39・殿下、技術の現状について概観す
第二次真珠湾攻撃は囮としての成果を大いに出してくれた。
ただ、それは無傷という訳ではない。頭の固い連中は俺から見て旧式の機体、拙い戦術が有効と信じて疑っていなかった。
確かに、俺は陸軍であり、海軍の作戦について知見がある訳ではない。空軍であれば、航空作戦については耳を貸したかもしれないが・・・
それに、アレコレ言ってみたところで、俺が思う事を実現するには、少なくとも彗星や流星という次世代艦攻が前提になってしまう。それらの機体は未だ試作を終えたばかりで十分に配備されている訳ではない。
そのため、真珠湾へ向かった赤城、蒼龍、飛龍のグループに積み込まれていたのは、性能は多少良くなってはいるが、精々、速度が20㎞ほど高速化したとか、そんなレベルの差異しかない九七艦攻や九九艦爆だった。艦爆が引き込み脚でないのは、ダイブブレーキの為だそうだが、ドーントレスって引き込み脚だったよな?
当然ながら、一糸乱れぬ急降下をやる訳で、狙われた側としては撃墜や妨害はやり易い。一機目さえ凌げば大抵どうにかなると言っても過言ではなかった。
なので、攻撃隊の損耗率は非常に高かった。加賀をやられたリベンジマッチと艦隊首脳部が力み過ぎていたのも問題だったんだろう。いくら囮とは言え、出来るだけ被害を軽減したかったが、残念がら、赤城は来襲した米攻撃隊によって撃沈されてしまった。蒼龍、飛龍も新型機の運用に適さない為、格納庫まで大きな被害を受けた結果、廃艦ないしは、修理後は護衛艦隊への配属という話になっている。
その犠牲の上で、ハワイ近郊に遊弋して待ち構えていた米空母は翔鶴、瑞鶴を基幹としてグループによって沈める事が出来た。
そもそも、ハワイを攻撃するよりも、海軍戦力をかき消すのが目的だったこともあって、空母グループの多くの艦艇を撃沈できたことで目的は達成できている。
北方作戦では霧が上手く味方してくれた。運の要素も多分にあったが、囮として隼鷹、飛鷹による空襲が行われ、そこを狙って来るであろう米艦隊を攻撃した訳だが、すでに正規空母は無く、護衛空母を連ねて挑んできたのだが、それでは戦力的にも知れていたので、簡単に返り討ちが出来た。
というか、米艦隊は発艦は出来たものの、霧で帰り着けず、多くはそのままアリューシャンの各基地へと向かう羽目になった。
タイミングよく巡洋艦を基幹として打撃部隊が米艦隊を捉えて一部を鹵獲する成果まで挙げた。
この戦いでも、零戦が米側の島に不時着する事態が起きているが、あまり心配する必要はない。そろそろ、護衛艦隊の哨戒を除いて順次更新されていくことになるからだ。
が、零戦にも違いはある。瀬戸内の造船所や技研の電器機械部が優秀なものを作り上げている。そもそも、陸海軍の無線機や電気機器を開発していた部署が統合されているので、陸軍側の欠点、海軍側の欠点だったモノが概ね解消されている。飛躍的な進歩が無くとも、欠点が解消できていれば大抵のものはうまく行くもんだ。
そのため、零戦に積まれた無線機は、開戦時点で史実の三式並の性能があり、瀬戸内の造船所や新興飛行機メーカーの技術者によって不十分だった取り付け不良もほとんど見直されている。
が、操縦する側からすれば重量のかさむ無線機よりも、従来の手信号や以心伝心で十分という意見もあって、無線機やアンテナが取り外されている機体もそれなりの存在したらしい。不時着機の場合は運悪く故障していたのではないかと言われている。
さて、米艦を鹵獲して分かった事だが、ノースカロライナ級からいくらか進歩はあったが、電装品関係は日本に及ばないという話だ。特にレーダーに関しては一世代は遅れているらしい。
これは仕方がない。
米国が史実で高性能レーダーを手に出来ていたのは、英国で開発された新型機器を米国が量産していたからこそ、次々高性能なモノを簡単に手に出来ていたという面がある。現在はそう言う状況にはない。
なにせ、俺や他の転入者たちがこぞって世紀の発見、発明を行った日本人を囲い込んでいたからだ。
そのため、ブラウン管や八木アンテナ、マグネトロンなど、重要な研究論文が世界に拡散する前に機密とされている。
そのため、日本国内での研究、利用しか行われていなかった。
それでもドイツや英国の研究者たちが同じもの、似たようなものにたどり着いては居たのだが、それでも日本から数年遅れとなっており、開戦時点で英国より日本がレーダーでは先行している状態だった。
で、ドイツについては、八木アンテナを飛び越えてパラボラを利用しているのだが、そもそもの基礎部分で遅れているため、小型化が上手く進んでいなかったり、基幹部品の出力や感度が低かった。
そう、米国は英国ではなくドイツからそうした技術を導入していた。その為、いくらか進歩は見られるのだが、史実の英国と違って深い同盟関係という訳ではなく、利害関係だったからだろう、核心技術を得ていないようだと報告書で指摘されている。
そう、鋼材技術は史実より一歩進んで、転入者による技術加速が起った日本とさして変わらないが、電子部品は一部を除いて史実よりも劣るか小型化が達成できていない状況だった。英国の技術力って相当なんだなと、供与したレーダーを今では英国自身が改良、量産している姿を見て改めて思った。たまに斜め上へ突き抜ける英国面なのは、変態なのだから仕方がない。




