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想像していたのと違った……。

「さすがにそれは許可できません」


ランユーちゃんの仕事内容が気になったので、彼女の仕事を見てみたいとお願いしたら、即座にミーレによって却下された。

だが、それで諦める私ではない!


「本当にダメだったら、ヘリオス伯爵やアイセ様が止めにくると思うんだ。それに、どちらかが来てくれたら、改めてしょうだくをえるようにするから!お願い!」


私としては、二人が出てきてくれた方がありがたいんだなー。

協力するって言ったのに、いつまでも放置プレイだし。

まぁ、私の身柄が手元にあるだけでいいとかなんだろうけど。


ミーレは頑張って私を説得しようとしたけど、私のしつこさには敵わなかった。

ヘリオス伯爵が来たら、ミーレにボーナスを与えるようお願いしてみよう。

専門職でもないのに、わがままな子供のお世話を押しつけられているわけだし。


ランユーちゃんは雇用契約上の守秘義務があるため、仕事場の場所を教えることができないらしい。上司にあたる人から、この建物の中のことを外の人に絶対に言うなと、何度も念押しされているそうだ。

私が外の人にあたるのか微妙ラインなので、言葉では場所を教えられないが、あとをついてくるのはどうかと、ランユーちゃんに提案された。


「あとをついていくのは大丈夫なの?」


「名に誓っているとかじゃないので、見つかっても怒られるくらいだと思います」


ランユーちゃんはそう言うが、怒られるのもつらいよ。


「少し距離を取って、堂々とついていく方がいいと思います。その場所に行ってはいけないと判断されれば、すぐに誰かが止めにくるでしょうし」


あれほど反対していたミーレが、解決策を提案してくれた。

こっそりあとをついていっても、獣人であるランユーちゃんが気づかないのはおかしいと怪しまれるし、堂々としていた方が、同じ方向に行く人だと思っていたという言い訳も利くだろうって。

それを聞いて、確かに!って納得したよね。

というわけで、堂々とランユーちゃんのあとを追跡することにした。


ランユーちゃんは私たちを気にしながらも、どんどん建物の奥に向かっていく。

ここら辺は使われていないのか、床には埃が積もっており、足跡がうっすらと残っていた。

足跡が一種類しか見当たらないことから、ここを行き来しているのはランユーちゃんだけみたい。

突き当たりには重厚な鉄扉(てっぴ)が存在を主張していたが、子供とはいえ獣人であるランユーちゃんは軽々と鉄扉を開けて中に入っていった。

この扉、ランユーちゃんがわざと開けっ放しにしたってことは、人間には開けられない重さなのかもしれない。


私は鉄扉の前で少しだけ待った。

ヘリオス伯爵かアイセさんが来ないかなぁって。


「……これは、中に入っても構わないってことだよね?」


私の問いに、ミーレは困った顔をして答えなかった。

ミーレの立場では、判断できないことだからだろう。

私の方は、さっきから鉄扉の向こうからこぼれる光が気になってしょうがない。

早く入りたいんだけど!


「来ないってことはしょうだくとみなすことにしよう!」


一応、ちょっとは待ったし、ミーレ以外の監視役から報告はいっていると思うし、来ないということはそういうことに違いない!


「大丈夫、ミーレのことは私が守るから!」


もし、ミーレが誰かに怒られそうになったら、私が責任をもって、ミーレに非がないことを説明しよう。

ミーレの手を取り、開けっ放しの扉に体を滑り込ませた。


鉄扉の向こう側はなぜかめちゃくちゃ明るかった。私に宛てられた部屋の照明より明るい。

たぶん、灯りの魔道具の明るさの設定が異なるのだろう。

灯りの魔道具は、明るさが明るければ明るいほど、魔石の魔力を消費する。

魔力の消費が早いと、頻繁に魔石を交換するはめになるので、普通はほどほどの明るさに抑えるのだが……。

そんな灯りの魔道具によって隅々まで照らされている空間は、円形でそこそこ広い。今は物が少なく、がらんどうな印象だ。

あんな頑丈そうな鉄扉に守られていて、そこまで廃墟化も進んでいないのに、使用されている感じがない。

天井は高く、壁に沿って階段が設置してあることから、二階以上の階層も存在しているのだろう。

室内訓練場としては手狭だし、用途が倉庫以外思いつかない。

食糧の備蓄庫か武器庫だった可能性はありそうだよね。


ランユーちゃんは腰にバッグを装着して、梯子(はしご)を脇に抱えて、壁際に移動しているところだった。

冒険者が持っていそうなウエストポーチだけど、あの中にお仕事道具が入っているのかな?

