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初代国王の正体!?

「ネマ、これから見せるものを俺の許可なく他言することを禁ずる。これを名に誓えるか?」


ヴィに呼び出され、開口一番に告げられた。

なんとなく重々しい雰囲気を感じながらも、正直に答える。


「内容によるかな?両親にも知られてはいけないものなら知りたくない!ヴィは、私がおとう様やおかあ様からの追及をかわせると思う?」


私が問い返すと、ヴィは間髪入れずに思わないと答えた。

自分で聞いておいてなんだが、二秒くらいは考えてくれてもいいじゃん!


「公爵夫妻には俺から説明しよう。また、創造神様に連なる存在、聖獣やその契約者、精霊には話しても大丈夫だ」


ということは、愛し子に関係していることなのかな?だから森鬼も一緒に呼ばれたと。


「おねえ様とパウルもダメ?」


一緒にいる時間が長い二人に、私が黙っていられるか自信がない。


「そこはオスフェ公に判断させよう。彼が話してもいいと決めたのであれば、カーナディアとパウルは許可する」


ふむ。パパンがいいと言えば、とりあえず家族には話せる。お兄ちゃんはディーの契約者なので、ヴィの言う条件に含まれているしね。


「わかった。その条件ならなんとかできると思う」


私の曖昧な答えにヴィが苦笑する。

名に誓うんだぞ?と何度も念を押され、私がしっかりと覚悟を決めるまでやめなかった。

国家機密レベルのことを私に教えようとしているのかと、どんどん恐ろしくなってくる。


「……ヴィから聞いたあとに、どこかにかんきんされたり、暗殺されるなんてことは……」


「あるわけないだろう。いったい、どこからそんな発想が湧いてくるんだ?」


頭をぐりぐりされながら、普段どんな本を読んでいるんだとまでぼやかれる。

まずいことを知ったキャラが消されるのは定石だ!お約束だ!

消される心配もないようなので、とりあえず名に誓っておく。


「では、これを読んで(・・・)もらいたい」


ヴィから渡されたのは一冊の本。カバーの装丁が古めかしいことから、だいぶ年代ものの本だと思われる。

おそるおそる受け取り、ゆっくりと表紙を開く。

何が書かれているのかと、文章を読もうとしたところで気づいた。


「これは……漢字っ!?」


この世界にはないはずの文字。驚いたってもんじゃない!驚きすぎて、危うく本を落とすところだった。

次のページも、そのまた次も、パラパラと流し見をしてみたら、全部日本語で書かれているようだ。


「やはり、お前はそれ(・・)が読めるんだな?」


「読めるかもしれないけど……ちょっとあやしい……」


ヴィは意味がわからないと眉を(ひそ)める。

これが現代日本語だったら、自信を持って読めると答えただろう。

しかし、本に書かれている日本語は昔の人が書いたような、達筆すぎて逆に読めない漢字だったのだ。

最初のページは読める。同郷の者へと書かれていた。

次のページから、つらつらーっと達筆な文字で書かれていて、一部判読できない漢字は文脈から予測するしかない。

昔の言い回しとかもあったとしたら、なおさら読むのは大変になる。


「とりあえず、全部読んでみろ」


ヴィに言われたので、本腰を入れて解読に取りかかった。どれどれ。


『私は鈴木孝次郎。日本の東京府八王子に生まれた』


……誰?つか、東京府??いつの時代だ??

その答えは次の一文にあったけど、複雑な気分になった。

大日本帝國陸軍の南方軍に配属されて、比律賓の方で戦っていたと。

比律賓がどこかすぐにはわからなかったけど、比の文字からしてフィリピンかな?

