王都観光?
あけましておめでとうございますm(_ _)m
今日の予定はというと、お客様が来るようだ。
誰が来るのかと問えば、誰しもが秘密だと言う。
ぐぬぬ。
お客様をお出迎えするための準備を終えると、パウルが迎えに来てくれた。
「ネマお嬢様、お客様がお見えになりましたよ」
パウルにエスコートされ、応接室に入ると知らないおじ様がいた。
「ネマッ!」
おじ様に気を取られていると、誰かが抱きついてきた。
「ニィノ、失礼だぞ」
ん?ニィノ!?
「失礼いたしました。リッテン・イレーガの娘、ニィノでございます」
高位の貴族に対する礼を取った、可憐な少女。
「妹が失礼いたしました。ピィノ・イレーガと申します」
のほほんとした笑みを浮かべた美少年が!
「ピィノ!ニィノ!」
私は嬉しくなって、ニィノに抱きつく。
ずっと手紙でのやり取りはしていたけど、会うのはあれ以来だ。
「病気だと聞いていたけれど、元気そうでよかったわ」
「おにい様がずっとめがみ様にいのってくれたおかげよ」
「あぁ。それで出会ったときと変わらないんだね」
ピィノとニィノには、それだけでわかったようだ。
しっかりと教育を受けている証拠か。
「申し遅れました。二人の父、リッテン・イレーガと申します」
イレーガ伯爵は、ピィノを厳つくした感じだ。
濃い黄色の髪は後ろに撫でつけられており、琥珀色の瞳は強い意思を宿している。
「デールラント・オスフェの次女、ネフェルティマです。お会いできてこうえいです」
パパンが高く評価している代主の一人だ。
どんな人なのだろうとは思っていた。
「お父様が王宮に行くというから、ネマに会いたいって連れてきてもらったの」
「それに、次の巡には学院に入るから、下見もしたいと思っていたんだ」
そうか。ピィノとニィノは学院に入るお年頃なのか。
いいなぁ。
私も友達と一緒に学校行きたい!!
十歳になるまでに帰ってこれるかな?
…そういえば、お姉ちゃんの留学期間ってどれくらいなんだろう?
ルノハークが滅びるまで帰っちゃダメとかじゃないよね?
そこら辺、パパンに確認しておかないと!!
「ネフェルティマ様がよろしければ、私が王宮にいる間、二人と一緒にいてもらえないでしょうか?」
イレーガ伯爵にお願いされ、ニィノに一緒に行きましょうと誘われては断れない。
まぁ、断るつもりもないけれど。
「よろこんで」
そう返事をすると、ピィノが何かをじっと見つめていた。
彼の視線の先といえば、森鬼しかいないけど?
「あのときのホブゴブリンだよね?」
そうでした。
二人は森鬼が進化したとき一緒だった。
「そうよ。今は私のごえいをしてもらっているの」
「ふーん。それより、ネマ。美味しいお菓子のお店に行きたいわ。有名なお店がたくさんあるんでしょう?」
ニィノは興味ないと言わんばかりにスルーして、女の子らしく有名なお菓子をご所望だ。
「私も王都のお店は知らないの。でも、まかせて!ゆうしゅうなしつじがいるから」
というわけだ。
パウルよ、有名で美味しいお菓子のお店をリサーチしておくれ。
てか、ピィノは不思議ちゃんか?
今度は応接室のタペストリーをじっと見てるよ。
「ピィノは行きたいところある?」
ゆっくりと視線を私に移すと、いつもののほほん笑顔で魔道具の工房が見たいと言ってきた。
まぁ、男の子だもんね。
そういうのに興味があるお年頃なんだね。
そのリクエストも、パウルに任せることにした。
早速、我が家の馬車で学院に向かう。
イレーガ伯爵は自分の馬車で王宮に向かうということで、お家の前で別れた。
「私たちが学院に入るときは、高位の方々はいらっしゃらないのよね?」
「ん?」
ニィノの言葉がわからず、首を傾げる。
「殿下もネマのお兄様も、卒業されて上学院に進まれているでしょう?お姉様もライナス帝国へ留学されると聞いているわ」
あぁ、確かに。王族や公爵の子供たちはいないかもしれない。
…いや、待てよ。
「ラズールこうしゃくの姉妹はまだいるかも?あと、ゼルナンしょうぐんのまごたちも」
「…ラズール公爵、あまりよい噂は聞かない方よね。ゼルナン将軍家はよくわからないわ」
やんちゃ坊主のガッシュとヒューイには近づかないよう忠告しておく。
少しは紳士として成長したかもしれないが、根はわがままでがさつだ。
ニィノと絶対ケンカになる!
