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ママンからの要望。

王妃様の登場には驚いたけど、これで荷物の多さに納得した。

ヴィだけであんな荷物の量になるわけないよねぇ。

とりあえず、部屋に落ち着こうということになり、オスフェ家一行は家族団欒用の大きな部屋へ。

途中、ヴィにラース君が戻ったら必ず声をかけてと念押しするのは忘れない。

ラース君が側にいないのは、たぶんヴィが何かをお願いしたからだと思う。何をお願いしたのかはさっぱりわからないけど。


家族団欒する大きな部屋は、私たちの部屋とは違って寝室とリビングと分かれているタイプだった。パパンとママンはここの寝室を使うようだ。


「一息入れてから、私たちも太上陛下にご挨拶行こう」


今は王妃様のドッキリ大作戦が行われているだろうし、そのあとは感動の再会を味わい、先帝様たちは娘と孫と語らうのだろう。一息と言いつつも、かなりまったりと過ごすようだ。

ちなみに、私たち家族の近況報告はあっさりと終わった。だって、ほぼ毎日手紙のやり取りしていたら、近況もほとんど知っているしね。

なので、あまり手紙には書かれていない王立学院の様子だとか、我が家の使用人たちの様子を教えてもらう。

アイルは相変わらずプルーマを溺愛しているらしい。その愛は伝わっていないようだが……。


一時間ほどおしゃべりを楽しんで、パパンたちが先帝様にご挨拶へ向かうので、私とお姉ちゃんも同行することにした。

警備をしている警衛(けいえい)隊の隊員に取り次ぎをお願いし、案内された先では王妃様が笑顔で出迎えてくれた。


パパン、ママン、お兄ちゃんが公用の礼一位を取り、先帝様と皇太后様にご挨拶。その間、私とお姉ちゃんは略式のお辞儀だけでいい。


「オスフェ公も久しいな。貴公の活躍ぶりは私の耳にも届いているぞ」


「ありがとう存じます。ですが、私めもまだまだ未熟ゆえ、太上陛下にもご迷惑をおかけすることもあるでしょう」


「ご息女たちのことなら心配はいらん。孫たちと仲良くしてくれているし、このままずっといて欲しいくらいだ」


先帝様、それ、パパンの前では禁句ですよ……。


「とんでもございません。殿下方には、娘たちよりもっと相応しいご令嬢がおられますでしょう」


パパン、声に棘があるよ!不敬になっちゃうから、全力で隠して!


「あら、駄目よ。ネマちゃんにはヴィルがいるんだから」


王妃様ぁぁぁぁ!?さらなる爆弾を投下してどうするんですかぁぁぁ!!

この場にはヴィもいるのに、ヴィは素知らぬ顔をしてお茶を飲んでいやがる。ヴィめっ!


「王妃陛下、そのような事実は一切(・・)ございません。ヴィルヘルト殿下にご迷惑ですから、お控えください」


パパンははっきりきっぱり言ったのに対して、王妃様は美しい仕草で扇を出して口元を隠し、言葉はなかった。

ただ、王妃様の近くにいたヴィが、これ見よがしにため息を吐いたのが気になる。

王妃様がヴィにだけ聞こえるよう何か言ったのかな?


「まぁまぁ。どちらにせよ、互いの交流を深めれば、なるようになるだろう」


先帝様が王妃様とパパンの間に入るが、言っていることは問題である。

だって、恋愛関係になってしまえば、パパンも文句は言えないよねってことじゃね?


「お父様の言う通りですわね。ヴィル、頑張るのよ!」


ヴィは、はいはいとおざなりな返事をしているけど、そこはきっぱり断ってよ!じゃないと、あとが怖いんだから!

誰がパパンを宥めると思っているの!!


