サザール老が来た!
最後の部分を改稿しました。2017.05.29
暇を解消するために、王宮で森鬼の紹介をしまくった。
だが、残念なことに、森鬼は動物にビビられまくるのだ。
獣舎に行けば、ワズも近づいてこず、鳥たちは飛び立ち、犬たちは尻尾を丸めて後ずさる。
本能で、森鬼が強い魔物だとわかったようだ。
仕方ないので、私が獣舎で遊ぶときは、離れて見守ってもらうことにした。
離れていても、みんな森鬼を気にしていたので、これは慣れてもらうしかないな。
そして、レスティンを始め、獣騎士たちは森鬼に優しかった。
動物に嫌われる体質だと思ったらしく、餌で仲良くなろう作戦とか、いろいろと手を尽くしてくれた。
しかし、動物の本能は、餌よりも命!
うん、これはもう、どうしようもないさ。
同じことが、魔術研究所の三階、魔法生物局でも起こった。
飼育されている小動物たちが、ゲージの奥隅に固まり、カタカタと震えているのだ。
これには、どちらも可哀想だと思い、早々に退去した。
ついでに、オリヴィエ姉ちゃんやゴーシュじーちゃんにも紹介しといた。
ジーン兄ちゃんは国内におらず、サンラス兄ちゃんは忙しいのか捕まらなかった。
「あら。いい男じゃない。ようやく、デールも護衛を認めたのね。もう、遅いのよ!」
と、オリヴィエ姉ちゃんは森鬼を褒め、パパンに対してプリプリと怒り出す。
オリヴィエ姉ちゃんは、以前から私に護衛をつけるよう進言していたようだ。
そして、オリヴィエ姉ちゃんは森鬼の角には何も触れず去っていった。
…オリヴィエ姉ちゃん、森鬼の正体知っているのかな?
うーん、わからん。
あとで、パパンに聞いてみよう!
ゴーシュじーちゃんは、やはり、ゴーシュじーちゃんだった。
「どのくらい強いのか、手合わせ願おうか」
問答無用で訓練場に連れていかれ、刃を潰した剣を渡される森鬼。
森鬼、剣術できるのかしら?
「温いわっ!!」
ゴーシュじーちゃんが速攻で仕掛けてくる。
森鬼も頑張って受けようとするが、まぁ、ゴーシュじーちゃんに敵うわけもなく。
ドガンッと大きな音がして、森鬼が吹っ飛ばされた。
「くっ…」
痛みを堪えているのか、森鬼の表情が歪む。
初めて見たな、あんな表情。
「弱いな。デールも、どうしてこんなやつをネマの護衛にしたんだ?」
いや、まぁ、私が名前を付けちゃったからなんだけどね。
「森鬼はけんをさわったことないのに…。ゴーシュじーちゃん、ひどい」
「ひ、酷い!?」
なんか知らんが、ショックを受けているゴーシュじーちゃん。
ど素人をぶっ飛ばす玄人は、十分に酷いだろ。
「ならば、お前の得意な得物でやるか?」
ゴーシュじーちゃんが森鬼に問うと、立ち上がった森鬼は剣を捨て、身構える。
「体術か。面白い!」
体術と聞いて連想するのは格闘技だろうか?
この大陸における体術とは、素手ならなんでもありなものだ。
殴る蹴るぶん投げる、踏みつけようが、目潰ししようが、急所を狙おうが、スポーツではないので当たり前だけど。
普通は短剣と合わせて使う場合が多いらしいが、森鬼はガチの素手である。
まぁ、丈夫な爪が武器になることもあるが…。
ゴーシュじーちゃんもノリノリで森鬼の相手をするが、ガツッとか、ドゴッとか、痛そうな音が途切れない。
受けて流してかわして、パンチにキックに取っ組み合いと、楽しそうだねぇ。
最初は見ていても、ハラハラして面白かったけど、こうも決着がつかないと飽きてくる。
激しい肉弾戦に、徐々に観客が増え出していた。
訓練しに来た近衛騎士たちが、訓練そっちのけで観戦している。
そこだーとか、やっちまえーって声も上がる。
男性って、こういうの好きだよなぁって思っていると、ようやく決着がついたようだ。
ゴーシュじーちゃんの剛腕ボディーブローが、森鬼の鳩尾にクリーンヒット。
森鬼は体をくの字に曲げたまま、後ろに飛んでいく。
これで、ゴーシュじーちゃんが人間ではないと証明されたな。
謎の進化をとげた森鬼を、倒しちゃうのだから。
…あ、ひょっとして、森鬼は手加減してたりするのかな?
