ヘリオス伯爵の野望……なのか?
改めて、神様に話を聞かせて欲しいとお願いすると、その前にと、神様の方から質問を投げかけてきた。
『忘れられて久しい方法を使ってまで、私を呼んだ理由は何かな?』
確かに!神様が降臨したことにみんな大興奮で、呼び出した理由が疎かになってた!
あれ?でもなんで神様を呼び出すことにしたんだっけ?
そういえば、その理由を聞いていなかったと、ヘリオス伯爵の方を見やる。
「テメェに言いたい文句は山ほどあるが、オレがテメェを呼んだのは、今の世界を変えるためだ!」
『世界を変えると?』
「あぁ。今のライナス帝国は駄目だ。オレが……オレたちが目指した、どんな種族でも安全に暮らせる国じゃなくなっている。だから、新しい国を造る。今度こそ、混血だろうが、捨て子だろうが、差別されない国を!」
ヘリオス伯爵の言葉に、テオさんが反応した。
めったに表情を変えないテオさんが、苦しそうに顔を歪める。
ライナス帝国の前身となるライナス国をロスランが建国したのは、自分と同じような境遇で居場所がない者たちのため。
ヘリオス伯爵は、ライナス帝国を滅ぼすつもりで、今回のことを企んでいたということか。
「神ならわかるだろう?ライナス帝国を滅ぼし、新たな国を樹立させる方が望ましいことを」
神様の力は創造と破壊。
世界の創造主たる権限を使用すれば、世界の理があっても干渉できるのだろう。
過去、滅びた国々に神様が干渉していたのかはわからないけど。
『世界に必要であれば用意するし、不要であれば取り除く。しかし、私が関わらなくとも、ある程度は淘汰される。それが世界というものだ』
それを聞いて、学生時代に暗記させられた有名な古典を思い出す。
盛者必衰……どんなに栄えた国でも、いつかは滅びると神様は言いたいのだろう。
ライナス帝国もガシェ王国も……。
「最善は神から国造りの言質を得られればよかったが、神の降臨に成功したという実績があれば、どうにでもできる」
「どうにでも、だと?」
ヴィが怖い顔で問いかけると、ヘリオス伯爵は愉快だと言わんばかりに笑い声を上げた。
「そうだ、どうにでもだ。宗教、信仰、盲目になればなるほど、正常な判断ができなくなる」
そういった熱心な信者は洗脳状態と同じで、言われたことに疑問を抱きづらくなると言う。
そして、それが神様のためや神様からの指示といった大義名分を与えると、善悪の判断基準が変わり……。
「人は大義名分があれば、どんなに気弱なやつでも残虐になるのさ。それは異世界の歴史でも、こちらの歴史でも証明されている」
地球の歴史なら確かにたくさん事例はあると思うけど、こちらの歴史は四百年前の戦争のことかな?
それか、創聖教信者がやらかした事件とかがあるのかも?
「つまり、ヘリオス伯爵は信者たちを使ってテロを行いたいということね?」
地球でのテロ事件をいろいろ思い出したけど、確か日本ではテロを実行していなくても、企てただけで罪になるんじゃなかったっけ?
つまり、ヘリオス伯爵はある意味もう罪を犯している状態……って、すでにいろいろやっちゃってんじゃん!
「テロなんて人聞きの悪い。これは正しい戦争……聖戦だ!」
私がテロ行為だと指摘すると、ヘリオス伯爵はそれを否定し、自らの行為を正当化した。
日本で育った私には、宗教や宗派の違いで対立するという感覚がわからない。
だけど、アメリカで育った記憶を持つロスランには、身近ではなくとも馴染みがあるものなのかもしれない。
「てろ……とはなんだ?」
ヴィに意味を聞かれ、私はしばし固まった。
テロをこちらの言葉で説明するとなると……なんて言えばいいんだ?