◆◆◆


ぐったり疲れて部屋に戻ってくると、パパンはまだ怒っている。


「ダオルーグ殿下と仲がいいようだが、殿下のことが好きなのか?」


「ダオは大事なお友だちだよ?」


それに、ダオの気持ちは聞いたことないけど、マーリエのことを憎からず思っていそうではある。


「他の皇子殿下はどうだい?」


「んー、テオ様は変わっている方だなぁって思う。クレイ様は……困ったおにいちゃん?アイセ様はとにかくなぞな人!」


確実にそういうことを聞いているわけではないのだが、興味ないと思わせるためにも、ちょっとズレた発言をするしかない。


「困ったお兄ちゃん?ネマが兄のようだと思っているということは……」


あぁ、そっちに受け取っちゃったか。


「クレイ様は心配性で、あれもダメこれもダメって言うから、おにい様と違うなって」


頑張ってクレイさんのお兄さんぶりとお兄ちゃんの違いを説明すると、パパンは納得してくれた。


「じゃあ、ライナス帝国で好きになった男はいないんだね?」


「うん。ワイバーンのダノンやカルスは好きだけど、男じゃなくておすだし……」


飛竜兵団のワイバーンの長ダノン、学術殿(がくじゅつでん)で余生を過ごしているカルスは、やっぱりワイバーンということもあって印象に残っている。


「ネマ、そのまま変わらずにいておくれ」


人よりも生き物の方が好きというスタンスが伝わったのか、パパンの表情が和らいだ。

今はもふもふするので忙しいし、恋愛っていう歳でもないし、そんなに心配することないと思うんだけどなぁ。

まぁ、ここはもう一押ししておくか。


「おとう様やおにい様みたいな人なら好きになるかも!」


父親なら言われたいセリフ上位の『パパと結婚するの~』はママンがいるので言えないけど、それに似せた言葉でもパパンは喜んでくれるはず。


「私みたいな男はなかなかいないと思うが、ネマのためなら探してみよう」


「私が大きくなったらね!今はいっぱい遊ぶ方が大事だもん」


今から探されそうな勢いだったので、それはやめてもらわねば。子供だと大きくなったら性格が変わっているかもしれないし、大人を選べば年の差が問題になる。


「嫁ぐのが嫌なら、私たちと一緒に暮らすこともできる。急いで大人にならなくていいから」


いや、成長期は欲しいよ?めっちゃ切実に欲しいよ?

子供の成長なんてあっという間だろうし、パパンが少しでも可愛い時期が長くあって欲しいって気持ちはよくわかる。

子猫や子犬の可愛い時期は、ほんとあっという間に過ぎてしまう。大きくなっても可愛いけど、子供時代の可愛さは別格だもの!

それに、領地の田舎でスローライフも楽しそうではある。魔物っ子たちも連れて、田舎の野山を駆け回ったり、逆に屋敷に引き篭もって読書三昧したり。好きなときに食べ、好きなときに寝る!まさにスローライフ!


「おとう様とおかあ様と、のんびり暮らすのもすてきね。もちろん、あの子たちもいっしょよ?」


「忘れていたわ。ネマ、キュウビはどこにいるのかしら?」


突然、ママンが手を叩いて、私の方に身を乗り出してきた。


「あの子たちは別の部屋で遊んでいるよ」


「オルファン、魔物の子たちを呼んできてくれる?」


すっかり雰囲気が変わってしまったが、ママンが嬉しそうなのでパパンは何も言わない。

我が家の最強はママンなので、話を蒸し返すことができないのだろう。ちょっとパパンが可哀想。

パパンを慰めるために膝の上に乗って甘える。


「稲穂はね、しっぽが四本もあって、いつもほかほかしてるし、火の玉も出せるの!」


うちの子、凄いでしょと自慢すると、ママンは真剣に聞いてくれた。珍しい魔物であるキュウビの生態に興味があるようだ。

食事は何を与えているのかとか、他にどんな魔法を使えるのかとか、めっちゃ聞いてくる。

パウルに助けられながら、ママンの質問に答えていると魔物っ子たちが到着した。

オルファンがいるせいか、星伍と陸星の尻尾に元気がない。


「星伍、陸星、大丈夫だよ。オルファンは怖くないからね」


どんな訓練をされたのかわからないが、オルファンとパウルが揃うと怖いことされると思っているのかもしれない。さすがに、ここにいる間は過激な訓練などはしないはずだ。

オルファンを見やれば、星伍たちのことは気にしていないと、普段通りの表情をしている。それが、逆に何を考えているのかわからなくて怖い感じもするけど。


「ね、オルファン。星伍と陸星を怒ったりしないよね」


「そうですね。ネマお嬢様にご迷惑をおかけしない限りは」


この子たちに迷惑をかけられたことなんてあっただろうかと記憶を探るも、とっさには出てこなかった。

たぶん、ない。あっても、記憶に残らないくらい些細(ささい)なものってことだ。


「ほらね。こっちにおいで。稲穂も出てきていいよ」


森鬼が下げているショルダーバッグから、稲穂がひょっこり顔を出す。知らない人がいるからか不安そうだ。

私はパパンの上から降りて、稲穂を迎えにいく。


「稲穂に会わせたい人がいるの。私のおとう様とおかあ様とおにい様。おかあ様はちょっと怖いかもしれないけど、私が守るからね」


陛下が言っていていた、魔物との相性。水属性の陛下は稲穂と合わないと言っていたので、同じ水属性が強いママンも合わない可能性は高い。逆に火属性のパパンとは、相性バッチリなはず!