というか、双方本気じゃなかったりしたら…。
やめよう。考えるだけで恐ろしい。
「体術はなかなかだが、ネマを守るには弱い!」
え!?
私、どんな目にあうと思われてるの?
ぶっちゃけ、命を狙われるようなことは…あぁぁ!
ルノハークか!!
でも、狙いは私じゃないよ、たぶん森鬼だよ。
「王宮に来たら、必ずここへ来い。儂が鍛えてやるぞ!」
「…わかった。お前を倒す」
あれ?森鬼もマジ顔になっているけど、ゴーシュじーちゃんに吹っ飛ばされたのが悔しかったのか?
拳を交えた者同士にしかわからない何かがあるのか、男同士の友情!みたいな場面になっている。
周りの近衛騎士たちも、森鬼を褒め、ゴーシュじーちゃんを敬い、異様な熱気を放っていた。
訓練はどうした?サボってていいのか?
森鬼は、この訓練場に通うことになりそうだな。
あ、森鬼が訓練場にいる間に、獣舎に行けばいいのか!
そうしたら、動物たちも怯えなくてすむな。
そんなこんなで、王宮通いをしていたのだが、今日はお客様が来るのでお家にいなさいと言われた。
私にお客様って、心当たりないのだが、誰なんだろう?
ママンと一緒にお出迎えしたお客様は、サザール老だった。
相変わらず、フード付きのローブに杖という、魔法使いな格好だった。
「サザール先生。ようこそ、おいでくださいました」
サザール老を応接室に案内すると、パウルがお茶の用意をしてきた。
お茶菓子は何かなぁって待っていると、緑色した四角い物体が…。
見た目は抹茶羊羹な感じだが、果たして味はどうなのだろう?
「先生のお好きなクーペラを用意いたしました。どうぞ、召し上がってください」
「さすが、セルリアじゃな!儂はこれには目がなくてな」
そう言って、嬉しそうに食べ始めるサザール老。
なんかこう、ガシェ王国一の魔術師には見えない。どちらかというと、縁側でお茶をすするお爺ちゃんって感じ。
「それで、お手紙でお願いしておりました件ですが…」
「なぁに、焦らずともよい。今日はこれを見せに来た」
テーブルの上に広げられたのは、何かの設計図だった。
魔術研究所の研究員が描いていたものに、雰囲気が似ている。
魔道具の設計図かな?
「まだ試作段階ではあるが、お主の要望はほぼ詰め込んである」
真剣な眼差しで、設計図を見つめるママン。
ちなみに、私には見てもわからない。
「…これだと、魔法の無効化はできないように思うのですけれど」
「そうだな。これは魔法を散らすものではなく、同じ威力の魔法で相殺するものといった方が正しいかの」
よくわからない専門用語で説明されるが、とりあえずわかったことは、魔道具であるということだ!
ちゃんと、ママンが私にも理解できるように教えてくれたので、大体はわかったと思う。
ある一定以上の威力を持った攻撃を相殺する魔道具であるということ。
この魔道具は一回しか使えないようにし、相殺が発動した段階で相手に負けたことになる。
そうすれば、冒険者も魔物も死ぬことはない。
そして、コストの面を考えると、中級魔法を相殺できるくらいが限度らしい。
上級魔術師の新米冒険者が来たらどうするのか。
レイティモ山で使える魔法を中級までと定めたとしても、パニックを起こしたりして、無意識に上級魔法を使わないとも限らない。
あと、物理攻撃がどうなるのか。
一定の威力を相殺できるとして、それ以下の力で何回も攻撃されれば、相応のダメージを食らうと思うんだ。
疑問点をいくつかサザール老に質問してみた。
「ふむ。威力の低い攻撃とな」
と言ったっきり、サザール老は黙り込んでしまった。
ママンも何も言わないので、とりあえず目の前のお菓子を食べていてもいいかな?
この緑色した、謎の四角い物体が気になってしょうがないのだよ。
抹茶味の水羊羹みたいに、鮮やかでぷるんとした感じなのだが、フォークを入れると意外に弾力があった。
一口サイズに切り分けて、口に入れると…。
あ、甘くないだと!!
いや、微かに甘みはあるのだが、どちらかといえばしょっぱい。
しょっぱいんだけども、お茶に合う。
なんという不思議な食べ物なんだ!!
