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葬儀の列


俺はヤバイ所に住んでいる。

近所では「オバケマンション」と呼ばれている場所だ。

実際に住んでみて色んな怪現象に出会ってきたので、それを書こうと思う。

ここ数年の体験を思い出してみると、不思議なことや怖いことがよくもまあこんなに起こったなと自分でも感心するぐらいだ。


俺が引っ越してから3年目ぐらいのこと。

たまの休日で、部屋でゴロゴロしていた俺はソファーに寝そべりながら窓の外の景色を眺めていた。俺の部屋は高台に立っているマンションの5階なので、見下ろす形で道を歩く人なんかを見ていた。

そのうちにあることに気づいた。

住宅が並ぶ地域の一軒から長い行列が出ていたのだ。

その行列の後ろは曲がり角の死角に繋がっていた。

興味を持った俺はコンサートで使う双眼鏡を持ってきてそれを眺めることにした。

男、女、子供、老人……スーツ、カジュアル、寝巻き………色々な姿をした色々な年齢の人が行列に並んでいる。

中にはおかしな格好をした連中までいた。


「なんだこりゃ?」


呟いた俺はしばらくの間それを眺めながら何の行列かを考えた。

その行列は数分経つと約1人分の距離だけ前に進む。

行列の行き着く先は結構な大きさの豪邸だった。

30分ぐらい眺めていたと思うが、その間に行列は前に大分進んだと思うのに一向に行列がなくならない。

さすがにおかしいと思った俺はいつもの怪現象だと思い、行列を見るのを止めようとした。

その瞬間、行列に並んでいた何十人もの人々が一斉にこちらを向いた。

そしてゆっくりと俺を指差したのだ。


俺は双眼鏡を放り投げて窓を閉めて鍵をかけ、カーテンを閉めた。

玄関の鍵が閉まっているのを確認してチェーンもかけた。

幸いにしてその怪現象は俺の部屋を訪れるものではなかったようで、数日経ってもその怪現象の続きは訪れなかった。

そうなってくると現金なもので、行列の正体を知りたくなった俺は行列の先にあったあの豪邸の情報を得ようとご近所情報網を持っているMさんに聞きに行った。

Mさんは俺の部屋の3つ隣の部屋に住んでいる。


どうやらその豪邸に住んでいたご主人が亡くなったらしい。

そのご主人は数年前まではあるブラック企業の社長さんで、表面に出ているだけで4人の過労死を出していたらしかった。

会社の経営も違法スレスレのもので、危機的状況の会社を買い叩いては売るようなあくどい手法のものだったらしい。

その所為で一家心中事件なんかもあったらしかった。

どちらの内容も新聞やニュースで何回か取り上げられたらしい。

若いんだから新聞やニュースぐらい見ろと怒られてしまった。


ご主人は孤独死だったと聞いた。

発見は死亡してから1週間以上経ってからだったらしい。

つまり、ちょうど俺が行列を見てから2日後に発見されたことになる。


そういえば行列の中にはスーツ姿の人が多かったな。

女性も結構いたので他にも悪い事をしていそうだ。

よく死ぬ時になると過去に死んだ家族や友人、ペットが迎えに来るというが、そこのご主人は大勢の人に迎えられたのだな。

行き先は上か下か……。

まあ、下に決定だろうが。


俺はMさんから話を聞いた帰りの途中で、行列の先でどんな地獄絵図が繰り広げられていたのかを想像し、ブルリと身を震わせた。


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