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27・殿下、史実のように華中で火の手が上がって困惑す

 この世界、欧州においてはほぼ史実通りに事が推移している。対して極東においてはまるで異なる歴史が作られているのだが、ここまで変わると俺の持つタブレットの歴史年表がまるで役に立っていない。


 日本においては二度のクーデターが起きたのだが、一度目については、そもそもの下手人となった狂犬や害鳥が早々に排除され、憲法が変わったために起きていない。そして、関東大震災前後からの不況についても、欧州派兵や真正ロシア建国という違う歴史を歩んだことが経済にも影響して、状況をまるで変えてしまっている。

 経済面では新たに興った真正ロシア帝国の影響で、不況知らずとまでは行かないが、そこそこに安定している。さらにはロシアとの玄関口になる新潟が工業、商業の発展によって潤い、そこへの人の流入で東北の農業恐慌も緩和されている状況だ。

 食料もジャガイモやソバを用いた外来食の流行で潤沢ではないが、飢饉とまではいかないところまで緩和されている。


 そして、二度目のクーデターもそうした影響やそもそもの思想が浸透しなかったことで起ってはいない。これは院長元帥の功績と言っても良いだろう。

 その院長元帥だが、とうとう体調を崩して入退院を繰り返すようになり、昭和一二(1937)年、多くの人々に惜しまれながら亡くなった。葬儀は質素にという本人の意向で大規模には行わない方針だったが、あまりにも参列者や弔問者が多く、結局は国葬として大規模に行われることになってしまった。

 彼の死によって派閥が云々という事態も懸念されたが、そう言う事態は起きずに平静を保っている。院長元帥自身、出身による別なく指導し、師事する側もまるで派閥を気にしていなかったからだろう。その為、陸軍最大派閥と言える院長元帥派は他派閥にも根を張り、問題の起きる余地すら持っていなかった。院長元帥はこの世界では日本陸軍近代化の父としてこれからもその名を語り継がれていくことは間違いない。


 そう言えば、海軍の軍神さんも第一次大戦以後、何かと欧州の事を学ぼうと動いていた。院長元帥との交流が密になったのもその頃だったろうか。

 そのおかげか、海軍も大きく変わっている。


 もともと政治音痴の海軍はさらに政治から遠ざかり、統合参謀部による戦略に従うようになった。軍神さんや元老がそうしたと言って良いだろう。

 ただ、史実と変わらないモノもある。俺がそれとなく米国の対日作戦計画について伝えているので、対米作戦の検討を常にしている。あの色ボケだと思われた元老がいつの間にか構築していた対米諜報網やロシアとの協力関係から得られた情報を基に計画されているのが、大和型ではなく、より小型な戦艦というのがそれだ。


 ちょうど東京海軍軍縮条約の見直しが今年行われたが、史実の第二次ロンドン条約と違って日本は見直しに賛成し、何より、自身の計画に優位性を確信している米国が協力したため、すんなり更新された。これで現状の戦艦規定がさらに5年間有効となり、昭和十七(1942)年まで継続されることになる。まあ、チョビ髭が戦争始めたら失効するだろうが、それでもあと二年はそのままだ。


 つまりは、戦前の段階で40センチ砲戦艦の計画や建造は何処も行わないことになる。そうなると、戦争にはほぼ間に合わない。


 第二次東京条約において戦艦以外の規定がどうなったかと言うと、ほぼ変更は無かった。史実の第二次ロンドン条約と違って英国が潜水艦全廃などを言い出していない。

 それもそうだろう。すでに英独協定を結んでドイツの潜水艦建造を認めてしまっている。今更、潜水艦全廃などと言ってみても意味は無い。英独協定の締結前だからこそ意味があった。戦艦の砲口径に関しても、米仏が30センチであるため、英国には何の不満もない。何となれば保管している34センチ砲を用いて米仏より大口径な高速戦艦を造れば良いと考えていたためだ。


 空母や巡洋艦、駆逐艦の規定はこれ以上変更しようがないと誰もが一致していた。


 ある意味でこの世界は不穏でありながらも平静を保ってはいた。



 欧州でのチョビ髭がそうであるように、極東にも現状を良しとしないオッサンが居た。スキンヘッドと協力関係にはあるが、自らは表に出て戦ってはいない猫型ロボが。


 このオッサン、考えることは謀略ばかりでまともに攻勢に出る気もない。しかも、今では頭のネジが抜け落ちているモンゴル・ハーン国軍やロシア軍と共同で北京政府が朱色の鉄路を破壊しようと西方から南下していた。まさか、本当に蘭州攻略に走るとは思わなんだよ。連中、やはりどこかオカシイ。


 ただ、スキンヘッドの統制も来ていない蘭州の連中の場合、猫型オッサンの支配すら薄弱だった。従っているふりをして利益だけを得る。そんな関係性で、北京政府連合軍による利益収奪にだけは頑強に抵抗した。考え方がサモシイ連中だ。

 結果、ゲルニカ爆撃と並び批判される蘭州爆撃が実施されることになった。主体は北京政府だが、中身はロシア軍だった。


 この事態に米国は喜々として喜んで北京政府を非難、加担する日英露の批判も忘れなかった。


 そして、各国が租界を持つ上海に飛び火した。俗に上海事変、或いは上海事件と呼ばれることになるそれだが、南京事件とは違い、明確に日英租界が重点的に狙われることになる。

 ただ、南部勢力による爆撃は租界に万遍なく行われ、日英だけに限らず甚大な被害を出すのだが、スキンヘッドだけでなく、米国がこれに対し誤報を報じることになる。曰く、「爆撃は日英が誤って行ったものだ」と言い出した。

 誤爆か作為か分からないが、揚子江に居た米艦が攻撃される事件も起きたが、これに対しても参戦していた日本海軍による誤爆として日本に対する批判を繰り広げている。目撃された双発爆撃機を日本空母に搭載していたならそうなんだろうが、日本海軍に艦上双発機は存在していなかった。


 

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