実際のテロ事件はある日突然起こって、犯人はどこどこの組織の人だったとニュースで知る感じだったからな。
映画だと、爆弾事件のあとに声明文を出して、まだ爆弾はいっぱいあるぞ的な描写が多かったような……。
「んー、暴力行為で主義主張を押し通すこと?」
ただ、ヘリオス伯爵が主導した場合、謀反の方が適切なのか?
ヘリオス伯爵が説明してくれないかなぁって視線をやっても、彼は気づいてくれなかった。
「一般人がやる謀反みたいな??」
疑問符がつきまくる説明しかできない!
「目的達成のためなら暴力も厭わない者たち、で合っているようだな」
「うん、そんな感じ!」
ちょっと違うような気がしないでもないが、大まかな意味は伝わったようなのでよしとする。
「なるほどな。しかし、創造神様を旗印にするのであれば、ファーシアでこと足りるのではないか?そちらにはカーリデュベルがいたのだから、創聖教を改革すれば、貴様が望むものは作れただろう」
ヴィはヘリオス伯爵の行動が腑に落ちなかったようだ。
新たな国の樹立にこだわるより、すでにあるものを利用する方がずっと簡単だろうって。
ヴィの言うことも一理ある。
いくらロスランの記憶があったとしても、国を一から造るってなると大変だもんね。
「王子様はわかっていると思ったが、どうやらかいかぶりすぎだったようだ」
ヘリオス伯爵はヴィを嘲笑う。
男装の麗人なのも相まって、めっちゃ悪役っぽい!
「創聖教の神官どもの中身は、醜悪なモンスターだ。寄付金の横領に、人身売買、性暴力。まだ魔物の方が可愛げがある」
酷い言われようだな。
まぁ、ヘリオス伯爵の言っていることが真実なら、どクズでも生温い!醜悪なモンスターだと表現したのも頷けるけどさ。
しかし、オリヴィエ姉ちゃんが保護した古代創聖派の面々のように、真面目に信仰に向き合っている神官たちもいる。
全員がそうだと切り捨てるのではなく、そういった人たちを拾い上げての改革は、本当に無理なのかな?
「ガシェ王国の前神官長のような奴らの巣窟だと?」
前の神官長って、ソルが召喚されてしまった事故を神様の思し召し〜とか言ってた人だよね?
私の誘拐に関わっていたから捕まえたって聞いたけど、そのあとどうなったんだろう??
「あぁ、あいつか。あいつは抜けているところが多くて処分する予定だったが、最期にいい働きをしてくれた。総主祭になったカーリデュベルが外へ出られるようにできたからな」
カーリデュベルって人は覚えているぞ!プシュー作戦で、総帥さんが捕まえた人だね。
でも、その人が外に出られるようにというのが……お姉ちゃんかパウルから聞いたような気もするけど、忘れたのでパパンに聞いてみた。
パパン曰く、創聖教のトップである総主祭になると、ファーシアの外に出ないのが通例なんだとか。
私の誘拐事件に創聖教の神官長や他の神官たちが関わっていたからと、総主祭になったカーリデュベルは自らお詫び行脚をすることで、創聖教の信頼回復に努めたそうだ。
つまり、通例をなくすきっかけを作ったのが、その前神官長ということになるらしい。
「前の神官長はどうなったの?」
「まだ我が国の牢獄にいる。ヴィルヘルト殿下が追っていたレニスの人身売買の件にも関与していたようでね。創聖教からこちらにすべて任せると、罰する権利が譲られたのだが……。どうやらそれも、彼の入れ知恵のようだな」
パパンはヘリオス伯爵を鋭い目つきで見つめる。
先ほど、ヘリオス伯爵は処分と言った。その処分をガシェ王国に押しつけた……上手く利用されたことに気づいてしまったみたい。
