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40・殿下、次世代の準備に安心す

 罠に嵌めて鹵獲できた米艦艇や航空機の技術について眺めてみると、電子機器はドイツからの導入なので、史実より大型化し、遅れている部分が見受けられる。しかし、鋼材技術は史実より進んでいると見て良いだろう。

 化け物じみた工業力で空母や戦艦を量産して来られたら堪ったもんじゃないんだが、戦争を吹っ掛けられた以上仕方がない。


 それはそうと、米国の現状を知った日本側では新型機への更新を急ぐ方針が打ち出されている。

 通信機器に関しては同等のレベルにあることが分かったので、空軍で常識となりつつある無線による連携、戦術の変更が海軍でも急務となっている。どこか米国を侮っていた頭の固い連中でさえ、実際に米側の機材を見て危機感を覚えたようだ。

 さらに、米機にはドイツ由来のスロットル操作に追随してキャブやプロペラピッチを自動調整する機械式装置が装備されたものがあった。日本側には例の新興メーカー以外に製造できる企業は無い。その為、装備しているのが二式艦戦だけという、なんとも笑えない現実がそこには存在した。


 そのメーカー、次期艦戦にも応募して、金星をベースにした18気筒エンジンを早々に試作しており、納入した試作機にはそれを装備しているんだという。

 資料を取り寄せると、デカい機体の様だ。ただ、烈風のように艦攻並みの翼長を持つわけではない。翼に関しては、零戦並でしかない。その機体に2400馬力エンジンを積んでいるのだから、あれだ、英国のシーフューリーが一番サイズとしては近いだろう。翼の折り畳み機構は二段格納庫にも収めるためにZ型にするそうだが、現状では艦攻同様、機体上に万歳しているだけだ。二段格納庫にはギリギリらしい。

 しかもこの機体、空軍にも提案されていて、制空型は12.7ミリ6丁、防空型と海軍型は20ミリ4丁なんだとか。

 どうも、老舗の財閥はこのエンジンを双発爆撃機に装備したいらしい。ロールスロイスと悩んでいるそうだ。

 ちなみに、空軍御用達の老舗メーカーは独自に18気筒を開発しているが、より小型で出力は多少劣るが、空力を考慮すれば、より小型な戦闘機が出来ると空軍に提案しているらしい。ただ、エンジンの完成は昭和十八(1943)年らしく、すでに飛行機に積めるエンジンがある新興メーカに後れを取っている。



 その後の競作の経緯を見ると、財閥は競作から降り、制式化はほぼ内定という話になっているそうだ。技研も協力しているが、Z型の折り畳みは現状、量産を考えた場合強度に不安があるそうで、より小型の機体を提案した財閥に再度の開発依頼が下りることになるようだ。エンジンはコレ指定だそうな。きっと、ベアキャットみたいなの作ってくんじゃないの?あの仕事狂の設計士なら。


 艦攻についても、流星も試作エンジンを積んで飛行している。当然、新興メーカーのエンジンだ。史実の老舗は未だにエンジンが完成していないために掻っ攫われた。


 ただ、この機体、史実のそれとは少し違う。


 高速化のために爆弾倉をもつ機体となるはずだったが、2400馬力のエンジンを搭載するという事で設計が変更されて、新興メーカーの協力の下、翼下に片側五か所、胴体に一か所、計十一か所の爆弾架を設けて、最大二トン越えの搭載量を得る事になったそうだ。水冷エンジンの彗星にたいして速度で劣るモノの、搭載量や運用の柔軟性で見れば確実にこちらが上、ただし、カタパルトなしでは雲竜型以降の大型空母でなければ運用できないそうだ。


 こうして、昭和十八(1943)年には多くの航空機が更新されていくことになる。


 その一方で消耗戦と化したアリューシャンの戦いを除くと、日米の戦争は比較的小規模で大きな動きが無い。

 米海軍の大型艦艇が軒並み日本側に沈められた結果、米側には日本へ攻めて来るだけの力がない。潜水艦でどうにかしようにも、資源の多くはテーハンや満州、正統民国政府の領域で事足りている。足らないモノも南シナ海の向こうから容易に入ってくるわけで、長躯、潜水艦を忍び込ませようにも、その往復距離が長くまともな活動が出来てはいない。それに比して、米独からスキンヘッドへの支援は先細り気味で、今では朱鉄路が頼みの綱らしい。

 のだが、そこは既に朱勢力との抗争地であり、どちらが支援を受け取るかは、その時の力関係によるという状態なんだそうだ。


 それでも、アリューシャン周辺から千島にかけては米潜水艦が頻繁に出没しているので、レーダーや磁気探知機を装備した哨戒機による哨戒が行われている。


 哨戒機は陸上から運用する空軍のモノと哨戒や救難、果ては爆撃まで意図して海軍が開発した双発、四発の飛行艇が存在している。

 この世界、早々に空軍が誕生した事で、海軍には大型陸上機が存在しない。その為、九六式陸攻に当たる攻撃機は双発飛行艇として誕生している。

 今では低速すぎるため爆撃任務から外されており、翼の設計を変更してエンジンもより燃費が良いモノへと換え、主に哨戒と救難に利用している。

 その成果もあって、アリューシャンでのパイロット損耗を低く抑えて、多くの日露軍パイロットがこの機体によって救助される機会が多い。

 四発機は当然、二式大艇でほぼ間違いない。現在は新興メーカーの新型エンジンへの換装が計画されているそうだ。


 史実では人命が軽かった日本と畑から収穫出来たロシアだったが、第一次大戦で現実を知った日本と人口や国土面積が少ない真正ロシアでは、人命は貴重なものとして扱われている。しかも、救難を行うだけの余力があるのだから、やらないわけが無い。

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