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国政に私情はダメですよ!

パパンから、帰ってこいという命令が発動された。

めちゃくちゃ満喫していたので、帰りたくないとお兄ちゃんに泣きついたがダメだった。

パパンは私が駄々をこねることを見越していたようで、パウルに私を帰すよう家長命令を出していたのだ。

命令だから、お兄ちゃんもパウルも逆らうことはできない。

私はもっと、山にいるみんなと遊びたかったのだよ!!

帰る道中、ずっと不貞腐れていたが、パウルはそんな私の扱いにも慣れていた。

馬車の中では、(はく)とグラーティアを出してもいいと言われ、二匹用のおやつまで用意されていた。

お家に着くと、お茶とともに私の大好きなお菓子が出された。

こうお世話をされると文句も言えやしない。


大好きなお菓子を堪能していると、ママンが部屋に入ってきた。


「戻って早々だけど、王宮に行きますよ」


パパンが帰ってこいって言うから戻らされたのに、落ち着く暇もなく王宮かよ!

ママンに急かされて、お着替えをして、再び馬車に詰め込まれた。


「おうきゅうで何するの?」


「陛下と大臣たちと話し合いをするのです」


……それになぜ私が参加せねばならないのか?

たぶん、自然界のバランス云々のことだと思うけど。

お兄ちゃんが書いてくれた、手紙での説明では不十分ってことか?


「いろいろと聞かれると思いますが、ネマの好きなように語ってよいですからね」


「はい!」


ママンがそう言うのであれば、好きなように語らせてもらいましょう!


王宮に着くと、入ったことのない部屋に案内された。

広すぎず狭すぎず、テーブルしか物がない。

椅子が十脚用意されているから、十人くらい集まるのだろう。

一脚だけ、明らかにお子様用なのは、私の指定席ってことだよね。

ママンが着席しないから、私も立ったままだ。

ぼけーっと待っていると、オリヴィエ姉ちゃんとサンラス兄ちゃんが来た。


「セルリア、ネマ、待たせたわね」


「ネマ。少し見なかったが、また大きくなったな」


うーん、サンラス兄ちゃんに会ったのは、いつ以来だっけ?

結構頻繁に王宮に遊びきているが、なかなか会えないんだよね。


「せいちょうきだもん!」


「そうだな。ネマもきっと美人になるんだろうな」


それは買いかぶりかもしれないが…。

パパン似でも、ママン似でも、美人になることは間違いないと思うが…。

曾祖父ちゃんに似ていると言われる私はどうなることやら。


次に入って来たのはパパンだった。


「ネマ、お帰り」


「おとー様!」


強制送還された恨み、晴らさせてもらうぞ!

パパンに飛びつき、ほっぺたをうにーっと伸ばす。


「ネマ!」


ママンから冷気が漂ってきたので、すぐに止めざるをえなかったが。


「ネマ、痛いよ」


「みんなともっと遊びたかったのに…」


パパンがごめんと謝ってくれたので、許してあげたけどね。


「デールもネマにかかると形無しだな」


パパンの後ろから現れたのは、まさかの人物だった。


「ジーン兄ちゃん!!」


外務大臣であるジーン兄ちゃんは、国内外を飛び回っているため、めったに会うことができない。

私も会うのは、約一年ぶりくらいだろうか。


「ネマにお土産を買ってきたから、あとで届けさせるね」


どこのお土産かは、届いてからのお楽しみってことか。

みんなの近況報告とかしているうちに、王様の侍従(じじゅう)が来て、王様が入室することを伝えた。

みんな、家臣の礼をして、王様を待つ。


「楽にせよ」


頭を上げると、王様と王妃様、ヴィとラース君がいた。

着席を促されて、それぞれ近くの席に着いたのだが、なぜ私の隣りがヴィなのだ!


「今日、集まってもらったのは、ルノハークと名付けた謎の集団についてだ」


王様の言葉をパパンが引き継いだ。


「いくつかの拠点を潰してみたが、ルノハークを率いている主要人物についての情報は得られなかった」


えっ!?

潰しちゃったの!!


「捕まえた者たちの共通点は二つ。人であることと、創聖(そうせい)教の信者だった」


共通点なのかもしれないが、括りが大きすぎないか?