「その人身売買も、人工魔石を作り出すためのもの。ミルマ国のソヌ族と手を組んでからは、不当な方法で集めた者たちを使い、魔力の放出で魔石を作る方法に変えたようだが。さらには、ミルマ国で人工魔石の窃盗も行っていたな」
パパンの言葉を引き継ぐようにヴィが告げた。
私の知らないうちに、捜査がかなり進んでいたようだ。
ミルマ国での事件にルノハークが関わっていたのは聞いていたけど、ガシェ王国で起きた人身売買に繋がるとはびっくりである。
そうやって集められた魔石が、祭壇の四隅に置かれた大量の魔石だとしたら……。
被害に遭った人の多さに、体が震える。
「それほどまでに魔石を欲したのは、創造神様の降臨に使用するのと、精霊を弾く術を使うため。魔族が使っていたその術を、魔石で発動できるよう改良したのだろう?」
「あぁ。精霊はうるさいし、口が軽いから、弾く術はどうやってでも欲しかったんだよ。昔、宮殿に精霊を弾く術を用いた部屋を作りたいって言ったこともあるが、ゼダの野郎が頑なに拒否しやがって!王子様もオレの気持ちわかるだろう? ずっとうるさい精霊どもにまとわりつかれてさ」
ゼダとはさっき話題に上がった通事様の愛称っぽい。
その通事様の強い要望もあって、ライナス帝国では精霊を弾く術を禁忌として定めることになったらしい。
一時的なら、聖獣の契約者が同じ状況を作り出せるからと。
「まぁ、気持ちはわからなくもない。今も、ロスランが酷いと、文句を俺に言っているくらいだしな」
ヴィもどこかうんざりした様子で何かを目で追う。
精霊王たちも苦笑いや楽しげな笑みを浮かべていることから、ヴィやヘリオス伯爵の周りでは、精霊たちが盛大に文句をつけているのかもしれない。
それはそれで可愛いと思うんだけど、私も精霊と意思疎通ができるようになったら、煩わしいと感じるのかな?
『私を呼び出すためにいろいろと暗躍していたようだが……魔力に関しては魔石ではなく、属性の魔力を持つ者が二、三人ほど範囲内にいるだけでよかったんだよ』
辺りがシーンと静まり返る。
誰も身動き一つせず、ただ風の音が微かにするだけ。
ここにいる全員、なぜ!?って思ったに違いない。
知らない方がよかったとまでは言わないが、そんな簡単な方法だと知ることができていたら、ヘリオス伯爵もあんな非道な手段を使わなかったかもしれない。
ヘリオス伯爵の欲望のために魔力を搾取されたり、大切な魔石を盗まれたり、命まで奪われたり、犠牲になった人たちが報われなさすぎる……。
『魔石のせいで死した者たちは皆、クレシオールのもとで癒されている』
「その多くは我が国の民だった者たちです。犠牲になった者たちの次の生が幸福に満ちたものになりますよう、創造神様のご慈悲を賜りたく存じます」
王太子であるヴィが、神様に向かって最上位の礼を執る。
最上位の礼は、即位や立太子、王族の婚礼といった重要な式典でしか執ることのない礼だ。
守れなかった国民のために頭を下げるヴィの姿に、オスフェ家の者も騎士たちも、みんながヴィに倣う。
「……偽善者め」
ヘリオス伯爵はそんなヴィを鼻で笑った。
「偽善で構わないと俺は思っている。為政者が何に苦労し、どれだけ腹黒いかを民が知ってどうなる?それで民が安心して暮らせるのか?民にはよい面だけを見せ、後ろ暗い部分は何があっても隠し通す。それが俺の君主としてのあり方だ」
あの外面のよさは、そういう信念から来ているものだったのか!