ということは、この鈴木さんが戦っていた戦争は、第二次世界大戦だと思われる。

世界中の多くの人が、それこそ何世代にもわたり深い傷を負った戦争で鈴木さんは亡くなり、あの神様と出会ってしまった。

この本は、鈴木孝次郎氏が生まれ変わってから女神様のもとへ旅立つまでのことが書かれた自叙伝だった。



神様に会った鈴木さんは、ちょっとこれから大陸が荒れるから、できるだけ人助けをして欲しいとお願いされた。

お使いを頼むような感じでと書かれていることから、私のときと同じようなノリだったのだろう。

神様のことだから、人助けの範囲も、期間も言わないままぶん投げたんだと思う。

私もそういった詳細をおしえられないまま転生させられたし。

それで、能力を授けるから何が欲しいかと聞かれ、鈴木さんは人を守る力が欲しいと願った。

鈴木さん、戦闘に巻き込まれた地元民を守れなかったことを悔やんでいたらしい。

守れる力があれば、より多くの人を助けられると。


鈴木さんは神様から無限の魔力と特級を超える土魔法を授けられ、今はなきクルヴォ国にギィとして転生した。

クルヴォ国では平民に生まれたけど、優しい両親のもとに生まれ、幼少期は幸せに暮らしていたようだ。

神様のお願いを叶えるために、幼いときから両親の手伝いやご近所さんを手伝ったりしていたが、クルヴォ国は戦火に見舞われる。

その戦争で両親を亡くし、ギィは戦争孤児となった。

ギィはまたも守れなかったと、酷く悔やんだ。

力があるだけではダメだ。それを使いこなし、守る立場を手に入れなければ、自分はいつまでも守られる側として見られてしまうことに気づいた。

立場を手に入れることを決心したギィは、戦争孤児の仲間たちを引き連れて、まだ情勢が安定していたガシェ王国の前王朝にあたるアウリマ王国へ避難する。

この頃に、私のご先祖様であるオスフェ家初代のラーイデルトとワイズ家初代のケイに出会ったと書かれていた。


アウリマ王国で冒険者になるも、最初はその日食べていくのでいっぱいいっぱいだったそうだ。

求められるのは戦える冒険者で、お手伝いや採取系の依頼しかできない若い冒険者は求められていなかった。

ギィは、自分の魔法を出し惜しみすることなくバンバン使うことで、徐々に知名度を上げていく。

それはまさに、私が生きていた時代に流行った転生チートの成り上がりものと同じだと思った。


凄い土魔法を使う子供がいる――。

ギィのことが国のお偉いさんたちの耳に届くと、あれよあれよと、アウリマ王国騎士団長を務めるゲラルト・ゼルナンに師事することになったのだ。

このゲラルト・ゼルナンこそ、ガシェ王国初代将軍で、ゴーシュじーちゃんのご先祖様である。


以降の記述は、ガシェ王国の歴史書に残っている出来事と大差ないようだ。

精霊の住処でサイのロイと出会ったり、なんとかの戦いに出陣したりしたって。

歴史書と違う部分は、ミリィという名前の女性や聖獣のことが出てくるくらいか?

たぶんだけど、このミリィって女性がライナス帝国のエルフの森で出会った恩人のお姉さんだと思う。

お姉さんから初代たちのお話……というか、お姉さんの好きだった人の話を聞かせてもらった。

ギィの相棒であるロイの機嫌を損ね、角で突き回され、土下座して謝ったというエピソード。

それと同じ内容がこの本にもあった。

お姉さんが片思いしていた相手が、ディルタ家初代だったとは……。


幼少期から青年期にかけて波瀾万丈だったギィは、国を興し、王様になっても激動の人生を送る。

穏やかに過ごせたのは、晩年になってからのたった十数年。

本の最後の方は、自分のあとに現れる愛し子へのアドバイスのようなものが書かれていた。


たとえば、創聖教が公表する神託は鵜呑みにするなとか。

神子の神託は、そのときの受信環境に左右され、断片的であることが多いらしい。

感度の悪い無線通信みたいなものだと書かれていて、妙に納得してしまった。

つまり、創聖教の都合がいいように解釈したり、改ざんしているそうだ。

逆に愛し子には、生き物を通じて神託が授けられるとある。

ガシェ王国では、ある逸話から蝶が神様の使いとされているが、実は蝶だけではなかったみたい。

ギィは、蝶や鳥、リアが神様の声を届けにきたと書いている。


他には、聖獣や精霊に頼りきりにならないようにと。

人間は力を持つと(おご)り、弱い者に何をしてもいいと錯覚するようになる。だからこそ、己を律することが大事なんだって。

ギィがけっして聖獣と契約しなかったのは、このためなのだろう。


あと、困ったことがあれば魔族を頼るようにともあった。

魔族は神様や女神様と関わりが深いから、いろいろなことを知っているって。

ギィの時代には、まだ魔族が残っていたのかな?

