★2巻発売!お礼小話・朝の散歩
夜半過ぎから降り続いた雨も、朝日が昇るとともにやみ、雨雲も消えてしまったようだ。
鳥たちが元気よくさえずり、煩いほどだ。
おかげで、起こされるよりも早く起きてしまったじゃないか!
まぁ、鳥たちにクレームを言っても仕方ないので、こういう日はディーとお庭を散策するべし!
朝ご飯の前に、ディーを連れてお庭に出ると、雨の雫を纏った草花が、これでどうだ!と言わんばかりに生命力溢れる姿になっていた。
水分補給して、朝日というご飯を得て、元気いっぱいなようで何より。
散策の行き先は、ディーにお任せしてある。
ディーの日課は毎朝お庭のパトロールなので、ディーの後ろをゆっくりとついていく。
すると、アイルに出してもらったのか、プルーマも合流してきた。
「バギャー!」
プルーマも元気に翼を羽ばたかせて、挨拶らしきものをしてきた。
「プルーマ、おはよう」
ディーはプルーマの臭いを嗅ぎ、何かに納得してパトロールに戻る。
なんで臭いを嗅いだんだろうね?
時折、地面の臭いもクンクンしているので、何かを確認しているのかもしれない。
…プルーマが盗み食いしていないかとか?
一匹と一羽と一人で散策を続けていると、水鳥用の池の方に来た。
池には、今日も今日とてたくさんの水鳥たちが悠々と浮かんでいるのだが、池の片隅でディーが足を止めた。
ジッと何かを見つめているようだが、何かいるのかな?
ディーの視線の先を覗いてみると、そこには珍しいお客様がいた。
「たしか、ヘルメルラグだったっけ?」
背中に赤い色の線が入っている、青いカエルもどきだ。
このカエルもどき、変わっているのがその体だ。
顔が体に埋まっているんじゃないかと疑いたくなるほど、丸い。
赤い線が入っていなければ、青いスライムと言っても騙されるくらい丸い。
そして、手足が短いので、カエルのように飛び跳ねることができないし、地上の移動もカタツムリ並みに遅い。
つか、転がった方が速いとすら思う。
あと、何が珍しいって、我が家が鳥天国みたいになっているから、餌として狙われる昆虫や小動物が寄りつかなくなっていることだ。
カエルやトカゲの小さいのなんて、あっという間に食べられてしまう。
まぁ、庭師たちは、虫食い被害が減ったって喜んでいたけど。
「こんなところにいたら、食べられちゃうよ?」
「にゃーん」
…はい?
今、どこかでネコが鳴いた?
「にゃーん」
…目の前のカエルもどきが、にゃーんだと!?
合成着色料をふんだんに使った海外のお菓子のような見た目して、鳴き声がにゃーんだと!!
お前、それは詐欺というものではないかい?
にゃんにゃん詐欺だな!
「にゃんガエル君、どうしてここにいるの?」
「バギャー!!」
って、私が質問してるのに、プルーマ、食べようとするんじゃない!
「プルーマ、めっ!」
「ギャ?」
どうしてって顔をしてもダメ。
貴方のご飯は、別に用意してあるでしょ!
って、にゃんガエル君が、ブルブル震えてんだけど!!
プルーマにビックリしすぎた?
「ぶにゃーーーー!!!」
突然、にゃんガエル君が大きく鳴いたと思ったら、口から火を吹いたー!?
「ぶへっ」
後ろにグイッと引っ張られ、尻もちをつく。
雨に濡れた地面のおかげで、ワンピースが冷たくなっていくのがわかった。
なんか、お漏らししたみたいで、気色悪い…。
後ろを振り向くと、ディーが服を引っ張ったようだ。
私を守ろうとしてくれたんだよね。
「ディー、ありがとう!」
ディーを思いっきり抱きしめて、感謝を伝える。
そして、にゃんガエル君に視線を戻すと、そこには何もなかった。
「にげたな!」
プルーマもキョロキョロと獲物を探しているようだが、結局、見つけることはできなかった。
私はワンピースを汚してしまったため、着替えに戻ると、お姉ちゃんに見つかってしまった。
目に見えて驚いているのがわかったので、心配かけたかな?と思ったら、誰かに襲われたのかと大騒ぎし始めた。
そっちだったか!!
「ちがうよ!変な子がいたんだよ」
「変な子?やっぱり、侵入者ね!」
今にも魔法をぶっ放しそうなお姉ちゃんを、マージェスが宥める。
「それで、何がいたのかな?」
そんなお姉ちゃんをよそに、お兄ちゃんが聞いてくれたので、先ほどの出来事を話す。
「そうか。ネマには幸運もあるみたいだね」
「こううん?」
「ネマが見つけたのはヘルメルラグではなく、ワプスという弱い魔物だよ」
…魔物!?
魔物が我が家に入れたの?
…あれ?そういや、森鬼もグラーティアも普通に入れてたわ。
お兄ちゃん曰く、ワプスという魔物は、自分で移動ができないので、大きな鳥や飛竜なんかに掴まっているらしい。
我が家に現れたにゃんガエル君も、鳥が運んできたか、振り落とされたかだろうと。
「火をふいたのはなぜ?」
「ワプスの背中が赤いのは、火の魔力を体内に取り入れているからなんだ。そして、危険なときに火を放つんだけど、距離も短いから驚かせる効果しかないんだよ」
ほへー。
変わった魔物もいたもんだ。
「それで、ワプスはいることがわかっているのに、なかなか遭遇できない希少種で、ワプスを見ると幸運が訪れると言われているんだ」
しかも、ワプスだと思ったら、ヘルメルラグだったというパターンが多いらしい。
魔物なのに、四つ葉のクローバーみたいな扱いだな。
ふむ。なんにせよ、ラッキーなものが見れたってことで、早起きしたかいはあったな!
幸運って何かな?
珍しいもふもふが味わえるとかかな?
何が起きるか、楽しみだな!!
カエルの可愛さを表したかったのですが、どうも変な子になってしまいました。
プルーマに食べられると思って逃げ出したにゃんガエル。
きっと今頃は鳥に掴まって、脱出していることでしょう。