それから一つ一つ、灯りの魔道具を見て回り、時には梯子を使って作業もする。

どうやらランユーちゃんのお仕事は、魔力の切れかかっている魔石を交換することみたい。

手際よく一階部分を終えると、階段部分に取りかかる。

階段部分は梯子を使わなくても手が届くからか、あっという間に二階へ上がっていった。

私たちもあとを追い二階へ向かう。

同じことが何回も繰り返され、気がつけば六階分が終わっていた。


ランユーちゃんが私たちの方を見た。

少し逡巡(しゅんじゅん)したあと、七階へ上っていく。

ランユーちゃんの様子から、七階に何かあるのかもしれないと思い、私は上の階を窺いながらゆっくりと進んだ。

途中から、照明の灯りとは違う光があることに気づいた。

階段を上りきると、なぜか格子状の扉があり、その向こうに青空が広がっている。

屋上かと思ったら、天井が一部ない状態だった……。

つか、昼間なのに灯りの魔道具もついてる?

太陽光が差し込んで、下の階よりも明るいくらいなのに、照明はついたままにされていた。魔力の無駄じゃね?


「尊き方にご挨拶申し上げます。何かご要望がございましたら、お申しつけください」


格子の隙間から、ランユーちゃんが土下座をしているのが見えた。

それに、尊き方って、こんなところに誰かいるの!?


格子が顔につくまで近づいて、中を覗いてみる。

ランユーちゃんが土下座する床には、何かの魔法陣が刻まれていて、ランユーちゃんの前には黒い塊があるだけ……って。あの塊、なんかもふもふしてない?

全身真っ黒な生き物がいるなんて、この世界では聞いたことがないよ!?

もっとよく見ようと目をこらすと、黒い塊が動いた!

金色に光る目が私を捕える。

恐怖は感じなかった。それよりも、既視感の方が強い。

地球の動物に似ているから?いや、なんかしっくりこないなぁ。

黒い塊がもう一度動くと、何かがキラキラと光った。


「あの……尊き方がこちらに来るようにと仰っています」


ランユーちゃん、黒い塊と意思疎通ができるの!?

獣人は、祖となる動物であれば少しだけコミュニケーションが取れるとは聞くが……あの黒い塊、どう見てもサルには見えないよねぇ。


とりあえず、中に入って黒い塊に近づいてみる。


「えぇぇぇっ!?」


そこでようやく、黒い塊の正体がわかったと言うか……驚きすぎて、口を開けたまま固まってしまった。

いつも閉じてくれる森鬼がいないので、なんとか我に返って自分で閉じる。


「……そういうことでしたか」


ミーレはそれ(・・)を見て納得している様子。なぜだ??


――グルルル。


ディーが喉を鳴らして甘えてくるときに似ている鳴き声。

私はまじまじと黒い塊を見た。

もふもふしていると思ったのは(たてがみ)で、キラキラと光ったのは水晶のような角。そして、ディーと同じ金色の目。

私が既視感を覚えたのも超納得!

だって、色が違うだけでディーにそっくりなんだもん!!

となれば答えは一つ。光の聖獣であるディーと対をなす存在、闇の聖獣・闇獅子(やみしし)に違いない。


「え?なんでこんなところに闇の聖獣が??」


黒い塊の正体がわかったとはいえ、問題はそこではない。

契約者のいない聖獣は、それぞれが好む場所で暮らしている。

風竜は気の向くままにあちこち飛び回っているし、地竜は地中深くに巣を作って寝ているし、新たに来た水竜はワジテ大陸の湖で暮らしているという。

闇の聖獣なら、光が差さない地下や洞窟とかを好むのでは?

