25・殿下、技術加速に思案す
歩兵銃と機関銃はそのような具合だ。
さらに、例の擲弾器の進化も見逃せない。当初は通常の榴弾しか存在しなかったのだが、今ではべトンやコンクリート建造物を攻撃する軟殻榴弾が開発され、成形炸薬弾頭の研究も始まっている。
そして、戦車なのだが、九五式中戦車が開発されている。見た目はどう見てもコレ、T34だよね?主砲が小さいからT32かな?
例の九二式騎兵装甲車の開発以降、ロシアとの共同開発が行われており、エンジンとしては燃料に困らないようにディーゼル化が望まれ、ロシアの技術者によって300馬力の水冷ディーゼルが完成した。それを用いた戦車を開発することになり、当初は37ミリ対戦車砲を車載化する話だったのだが、ロシア側は37ミリ砲を大型化した45ミリ砲の搭載を主張した。日本側は車体の大型化を嫌ったのだが、使用する主戦場がロシアである事を考慮して、その主張を飲んで開発を行った。
どうやらソ連は史実通りにクリスティー戦車を導入し、BTシリーズを開発中らしく、それに対抗する必要があるというのだ。
設計、開発は「日本戦車の父」なもんだから、当然、後の戦車を意識したデザインと防御力を持たせたものになっている。完成した戦車はT34よりは幾分小さいと思われるが、それでも重量は20トン、日本国内の鉄道輸送はギリギリというシロモノに仕上がっている。聞くところによると、そのまま75ミリ高射砲を搭載できる余裕を持たせて作っているという話だから、間違いなく史実の三式どころか四式中戦車並みの車両がすぐさま仕上がって来るんではないだろうか?
「?、内燃タービンとは蒸気タービンと何が違うんだ?」
自身が直接関わっている陸軍分野以外に目を向けると、聞きなれない単語が現れた。技研に問い合わせたらどうやらガスタービンの事らしい。
ガスタービンと言っても構造上はジェットエンジンとは異なり、重構造型と言われるもので、蒸気タービンの構造に近い代物だ。開発目的も缶を無くして艦船の機関容積を減らすことを目的としたもので、飛行機を飛ばすことを前提にはしていない。
どうやら技研の艦艇部が開発を主導したらしく、コレを用いればこれまでにない軽量で高速の駆逐艦を作ったり、同じ重量でより防御力の高い戦艦を作ることが出来るのだという。
すでにその設計案も出来ているとかで、40ノットを超える高速駆逐艦や金剛型と同じ重量でありながら、長門型に匹敵する防御力のある戦艦を実現できるという。
しかし、問題が無いわけではない。機関部重量が軽くなるので、重心上昇が起きやすく、機関部で節約できた重量を安易に兵装重量に転化できるかと言うと、そこはしっかりした設計とこれからの実験による実証待ちなのだという。
ただ、現状はそれで良いらしい。東京海軍軍縮条約によって、戦艦の建造を更に5年間凍結するか、代替えが必要な場合は対象艦と同じ砲口径、砲門数、排水量に制約を受けるというのだ。例えば、米国は現存する古参戦艦、ワイオミング級辺りの代替えを行うなら、30センチ砲12門、3万トン以内でしか建造できない。
日本は対象が金剛型なので、36センチ砲8門、3万トンということになる。
一番得をしてるのは38センチ砲戦艦ばかりの英国だが、米国が受け入れたのにはどうも裏があるという話だった。
さて、で、その3万トンという規模の船を作るとして、従来の設計ならば、機関重量を考えて金剛型から防御力を向上させる余剰はほとんど無い。対して、ガスタービンにすれば缶室の容積と重量が丸々浮いてしまうので、それをうまく利用すれば防御力を向上させることが出来るのだという。
対して英国だが、38センチ砲8門、3万トンの従来艦規模で代替え艦を造ろうとすれば、速度か防御力、或いは攻撃力を犠牲にするしかない。
そう考えると、米国の方が自由度がある。アラスカ級大型巡洋艦の様な艦を造れば、英国は対抗上、高速艦を仕立てる必要があるので、3万トンの巡洋戦艦に仕立て直すか、防御力を維持するなら砲門数を減らすしかない。米国が代替え艦の砲門数を12門から9門や8門に減るのと、公算射撃の最低限と言われる6門に減る可能性がある英国とでは、やはり意味が違ってくるという話だった。
そう考えると、なぜ海軍がガスタービンを造ろうとしたかが分かる。金剛型の重量を考えれば、従来通りの蒸気タービンであれば、そっくりそのまま金剛型に近い戦艦しか建造できない。対して、ガスタービンであれば、缶室容積を切り詰めて防御力を増すことが可能になる。
米国は金剛型程度の防御力ならば、30センチであっても砲や砲弾の改良で対抗可能と考えている節があるそうだが、ガスタービンを採用して40センチ弾対応の防御を持たせることで、米国の裏を掻けるのだという。
そろそろ時代は飛行機なんだが、果たしてそれは実現するんだろうか?
空軍についてはレーダー以外に目新しいものが無かった。まだまだいきなり千馬力やそれ以上のエンジンが開発されているはずもなく、双発機の優位が主張されたり、東京条約の影響で艦隊攻撃に航空機を使おうという話が盛んで、零戦や隼みたいな戦闘機が出来る土壌にはまだないらしい。
そのレーダーだが、史実の11号電探を脱し、早くもパラボラ型の開発に移行しているという。日本以外では未だに指向性レーダーの実用化自体が試験段階という状況なのに、空軍では指向性レーダーをモノにしてさらにその先へと進もうというのだから、それはそれで驚きだ。電化製品の信頼性が低い筈だが、アレ?そういえば、高性能ラジオや俺が欲しがった小型無線機の開発もすでに進んでいる。三次元レーダーどうこうという資料があるが、まさかね。