逆に、創聖教を信仰していない人を探す方が難しいと思うぞ。


「それだと、たまたまということもあるわよ」


オリヴィエ姉ちゃんの言う通り。

さらに掘り下げたものが欲しいところだ。


「それでだ、やつらの目的を絞り込み、どういった思想の集団なのかを調べている」


言葉は悪いけど、ルノハークは国家からしたらテロ集団みたいなものだ。

そして、そこに宗教が絡むと厄介なのは、地球の歴史が物語っている。


「目的については、ネマが一つの仮説を立てた。ネマ、説明できるかな?」


ここで私に振るのか…。

あれから、いろいろと考えてはみたけれど、上手く話せるかな?


「今、ルノハークがおこなっているのが、まものを北に追いやることです」


その結果、何が起こりえるのかを、順序立てて説明する。


まずは、なぜイクゥ国だったのか。本当にイクゥ国から始まったのか。

大陸の南側ならライナス帝国があるにもかかわらずだ。

たぶんだが、ライナス帝国には聖獣がいるから。

聖獣が精霊を使って目を光らせているので、集団での悪さをしづらいのだと思う。

最初のスタート地点は、イクゥ国とライナス帝国に挟まれた小国家群だったのではないか?

ここは、国土は小さいながらも、小さい国が協力し合い、独自の文化や経済を発展させている。

イメージ的にはヨーロッパみたいな感じに近いのかな。

そこから、魔物を追いやっていき、イクゥ国にまで達し、今ではガシェ王国まで来てしまったというわけだ。

南下できないと言っていたので、上手くライナス帝国に逃げた魔物もいるかもしれない。

つまりだ、大陸を縦真っ二つに生態系のバランスの崩れ方が違ってくると予想される。

一方には魔物がおらず、一方には魔物が増える。

しかしだ、結果的に起こる被害は同じようなものだろう。

魔物がいなくて動物が増え、植物が食べ尽くされる。

魔物が増え、動物が減り、昆虫などによって植物が食べ尽くされる。

一部では植物が異常繁殖するかもしれないが。

植物がなければ、すべての営みを支えることはできない。

食べ物を求め、争いが起こるかもしれない。

自国のために、他国を侵略するかもしれない。

それが大規模になってしまった事例が、この大陸の歴史にはある。


「つまり、ルノハークの目的は戦を起こすことということか?」


王様は顔を顰めているが、ダンディなおじ様がやると緊迫感が一気に増すな。


「陛下、発言してもよろしくて?」


王妃様が?と不思議に思ったものの、ライナス帝国の状況をと言われ納得した。

王妃様はライナス帝国の先代皇帝の娘、つまりお姫様だったからね。


「イクゥ国の現状を重くみたライナス帝国は、わたくしの両親と契約をしてくださっている聖獣様、サチェ様とカイディーテ様を救済に派遣しております」


ライナス帝国が代々、聖獣と契約した者しか皇帝になれないのは知っているが、王妃様の母親も契約者なのか?


「ですが、聖獣様のお力を持ってしても、小さな範囲に植物を芽吹かせるしかできないと仰っているそうです」


精霊の言う(ことわり)が崩れているからだろう。

ではなぜ、精霊は理を崩した者たちを放置していたのか?


「ラース君、せいれいさんはルノハークにばつをあたえなかったのはなんで?」


ーグルル


「相手はただ、住処を追いやっただけだ。住処を守るための戦いに、精霊がいかに口出せよう、と言っている」


一つ一つを見れば、生存競争というわけか。

そういったことには、精霊は手を出せないって森鬼も言ってたっけ。

ってことは、コボルトたちを守って欲しいとお願いしたときに、断られたのはこれが理由か。

じゃあ、なんでこの前は愛し子としてとか聞いてきたんだろう?

…あの段階で、精霊はコボルトたちを私の身内だと認識してたとか?

身内だからこそ、理に触れるようなことはできなかった?

でも、森鬼がゴブリンの案内に精霊をつけたことあったよね?

私が面識あるかないかが問題だったりする??

うーん、全然わからない!!


