危険があるという。
でも、いまのリペアは魔法を使っていない。
だから魔力切れってのは考えられない。
でも、リアンは隷属の首輪に対抗しうる魔力を持っていた。
それも常時対抗していた訳だから無尽蔵に魔力を使っていたはずだ。
なのに、リアンはずっと魔力切れにならずに隷属の首輪に対抗していた。
だから、今リアンに起こっているのは魔力切れじゃなくて魔力過多!
魔力過多なんて聞いた事ないけど、考えられるのはこれしかない!
「リアン! ちょっと我慢しろ!」
俺はそう言うと、リアンの胸の中心に手を置いた。
「ちょ、ちょっと!! 何してるんですかタクト君!?」
隣ではミーアがあたふたしていたが、それどころじゃない。
「リカバリー!」




