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ついに温泉か!?

今回、半ばくらいで、少しだけグロテスクな部分があるので、ご注意ください。

私は思った。

森鬼は謎の進化をとげ、精霊術を使える魔物である。

グラーティアは特異体の魔物である。もちろん、能力は謎に包まれている。

(かい)はスーパーレアな魔物である。わかっている能力だけでもチートと言えるが、成長したらどうなるのか謎である。

だが、一番の謎はスライムの生態だということに気づいたのだ!


今わかっているだけでも、生息エリアによって異なる能力、寄生タイプもいれば毒タイプもいる。物理攻撃が効きづらいのは共通だが、魔法攻撃に強いものもいる。親スライムともなれば、あらゆる物質の分解能力、分析能力を持つようになる。

そして、変幻自在な体。80センチくらいの球体がどうやったら私の一口サイズになるのか…。体積や密度までも自在なのかもしれないが、いまだ謎である。

(はい)、銀鼠、薄墨、(こく)の四体が私の一口って…。考えたら負けなような気がしてきた。

それより、この子たちのお腹減った攻撃がハンパない。

ということで、今日のところは帰ることにしよう。

でも、その前にセイレーンのお姉様方にお願いが。


「コボルトのむれがこの山に来るけど、食べないでね」


「お嬢さんのお友達かしら?」


友達ではないと思うが…。


「うーん、なかまかな?」


「あら、いいわねぇ。種族を越えた友情!愛情もあったらなおさら。ふふふ」


私を捕まえたお姉様がこの群れのリーダーっぽいが、なんだか前世で交流のあった腐がつくお姉様たちと似ているのは気のせいだろうか?


「でも、いい男がいたら食べない自信ないわよ?」


犬顔でもふもふしたイケメンがいっぱいいますね。

でも、食べちゃダメです。特にハンレイ先生は絶対にダメです!


「だめなのー!」


「お嬢さんがそこまで言うなら我慢するわ。でも、どうしてこの山なの?」


「今、まものはなぞのしゅうだんにおわれているの」


私のあっちこっちに飛びまくる説明に、お兄ちゃんやヴィが補足を入れつつ、ゴブリンやコボルトのこと、ルノハークのことを話した。

話の流れで、シアナ計画のことが出ると、お姉様が面白そうと乗り気になったのは驚いた。

ぜひとも、この山でやってほしいと。


「ほかのまものやにんげんがうろうろしてもいいの?」


「私たちしかいなくて退屈していたからちょうどいいわ。それに、冒険者ともなれば美味しそうじゃない?」


セイレーンにとっては、メリットが大きいということか?

レイティモ山でシアナ計画をするとなると、宿泊施設などはジグ村に作ることになるな。

海側は民家が並んでいるので、開発するなら山側だが、開拓できそうな土地はいっぱいある。

お姉様が言った、温かい水が本当にあるなら、王立魔術研究所の面々も引っ張りだして、転移魔法陣と源泉を引く仕組みを作ってもらわないとな。

山自体も、険しい場所も程よくあるし、お姉様方が協力してくれるなら、洞窟を迷宮(ダンジョン)化にすることも可能かもしれない。

村長の家に戻ったら、お兄ちゃんたちとじっくり相談することにしよう。


セイレーンのお姉様方と海、雫には明日また来ると約束して別れた。

帰りは海の洞窟からで、海が案内してくれたが、水没した洞窟というのも趣きがあって綺麗だった。

お姉様方は、明日こそ温かい水の洞窟に連れていってくれると言っていたので楽しみだ。


村長の家に戻ると、まずはご飯。

灰たちが煩いのだ。早くご飯食べないと、私が食われそうだ。

今日の夕飯は、さらわれた子供が無事に帰ってきたのと、魔物事件が解決したお祝いでご馳走でした!

大きな魚丸々一匹のお刺身と、白身魚の炊き込みご飯、貝と海藻の和え物、伊勢海老もどきの味噌焼き、極めつけはガードラの兜焼き!!

マグロより大きな頭が、ドーンと登場した。

おっと、よだれが…。では、いっただっきまーす!!