「しかし、魔物がいないことが、なぜ飢饉に繋がるの?」


オリヴィエ姉ちゃんは、生態系のバランスが理解しにくかったようだ。

ママンにお願いして、図を描けるように紙をもらう。

そこに、生態系についての絵を描いていく。


「一番下に植物がいて、その上に草を食べる動物がいるの」


さらにその上に肉食動物がいて、その上に魔物がいる。

これが山や森での生態系だ。


「人はいないのね」


この生態系には、人間はいない。

三角形の上に、今度は逆三角形を描く。

こちらには、一番上に人間、その下に獣人、さらに下には魔族、エルフと書き込んでいく。

そして、一番下、三角形の頂点部分に魔物と書く。

この魔物の部分を、生態系の三角形と合わせると、砂時計みたいな形になる。

生態系について改めて思ったのが、この世界の創りについてだ。

地球では、人間は動物から進化したものなので、生態系の中にいる。

しかし、この世界は神様が創り出したものだ。

進化の中で派生したものではない。

ならば、三角形の中に入らないのでは?と思った。

生態系のキーストーン種が魔物なら、生態系と人間などの種族を繋ぐのも魔物ではないかと。

そして、この三角形と逆三角形には、神様についての考え方の違いでもある。

魔物は、神様がいると知っている。だけど信仰はしていない。

食うも食われるも、生きるも死ぬも、すべては自分の責任で、定めであると。

逆三角形の種族は、神様を信仰している。

聖獣や精霊という神様の力と関わりを持ち、治癒魔法や神託などで神様にすがる。

神様としては、それでいいのかもしれない。

寂しいからという理由で創ったのなら、相手してくれないと創った意味がないだろう。

つまり、神様がやっちゃった結果、非常に複雑な生態系になってしまったという。

……やっぱりお前が原因じゃねーか!!


怒りはあとで神様にぶつけるとして、ミューガ領やディルタ領には影響が出ていないのか聞いてみる。


「私のところは、国境に近い村や町から、虫食いの被害が例年より酷いという報告が上がっていた」


サンラス兄ちゃんが、持参した書類を見せてくれた。

それには、ここ数年の作物の生産量と天災などで被害にあった量が書かれていた。

確かに、一昨年あたりから被害が増え始め、生産量は落ち込んでいる。

特に、一昨年の被害内容に魔物によるものが増えているのが気になった。

この時期に、魔物が国境沿いに追いやられていたってことだろう。


「こちらは、魔物による家畜の被害が多かったよ。オーグルが出現したときは、さすがに騎士団にお願いしたと聞いている」


ジーン兄ちゃんは、領主である父親に持たされたのか、サンラス兄ちゃんと同じような書類を出した。

大臣の中でも、ジーン兄ちゃんだけは領主ではない。

外務大臣だからというわけではないが、ジーン兄ちゃんはあっちこっちに飛び回るのが好きなので、国内にあまりいない。

それゆえに、領主の仕事は任せられないと、ジーン兄ちゃんの父親が現役で頑張っている。

周りからは、早く引き継げと言われているみたいだが、父親の方も領主の仕事を楽しんでいると言っていたから、ある意味親孝行なのかもしれない。


少なからず、影響はガシェ王国にまで出ていた。


「こっきょう近くに、レイティモ山みたいな場所を作れないかな?」


結界を張らなくても、人の出入りを制限すれば、その周辺の生態系は回復するんじゃないかな?


「作れないことはないと思うけど、ルノハークに再び追いやられる可能性が高いよ?」


あ、それもそうか。

やっぱり結界は必要か。


「それと、連れてくる魔物にもある程度の統率が必要となる。そうなると、ネマは新たに魔物を傘下に入れなければならないぞ」


ジーン兄ちゃんに続いて、サンラス兄ちゃんに衝撃的なことを言われた。

もっと魔物軍団を増やせと!?

今ですら、スライム、ゴブリン、コボルト、セイレーン、フローズンスパイダーがいるんだぞ!!


「神の愛し子が、魔物の女王となるか。面白そうではあるな」


王様まで何言ってんだ!!


「つまりは、魔物の数を維持しなければならないのよね?だったら、期間を定めて、討伐を全面禁止にしてみたらどうかしら?」


あらぬ方向に行きそうだった話を、オリヴィエ姉ちゃんが戻してくれた。

オリヴィエ姉ちゃん、ありがとう!


「しかし、人に害をなす魔物はどうする?」


オリヴィエ姉ちゃんの発案に、パパンが疑問を投げかける。


「森や山奥に、追い払うだけでいいでしょ。冒険者だと殺してしまうかもしれないから、騎士団は大変になるでしょうけど」


「となると、私たちだけでは決められないな」


そう、ここには王国騎士団のトップであるゴーシュじーちゃんがいない。

ゴーシュじーちゃん抜きで、騎士団に関わることを決めることはできない。

騎士団は民のためにあるものだから、国政に関わる決定は王様と将軍、二人の意見が一致しないとダメなんだって。


「仕方ない、ゴーシュを呼べ」


王様の命令に、控えていた侍従が一礼をして部屋を出ていった。

ゴーシュじーちゃんのことだから、王宮の訓練場でハッスルしているんじゃないかな?