私が見たことある魔族って、旅興行の一座の人だけなんだけど……。


ギィが転生者だということは隠して、ヴィに説明しながら、本を最後まで読んだ。

おそらく、ヴィが思っていたのと内容が違ったのだろう。眉間に皺を寄せて、厳しい表情になっている。


「こちらの手紙はどうだ?」


ヴィが差し出してきたのは、古びた一通の手紙。

こちらも日本語で書かれていた。

軽く目を通すと、内容は神様への愚痴っぽい。

大事なことは何も教えてくれないから凄く苦労しただの、こんなのが上官だったら兵士を無駄死にさせていただろうとか、自分のあとに来る愛し子のためにも神様に会ったら説教しておくって。

ということは、ギィ、死んでも神様に会えなかったのか……。

それとも、神様はギィに説教されたけど、やり方を変えられないのか。

もし、どうしても耐えられないときは、神様を呼び出せ(・・・・)とある。

魔族から聞いたという神様を降臨させる方法。

ギィのときは条件が揃わなかったので無理だったらしいが。


「神様をこうりんさせる方法が書いてあるけど、本当だと思う?」


私が疑っているのは、神様はこの世界のことにあまり干渉ができないからだ。

私を転生させるのはできるけど、この世界に住む人に加護や新たな能力を授けたり、滅びそうな国を護ったりしない。そういうのは女神様の担当だ。

じゃあ、神様は何をしているのかというと……たぶん監視役だ。

世界の(ことわり)というシステムがあって、それが正常に動いているか監視する業務。理が修正できないイレギュラーやバグがあるときにだけ関与する。

そんな神様を降臨させたら、世界の理が崩れて、大惨事が起こったりしそうじゃない?


「どういった方法だ?」


「うーんとね……すべての力を一ヶ所に集めて、愛し子が呼べばいいって」


一見すると簡単そうではあるが、ギィのときにはそのすべての力とやらが揃わなかったようだ。


「すべての力……集める……」


ヴィは何か心当たりがあるのか、しばらく考え込んだあと、書類の山から何かを探し始めた。


「聖主らしき人物が使っていた遺跡の部屋にあったものの写しだ。ここに、文字が書いてあるだろ?」


いつかの会議で見せてもらった、昔のラーシア大陸の地図。

その地図の端っこに短い文章があった。ただし、読めない!

文字はラーシア語の文字に似ているが、ちょいちょい形が違う。


「マカルタ語で、八つと白と黒の力を集めると書いてあるんだ。もしかしたら、これも創造神を降臨させる方法の一つなのかもしれないと思ってな」


ヴィの説明になるほどと頷くも、八つと白と黒の力がギィの言っていたすべての力のことなのかなと疑問に思う。

普通すべての力と言えば、祝いの六色が示す、四つの属性と神様の力である創造と破壊だ。

残り四つが不明だし、わざわざ白と黒って分けてあるのも不思議。

そんな疑問をヴィに投げかけると、ヴィはラース君に何か知っているかと聞いた。

ラース君はグルルとヴィに返事をして、ヴィは頭を抱える。


「だから、すべて(・・・)ってなんだ!」


「ラース君、全部だと数字が合わないよ?」


ラース君がすべての力だと答えたのだとしたら、神様だけでなく、女神様の力や精霊王たちの力も含まれると考えた。

でも、そうするとマカルタ語の一文とは合わない。

まぁ、聖主が持っていたものを信じるか、ギィの書いたことを信じるか、どちらかと言われたらギィを選ぶけど。


――ガウッ。


「その時代の者の解釈がそうだっただけ……か」


ラース君の言葉をヴィが教えてくれたけど、マカルタ語の方が間違っているってことでいいのかな?


「ラース君はすべての力がどれなのか知ってるの?」


――グルルルゥ。


ラース君が知っているなら話は早いと思って聞いてみたけど、ヴィの反応からして、あまりいい返事ではないみたい。


「どこまでを含むかわからないそうだ」


どこまでを?力ってそんなに種類があるの??

私が首を傾げていると、ラース君から何か説明されたのか、ヴィはそういうことかと一人納得する。

一人だけ満足していないで、説明しておくれとせっつく。


「まず、身近な力と言えば、俺たちが普段使っている魔力と精霊の力がある。これだけで、属性ごとに分けたら八つの力になるな」


確かに!魔力と精霊の力は別物だって、ママンも言ってた!

さらに、神様は創造と破壊、女神様は再生と慈愛の力を持ち、聖獣の力も属性で見れば六つあるし、治癒魔法も魔力とは異なる力と言える。


「初代様の時代に条件が揃わなかったということは、光の聖獣や闇の聖獣の力が必要だと見ることもできる」


それ以前に、そもそも神様の創造と破壊の力はどうやって集めるんだって話だよね。

だって、神様を呼ぶのに神様の力が必要って矛盾している。

女神様の再生と慈愛もよくわからないし……もしかして、女神様を呼んでから神様を呼ぶとか?