クーペラを食べたあとにお茶を飲むと、口の中でお茶の味や香りが引き立ち、最後に微かな甘みだけが残るという。まさに二度美味しいが味わえる食べ物だ。
「そうか。武器による攻撃は、瞬間的な力よりも、継続的に打撃を与えることができる。しかし、攻撃が通らなければ意味がない。とするとだ…」
いきなりサザール老がしゃべり出したが、どうやら独り言みたいだ。
一撃必殺みたいなものは防げるが、どうも通常攻撃は難しいみたいだ。
そもそも、攻撃が通じているという感触がなければ、経験を重ねたとは言えないか。
てことは、勝負には怪我が避けられないというわけだが、それで死ぬということを回避するには結局どうしたらいいんだ?
ゲームみたいに、倒したら消えて、アイテムを落とすってことはできないから…。
あれ?
待てよ。サザール老って、文様魔法の第一人者とかだったよね?
文様魔法でなら、転移魔法が使えるよね?
「サザール老、てんいまほうを使ってできませんか?」
「…転移魔法を?」
王宮や大きな街にある転移魔法陣は、長い距離と一定の人数を一気に運ぶから、あんな大きなものになっていると仮定すれば、もっと小型化できるはずだ。
いや、違うな。技術的には問題なくても、治安や政治的な意味で、小さいものを普及させたくないのか。
「山の中に、てんいのまほうじんをいくつも作って、自分たちでにげてもらうのはどうですか?」
「つまりは、即死するような攻撃はこの魔道具で回避させ、威力の弱いものを受けた場合は、状況に応じて退避させるということか?」
「そうです。けっきょくは、おのれを守るのはおのれということです」
魔法陣の周りに結界を張って、魔法陣を壊したり、逃げ込んだ者に攻撃できないようにすればいけると思うんだよね。
逃げて生き延びることって、冒険者には必要なスキルだと思うし。
「だが、引くことを知らぬ馬鹿がおるだろう。それはどうするかね?」
は!
そうだよね。いるよね、そういうタイプ。
負けを認められない、面倒臭いやつ。
どうしよう…。
HPバーみたいなの、作れないかな?
受けたダメージを数値化して、規定の数値になったら、音で教えるとか…。
それとも、バトルを時間制にする…は、ダメだな。
うーん、困ったぞ!
「人が持つせいめい力みたいなものを、見えるようにできませんか?」
「それは難しいな」
ですよねー。
となるとだ…。
「ネマ、焦ってはいけませんよ。一度に全部を解決することはできません。まずは、一つずつ、実現させていくのです」
なるほど。
ママンの言うことはごもっともだ。
「転移の魔法陣を、新たに設置するのであれば、陛下の許可が必要です。それに、短い距離でとなると、魔法構造も変えなければならないの」
既存の魔法構造を流用というわけにはいかないのか。
王様の許可は、ママンにお願いすればすんなりといきそうだが。
「とりあえず、使えそうな魔法がないか、調べておくわ」
「お願いします!」
この件は、ママンとサザール老に任せた方がよさそうだ。
簡単な魔法の知識しかない私では、助けにもならないだろうし。
「短い距離の転移魔法は儂に任せておけ。セルリアには、防御魔法を中心に、無属性魔法をあたるとよいだろう」
「承知いたしましたわ」
「して、次の問題だが…」
問題が山積みすぎて、どの問題かがわからない。
私が首を傾げると、サザール老は優しく微笑んでくれた。
「魔物たちが自分の判断で逃げるとなれば、冒険者にとっては旨みがない。だが、自分たちが捕まれば、少々厳しい決まり事がある。不公平ではないか?」
…確かにそうだな。
冒険者側にペナルティがあるのに、魔物側には何もない。
逃げるときに、物を落とすのはどうか?と提案された。
ふむ。ドロップアイテムということか?
いや、倒したわけではないので、これで見逃して、という賄賂に近いのか。
冒険者がアイテムに釣られれば、魔物たちも逃げやすくなるよね?
そうすると、アイテムを用意するだけでも、凄くお金がかかりそうなのだが…。
「あら。簡単に用意できるものでいいのよ」
ママンが、懸念事項を一蹴した。
必ずしも、冒険者のペナルティと同等の対価を用意することはないと。
ママン曰く、小規模のゴブリンの群れを討伐する報酬価格が平均で銀一枚。
十匹から二十匹を退治して、一万円くらいってことか。
それならば、傷薬を一匹当たり十個とかでも問題はない。
さらに、傷薬を百個集めると、高い薬と交換もできるというふうにすれば、冒険者側にも多少は旨みが出てくる。
そして、ママンの考えはそれだけじゃなかった。
薬系ならば、薬草集めの依頼を冒険者組合に出す。
そうすれば、新人の冒険者たちに依頼が行き渡り、ある程度すれば、シアナ計画を利用するくらいに成長するだろうと。
集められた薬草は、薬師組合に依頼して薬にしてもらう。それを、逃げアイテムに使うというわけだ。
「でもそれだと、高くなっちゃうよ?」
依頼を出すということは、冒険者への報酬と、組合への依頼料がかかる。
よって、コストはかなりかかる計算になるのだが。
最初は難しいとしても、できるだけ赤字にはしたくないし。
「そうね。でも、最初を出し惜しみすると、よいものなどできなくてよ?」
うーん、一理あるのか?
