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一件落着と意外な発見

「本当にありがとうございました」


 そう言って最初に俺達を襲おうとした男は頭を下げる。

 あの後、俺は吹き飛ばした商人を縛り上げ、リカバリーで能力を初期化してやった。

 そして、縛り上げただけでは不安なので、壊れた鍬や鎌をもらい、リメイクで手と足を拘束した。


 商人になぜこんな事をしたかと聞くと、冒険者をしていたが、魔法使いとしての限界を感じ、もっと稼ぎの良い事は……と考えて、街で裏稼業をしていた二人と出会い、こう言った行動を思い付いたようだ。


 自分が限界を感じたからと言って、自分より弱い立場、知識のない人をターゲットにして金を稼ごうなんて、本当、救えない奴らだ。


「いえいえ、泊めてもらったお礼ですよ。じゃあ俺たちはそろそろ行きますね」


「本当に私達は救われました。また、近くに来たら寄ってください。おもてなししますので」


「分かりました。じゃあ近くに来たらまた寄ります。では、お元気で」


「お兄ちゃん、また来てね!」


 俺は泊めてもらった男の家の子供の声に微笑んで手を振ってから背を向けて歩き出す。


 村の井戸に毒を入れた商人と男達は拘束して監禁してあり、村人の人が街まで衛兵を呼びに行った。

 二日あれば戻ってくるだろう。


 拘束した男達は俺がリカバリーで能力を初期化した上にリメイクで作った拘束具でつなぎ目もない鉄の拘束具だから、破る事は出来ないだろうし大丈夫だろう。


 それにしても、修復魔法を得た時はこんな続け様に、人助けをするような未来があるなんて思いもしなかったけどな。

 人生って本当に何が起きるか分からないしおもしろい。


「タクト君、何ニヤついているんですか?」


「いや、別に何でもない」


「あっ! まさか、さっき女の子にまた来てねって言われて鼻の下伸ばして喜んでいるんですか!? やっぱりろりこん!?」


「そんな訳あるか!!」


 ミーアはわざとらしく自分の身体を抱いて俺から距離を取る。

 しかし、その顔は少しニヤついていて、俺をからかっているようだ。


 くそっ、まさかミーアにからかわれるようになるとは……。


「……タクト君、本当に小さい子が好きなの?」


「リアンも真に受けるな!!」


 なんだろう? 

 ここに来て俺の方がからかわれだすとは。


「早く行くぞ!!」


 俺は今の状況は分が悪いと思い、足を速めた。


◇◆◇◆◇◆


「へぇ〜意外だな」


 村を出た俺たちだが、街にたどり着く事は出来ず、野宿をしている。

 野宿と言っても、そんな大したものではない。

 小さめのテントを立て、木を集めて薪木をしているだけだ。


 ご飯も干し肉とパン……となるはずだったけど、俺がテントを用意している間にミーアが狩りをして鳥を仕留め、調理してくれてた。

 

 その料理は仕留めた鳥を捌いて、森の香草と一緒に煮込んだスープでとても良い匂いがしている。

 しかも、ミーアは魔法も使えるみたいで、火力の調整もこなしていた。

 ミーア曰く、炎狼族は火属性の魔法だけ使えるらしい。


 普通は魔法を使える才能があれば、他の属性の魔法も使えるはずなのだが……人間と獣人……いや、エルフであるリアンも風魔法しか使えないと言ってたし、人間とは少し素質の部分が異なるのかもしれない。


「ふふふ、驚くといいです。こう見えて私は料理が得意なのです!」


 そう言ってピースサインするミーア。


「そうか、じゃあ頂こうか」


 俺はさらっと流して自分でスープをよそう。

 決して、からかわれた事の仕返しではない。


「ちょ、あっ! そんなお肉いっぱい取ったらダメです!」


 喚くミーアをよそに、俺はよそったスープを口に運ぶ。


「うまい!」

 

 俺は思わず言葉を口にした。

 口入れると、香草の香りが広がってその後に肉を噛むと肉の味と香草が合わさり絶妙なハーモニーを生む。

 そして、スープも鳥の肉や骨から出たエキスと香草のエキスが合わさってうまい。


「えへん! 美味しいでしょう美味しいでしょう! なんたっては私がーー」


「ほらリアン! 美味しいぞ!」


 俺はそう言ってリアンにスープをよそって渡す。


「ありがとう、タクト君。……美味しい」


「だろ?」


「って私の話を!! ていうか、私のお肉ーーっ!!」


 こうして俺たちは野宿と言えないような、和気あいあいとした感じで夜を過ごした。


◇◆◇◆◇◆◇


「……タクト君、どうします?」


 テントの中でミーアが俺に尋ねてくる。


「タクト君が良いって言うなら私がやる」


「いや、それなら私がやります。炎狼族は夜に強いですから」


 リアンとミーアが言葉を交わす。

 聞き方を間違えば少し良い展開かもしれないけど、なんて事ない。

 テントの外に人の気配を感じているのだ。

 おそらく盗賊達に囲まれているのだろう。


 テントの外に見張りを置いてなかったし、盗賊からすれば格好の獲物に見えたに違いない。

 最初は見張りをおこうとしたけど、ミーアとリアンが見張りだと、逆に変な輩が寄ってくるような気がしたし、かと言って俺がしてても、残念ながら見かけからはそんな効果は期待できない。


 じゃあ、どうせならテントの中で交代で休んで少しでも体力を回復させようとした矢先にこれだ。

 もしかしたは和気あいあいとしてたのが聞こえたのかもしれないけど……。


「いや、せっかくだし、お金を稼がせてもらおう。リメイク!」


 そして、俺は自分にリメイクをかけた。


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