こんなお日様サンサン照っている場所は似つかわしくないというか、なんというか……。

しかし、契約者がいるからここにいるようには見えない。

闇の聖獣の四肢と首に、私の腕くらいはありそうな太い鎖があり、その鎖は魔法陣が描かれてある床にしっかりと固定されているのだ。

どう見ても監禁ですね。はい。

なんで聖獣が監禁される目に遭っているのか。

森鬼がいてくれたら、精霊を通じて聖獣と意思疎通ができるのに。

通訳者が欲しいと思っていたら、足元で何やら(うごめ)くものが現れた。

黒いそれはうねうねと動き回り、ある形になるとピタリと止まった。


「……文字?ってこれ、あなたの力なの!?」


黒いうねうねはラーシア語で『ようこそ、愛し子』と書かれていた。

私は思わず、この手があったかぁぁ!!と心の中で叫んだ。

聖獣なのだから、属性のものを操れるのは当然なわけで。

つまり、ユーシェとサチェなら水で、カイディーテなら土で文字を書いてもらえば、通訳を介さずに会話ができるってことなわけで……。

なんで今までこの手法に気づかなかったんだ私っ!!

これなら精霊たちとも意思疎通が可能になるし、ディーともいっぱいおしゃべりできるようになる。

……ディーの力だと光で文字を書くことになるけど、ディーってレーザー光線を出せたりするのかな?それとも、ネオンみたいに色のついた光を連続で発光させるのかな?

それぞれの属性がどんなふうに文字を書くのか、気になりすぎてもう帰りたい。

いや。帰るのは、この子を思う存分もふってからだな!


「こほん。失礼いたしました。炎竜の契約者、ネフェルティマ・オスフェと申します」


もふもふさせてもらうには、まず仲良くならないとね。

闇の聖獣に挨拶をすると、文字がまたもうねうねと動き出し、別の文章になった。


『愛し子に会えて嬉しいが、なぜこんな場所にいる?』


いやいや、それはこちらのセリフだが?


「私はヘリオス伯爵とアイセ様に連れてこられたの」


私はここに来た経緯を説明した。

ミーレは知っていたようだが、ランユーちゃんは驚いた顔をする。

誘拐されたのに馴染みすぎだって?私もそう思う。


「それで、あなたはなんでこんなことになっているの?」


次は闇の聖獣の番ということで尋ねると、黒いうねうねが増えて、長い文章が現れた。

いろいろと詳しく教えてくれているが、要約すると、神殿で休んでいたらカルムって人に連れてこられたってことらしい。


「神殿?」


『遙か昔、魔族が造った神殿だ。精霊が来ない部屋があり、静かで重宝していたのだがな』


闇の聖獣は尻尾を強く振り回し、耳をパタパタさせる。それはまさに、体に(たか)る虫を追い払う仕草。

精霊よ、虫扱いされているよ?

森鬼にもよく虫扱いされ、闇の聖獣にも虫扱いされる精霊が、少し不憫(ふびん)に思えた。


『ここは闇の気配も濃いゆえ、休むには問題ないが、精霊たちがうるさくてかなわん』


「神殿って、遺跡のこと?ガシェ王国のワイズ領とミルマ国の国境近くにある?」


『おそらくそうだろう。神殿はたくさんあるから、詳しい場所までは覚えておらん』


遺跡が神殿であっているっぽいけど、遺跡ってたくさんあったっけ?

あ、ルノハークがミルマ国の遺跡を壊してまくってたわ。

何ヶ所も壊されたって言っていたから、ミルマ国に限ってはたくさんあるで間違っていないか。

ということは、闇の聖獣が言うたくさんの神殿はすでに壊されているかも……。


そのことを話すと、闇の聖獣は口を大きく開けて、ぐわっと吠えた。

精霊が来ない貴重な場所を壊されて、ショックだったようだ。

国境沿いの遺跡の他にも、お気に入りの神殿があったのだろう。


『……カノワの神殿が無事なら問題ない』


カノワっていう場所なのかな?そこにある神殿の無事を精霊に確かめてもらったみたい。


「話を戻すけど、カルムさんに連れてこられたのに、なんで拘束されているの?そもそも、抵抗しようと思わなかったの?」


『なに、カルムから面白い気配がしたので、ちょっとした好奇心というやつだ』


気持ちはわかる。好奇心が抑えられないときってあるよね。

でも、知らない人についていくのは失敗だったのでは?