それとも、領主とはそういう考え方をするものなのか?
経営者だったら、できるだけコストは下げたいし、経費だって抑えたいって思うんじゃないかな?
「この件は、デールにも相談してみましょう」
そうだな。
お金を出すのはパパンなんだし、領主様の意見を聞いておかないとね。
今日出た問題点は、全部がお持ち帰り案件となってしまった。
魔道具についてはサザール老が、魔法についてはママンが、アイテムについてはパパンと要相談。
これって、進んでいるんだよね?
なんか、実感がない。
でも、急いては事を仕損じる、ともいうし、気長にやっていくしかないんだろうけど。
パパンが帰ってきて、家族会議を開いたところ、今さらそこを気にするの?みたいなリアクションが返ってきた。
「どうせお金をかけるのなら、地域や協力者に利益を返せるようにする方がいいとは思わないかい?」
つまりは、各組合にお金が落ちるようにした方がいいってことか?
それって、癒着っていわないか??
「わるいことじゃないの?」
「ネマが何を想像しているのか、なんとなくわかるが、逆を想像してごらん」
逆!?
逆っていうと…。
傷薬を自分たちで用意するってこと?
ゴブリンやコボルトたちに薬草を集めさせる。
それを癒しの氏が傷薬にする。
元手がかかってないから、タダ同然だね。
「誰が作ったのかわからない薬が、冒険者たちの手に渡る。数が多ければ、売ってしまう冒険者もいるだろう」
あっ!そういうことか!!
結果的に、薬師も薬草を探す冒険者も、仕事が減るってことだ!
それに、薬師組合の畑を荒らすことにもなるのか。
なるほど、多少お金がかかっても、雇用と生産を生み出す方が、円滑に回ることもあるってことか。
「おとー様、すごい!!」
さすがに一国の宰相なだけある。
というか、目先の利益だけで考えてはダメなんだな。
「これだけで理解できるネマも凄いよ。ネマは偉いな」
パパンを褒めたら、褒め返しがきた。
なんかこそばゆいぞ!
「だが、このシアナ計画に使われるお金は、領民から預かっている大切なものだ。我が領地をよりよくするために、どういうふうに使うのか、しっかりと考えないといけないよ」
私はゴブリンやコボルトたちのことだけでなく、領民のことも考慮して、シアナ計画をつめていかなければならないんだね。
そうすると、やっぱり大事なのは赤字を出さないことだと思うんだ。
あと、領民に還元できることは、雇用は地元を優先するとか?
何ができるのかは、パパンに相談して決めていくしかなさそうだな。
久しぶりに頭を使ったおかげか、その日の夜はぐっすりと眠れた。
…いや、いつもぐっすり眠れてたわ。
朝ご飯を食べたあと、今日は何して遊ぼうかと考えていたら、パウルにお客様だと言われた。
はて?誰だろう??
「レスティン・オグマ様です」
珍しいな。レスティンがわざわざお家の方に来るなんて。
応接室へ向かうと、制服姿のレスティンがいた。
レスティンも作業服姿の方が多いから、格好よく見える!
制服マジックって凄いな!
「ネフェルティマ様、朝からお伺いして申し訳ございません」
「だいじょうぶ!今日はあそぶだけだし…」
何か、私がいつも遊んでいるような感じだな。
ちゃんと、お稽古事もあるんだよ?
今日はたまたま何も予定がないだけだからね?
「何かあったの?」
「えぇ。ノックスのことでご相談が」
おかしいな?
ノックスは定期的に訓練と健康診断を獣舎の方でやっているけれど、何も異常なしだったよ?
「そろそろ、長距離移動の訓練をノックスにさせてみてはどうでしょう?」
「ちょうきょり?」
「長距離を移動するには、持久力と狩りの能力が必要です。それに、しっかりとした帰巣本能を身につけるためにも、長距離飛行の訓練はしておいた方がいいと思うのです」
しかし、長距離ってことは、ノックスと離れるってことでしょう?