ひたすら食べた。今までにないってくらい食べた。ヴィが呆れた顔していたが気にしない。

灰たちの分まで食べないと、私の体に栄養が回らなくなってしまう。この歳で発育不良とかマジ勘弁ですよ。

あれだけ煩かった灰たちも今は大人しい。この子たちもご飯で忙しいのだろう。


お腹が落ち着いたら、みんなで会議です。

騎士さんたちも参加なのは、問答無用でシアナ計画に加えられているから。誰のせいかって?

もちろん、ヴィです。鶴の一声というか、俺たちだけじゃ、ネマの面倒は見きれんと言いやがった。それに対して、騎士さんたちは皆苦笑していたのはなぜだ!?


元々、レイティモ山は好条件が揃っているので、決定は早かった。

決め手となったのは、地元民が山に入らないことだ。生活の場ではないので、説得もしやすいだろうと。

案内役だった猟師さんは困るかもしれないが、アドバイザー的な役割で雇うのもありだろう。

あの山に詳しいことは間違いないのだから。

ということで、早速村長さんに話を持っていった。

同時進行で、パパンにもお手紙出しておいた。

お兄ちゃんがなんて書いたのかわからないが、ついでなので、ママンにも手紙書いた。内容のほとんどがご飯についてだったのはご愛嬌だ。


「山に他の魔物が住みついて、我々に危険はありませんか?」


村長さんの不安はごもっともである。


「大丈夫ですよ。山を囲うように結界を張りますから、周りの村に魔物が出現するということはありません」


村長さんのお相手はお兄ちゃんがしてくれる。私じゃ説得力ないもんね。


「最初のうちは、我が家の方から補助金を支給します。シアナ計画に関わる費用はすべて我が家の方から出しますので、村には負担をかけません。また、宿泊施設、観光施設などを充実させたいと思っていますので、軌道に乗れば村への利益も増えると思います」


そういった施設に、とれたて新鮮魚介を卸してもらったり、干物などもお土産として販売すれば村は潤うと思う。

お土産に関しては、こちらもなにか企画すると思うがな。

観光としては、遊覧船とかもいいかもしれない。船乗りはいっぱいいるんだし、人気が出れば、仕事を求めて移住者も出てくるだろう。


「私だけでは答えを出せませんので、二日ほどお待ちいただけますか?」


「大丈夫です」


村長さんは明日、村人全員集めて集会を開くそうだ。そこで、シアナ計画に参加するかどうかを決めると。

よいお返事、お待ちしております。


そして翌日。

村長さんたちが集会している間、私たちはセイレーンの元へ行くことにしたのだが、村を出る前に驚くことがあった。


「ネマッ!!!」


むぎゅーっと容赦ない力で拘束されたのだ。

ちょっ、背骨がギシギシいってる!

骨が折れそう!ギブギブ!!


「カーナ、ネマを離してあげて」


お兄ちゃんの言葉で、我に返ったお姉ちゃん。

相変わらず美しい(かんばせ)で、ごめんなさいと謝られた。


「おねー様!」


そんなお姉ちゃんが可愛らしいので、こちらからぎゅーと抱きつく。

これならマウントを取られることもあるまい。


「ネマ、会いたかったわ」


日々慌ただしかったので、そんなに時間が経っていないと思っていたが、お家を出てからゆうに十日以上すぎていたことに気づいた。


「カーナ、兄には何もないのかな?」


「ふふふ。もちろん、お兄様も会いたかったですわよ?」


「ネマとの温度差に、僕は泣きそうだよ」


「あら。可愛いネマの方が大事に決まってます。だって、お兄様は殺しても死なないので、心配のしがいがないですもの」


「それはカーナにも当てはまるね」


「ふふふ。ほら、お兄様にとっても、ネマが一番でしょう?」


「…お前ら…」


通常運転な兄妹に、ヴィが頭を抱えた。

この二人が揃うと、シスコンぶりに拍車がかかるのだ。諦めろ、ヴィ。


「おねー様、ひとりできたの?」


「いいえ。フィリップ小父様たちに連れてきていただいたの」


フィリップおじさん?誰だっけ?