そういえば、悩む姿を下に見せるなって言われたこともあったな。
国民には立派な王太子の顔をして、臣下たちには強い、次期国王に相応しい王太子だと思われるように振る舞っているとしたら、王太子じゃないヴィの顔を知っている人は限られているのかも。
ヴィ、友達少なそうだもん……。私も人のこと言えないけどさ。
「ネマ。そんな顔をすると……こうなるぞ?」
友達が少なそうって心の中で呟いたものを察知したのか、ヴィに再びほっぺをぷにぷにされる。
「だっちぇ、ともだちすくにゃしょーだし」
「君主とは孤独なものだ。頂に立つのだから、隣り合える者は限られている」
ヴィは一人っ子だから、なおさらそう感じているのだろう。
兄弟がいれば、ミルマ国の王配様のように、国の外からでも王様を手助けすることはできる。
両親は先に死んでしまうが、兄弟は結婚して家を出てしまっても兄弟だ。
私やお姉ちゃんがいずれ嫁いだとしても、お兄ちゃんに何かあれば絶対に駆けつける!
「ヴィにも兄弟がいればよかったのに……」
「俺にはラースがいる。自分の隣には聖獣がいて、愛する家族がいて、素を見せられる友人に、信を置く臣下たちが支えてくれる」
ヴィは、周りの人に支えられていると思っていても、頂点に立つ者は孤独だと感じている。
それは、最終的にすべての責任を取るのは自分だけで、周りの者には背負わせる気がないということなんじゃ……。
「為政者としての信念は違えど、ロスランもそうだったのではないか?その大切さをずっと教えられてきたからこそ、ライナス帝国はここまで続いているのだろう」
ライナス帝国の皇族は、ヴィとはスタンスが異なる。
幼い皇族に厳しい部分があるが、親兄弟に妻子全員が皇帝を支えている。というか、皇帝の業務を分担している感じだね。
「私は前世も今も、差別にあたるようなことをされた経験はないけど、ヘリオス伯爵が憤るのはわかるよ」
私にそういった経験がないことは幸運なのだろう。日本だって昔からいろいろな差別はあったわけだし。
「差別って、自分ではどうしようもない部分を標的にされるでしょう?正直、完全になくすのは不可能だと思う」
標的にされる部分の理解を促すことで、差別を減らすことはできると思う。
だけど、差別のない理想郷はどこの異世界にもないのかもしれない。それこそ、ヘリオス伯爵が言ったようにロボットの世界とかでない限り。
自我のない、プログラムされた通りにしか動かない、無機質な世界。そんな世界が本当にあったら、その世界を創った神様なら人間を滅ぼせとか言っていそう。
まぁ、その前にその神様のメンタルが心配になるけど。
もしかして、私に人間を滅ぼすかどうか決めろってお願いしてきた神様って……。
確認のために、ロスランがされたお願い事をヘリオス伯爵に聞いてみた。
「そういえば、ロスランは神様にどんなお願いをされたの?ギィはできるだけ人助けをして欲しいってすごくおおざっぱなお願いで困ったらしいよ?」
神様のお願いと、愛し子として成したことはイコールじゃないからね。
ギィはただ人助けをしていったら、国王まで成り上がってしまっただけだし。
「……オレのときも大雑把と言えば大雑把だったな。他種族同士の交流が途切れないようにして欲しいってさ。本当はみんな仲良くとかほざいてたが、無理だっつーの」
悪態をつくヘリオス伯爵だが、ライナス帝国の建国理念を考えると、ロスランは一応、真面目に神様のお願い事には取り組んでいたのだろう。
ギィのときと同じく、真面目に取り組んだ結果、国を造るはめになったわけで。
それなのに、ライナス帝国は自分が思い描いた国とはまったく違うものになっていた。
まだ少ししかライナス帝国にいない私でもミーティアちゃんの件に遭遇したのだから、貴族だったヘリオス伯爵はもっとたくさんそういった場面を見聞きしたに違いない。
苦労して造った国が、生まれ変わったら差別が横行している国になっていれば、そりゃあ自分の子孫に怒りたくもなるわな。
にしても、ロスランやギィのときは漠然としたお願いなのに、なんで私にはこんな具体的かつ難題をお願いしようと思ったんだろう?
人間を滅ぼすかどうかなんて、そう簡単に答えが出せるわけがない。なんなら、死ぬ間際まで引き延ばしたいくらいだ。
それに、時間がかかっていいのであれば、ロスランのときみたいに、みんなを仲良くさせて欲しいってお願いの方がよかった。喜んで私が他種族の間を取り持つのに!
