表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/81

奇妙な食卓



これは俺が見た妖怪みたいな奴の話。


俺は小さい頃に両親の離婚調停だなんだで、母方祖父の家に預けられていた。

喧嘩ばかりしている両親から解放されたということで、俺は調子に乗っていた。

始業式が始まる前だったので、家で携帯ゲームしながらゴロゴロする日々を送っていたんだ。


そんなある日、突然に夕食時に“そいつ”が出現した。


飯時に婆ちゃんに呼ばれた俺が居間に入ったら、もう“そいつ”は座っていた。


なんていうか、野菜の独活ウドって知ってる? それに良く似ていた。

縦に長くて白い肌をしていた。

首はなく、肩から直接顔に繋がっていた。

大きさが違う左右の目、ノの字に変形した大きな口、曲がった鼻、歪んだ顔。

枝みたいに生えている手足。

まるで子供が粘土で作ったお化けみたいな姿をしてる。

指の位置も適当で、数も多かったと思う。


ここのところの記憶が曖昧なのだが。

俺は“そいつ”を見た特に何の感想も持たなかった。

なんとなく「あっ、いるな……」って感じで、そのまま俺は自分がいつも座っている座布団の上に座ったんだ。

「友達や親戚しんせきが遊びに来ました」みたいな感覚だった。


円形の食卓を囲んで俺の前が爺ちゃんその右隣に婆ちゃん、次に俺、そして俺のすぐ隣に“そいつ”が座っていた。


婆ちゃんはまるで“そいつ”が見えて無いように動いているのに、御飯やおかずをテキパキと“そいつ”の前に並べていく。

俺の前にも夕食が並べられていく。


爺ちゃんはいつも通りに新聞を広げている。

その日も俺の好きなおかずだった。

ハンバーグ。

多分、離婚する両親のことで気を遣われていたんだと思う。


「「「いただきます」」」


爺ちゃんはいつも通りに新聞を置くと「いただきます」を言わずに頷いていた。

驚いたことに“そいつ”は「いただきます」を言った。


それで食事が始まったんだけど、俺は“そいつ”の前にあったハンバーグが俺のより大きいことに気づいた。

なんか腹が立ったので俺は“そいつ”のハンバーグに箸を突き立てて俺の皿に移し、俺のハンバーグを“そいつ”の皿に移してやった。


「ぬぅーーーーーっ!」


“そいつ”そいつは俺の方を向いて怒った。

腕をフルフル震わせていた。


俺はその様子が可笑しくて、ニヤニヤ笑っていたと思う。


“そいつ”は味噌汁を口の中に掻き込むと、器を婆ちゃんの方に差し出した。

婆ちゃんは反射的にそれを受け取って中に味噌汁のお代わりを入れる。

婆ちゃんが味噌汁の入った器を差し出す。


俺はもっと悪戯してやろうとその味噌汁を奪った。

それがいけなかったらしい。


“そいつ”が突然立ち上がって両腕を上げた。

立ち上がった“そいつ”の身長は天井スレスレまであった。


「ぬぅーーーぃーーーーーーっひょっ!」


そして“そいつ”がそう叫んだんだ。

次の瞬間、俺の目の前が暗くなっていって、意識が薄れていった。

そのまま崩れ落ちて畳に倒れたと思う。


特に「体に触れられた」とか「殴られた」ということはない。

「何かされた……」ただ、そう感じた。




目が覚めると病院のベッドの上だった。

両親が泣き腫らした目で俺を見ている。


後から聞いた事になるが

俺が多大なストレスを受けて倒れたことになっていたらしい。

なんだかんだで離婚はナシになった。


体に異変が残っていたり何かが見えるようになったりはしなかった。


この事を大きくなってから爺ちゃんや婆ちゃんに聞いたが、そんなことは無かったと言われてしまった。


俺が見た“そいつ”がストレスから幻視したものだったのか、それとも“別の何か”だったのかはよく分からない。


もしかしたら、他の家にもそいつは現れるかもしれない。

その時は決しておかずを奪ったりしないように。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 他人の食事を邪魔すんなし。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