ミニマム
あるアパートに引っ越したEという人物はあることに悩まされていた。
家に帰ると予備のカップラーメンやお菓子がなくなっているのだ。
それだけではない、時々だが家具の配置も動かされている。
しかし、それなりの貧乏であったEはお金になるような貴重品を家には置いておらず、盗まれた物も大したことの無いものばかりだったので放置していた。
それを後悔するのは引っ越してから3ヶ月ほど経った日だった。
深夜の2時頃に、かすかな物音に起こされたEは日々に起こった事の原因を突き止めようと、電灯も点けずにリビングに向かった。
暗闇の中ゆっくりと音を立てないように歩くEは足の裏に微かな違和感を感じた。
お菓子のおまけについてくる人形を踏んでしまったような感覚。
それと微かな液体が足の裏についた感覚。
嫌悪感を持ったEは我慢できずに近くにあった電灯のスイッチを押した。
足の裏に張り付いた小さな何かを指で剥がし、目で確認したEはそれが踏み潰され手足の折れた青色の小さな人型の生物だと理解した。
次の瞬間、左目に走る激痛。あまりの痛みにEは摘まんでいたものを放り出し、玄関に走るとそのまま部屋を出た。
Eが玄関の外で左目に刺さった爪楊枝ほどの大きさの物を引き抜いて確認すると、それは小さく精巧な矢だった。
幸いEが左目に負った傷は深くなく、視力に影響は無かった。
その後、Eは引越し業者に荷物の回収を頼み
一度もその部屋に入ることはなかった。