まずみんな仲良くするには、ロスランがやったように種族間の相互理解は必要だよね。
でも、ライナス帝国みたいにどの種族も一緒に住もうってなったら、種族が対立したり、差別が起きたりするから……一度、鎖国してみるとか?
あ、そういえば、ドワーフ族はそんな生活してたな。
ドワーフ族だけで集落を形成し、他種族との交流は限定的。鍛冶仕事は経験や技術が大事だからか、老人世代と若手世代の仲もよさげだった。
エルフ族も他種族との交流は持ちつつも、エルフの里は排他的な雰囲気があったなぁ。
……人間と獣人をどうにかできれば、鎖国で差別をなくせる可能性はある?
獣人は、動物の性質を引いているから、弱い個体を淘汰しようとする可能性は高いかもしれないが。
でも、獣王様がいる今なら、獣王国を復活させて、保護制度みたいなものを整えればワンチャンあるかもしれない。
問題は人間だね。
ラーシア大陸の歴史を見ても、戦争を起こしているのは人間だ。
各種族の国を造り、不可侵条約を結んだとしても、人間はいつか侵略すると思う。
…………もしかして、人間がいない方がこの世界は平和だったりして…………。
いやいや、生態系の維持には人間も必要……だよね?
魔物だって他種族に友好的な種類ばかりじゃないし。特にオーグルなんかは人間がいなくなれば、次は獣人に戦いを挑みそう。
オーグルは、戦い大好きな性質でいつか絶滅しそうだなぁ。
この世界に人間は必要だと思いたいけど、神様の言葉が引っかかる。必要なら、人間を滅ぼすかどうか、なんて言うだろうか?
やっぱり、この世界に人間がいなくなってもどうにかできるからそんな選択肢を出してきたのだとしたら……。
なんか、トロッコ問題を突きつけられている気分だ。
一人を助けるか、大勢を助けるかってやつ。
人間を滅ぼすことを選べば、他種族は暮らしやすくなり、人間を残すことを選べば、他種族は追いやられるみたいな。
まぁ、人間がいなくなれば、差別や戦争といったものは確実に減るだろう。
でも、減るだけなんだよね。
獣人と魔物という不確定要素がある以上、完全になくすことはできないと思う。
獣人の国に弱い個体を保護する制度ができたとしても、ミーティアちゃんの母親のように、祖となる動物と異なる特徴というだけで差別の標的にされることもありそうだし。
魔物も縄張り争いとかあるので、それが他の種族に被害を与えて戦争に……っていう可能性もある。
現に、四百年前の争乱は魔物がきっかけで起きたわけだし。
でも、待てよ。他種族間の確執を扇動していたルノハークがなくなれば、ある程度よい方向に持っていけるかもしれないよね?
すでに植えつけられた不信感を払拭するのは難しいかもしれないけど。
「やはりここは一つ、鎖国してみるのも手なのでは?」
長い思考の末にたどり着いた答えに、容赦なくヘリオス伯爵の罵声が飛んでくる。
「バカかお前は。交流は途切れないようにしろっていう願いだって言っただろうが! 鎖国していいんだったら、オレがやってたっつーの」
種族みんな仲良くして欲しいというところばかり頭に残っていたから、交流云々はすっかり抜けてた!
じゃあ、鎖国するって案はボツかぁ。
そもそも、鎖国したら私が獣人さんとかもふもふできる機会がなくなるじゃん!却下だ、却下!!
やっぱり時間をかけて、地道に理解を広めていく方法が一番ベストかな?
でもなー、時間をかけると人間の方が多くなって、他種族支配しようぜ!って風潮になったりしそうだしなー。
ほら、優越感を得られることに弱い人って多いし。
「さっきからいろいろ考えているようだが、少しは表情を隠したらどうだ?というか、誰も注意しないのは、全員ロリコンだからか?」
やっべ。考えに集中していたら、顔が疎かになってたわ。これも神様が魂に小細工した弊害か!