「ミルマ国の遺跡をもっとよく調べておけばよかったな」


地下に封印されてしまった遺跡に何かヒントがあったんだろうなぁ。

あっ!


築造(ちくぞう)流のドワーフたちが写したものに手がかりがあるかもしれないよ!」


「そうか!よし、早速ルシュを派遣しよう」


……ルシュさん、ごめん。またヴィにこき使われるかもしれないけど頑張って!


◆◆◆


お茶とおやつが準備され、ちょっと休憩。

いやー、頭使うと甘いものが欲しくなるよねぇ。

ヴィが食べていいと言うので、マドレーヌみたいな焼き菓子を遠慮なく頬張る。

生地はしっとり、バターのコクと程よい甘さが舌に優しい。……口の中の水分は持っていかれたけど。


「それで、ネマは生まれ変わる前の記憶があるんだよな?」


「っぐぅっ……げほっげほっ」


お茶が気管に……!

口を手で覆いながら咳を繰り返していると、森鬼が背中を摩ってくれた。それよりも、喉の奥が痛い。

危なかったー!お茶をヴィに吹きかけるところだったよ!!

なんとか昔のコントみたいな絵面を回避できたけど……。

転生していることを正直に話すべき?子供の妄想だとか思われたりしない?


「初代様が異なる世界の記憶を持っていることは知っている。愛し子は皆、ここではない世界の記憶があるんじゃないのか?」


ギィが書いたもの、あの本と手紙だけじゃなかったようで、ちゃんとラーシア語で書かれていたものもあったらしい。

……私が説明しながら読む必要あった?

まぁ、私が日本語を読めることを披露しちゃっているし、ここでシラを切ってもヴィは信じないだろう。


「そうだよ。神様にだまし討ちみたいな感じで、この世界に連れてこられたの」


私はまだ、あのやり取りで了承したことにされたのは納得いってない!

いつ、私が、イエスと言った!?もふもふについて熱く語っていたら、いつの間にか転生させられたんですけど!私は被害者だ!!


転生させられた経緯を話したら、珍しくヴィが表情に出すくらい驚く。


「成人した女性だと!?お前が?」


なんでそこに驚くのさ!


「二十七歳独身の仕事に追われる平社員だったけど悪い?」


仕事ばっかりの毎日で、結婚も考えてなかったし、そもそも自宅と職場の往復だけの日々に出会いなんて皆無だ。

本当は猫を飼いたかったけど、仕事で留守がちな上に、ペット可の物件に引っ越す時間もなかった。

実家の母親から送られてくる猫たちの画像が癒やしだったなぁ。


「ひらしゃいんがどういう意味かわからないが、成人女性の記憶を持っているだけ(・・)なのか?それとも人格も維持しているのか?」


ヴィに聞かれて、思わず考え込んでしまう。

だって、今までそんなこと微塵も考えたことなかったからさ。

秋津みどりの人格かと言われたら……日本にいたときの()とは違うと感じる。

かと言って、ネフェルティマの体が記憶だけを引き継いだとも言いがたい。

思考は確かに()なのに、言動は前世の記憶にある秋津みどりとは一致しないというか……。

なんとも言えない違和感を覚えながら、ヴィに説明する。


「普段のネマは正直、成人女性とはとても思えない。高位貴族の子女としてはどうかとも思うが、市井で見かける子供と同じだ」


それは暗に、ただ遊んでばっかりだと言っていたりする?

一応、お勉強もお姉ちゃんやパウルに教わりながらやってるよ?魔法に関してはちんぷんかんぷんだけど……。


「たまに、子供とは思えない発言や発想をすることもあったが……。ネマの子供の部分と大人の部分、どうも不自然な印象を受ける」


「不自然?」


「あぁ。なぜこんなにも初代様と違っている?初代様は幼い頃から創造神様の願いを叶えるために動いていたし、大人以上の活躍を見せている」


ギィは時代的なこともあるけど、私みたいに遊び呆けてはなかったね。

子供の体に精神が引っ張られている可能性もあるが、メンタルの強さの差もあるかも?

現代で育った私と、戦争に参加していたギィ。同じ日本人でも、生まれた時代も、過ごしてきた人生も、何もかもが違いすぎる。


「何か原因があるのではないか?例えば、創造神様がネマにだけ、子供返りするようにしたとか……」


あの神様のことだから、ないとは言い切れない。

しかし、私を子供返りさせるメリットは、面白い以外ないと思う。

面白いだけでそんなことする……のが神様だよねぇ。

そんな感じのことをヴィに言ったら、なぜか同族かと納得された。解せぬ!




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