ゴーシュじーちゃんが来るまでは、気になったことをいろいろ質問してみようと思う。


「ライナスていこくは、ルノハークのたいさくは取っているのですか?」


聖獣の力があるとはいえ、逃げ込んでくる魔物とかはどうしているのだろうか?


「ライナスの国内において、ルノハークと思われる集団の行動は確認されていないようなの。ただ、一時期から魔物の出現が増えたそうで、大規模な討伐を行ったと」


ライナス帝国の軍事力はラーシア大陸最大とも言われている。

恐らく、容赦ない討伐だったに違いない。

しかし、それによってライナス帝国内の生態系のバランスは保たれるかもしれないな。

ただ、他国がライナス帝国を頼り、それらを抱えるとなると、正常な生態系でも生産は追いつかないだろうなぁ。


「ルノハークについては、陛下にお願いして調べてもらっているので、もう少し待ってね」


ん?陛下?どこの??

…ライナス帝国の皇帝が動いているってことですかね?

今さらだが、すっげー大事になってきた!!


「はい。あと、イクゥ国に行っている聖獣様って、水の聖獣様ですか?」


「えぇ。サチェ様が父の、太上(たいじょう)皇帝の聖獣様で、皇太后である母は地虎(ちこ)のカイディーテ様よ」


地虎ですと!!

地虎といえば、天虎(てんこ)であるラース君とは対をなす存在!

めちゃくちゃ会いたい!!


「ライナス帝国に遊びに行くときは、一緒に行きましょう」


興奮した私を、微笑ましそうに見た王妃様が提案してくれた。


「リリーナ様、お戯れはそこまでで」


はいと返事をする前に、ママンが王妃様に釘を刺した。


「あら、残念」


残念そうには見えないが、何が起こっているのかな?


「ネマ、貴女はもう少し自覚を持ちましょう。愛し子と判明した以上、わたくしたちが敬愛する王族も、もちろん他国も貴女の力を欲しているのですから」


敬愛すると言いながら、棘があるのだが大丈夫か?

ん?一緒に行こうって、もしかしてヴィの嫁としてってことだったのか!?

なんて恐ろしいんだ!

しかも、ママンの言い方だと、ライナス帝国にも嫁に来いと言われるかもしれないってことだよね?

無理無理無理!!

それだったら、まだ魔物の女王になった方がマシだってば!!!


微妙な空気の中、ゴーシュじーちゃんが元気に登場してくれた。

おかげで、変な空気が吹き飛ばされたので、このときほどゴーシュじーちゃんをありがたいと思ったことはない!


「ゴーシュ・ゼルナン、陛下の命にて参上しましたぞ!」


「楽にしてよいぞ、ゴーシュ」


ゴーシュじーちゃんがいると、一気に部屋が狭くなったように感じる。

あと、温度も絶対上昇していると思う。


パパンが魔物を殺さないという発案の経緯について説明すると、ゴーシュじーちゃんはあっさりと同意した。


「騎士たちにはよい鍛錬になるだろう」


「たんれん?」


「殺す剣よりも、生かす剣のほうが数倍も難しいのだ」


ゴーシュじーちゃんの熱弁によると、バッサリ殺してしまうよりも、戦意を消失させつつ、致命傷を与えないようにする方が断然難しいらしい。

騎士たちには申し訳ないが、いろいろと頑張って欲しい。

ゴーシュじーちゃんが張り切って、各領地に駐在している騎士たちに稽古をつけに行くって言っているし…。


「では、ひとまず我が国での対策は、魔物の保護ということでよろしいですね」


一人盛り上がっているゴーシュじーちゃんそっちのけで、パパンは王様に確認をする。


「ああ。法令の整備を頼むぞ」


「御意に」


パパンと大臣ズが家臣の礼を取った。

なんか、格好いいぞ!


「おとー様、かっこいいね!」


ママンの耳元でこっそり話す。

ママンも綺麗な笑顔で、同意してくれた。


「えぇ。働いている姿は格好いいわよね」


パパンの株が上がったことは内緒にしておこう。

でないと、すぐに残念なパパンになってしまうから。

まぁ、残念なパパンも好きだけどね。


パパン、ようやく娘にいいところを見せられた!

ちょびっとだけだが(笑)


あと、名前だけだが、地虎のカイディーテも出せた( ̄▽ ̄)

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