てか、そんなに興味を引かれるってことは、カルムさんは契約者になりえる人なのかな?


『それに、こんな()、拘束のうちにも入らんよ』


聖獣にとっては、この太い鎖も玩具みたいなものなのか。

じゃあ、カルムって人かこの場所を気に入っているから、お遊び感覚で付き合ってあげているということでオッケー?

酷い目に遭っているわけではなさそうだし、本人が楽しんでいるのなら、これはこれでありなのだろう。


「ところで、カルムって誰?」


おそらくルノハークでも幹部クラスの人かなって思ってミーレに聞いたら、すっごい表情された。


「なっ……!」


さっき、闇の聖獣に気づいたときの私のように、驚愕で固まるミーレ。

ランユーちゃんも、信じられないといった表情をしているので、彼女もカルムって人を知っているようだ。


「聖主様の御名(みな)を軽々しく口にしてはなりません!聖主様は、創造神様より神託を受け、さらには創造神様よりその御名を(たまわ)った尊きお方なのですよ!!」


あー、思い出した。聖主、カルム・アスディロンって名乗ってたわー。

アスディロンはこの世界の名前だけど、神様の名前ともされている。地球を意味するガイアやテラが神話の女神様の名前なのと同じだ。

それで、私の家族とかから、聖主は神様の名を騙る不届き者扱いされているんだよね。


聖主について熱く語るミーレを見て、私はあることに気づいてしまう。

ルノハークは創聖教信者の中でも、熱心で過激思想がある一部の人たちだと考えていた。地球でも多々起きている、宗教観の相違からくる紛争的なやつ。

でも、見方を少し変えるとアレだ。いわゆる霊感商法ってやつに似ている。

私は神の生まれ変わりですって言う人が、霊視ができると言って相談料をふんだくるとか、ご利益の高い壺と言って高額で買わせたりするアレだ。

もちろん、そのほとんどが詐欺なんだけど、騙される人は一種の洗脳状態にあるのだとか。

聖主も洗脳魔法を使うし、かなり似ているよね?

あと、あの神様が神託を下ろして、名付けしたりするかな?

神様は世界に干渉できないから、愛し子に接触するのも限られている上に、生き物を介してじゃないと無理だって、ギィの手記に書いてあった。

つまり、本当に神様から何か言われたとしたら、聖主も愛し子ってことになってしまう。

聖主が愛し子なら、私をさらう必要はないから……やっぱり聖主の話は嘘ということだ。


『ほら、カルムは面白いだろう?』


ミーレの発言を面白いと捉える闇の聖獣は、ちょっと変わり者なのかもしれない。

基本聖獣は、契約者にしか興味ないし、そのときの気分で契約者の身内に関心を示すくらいで、その他にいたってはそこら辺の石と同じ扱いだったりする。

めっちゃ好意を寄せてくれる精霊たちに対しても、ほとんど塩対応らしいよ。

あのディーですら、オスフェに関係ない人にはフルシカトするらしいから、聖獣の性質によるものなんだろうけど。


「面白いかはまだ判断できないけど、あなたの状況はわかったわ」


聖主が面白い人物であっても、詐欺師だったら仲良くはできない……というか、たぶん犯罪者として捕まると思う。


「それであなた……名前はあるのよね?」


いい加減、貴方とか闇の聖獣って呼ぶのが面倒臭くなってきた。

聖獣だから神様がつけた真名があるはず。


『契約者以外に名を呼ばれるのは好まぬが、愛し子は許そう。私のことはカルヴァと呼ぶがよい』


真名ではなく、愛称みたいなものかな?

ということは、他の聖獣も本当の名前じゃなくて、愛称の可能性も!?

ラース君とか、あれだけ仲良くなったのに教えてもらえていないとしたらちょっとショックだ。

でも、ソルとちゃんと契約したら、ソルの真名を知っている人は私だけってことでしょう?

契約者以外に教えないっていうのも特別感があっていいな。


「じゃあ、カルヴァ。早速、お願いがあるんだけど……」


『申してみよ』


「カルヴァをもふもふさせて!!」


今、一番切実な願いだと言っても過言ではない!