「忘れられたかと思ったぜ」


豪快に笑いながら登場した知らない人。


「フィリップか。息災だったか?」


「お久しぶりです、殿下」


フィリップと呼ばれたおじさんは、臣下の礼を取った。

ってことは、貴族なのかな?

他の連れっぽい人たちは敬愛の礼だし。


「礼はいい。たまには、父上にも顔を見せてやれ」


「いやぁ、王宮の固っ苦しい雰囲気がどうも…」


「まったく、相変わらずだな」


「フィリップ小父上、お元気そうで」


「おぉ!ラルフか!!セルリアに似て、美人っぷりが上がったな」


うーん。家族もヴィもおじさんのことを知っているみたいだが、知らない私はいつまで蚊帳の外にいればいいのだろうか?


「ネフェルティマも大きくなったな!」


あり?私のことご存知で?


「前に会ったときは、こんなに小さかったのにな!」


こんなにのところで、人差し指と親指で表していたが、それじゃアリンコサイズですから!

さすがにそんな小さかったことはない!!

つか、おっさんのテンションが高すぎてついていけない。


お兄ちゃんの後ろに隠れて様子を見る。


「フィリップ、こんな小さい子を驚かしちゃだめよ」


お連れの女性の方が注意してくれた。

女性の方はどこかお兄ちゃんに似た雰囲気があり、なんだかホッとするな。


「すまんすまん。フィリップという。デールラントの友人だ」


なんと!パパンに友達がいたのか!?

大臣ズ以外に仲良くしている人がいるとは思わなかった…。大臣ズは友達というより親戚に近いけど。


「フィリップ小父上はちょっとお年を召しているけど、父上のご学友だったんだよ。冒険者をやりたくてシュンベル侯爵家を出ちゃったけど」


「おいおい。悪意を感じる言い方だな」


「ネマを驚かすからですよ」


つまり、冒険者やりたくて貴族やめちゃったってこと?

しかも、シュンベル侯爵家といえば、私でも知っている名家じゃないか!


「おじさまたち、ぼうけん者なの?」


「そうだぞ。紫のガンダルと呼ばれている」


ほぉ。ガンダルと言えば、初代国王の愛剣ですな。

名剣ガンダル。当時最高の職人と謳われたドワーフが鍛えた大剣で、初代国王が死すと砕け散ったという伝説の武器ですな。

…てか、紫だと!!


「フィリップ小父上たちはとてもお強いよ。伝説と言われる黒に一番近い方たちだ」


おっと、生きる伝説がここにもいたか。

もうチートはお腹いっぱいだぜ。

ん?待てよ…。冒険者ってことは、彼らがいたらあの子たちヤられちゃうんじゃなかろうか?


「おにー様…」


私の不安げな顔でわかってくれたのか、お兄ちゃんは大丈夫だよと頭を撫でた。


「ヴィル」


そして、ヴィに振ると、ヴィも心得たと頷いた。

言葉がなくとも伝わるって凄いな。


「カーナディア・オスフェ、紫のガンダル。これから言うことは極秘扱いだ。他言しないと名に誓ってもらう」


名に誓うほど重要なことだと理解した面々に緊張が走る。

各々が名に誓うと、ヴィが現状を説明した。

パパンから聞いていたのか、特に驚いた様子もなく、みんな黙って聞いている。

さすがに、森鬼やグラーティアといった魔物たちの話になると驚いていたけど。


「よって、ネフェルティマの契約下にある魔物を不当に扱わないと重ねて名に誓ってくれ」


そこまでする必要があるかはわからないが、冒険者といえば魔物を退治するイメージなので、殺せないとなれば安心できる。


「やっぱりネマは創造の神に愛されているのね!」


と、お姉ちゃんは大喜びしているが。

愛されている?遊ばれているの間違いじゃなくて??


「突拍子もない話だな…。そもそも、魔物と契約できるとは知らなかったぞ」


え?そうなの??