「そう。じゃあ、そこは候補から外すわ」
どうやらニィノは、学院に入ったら結婚相手を探すらしい。
貴族の子供はほぼ入学するので、探す場所としてはもってこいなわけか。
でも、自分で探すの?
そういうのって、親がやらない?
不思議に思って聞いてみたら、ニィノらしい答えが返ってきた。
「お父様に任せたら、絶対つまらない方と結婚させられるわ。政略結婚が避けられないとしても、尊敬できない相手と結婚だなんて嫌よ。だから、お父様に言われる前に、自分で見つけるの」
なんか凄いなぁ。
将来というか、結婚なんて、どうにかなるでしょくらいにしか考えてなかったわ。
パパンも嫁にはやらんって言ってたし、小姑決定かなぁって。
「ちゃんと考えてるんだね。ニィノはすごいなぁ」
「あ、当たり前でしょう!貴族の娘なのよ!」
あ、照れてる。
ツンデレっぷりも健在で、嬉しいね!
「あ、あれかな?」
ピィノはガールズトークには参加せず、ずっと外の風景を見ていたようだ。
「…意外と大きいのね」
「昔は王宮だったんだよ」
それから、たわいもない話をしていたら、すぐに学院に着いた。
パウルが見学の手続きをしてくれたんだが、案内役の学生がつくらしい。
「本日、皆様のお世話をさせていただきます、エリーナと申します」
どこにでもいそうな、親近感のわく平凡顔の少女は、侍女の学科のご令嬢だとか。
家は伯爵の位だが、王宮に勤めたいと学院に入学したと話してくれた。
「そういえば、二人はどこのがっかに入るの?」
「僕は上級仕官だよ。一応、跡取りだしね」
ピィノはお兄ちゃんと一緒の上級仕官学科か。
「私は…まだ悩んでいるのよね。上級仕官か文官なら、嫁ぎ先でできることも増えると思うの。でも、王宮も憧れるわよね」
そうなのか。
王宮での仕事って、憧れるのか…。
怖い侍女頭さんいるよ?
「侍女学科では、家柄に応じた教育がなされます。さすがに、伯爵家のご令嬢が男爵家に仕えることはありませんので」
なるほど。
つまり、自分のお家より上の階級に仕えること前提なのか。
そして、平民出身の学生とも別のカリキュラムってことだよね。
「また、位を持たない方は、その実力に応じて、階級分けがされます。上位の者は、貴族に負けないほど、素晴らしい腕をお持ちなのです」
ほえー。
いろいろと工夫はしてあるんだね。
エリーナさんに教わりながら、教室を覗いたり、授業を見学したりした。
教室は、大学の雛壇式の教室に似ている。
上級仕官学科の教室も見せてもらったが、こちらは高級感溢れすぎて驚いた。
ふっかふかの一人がけソファーに、移動式の机、教室の中にはお茶をするスペースも設置してあった。
「あ…。申し訳ございません。国外からのお客様がいらっしゃいますので、別の順路にいたします」
エリーナさんの先には、何やら団体さんがいた。
見知った顔がちらほらあるね。
挨拶しないとまずいんじゃね?
「パウル、気づいてしまったのに、あいさつしないのは失礼よね?」
「そうですね。殿下は真っ先に気づかれたようですし」
だよねー。
ラース君ががうって鳴いてたもんねー。
「エリーナさん、あいさつに行ってもいいですか?」
「えーっと…」
自国の殿下が案内するようなお客様に、許可なく近づいていいのかわからないのだろう。
「大丈夫です。おにい様もいるので、おこられることはありません」
そうエリーナさんを説得して、団体の方へ向かった。
「ルイ様、テオ様、ごきげんうるわしゅうぞんじます」
以前やった公用の礼二位ではなく、賓客に対する礼を取った。
だって、二人ともお忍びだし、一応公式の場でもないから。
パウルも何も言ってこないから、正解だろう。
「おや、ネマ様も見学かい?」
二人は挨拶を返してくれたあと、気さくに声をかけてくれた。
「はい。友人のつきそいですが」
私がそう言うと、ヴィがお兄ちゃんに耳打ちをした。
なんて言っているのか聞こえてるぞ!
風の精霊も、こんなところで遊ばなくていいから!
『あいつに友人いたのか?』
失礼だな!!
友達くらいいるもん!!
ピィノとニィノが初めての友達だもん!!
…この歳で、同世代の友達が二人って。
淋しくないよ!ノックスも白もグラーティアもいるから、淋しくなんてない!!
『ヴィル、聞こえてるみたいだよ。ネマが泣きそうだ』
『精霊たちか。…お前たち、やめろ』
それ以降聞こえなくなったが、遅いよ!
「イレーガ伯爵家のピィノとニィノだね。ネマと仲良くしてくれてありがとう」
お兄ちゃんが頭をよしよししてくれてるけど、ゔぅぅぅ。誤魔化されないぞ!
