キャンプ場まで
嫁と息子と俺でキャンプをする事になった。
高速道路を出て、キャンプ場まで20分ぐらいのはずだった。
周囲に牧場やら畑しか見えなくなって30分以上経過している。
ナビゲーターは直進をずっと表示している。
仕方がないので人を探して道を聞いた。
散歩をしていたお爺さんだと思う。
「まだ、真っ直ぐ先だよ」
訛っていたがそんな事を言われた。
それに従って真っ直ぐに進む。
それでも10分ぐらい同じ道を進んでいた。
今度は畑で作業している親子に道を聞いた。
「こっち」
泥だらけの子供が道の先を指差す。
「そうだね。このまま真っ直ぐです」
帽子を被って手袋をつけた日焼け対策万全の母親も同意した。
そのまま車を走らせる。
「ねえ、お父さん。さっきの人だけど……」
「ん~?」
「なんか、おかしかったよ」
「この道どこまで行けばいいのかな?」
「分かれ道で曲がってみる?」
「ねえ」
「何がおかしかったんだ?」
「だって、顔が」
「あっ、その道を曲がってみれば?」
「これは牧場に繋がる道だろ。看板も立ってる」
「ほんとだ」
「ん」
息子はふてくされているのを、バックミラーで確認する。
「どこが、おかしかったんだ?」
「顔が同じだった」
顔が同じ?
「顔のどこが同じだったの?」
嫁が聞く。
「全部」
そう息子が答えた。
前から学生服を来た5人がやって来る。
服装から男子学生3人女子学生2人と分かった。
車がすれ違う時に顔を確認した。
全員が同じ顔をしていた。
必死に道を聞いた人達の顔を思い出す。
最初に道を聞いた人、次に道を聞いた親子、そして学生5人の顔。
耳の形、目の角度、唇の厚さ、頭の形。
全てが同じだった。
恐ろしくなった私達は道をUターンして引き返すことにした。
1時間ぐらいかけて高速度道路まで戻る。
来た距離と、戻った距離の計算が合わない。
車に設置されたナビゲーターは、見当違いの場所を指している。
サービスエリアで地図を確認したが、私達が通っていた道は山の中になっていた。
キャンプ場は反対方向。
あの道をそのまま真っ直ぐ進んでいたら、どうなっていたのだろう?