私は、カルヴァの鬣に顔をうずめたい衝動とずっと戦っていたのだ!!

私がそう告げると、少し間があってから、黒いうねうねが動く。


『もふもふとは?』


「カルヴァの毛並みをいっぱい触らせて欲しいってこと」


全身くまなく撫でさせてって言おうと思ったけど、さすがに痴女認定されかねないので、マイルド表現にしてみた。


『触るくらいならばよかろう』


よし!言質は取ったぞ!!

興奮が抑えられず、許可が出るとすぐにカルヴァに近寄る。

魔法陣の中に入ったけど、特に何かあるわけでもなかった。


「じゃあ、遠慮なく!」


まずは魅惑的な鬣から。

見た目はディーと同じくふわふわしているのに、触るとサラサラな毛質なのに驚いた。

するすると指からこぼれる毛。摩擦がないのかと疑うほどに滑らかだ。(かい)の鬣よりサラサラしているかもしれない。

サラサラすぎて、鬣を結んでもすぐに解けそう。

ちょっとだけ、本当にちょっとだけ三つ編みにしてみた。思った通り、手を離したら、サッと元に戻った。

編んだときの感じが想像よりも柔らかく……っていうか、毛がふにゃふにゃしてる?海やカイディーテはちゃんと毛!っていう固さがあるのに。

例えるなら、讃岐うどんと博多うどんくらい差があると思う。

そして、これだけサラサラなのに、艶がいっさいないのも面白い。

ディーはほのかに発光するので、対となる闇の聖獣は光を吸収しているとか?

夜や薄暗いところで遭遇しても、何かの影だと思ってスルーしそう。

あ、お耳はふわふわしてる。

鬣よりも細い毛が密集しているからだろう。

タンポポの綿毛みたいで、吹いたら飛んでいっちゃいそうだな。

次は背中……ちょっと待て。スルスルしすぎて毛の感触を感じられないってどういうこと!?

私は今、シルクの生地でも触っているのか??

本当に毛が生えているのか確かめるため、あえて逆撫でをしてみる。


――ガウッ!


カルヴァが短く鳴いて、尻尾の先で追い払うように腕をぺちんってされた。

逆撫では聖獣も気持ちよくないらしい。

逆撫でしたら毛の触れる感触があったので、ちゃんと毛が生えていたよ。


背中を撫で回し、お尻の方に行くと感触が変化した。

背中より少し毛が太くなっているっぽい。

スルスルなのは同じだけど、指に毛の感触がしっかりと伝わってくる。

あれ?尻尾の形がディーと違うな。

ディーは長毛種特有のふっさふさした尻尾だけど、カルヴァの尻尾はライオンのとそっくりだ。

……ライオンの尻尾ってこんなに太かったっけ?

前世でもこんなに近距離でライオンを見ることはなかったので、こんなんだっけ?と首を傾げる。

尻尾の毛も太めで、カルヴァが尻尾を動かすたびに、筋肉の動きも感じ取れた。

あと、尻尾で気になるといえば、先っぽの毛!

どんな感じなのかワクワクしながら触ると……なんか身に覚えがある感触のような?

サラサラで、肌を撫でる感触は心地いいくらいで……あれだ!メイクブラシの一番大きいやつ!

あと、この束感、筆にも似ているよね。墨をつけたら字が書けそう。


そして、一番のお楽しみ猫吸い!

カルヴァに抱きついて、鬣に顔をうずめたら、思いっきり深呼吸する。

少しひんやりした、冬の夜のような匂いがした。


真冬の流星群を観察しようと、夜中に実家のベランダで一時間粘ったり、親には内緒で夜中のコンビニにおでんを買いにいったり、そんな前世の思い出が浮かび上がる。

こっちでの思い出じゃないのは、夜中まで起きてないからかな?


ディーのお日様の匂いも好きだけど、カルヴァの夜の匂いも好きだな。なんか、夜更かししたくなる。


「カルヴァ、明日も来ていい?」


『構わんよ』


もふもふの補給先が確保できたので、しばらくは退屈しなくてすみそう。

でも、やっぱりラース君やディー、魔物っ子たちのもふもふが恋しいので、パパン早くなんとかしてー!



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