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活気のない村

「タクト君、何か私に出来る事があったら言って」


「お、おう」


 奴隷商人を一網打尽にした後、言い争っていた俺とミーアは程よいところで言い争いを終えた。

 そして、もちろん今回はリアンに借金と言える流れでもなく、「じゃあこれからは自由にいきろよ!」「そうです! 間違ってもタクト君みたいな詐欺師で金の亡者のケダモノに騙されてはいけませんよ!」「だから、誤解を招く事を言うな!」というようなやりとりをリアンの前でして、その場を去ろうとした。

 すると、リアンが「待って。私もついて行く」と言って来た。


 突然の展開に俺とミーア驚いて、ミーアがリアンに「なんでですか!? 詐欺師のタクト君の気が変わらないうちに姿消した方が良いですよ!?」と失礼な事を言うと、「タクト……君には助けてもらった恩がある。恩を返さないのはエルフの恥」と言ってなんだかんだでリアンが俺に恩を返し終わったと思えるまで、一緒に行動する事になった。


 そして、リアンはなぜか俺の左腕を掴んで上目遣いで何か出来る事があったら言ってきてと言っている。

 いったいなぜこんな展開になったのか……?


 ちなみに奴隷商人達はあのまま放置してきた。

 街から近かったし、引き渡しても良かったんだが、リアンの事あるし、衛兵に引き渡すとなるといろいろややこしくなりそうだったからだ。

 まぁリカバリーしてやったし、奴らには戦う術がないから、今まで通りに強引な事は出来ないだろう。

 それに、奴隷商のボスはあれをリメイクしてやったし。


 ちなみに、俺の修復魔法についてはリアンに説明した。

 一緒に行動するからには知っておいてもらった方がいいと思ったからだ。

 まぁ出会ってすぐ俺の能力の秘密をバラすのはどうかというのもあるかもしれないけど、バレたからと言って対処される訳でもないし、リアンはそんな子じゃない、信用出来ると直感で思ったから教える事した。

 

「さっきからリアンちゃん何してるんですか!? タクト君にそんな事したら襲われますよ!!」


 すると、先を歩いていたミーアが振り返って叫ぶ。


「私はタクト君ならいい。それで恩返しが出来ればーー」


「いや、よくないだろっ!?」


 俺も思わず突っ込んでしまう。

 リアンは奴隷になりながらも、抵抗し、自分を守ってきたのだ。

 恩返しと言って俺にそういう事をするのは違うと思う。

 リアンは今まで通りちゃんと自分を大事にして、自分の好きな人に捧げてほしいと思う……って、それはそれで少しその男にイラっとしそうだけど。


 ミーアに一目惚れした俺だが、リアンもかなり可愛い。

 両方とも俺とどうこうって関係ではないけど、こうやって一緒に行動してるのに、こんな可愛い子が他の男と……と思うとやはり思うところがある。

 まぁそれは俺の勝手な思いだし、何とも言えないが、少なくとも今の俺はこの二人を他の奴に渡したくないと思ってしまう。


「ほら、リアンも今まで通り自分を大事にしないとな。それに、このままだと俺がまたミーアにケダモノって言われてしまうから」


「いや、本当の事じゃないですか!! 私もいるのにリアンちゃんと腕を組んで!!」


「ん? ミーアも腕組みたかったのか? こっちなら空いてるぞ?」


「ち、違いますー!! もう!! 知りません!!」


「冗談だって! そんな怒るなよ! という事でリアン、ミーアが怒るから離れようか」


 そう言って腕を組まれて少し嬉しかった俺だが、軽い男と思われないように手を離すようにする。


「……鈍感」


「えっ?」


「何もない。行こう、タクト君」


 なんて言ったか聞こえなかったけど、リアンはそのままミーアに追いつき歩き出した。

 何か置いてかれた気になった俺は少し足を速めた。


◇◆◇◆◇◆◇◆


「すいません!」


 奴隷商の件で馬車を使わなかった俺たちは歩いて次の街へと向かっている。

 しかし、歩いてすぐたどり着ける訳もなく、陽が暮れてきた時に村を見つけた。


 そして、ここの村で休ませてもらおうと来たのだが……。


「何か活気がないですね〜。というか、人もいないですし」


「……不気味」


 二人の言う通り、村に入ったはいいけど、人がいない。

 

「とりあえず村の中心まで行ってみようか。でも、二人とも警戒しろよ」


「もちろんです」


「了解」


 そうして俺たちは不気味に思いながらも、村の中に入る事にしてみた。

 

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