つか、ヘリオス伯爵。そんな汚物を見るような目で見なくても……って、私に向けたものじゃなくて、周りのみんなに向いているのか。
さすがに、私を性的な対象で見るような人はいないと思うけど……。
騎士や軍人たちの生温かい目を見てごらんよ。あれはどう見ても、親戚の子供を見守っている目だよ!
ちなみに私の家族は、百面相姿が可愛いなぁってニマニマしていたに違いない!断言する!!
「いや、エルフが精霊を愛でるのと同じ感覚だと思うよ?」
さすがにここに居合わせただけでロリコン疑惑をかけられるのは可哀想だから、ヘリオス伯爵にも理解できるであろう説明をしてみた。
そうしたら、嫌そうな顔をされた……。ヴィも心なしか顔を顰めている。
ちょっと二人とも!それは精霊を愛でる感覚が理解できないって意味?それとも、私を精霊に例えたことへの不満!?
ヴィの私への扱いはいつものことだとしても、ヘリオス伯爵よ。私をさらってから対応がちょっと雑になってないかい?
前の某歌劇団の男役のような、キラキラしたヘリオス伯爵が恋しいよ。
「ネマはどんなときでも愛らしいので、見るなと言われても見てしまうのは当然……腹立たしいことですが」
パパン、親バカ炸裂しているのと、最後の本音が隠せてないよ!
「一つ気になったのですが、ヘリオスは創造神様にお願いされたことを潰す……最初にロスラン自身が成したことをなかったことにするために、他種族同士の不和を促したのでは?」
問いかけるように語るパパンだけど、確信しているのか顔には笑みが浮かんでいる。
悪どい感じが出てて格好いいよ、パパン!
「まぁ、それもあった。欲深い者を唆せば、他種族への反感を煽るのは簡単だ。特に、人間と獣人はな」
それで人間側は創聖教を、獣人側は獣王様を使って、多くの人を動かしていたのか。
「ドワーフ族とエルフ族は?」
パパンが続けて問う。
「ドワーフ族は職人気質とでもいうのか、頭の固い奴らばかりだったからな。ああいうのは、自分が痛い目をみるより、身近な者を痛めつけた方がよく言うことを聞く。エルフ族は……元よりエルフ族だけで完結している種族だ。他の種族がどうなろうと気にしないし、己の好奇心を満たすためにしか動かない」
ドワーフ族に関してはその通りだと思うけど、エルフ族ってそんなだったの?
ちらほらいるエルフの軍人さんは特に反応はしていないけど、その周りにいる同僚軍人の数人が、ヘリオス伯爵の言葉に頷いているのが見えた。
「あと、精霊至上主義すぎて、いろいろウザい」
あぁーと、納得する声がいくつか上がる。
エルフの精霊に対する異常なほどの好意は、何度か目撃しているが、私としては同類のにおいがプンプンするのでノーコメントで。
「しかし、ドワーフ族の子供を人質にするのはやりすぎだ。陛下もお怒りになっておられる」
事のなりゆきを見守っていたテオさんが急に加わった。
顔は相変わらずの無表情だけど、テオさんもちょっと怒ってる?
そもそも、ドワーフ族の人質って初めて聞いたんだけど??
「あっ!ラグヴィズの集落をおそうようにしたのもヘリオス伯爵か!」
私が大きな声を出すと、ヘリオス伯爵は何を今さらと突き放す。
「ドワーフ族の古い流は、襲われているとわかれば、より表には出てこなくなると思ったのに失敗した。まさか、陛下に保護されるとはね。しかも、魔道列車って……」
「アドベンチャーには欠かせない要素だからね!」
ただのトロッコだろって続きそうだったから、思わずぶった切る。
が、私の発言はみんなにスルーされた。この静寂がいたたまれない。
ヘリオス伯爵、何か言ってよぉぉ!




