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俺たちが仕掛けた罠

「……タクト君、軽蔑します」


 俺の事をミーアはジト目で見て、軽蔑すると口にしている。

 俺たちは今、盗賊にアジトに連れられて来られた。

 そして、俺たち三人は一つの牢に入れられている。

 盗賊達は女に見張りは要らないと思ったのか、誰も近くにはいない。

 まぁその辺は捕まる時に命乞いするように二人と打ち合わせして演技したのもあるかもしれないが。


 ちなみに俺は今、リメイクで女の子に変身している。


 というのも、理由がある。

 俺が女の子に変身する事で、盗賊を油断させる事と、女の子だとしたら殺さずにアジトへ連れられて行くと思ったからだ。

 そして、アジトに連れて行ってもらって一網打尽。

 そこにある盗品と一緒に街へ持って行き、報奨金をもらおうとしたからだ。


 だから、俺は仕方なく女の子に変身している。

 なのに、ミーアは俺の事を軽蔑すると言っている。


「仕方ないだろ? だって、こうした方が油断するだろうし。それに今は君って呼ばれるとマズイ」


「じゃあなんて呼べば……じゃなくて! 確かにそれは一理ありますけど、なんで巨乳なんですか!? それも私と同じくらい!! って、自分の胸見ちゃダメです! それに足は閉じてください!」


 俺の服装は男もの服だから、ミーアの言う通り、巨乳になっているので、上の白シャツのボタンがはだけそうになっている。

 下はズボンだし、問題ないはずだけど、レディとしての嗜みの問題らしい。

 女の子って大変だ。


 いや、でも俺だって意識して巨乳にした訳じゃない。


 ただ、狭いテントの中で横になって目に入っていたのが、ミーアの胸だったとは口が裂けてもいけない。


「……羨ましい」


 すると、リアンが俺の胸を見て呟く。


「リアンちゃん! そんな事言ってる場合じゃないです!」


「でも、タク……クーちゃん可愛い」


 ん?

 クーちゃんとはいったい……俺の事か!?

 

 さっき『君』で呼ばれたらまずいって言ったから、リアンは咄嗟にクーちゃんと呼んだみたいだ。


「いや、まぁ確かに可愛いですけど……」


 二人の美少女の視線が俺に集まる。


 うっ、何かそんな事言われたら恥ずかしくなってきた。


「さて、もういいだろう! 一気に行くぞ! リメイク!!」


 恥ずかしくなった俺はリメイクで男に戻り、行動を開始する事にした。


◇◆◇◆◇◆◇


「さて、これでしまいだな」


 リメイクで男に戻った俺は、牢屋の鉄をリメイクして刃物にし、それで縛られていたロープを切ると、三人で一気にアジトを制圧した。


 そして、盗賊達は残らずみんな鉄をリメイクした拘束具で縛ってある。


「本当、タクト君の修復魔法って反則ですよね」


「いや、そんな事ないぞ? リメイクとかリカバリーはちゃんとイメージしないといけないし、戦いの中でそれをするのはなかなか大変なんだぞ」


 常に動き周りながらイメージするのはなかなかに困難だ。

 だから、俺はいざという時にちゃんとイメージ出来るように、イメトレをしている。


「……戦いながら違う事を考えるのって大変。タクト君、凄い」

 

「だろ?」


「リアンちゃんダメです! タクト君が調子に乗ります!」


 何か俺を褒めるような事があると、ミーアはいつも止めに入るけど、そんなに嫌われているのだろうか?

 からかっている俺が悪いとはいえ、少し凹む。


「さぁ、ちょうど馬も手に入ったし行くか」


 盗賊達のアジトの裏に馬があった。

 ちょうど良かったので、拘束した盗賊達はこのアジトに置いて、馬で街に行って衛兵に言う事にした。

 鉄の拘束具でつなぎ目もないし、ちゃんと牢屋にも入れているし大丈夫だろう。

 それに、馬があれば半日くらいで街に着くし。


 そうして俺たちは馬に乗って出発した。



◇◆◇◆◇◆


「ちょ、タクト君! あんまり跳ねないでください! お尻痛いです!」


「仕方ないだろ! 道が悪いんだから」


 街向かって馬を走らせていると、ミーアがしょっちゅうお尻が痛いと訴えてくる。

 そうは言われても、馬は跳ねるもんだし、道も悪いから仕方ない。


「でも、私一番後ろだから、衝撃も大きいんですよ!?」


「だから、俺が一番後ろに行こうと言ったのに、ミーアが『タクト君が後ろだったら何されるか分かりません!』って言ったんだろ?」


 盗賊のアジトに馬が一頭しかいなかったので、俺たちは前からリアン、俺、ミーアという順に乗っている。

 最初は俺が一番後ろに乗ろうと言ったのだが、それだと、俺が二人を抱き抱える形になるので、ミーアが反対したのだ。


 まぁ、この並びは並びで、俺の背中にミーアの胸の感触を感じるし、それは良いのかとも思うけど。


 ちなみにリアンが一番前なのは、背が低くて非力な為、落ちないようにだ。


「そりゃそうですよ! 死角にケダモノがいるなんて、こわいです!」


「だからケダモノって……だったら耐えろ!!」


「うぅ〜……」


 ミーアは事ある毎に俺をケダモノ扱いしてくる。

 本当にケダモノになってやろうか?


「……タクト君、街が見えてきた」


 ミーアといつものやりとりをしていると、リアンが言うように、視界の先に街が見えてきた。


 

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