魔物使いとかいないの?


「どういった原理かはわからないがな。もしかすると、聖獣の恩恵が関係あるのかもしれん」


「聖獣の恩恵って、聖獣様とも契約しているのか!」


「あぁ。北の山脈に住まう炎竜殿だ。炎竜殿曰く、真名による契約ではないため、仮ということらしいが」


「…とんでもないな」


えぇー。ここに聖獣のご主人様いるじゃんよ。

私だけが特別みたいな言い方しないでもらえますかね。

ま、いいや。

それより、早く洞窟に行くよ!


「おねー様も、どうくつに行こう!キラキラしてて、とってもきれいなの!!」


「そうね。わたくしもスライムの赤ちゃん見てみたいわ」


「どうくつでね、たからものひろったの!」


洞窟で拾った、キラキラする石を見せた。


「まぁ!」


すると、お姉ちゃんの目もキラキラ光った。


「ネマ、その石を一つ貸してもらえる?」


「いいよ」


お姉ちゃんは石をじっくり観察し、なんかの魔道具に装着してしまった。


「質が違うのかしら?魔力の流れが…」


そして、自分の世界にどっぷりである。

おーい、帰ってこーい!


「ごめんなさい。でも、これがあれば、不可能だとされていた魔道具が可能になるかもしれないわ。これを早急にお母様に送っていただける?」


よくわからないが、ママンの役に立つのだろう。騎士さんにお願いして、私が拾ってきた石を全部送ってもらった。

この小さい転移魔法陣、便利だな。

ママンが何を作るのか、楽しみだね!


では、気をとりなおして、出発!

だが、今日はヴィに強制され、ラース君の背中での出発だった。

完璧にお荷物扱いだなこりゃ。ま、楽ちんだからいいけどね。


お姉ちゃんは森鬼が気になるのか、いろいろと質問してきた。

種族は何か、どこに住んでいたのか、どんな能力を持っているのかと。

森鬼はお姉ちゃんの相手をする気がなさそうなので、代わりに私が答えた。

さすがに、精霊術のことは内緒にしてもらったけどね。

おしゃべりしていると、時間が経つのがあっという間だ。

もう洞窟の入口に到着していた。

昨日、あれだけ往復したので、騎士さんたちが慣れたというのもあるだろうけど。


洞窟内もサクサク進めた。

フィリップおじさんたちは、冒険者なだけあってしっかりしていた。

お姉ちゃんが氷ゾーンで滑りそうになったが、すかさず森鬼が支えたので無事だった。

森鬼の気配りのよさは、本当にゴブリンなのかと問いたいくらいだ。


氷ゾーンをえっちらおっちら歩いていると、急にグラーティアが動き出した。


「グラーティア、どうしたの?」


そう問うと、グラーティアは牙をカチカチ鳴らした。お腹すいたって。

素早い動きで、私の肩から近くの氷の柱に飛び移る。

元々、寒い場所に生息しているからなのか、氷の上でも支障なく動けている。

どうするのかしばらく観察していると、グラーティアが一瞬消えたように見えた。

焦って探すと、グラーティアは何かを咥えているではないか!


「いつの間に…って!!」


グラーティアが咥えていたのは、潰れたヘビのように見えた。いや、薄い水色をしたツチノコだな、うん。グラーティアより少し大きいが、動かないところを見ると、ご愁傷様しているのだろうか?

