第22話
トキの家では、祝賀会が開かれていた。
「さっすがトキ。私は大丈夫だと思ってたわよ~」
酔ったカエンがトキに頬擦りをしながらワインを呷る。ルクとトキはオレンジジュースを飲みながら、カエンに付き合っている状態だ。最早誰の祝賀会かわからなくなっている。
「筆記も実技も完璧だった。すごいな、トキ」
あの後、筆記試験の結果も返され、そこで九十八点という驚異的な数字を叩き出したトキは、晴れて正式な魔術師になった。渡されたライセンスは、現在カエンに奪われ話の種にされている。
「アンタねぇ~、もうちょっといい顔しなさいよ」
二つ折りのライセンスカードに写っている写真をカエンが茶化す。試験の申し込みに使った写真がそのまま載せられるため、些か堅い顔をしている。
「だって……あの写真がそのまま使われるなんて知らなかった……」
「そういうのはチェックしとかなきゃダメよ。もっとおめかしして撮らないと」
カエンがチーズクラッカーを口に運びながら、ライセンスをトキに投げて寄越した。
「大事にしてくださいよ!」
「大事にしてるわよ。……それにしてもトキ、試験官に勝つなんてすごいじゃない。なかなかいないわよ、そんな受験生」
「カエンさんのお陰ですよ。試験官の人、カエンさんみたいに鬼畜じゃなかったですから!」
トキが笑顔で言うと、ルクが鼻で小さく笑い、彼女の頭にはすかさずカエンの拳骨が飛んできた。
「痛い!」
「お前も笑うな!」
ルクの頭にもカエンの拳が振り下ろされ、彼はコップを持っていない方の手で頭を押さえた。
「俺まで殴るな!」
「同罪!」
「ひどいですよカエンさん……。本当のこと言われたからって……痛い!」
「お前らそこに正座!」
カエンが声を張り上げて二人を正座させ、頭上から説教を始めようとした時。彼女の表情が瞬時に険しくなった。
「トキ、わかる?」
「気配、しますね。二人」
「ここじゃ被害が出る。遠い場所に行くわよ」
「はい」
トキは立ち上がり、魔導書を持った。
「敵か?」
「ええ、また二人。ルクはここで待ってて」
言うが早いか、二人は二階の窓から飛び降り、魔力を溜めた脚で遠い場所へ高速移動を開始した。