それに、危険もいっぱいあるかもしれないし…。
「今回の訓練には、ノックスと同じ時期に生まれた子たちが参加します。一匹ずつ、獣騎士が追跡するので、緊急事態が起これば、すぐに対処できます」
不安そうな顔をしていたのか、レスティンが訓練内容を丁寧に説明してくれた。
しかしだな、獣騎士の相棒の動物によっては見失うこともあると思うのだよ。
だって、相手は鳥だ。
空という、何も障害のない場所を飛ぶのだ。
地上には、山もあれば川もあり、そう簡単についていけるのか?
「そこは信用してもらうしかありません。相棒によっては、追跡が困難な地形もあるでしょうが、それを乗り越えられない者は獣騎士を名乗れませんからね」
レスティンが言うには、相棒は騎乗できる動物とは限らないそうだ。
レスティンの相棒はワズだと思っていたが、ナイトアウルにライパンサー、ランドウルフも相棒だとか。
つまり、優秀な獣騎士は相棒が複数いるってことか。
その相棒たちを駆使して、追跡を行うらしい。
獣騎士って、本当に大変な職業だな。
竜騎士は、お世話と巡回くらいしか見たことないが、いつ訓練しているんだろうね。
その長距離飛行訓練が、ノックスのためになるのなら、泣く泣く我慢するが…。
「ネフェルティマ様のご身分を考えると、ノックスには十分な訓練を受けさせておいた方がいいかと」
ノックスのためじゃなくて、私のためかぁ。
うーん…。
「強制ではありませんので、無理にとは言いません」
「少し、考えさせてもらってもいい?」
「もちろんです」
レスティンが帰ったあと、お庭で日向ぼっこしていたノックスを呼ぶ。
「ノックス、いっぱいお外とびたい?」
-ピィ?
聞いてみたものの、ノックスには理解できないようだ。
白もやってきて、みゅうっと鳴いた。
二匹を膝の上に乗せて、右手でノックスを、左手で白を撫でる。
一番の不安は、ノックスが怪我をしたりすることだ。
でも、私と同じ行動範囲のままというのも、ノックスに損をさせているんじゃないかと思う。
ノックスには翼があるのだから、外の世界を体験して、大空で自由を味わってもらいたい。
ノックスの寿命だって、人間ほど長くはないのだし、若くて体力のあるときに、いろいろと経験させた方がいいよね。
…そうだ!
森鬼にお願いして、精霊に守ってもらえばいいんだ!
はっ!森鬼はどこに行った!?
「ノックス、森鬼がどこにいるか知ってる?」
とりあえず、ノックスに聞いてみたら、ピィ!と返事があったので、知っているようだ。
では、案内してもらおう!
ノックスが向かった先は、お庭の片隅。
森鬼は何やら、トレーニングをしているようだ。
上半身裸でパンチを出したり、回し蹴りをしたりしている。
パンチでシュッて音がして、蹴りではブンッと重い音がしている。
これ、当たったら確実に飛んでいっちゃうやつだよね…。
-ピィー!
バレないように観察していたのに、ノックスが鳴き声で教えてしまったよ。
「主か」
バレてしまったのはしょうがない。
森鬼にノックスのことを説明して、精霊に守ってもらえるかどうか聞いてみる。
「生存競争には関われないが、それでもいいのか?」
えーっと、つまり、ノックスが他の動物に襲われても、助けることはできないってことだよね?
「じゃあ、何ならできるの?」
「ノックスが飛んでいるときに、風を使って補助するくらいだと言っているな」
前にラース君が使っていたのと似たようなことか。
自転車の電動アシストみたいな感じ?
でも、風の精霊に状況を教えてもらうことはできるよね。
あ。風の精霊って、意外とデンジャラスだった!
ノックスを補助しようとして、暴風が起こったりしたら…。
「まわりにひがいを出さずに、ちゃんとかげんできる?」
「………」
おぉーい、森鬼よ!そこで黙らないで!!
「水のナノもついていくから、任せておけと…」
森鬼の目には、どんなやりとりが映っているんだろう?
水の精霊の方が強いのかな?
うーん、精霊たちも謎だらけだな。
まぁ、精霊がついてくれていれば、ノックスに何かあっても、すぐに駆けつけることができるはず。
…でも、どうやって?
……ソルがいるじゃん!!
ソルにも協力をお願いしておこう。
もふもふがないと、執筆がすすまない…。
サザール老の部分と、森鬼の部分、執筆スピードが三倍くらい違った自分に苦笑。




