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32・殿下、石油禁輸に対策す

 開けて、日本にも世界にも重要になるであろう年がやってきた。

 日露は英国支援のために工場をフル回転で各種増産を進めている。資源は英連邦諸国から輸入できているので何の問題もない。輸送ルートもイタリアが中立なので大きな支障なく行えている。大西洋ではさすがに危険が伴うので護衛が必要だが、インド、太平洋の英軍も多くが地中海と大西洋へと回っているので問題は無い。

 それどころか、三月にはイタリアがヴィシー政権と戦争をはじめ、完全にドイツ側からの離脱を鮮明にしたのでより一層安心できる状況になっている。


 が、米国の動きはより怪しくなっている。


 今年に入って米国は対日要求を硬化させだした。今のところ、石油の多くを米国に依存する状況だが、この禁輸を言い出したのだ。

 日本が英国支援をしているにも拘らず、米国が日本にここまで攻撃的なのが理解できない。いや、米国だけではない。最近は英連邦の南方国家まで米国に同調している。英本国の意に反する日本船舶への妨害すら行っている始末だ。


 が、日本としてはどうぞ禁輸してくださいと言える状況がそろそろ整いだしている。


 こちらに転移してまず調べたのがテンプレ通りに満州の石油だった。誰もが知る様に、これを早期に発見できれば、対米戦の回避、或いは対米戦が起きても多少はマシな戦いが出来たのではないかという話を知っていたからだ。


 結果はあまりよろしくなさそうだが、精油方法次第では使えることが分かった。そして、その方法の特許を持つ人物がロシア人であったことにも驚いた。


 つまりは米国を介することなく精油法を手にする手段が期待できた。


 この情報で二つ目のテンプレ発動は決定したと言って良い。そして、精油法の発案者を引き込むことにも成功した。


 そこまでは良かったが、以後の開発には様々な障害が立ちはだかったらしく、油田探査も思ったよりも進まなかった。

 油田の発見が十年前、何とか北満州が安定しだしたころだった。そこからさらに南下して他の油田も発見することに成功し、採掘事業に移行したのが五年前の事だった。


 まだこの時点では精油法は完成していなかったが、三年前に何とか完成し、今年、商用プラントの運転が可能になった。生産が軌道に乗るのはまだ少しかかるが、そろそろ禁輸されても大丈夫な段階にはある。


 この辺りにも技研の人間が随分関わっているらしいが、詳しい事は良く分からない。


 米国が対日強硬策を連発し、英国がそれに反発する事態が続いている昨今、英国防空戦も佳境を迎えている。

 日本から輸出したのはレーダーだけではない。戦闘機の輸出も行っている。計器は英国規格だから操縦に何の問題もないだろう。

 英国は戦闘機についても何を気が狂ったのか7.7ミリ機銃を多数装備するという方式を採用している。そんなものが爆撃機に有効な訳もなく、戦闘機に対してすら怪しい。


 日本では早くから12.7ミリ機銃を制式化していたので輸出した戦闘機にはこれを装備している。と、偉そうに言っても実際に開発、制式化を行ったのはロシアであり、日本は俺の後押しで仕方なく採用したような状況だが。

 しかも、これを採用したのはまだ新参のメーカーただ一社で、海軍の零戦に瓜二つな戦闘機を製造しているメーカーだ。

 艦載機として海軍が要求した航続力に達せず、かといって空軍の競作には参加していなかったがために宙に浮いた機体だが、ちょうど折よく英国支援が決まり、手すきの新参メーカにその役割を割り振ることになった。

 なにせこのメーカー、新参の割に軍や造船所の勧めるカイゼンやらをもっとも取り入れた最新設備を持ち、独自の機体まである。しかも、航続力以外の点で零戦に大きく見劣りしないというのだから、英国支援にもってこいだと指名されたわけだ。


 こうしてこのメーカーでは24時間体制で戦闘機の生産が開始され、出来た機体は船積されて英国へと向かった。

 その機体のシルエットが英国企業の試作機に似ているとの指摘が一部で巻き起こっているらしいが、布張りと全金属製ではそもそもの構造が違う事からただの妬みや英国ジョークと捉えた方が良いだろう。


 考えても見て欲しい。エアバスとボーイングの旅客機を見て、すぐにどちらか分かるだろうか?例えばF1を見て、一見して分かるだろうか?


 空力的に同じものが求められた場合、自然とその形状は似て来るものだ。それをもってパクリだなんだと騒いでいる無知は客観的に見て恥ずかしい。


 さて、この救援機はパクリ騒動以外にも注目された。

 

 海軍は艦載機として長大な航続力を求めたが為にこの機体を不採用としたが、普通に考えて必要十二分な航続力がある。しかも、ゼロ戦よりも出力のあるエンジンを積んでいるので増槽や爆弾懸架の余力も高かった。何より機体強度は比較にもならない強靭なレベルで、英国で何ら不満なく使われることになったほどだ。この機体をもってすれば独爆撃機を欧州本土まで追いかけまわすことも造作なく、事前哨戒を行いながら海峡通過前の独編隊を襲撃したりも容易に出来た。


 独戦闘機はこの戦闘機のおかげでまったく爆撃機の掩護が出来ず、やみくもに燃料消費を強いられた挙句に、爆撃機の帰還に際して救援機まで飛ばさないといけないなど、史実以上の疲弊を被ることになった。英国が第一次大戦で考えた焼夷弾と違って、日本製の12.7ミリ炸裂弾は独機に有効に作用したのも大きかっただろう。

 ドイツは史実通りに英国攻略を諦めるしかなくなる。本当なら米国の支援がないから容易だったはずが、チョビ髭のソ連憎しとこの機体のために、成し遂げられなかったのは、悲劇なのか喜劇だったのか、評価の別れるところだろう。

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