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第14話

「くっ……! このっ!」

 カエンが自分の後ろに回っていたシラシスを振り払うように腕を薙ぎ払った。しかし彼はそれを紙一重で躱し、逆に魔力で強化した拳をカエンめがけて突き出した。それを首の動きで避けたカエンの死角から、サイの蹴りが飛んでくる。その蹴りを何とか硬化した腕でガードする。

 そんな戦闘が、もうずっと続いていた。カエンは常に魔力の消耗を余儀無くされ、それ故に体力の消耗も激しかった。体力と魔力はイコールの関係で結ばれるからだ。

「はぁ、はぁ」

 口で息をするようになり、段々と肩が上下してくる。息を整えようとするが、その暇すらも与えてくれない攻撃が次々とやってくる。

「いい加減に……しなさいっ!」

 振り向きざまに魔力放出攻撃を行うが、それは簡単に避けられた。カエンは自分でもわかっていた。自分の攻撃が雑になってきていると。体力、魔力の消耗により集中力が切れやすくなり、その結果として技を出しても精度が低い。これ以上の持久戦になる前に、何とか手を打たねばならない。しかし、その「手」が一向に見つからない。


 しかし、戦闘をしながら思考を回転させているカエンの視界の隅に、突如としてその「手」はやってきた。


「え……」

 カエンは最初、新手がやってきたかと思った。大きな魔力が近づいてきたことを感じ取ったからだ。しかし、サイとシラシスの視線が一瞬明後日の方向を向いて停止したため、その思考は一旦隔絶され、自分も意識は前に向けたまま、視線だけ横を見る。

 すると、まるで恐竜が踊りかかってくるようなスピードと迫力で、魔力の塊がこちらに向かっていた。

 放出された魔力は、カエンではなくサイとシラシスの元に一直線に向かっていった。彼らは避けようと地を蹴る。

「逃がさない!」

 が、とっさにカエンが両手から魔力を放出し、二人の行く手を遮った。逃げ場を失った二人は、間も無くやってきた魔力の塊に呑み込まれた。


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