まさかとは思うが、その子を食べるとか言うんじゃないだろうな…。

グラーティアの四対の眼は、獲物を捕らえた肉食獣のようにキラキラしている。

あー、うん。食べるのね。

思わぬところで弱肉強食を見せられ、心の中でツチノコさんに合掌する。次からは、グラーティアのご飯を増量しよう。

そしてグラーティア、私の頭の上でのご飯は許しません。森鬼の肩で食べなさい。

自分の体より大きな獲物をずりずり引っ張って私のもとへ戻ろうとするグラーティアを捕まえ、森鬼の肩に移す。

森鬼とグラーティアが見つめ合うと、森鬼の方が諦めたのか視線を外した。


つい、興味本位でグラーティアのご飯を観察していたのだが、この子が魔物であることを再認識する結果になった。

地球産の蜘蛛ならば、体外消化と言って、消化液を注入し、柔らかくなった部分から食べていく。

一方グラーティアはと言うと…。微かだが、バキバキとかグチャとか、スプラッターな音が聞こえてくる。

そのままムシャムシャしているのだろう。森鬼の肩が惨事になっていないことを祈る。

…そういえば、魔物じゃない蜘蛛は見たことないな。お家に帰ったら調べてみよう。


グラーティアのご飯に気を取られているうちに、セイレーンの洞窟へ到着した。


「やっと来たわね。あら、またいい男が増えてる!」


フィリップおじさんがロックオンされたようだ。


「本当にセイレーンに会えるとは…」


鼻の下伸びているけど、食べられないよう気をつけて!


「今日は、あたたかいお水のところに連れて行ってね!」


約束の温泉巡りである。

シアナ計画の三割くらいは、温泉にかかっていると言っても過言ではない!

かなり大所帯になっているが、昨日と同じく、水中でも息ができる魔法をかけ、お姉様方に先導される。

せっかくなので、(かい)も連れていこう。

と言うわけで、ちょっくら海たちがいる洞窟に寄り道だ。


幻想的な洞窟に、お姉ちゃんたちは感嘆の声を上げた。

しかし、お姉ちゃんはすぐに赤ちゃんスライムに突撃して行った。


「この子たち、可愛いですわ!」


そうでしょうとも!!

色とりどりの赤ちゃんたちは透明感もあり、光が入るとキラキラして、とても綺麗なのだ!

そして、大きさも(はく)より一回りは小さく、片手に乗るくらいしかない。


「…ご飯…」


そう呟いて、後ろから抱きついてきたのは海だ。

それを見たお姉ちゃんの雰囲気が変わった。


「ネマが可愛いから抱きつきたいのもわかるけれど、妹への不埒なまねは許しませんことよ?」


お姉ちゃんの周りに、ポッポッと炎が生まれる。

あ、これマズいやつだ!


「海、ちょっとはなれて」


「…いやだ」


嫌だじゃなくて、お姉ちゃんに黒焦げにされそうだから、言うこと聞こうね。


「あとで、いっぱいあげるから」


「…わかった」


ようやく海は離れたが、お姉ちゃんの怒りは収まらない。

そんなお姉ちゃんの気をそらしてくれたのは、赤ちゃんスライムたちだった。

ぷみょー、うきゅーと、変な鳴き声を出しながら、お姉ちゃんに群がる。

赤系、黄系、橙系が群がっているということは、お姉ちゃんの火の魔力に反応したのかな。


「まぁ!この子たち、魔法も食べるのね!」


ん?魔法を食べる??

初耳ですがな。


「おねー様、この子たち、まほうを食べてるの?」


「そのようね。すぐに発動できるよう準備していたのに、この子たちが食べてしまいましたわ」


なんてこった!

これでスライムの謎がまた増えたぞ。

(しずく)も白も、今まで魔法を食べるなんてことはなかったのに。

お姉ちゃんは魔法を食べる様子が気に入ったのか、次から次へと炎を出して、赤ちゃんスライムたちに与えている。

それが羨ましいのか、他の赤ちゃんスライムたちも鳴き出した。

どれか一匹、のーんという気が抜ける鳴き方をする子がいたが、どの子かわからなかった。

仕方ないので、お兄ちゃんと土の魔術師の騎士さんにお願いして、他の子たちにも魔法を食べさせるはめになった。


思わぬことで時間を取られてしまったので、急いで出発する。

私は海とお手て繋いで水中散歩だが、海が恍惚とした顔をしているので、もふもふ欲を食べているのだろう。

約束していたからいいけど、待てを覚えさせないといけないかも。


お、そろそろ温泉エリアかな?