ピィノとニィノはお兄ちゃんに挨拶をして、これからも仲良くしてくれるって言ってくれた。
「お前も、動物たちと遊んでばかりいないで、もう少し友人を増やしたらどうだ?」
ヴィよ、そう言うけどさ。
どこで友人を増やすというんだ?
「おにい様…」
私の困惑をわかってくれたお兄ちゃんが、代わりに説明してくれた。
「ネマはまだ幼いからね。身内での茶会にしか参加したことないんだ。遊びに行くのも、王宮以外は禁止されている」
「…あぁ。オスフェ公爵が原因か」
禁止というか、パパンが許可したときしかダメなんだよ。
ママンと一緒のお出かけは、すぐに許してくれるんだけどねぇ。
そのママンも、他のお家が主催するお茶会には連れていってくれないしさ。
だから、同世代に会うことが困難なのだよ。
「ネマ、殿下と親しいの?」
ピィノがこっそりと聞いてきた。
「うん。おにい様がしたしくしてもらっているから」
お兄ちゃんのおまけみたいだが、きっかけはともあれ、お兄ちゃんの妹だから相手してくれている面も多いと思う。
「公爵ともなると、王族ともお付き合いがあるのね。…大変そう」
ニィノの大変そうが、面倒臭いって聞こえるんだが。
空耳かな?
「ネマお嬢様、そろそろお時間が」
おっといけない。
ピィノがリクエストした、魔道具の工房見学もお願いしてたんだった。
「お時間を取らせてしまい、申し訳ありません。私たちは次にまいります」
「ネマ様たちは、次はどちらへ?」
「まどうぐのこうぼうを見にいくのです」
すると、無表情だったテオさんが反応した。
無表情のままで、面白そうだと。
本当に面白そうって思っているのか謎だ。
「僕たちも行ってみるかい?」
ルイさんや、周りの人がわたわたし始めちゃったから、急な予定変更はやめてあげて!
結局、私の願いも叶わず、ヴィご一行も一緒に工房に行くことになった。
学院を出たら、顔見知りの近衛騎士たちや側仕え要員と思われる侍従たちがいた。
かえって工房に迷惑かけるんじゃ…。
なるようになる。
ということで行ってみたものの、なんかいろいろと驚いた。
魔法構造を元に、魔法を使いやすいような道具を作っていく。
その過程は研究所で見ていたからわかる。
防御魔法系がアクセサリーで身につけるタイプが多くて、攻撃魔法系は罠のように設置するものや、投てきするものなど、ゲームに出てきそうなアイテムばかりだった。
ただ、庶民向けの便利魔道具がヤバい。
お湯と冷水が出るウォーターサーバーみたいなやつや、魔法の火力で温める電子レンジもどき。
冷蔵庫のように食べ物を保存しておける箱、首振り機能つき扇風機。
最後のやつは、研究所で見たぞ!
魔道具が家電レベルに進化してたよ!
ひょっとしたら、コーヒーメーカーもあるんじゃないか!?
「特殊技術法のおかげで、魔道具の研究が盛んになったんだよ。これらはまだ高価なものだけど、平民たちの生活も便利になったらしい」
あの、なんちゃって特許法か!!
たった二年で、こんなになるとは…。
家電のありがたみはよーく知っているので、研究者たちには頑張ってもらいたい。
空飛ぶ馬車とか、空飛ぶ靴とか、空を飛べるアイテムをぜひとも!!
「凄いな。技術を保護するだけだろう?」
テオさんは真剣に魔道具を見ていますが、好きなんでしょうか?