周りの岩の色が変わってきたぞ。

黄色や赤、所々黒い岩肌。水が温かいとは感じないが、魔法で水温も感じないようにしてあるのでしょうがない。

水温の差でもあるのか、もやもやした場所もあり、ちょっと不思議な光景になっている。


水面近くになると、緑色の光が差し込み、黄色や赤い岩に当たり、柔らかなグラデーションを描いている。

ウキウキする気持ちを抑え、水面に顔を出すと。

そこは桃源郷のようだった。

立ち込める湯気の隙間から、仄かに光を放つ苔が絨毯のように広がり、オレンジがかった小さな光が天井に散りばめられている。それは星のようでもあり、イルミネーションのようでもある。


「ほぇぇぇぇ」


思ってもみなかった光景に、ポカンと口を開けたまま、天井の煌めきを見つめる。

お兄ちゃんに促され水から出ると、魔法を解除してもらう。

水面にはゆらゆらと湯気が出ているので温かいはず!

そーっと手を入れると、ちょっとぬるいかな。

ふむ、足湯でもしてみるか。


ワンピースの裾をたくし上げ、靴を脱ぎ、足をつける。


「ネマ、はしたないよ」


「おにー様も入ろう!きもちいいよ!!」


足をバタバタさせて、水飛沫を上げる。


「ここの水は温かいわよ」


お姉様も誘惑する。

みんなが戸惑っている中、お姉ちゃんが私の横に座って、足をつけた。


「あら。本当に気持ちいいわ!」


姉妹そろって、バシャバシャさせて遊ぶ。

お兄ちゃんも苦笑しながら、私の横に座り足をつけた。


「何だかほっとするね」


お兄ちゃんに続いてヴィが座ると、ヒールラン、ダナート、班長さんと続いた。

最終的には全員が座り、足をつけるという、面白い光景になった。


「これだけ広い風呂っていうのもいいな」


何て言っているけど、王宮のお風呂はかなり広いんだぜ!銭湯なんて目じゃないくらい広いし、サウナみたいなのもついている。


「景色も幻想的で素晴らしいしね」


なんとかしてこの温泉を引いて、露天風呂作りたいなぁ。景色のいい所にして、できれば海が見えるといいよね!

温泉と言えば、効能とかあるんだろうか?

温泉に溶け込んだ成分によって、効き目が違うんだよね。…成分なら、ひょっとして…。


温泉を手ですくい、一口飲んでみた。

味はなんとなく硬水に近い気がする。鉄臭いとか、しょっぱいとかもないし、お白湯だね。

さて、これを(こく)に分析してもらいましょう。


女神の癒し、女神の救い。

これは、お兄ちゃんが使う治癒魔法にもある。確か、癒しは軽度の外傷に効いて、救いが軽い病気に効くんだったかな?つまりは、治癒成分が入っているということだろう。

コロコス、ギルダン、ペェバン。

これは、紫のガンダルの紅一点、エリジーナさんが教えてくれた。

コロコス、ギルダンは薬草で、傷によく効くらしい。ゲーム風に言うなら、ポーションの原料ってことか。

そして、ペェバン。これは虫だって。魔蟲(まむし)じゃない、ちゃんとした昆虫で、この洞窟の天井に張りついているオレンジがかった小さな光の正体だ。

このペェバンは万病に効くらしく、十匹くらいを煎じて飲むと、どんな病気も治してしまうとか。治癒術師が不足している地域では、高値で取り引きされていて、冒険者にとっては美味しい虫なのである。

ってことは、死骸がこの温泉に落ちて、成分が抽出されたってことなのか?…死骸が浮いてたりしたらヤダな…。浄化の魔法かけたら、成分がなくなったりしないかな?今度実験してみよう。

そして最後のやつが問題だ。

創造神の涙…。

神様の涙だと?ありえん。

あやつが涙する姿なんて想像できない!!

つか、何が起こるのかも謎すぎる。

ヴィは、奇跡の一種ではないかと言っているが、要はわからないってことだよね?


こんな謎の成分が入っているが、治癒の湯と名づけて温泉作っても大丈夫かな?

うーん、まぁいいか。


私がカーナのテンションについていけません。

お兄ちゃん、助けて!!

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