「技術を保護し、使用料として金銭が発生するようにしたところ、研究が盛んになった。つまり、今まで魔道具を作っていた者たちが、不遇だったということでもある」
ヴィが法律的なものを詳しく説明し、テオさんがいくつが疑問を投げかける。
「しかし、無断で使用した者たちを取り締まるのは大変じゃないのか?」
「今はまだ、本人たちに任せるしかない。いろいろと相談や報告ができる窓口は作ってある。類似性のある魔法も、審査は厳しく設定していて…」
まだまだ改善点はありそうだね。
しかし、そこまで専門的になってしまうと、私の付け焼き刃な知識じゃどうしようもない。
ヴィやパパンたちに頑張ってもらうとしよう。
私が、家電魔道具に気を取られている間に、ピィノはいくつか魔道具を購入していた。
お家に帰って、いろいろ試すそうだ。
ニィノが呆れ顔で言った。
「ピィノの部屋、魔道具だらけなのよ。しばらくしたら飽きて、使わなくなるくせに」
ピィノは魔道具コレクターでしたか。
「さぁ、次に行きましょう」
魔道具の工房の次は、美味しいお菓子のお店だ。
なぜか、ヴィご一行もついて来る。
パウルが案内してくれたのは、女性向けの可愛らしいお店だった。
お店の外まで、甘いいい匂いが漂っている。
お店側は急遽、二階のフロアを貸し切りにして対応してくれたようで、お店の責任者にはあとでお礼を言っておかないとだ。
メニューに描かれてあるイラストは、どれも可愛く、美味しそう。
ニィノとどれにするか、はしゃぎながら相談する。
「可愛いねぇ」
「叔父上も、そろそろ身を固めてはいかがです?」
「うーん。それは面倒臭いからいいかな」
ルイさん、独身だったのか。
皇弟な上に美人さんだから、さぞかしモテるだろうに。
「テオこそ、婚約者殿とはどうなの?」
「どうといわれても。ただの候補ですから」
…なんか意味深。
気になるけど、聞いちゃいけない気がする。
「私、これにするわ。ネマは決まった?」
ニィノ、本当に興味ないことには意識向けないのな。
ニィノが選んだものは、季節の果物がたっぷりと載ったケーキだ。
あ、美味しそう。
私はどうしようかなぁ。
ぺシェのタルトっぽいやつも美味しそうだし、ベリー系のパイっぽいやつも捨てがたい。
マフィンっぽいやつに、可愛くデコレーションしてあるやつも気になる。
うーん…決められない…。
「ネマ、これにしたらどうかな?これとこれは、僕とヴィルが頼むから」
お兄ちゃんが提案してきたのは、マフィンっぽいやつを私が頼んで、タルトっぽいやつとパイっぽいやつはお兄ちゃんとヴィで頼むというものだった。
「いいの!」
もちろんと素敵な笑顔つきで答えてくれたので、遠慮なく頼んだ。
ヴィが勝手に決めるなよとかボヤいていたが、聞こえない。
注文したやつが届くと、私とニィノは歓声を上げた。
めちゃくちゃ可愛い!
食べるのがもったいないくらいだけど、食べる!!
一口頰ばると、生クリームもどきの甘さと、果物の酸味と、マフィンのふんわり感と、なんとも幸せになる味だ。
「おいしー!」
「本当に美味しいわ!ピィノの一口食べさせて」
双子は仲よくお皿を交換し、それぞれ味わっている。
いやー、これも眼福だわ。
いつも以上にニコニコしているニィノは可愛いし、ケーキを頰ばるピィノの笑顔は花が咲いているよ。
「ほら、こっちも食べたかったんだろ?」
差し出されたフォークの先には、ベリーたっぷりのパイが!
迷わずパクリといくと、ニィノの声が聞こえた。
「ネマ、そうやって餌付けされてるのね…」
はっ!
ついうっかり、いつもの癖で!!
「ネマお嬢様、お行儀が悪いですよ」
パウルにまで釘を刺された。
いや、だって、ヴィが差し出してくるから…。
王子の気遣いを無碍にはできないでしょう?
と、心の中で言い訳をしてみる。
パウルに注意されたにもかかわらず、お兄ちゃんもヴィも差し出してきて…どうしたらいいのだ!!
「殿下もラルフ様も、ほどほどになさってください」
遊ばれている私をよそに、ルイさんもテオさんも黙々と食べている。
「甘いものは幸せだね」
「もっと宮殿でも出すべきだな」
意外にも、甘いものが好きみたい。
執務に追われているときは食べたいよねと、ルイさんが言えば、テオさんが強く頷く。
「甘いもの、食べさせてもらえないのですか?」
我が国の王宮では、すぐにお茶とお菓子は用意されるが、ライナス帝国では違うのだろうか?
「言えば用意してくれるけど、なぜか甘くないものが多くてね。そういう印象を持たれているのかな?」
あぁ、それはありえるね。
ルイさんはまだ甘いもの食べそうなイメージはあるけど、テオさんにはないし。
やっぱり、無表情だからかな?
お店を出るときに、お土産としていくつか買って帰ることにした。
絶対、ママンやお姉ちゃんも気に入ると思う!
ニィノも、日持ちする焼き菓子を大量に購入していた。
よっぽどお菓子が好きなんだな。
お店の前で、ヴィたちと別れ、お兄ちゃんと一緒にお家に帰る。
イレーガ伯爵もすでに戻ってきており、ピィノとニィノともお別れだ。
「ネマ、また遊びましょう」
「次は僕たちが案内できるかもね」
学院に入れば、王都にある屋敷から通うことになるので、私より詳しくなりそう。
「うん。きたいしてる」
また、手紙書くからと約束して、二人が乗った馬車を見送った。
…やっぱり、友達欲しいな。
昨年に引き続き、ネマともどもよろしくお願いいたします!!
ただ、双子ちゃんを出したかっただけの回です(;´д`)