「キュウビも小さいとずいぶん可愛らしいのね」


ママンが手を伸ばすと、稲穂はおっかなびっくり鼻先を近づける。耳がぺったんこになっていたのが、徐々に立ち上がってくる。警戒が解けたのだとしたら、魔法の属性は関係なかったのかな?


「稲穂、おかあ様は怖くない?」


――きゅん!


「うーん、おかあ様は水の魔術師なのになんでだろう?」


「属性による相性のことからしら?」


「うん。こうていへいかは稲穂と相性がよくないって言ってたの。へいかは水で稲穂が火だからって」


「ネマは知っているとばかり。ある方法を使えば、属性による相性をなくすことができるのですよ」


ママンが言うある方法とは、自分自身を無属性の魔力で包むことだった。そうすれば、反する魔力が触れあわないので、拒絶感がわかないそうだ。

それを聞いて、私がしきりに感心していると、ミシュリー局長が使っているのを見たことがあるはずだと言われた。

ミシュリー婆ちゃんはママンと同じ、王立魔術研究所の魔法生物局の局長で、私が研究所に行くといつもお世話になっていた。

魔法生物は魔法に関連する生き物全般を示し、人型の種族、魔物、魔生(ませい)植物まで、魔力を持っていたり取り込んだりする生き物を調査・観察している。

確かに、魔法生物局では魔法が使える小型の魔物を飼育しているので、属性の相性があるとお世話も満足にできないよね。

そうか、無属性の魔法を使ってお世話していたのか。まったく気がつかなかったよ。


ひょっとしたら、稲穂に無属性の魔力をまとわせれば、サチェとユーシェへの苦手意識が少しはマシになるのでは?

稲穂はお風呂に慣れたおかげか、水は平気だ。ウォータースライダーで遊ぶくらいだから、好きだと言ってもいいかもしれない。

だけど、サチェとユーシェの側には近寄りたがらないので、属性による相性の問題だとしたら、この方法で改善できそう。


「同じ属性の場合はあのように……あら、可愛い」


ママンの視線の先には、いつの間にかパパンに甘える稲穂の姿があった。

稲穂は気持ちよさそうに顎の下をくすぐられており、パパンの膝の上でお腹を見せていた。

そのとろけきった表情といい、お前は猫かと突っ込みたくなる。


「指に火の魔力をまとわせて触れると、気持ちがよいようね」


「わたくしも知りませんでしたわ。知っていれば、もっとイナホを()でられたのに!」


軟体生物と化している稲穂に、お姉ちゃんまでもが魔力を使って触り始めた。


――きゅくぅぅぅぅ。


その鳴き声だけで、気持ちよすぎるっていうのが伝わってきた。ちょっと羨ましいかも……。


――みゅっ!みゅぅぅぅっ!!


白がお兄ちゃんの足元でぴょんぴょん飛び跳ねている。

白もお兄ちゃんに会うのは久しぶりなので喜んでいるのだろうと思った矢先、お兄ちゃんがくしゃみした。しかも三連発。


「おにい様、体調よくないの?」


「心配してくれてありがとう。ただ、この子たちが外に出たかっただけみたいだよ」


この子たちと言われて足元を見ると、白が四つに増えていた。

分身の術でも使えるようになったのかと驚いたけど、よくよく見れば色が違う。


(はい)銀鼠(ぎんねず)薄墨(うすずみ)!」


この子たち、お兄ちゃんから離れたがらなくて、そのままお兄ちゃんと一緒にいたんだった!ごめん、忘れてた!

私の心の中での叫びが聞こえたのか、お兄ちゃんも大人しすぎて寄生されているのをよく忘れてしまうと笑っている。

まぁ、お兄ちゃんに迷惑をかけていないならよしとする。


「……へ、っくしゅんっ!」


お兄ちゃんにつられたわけではないが、私も大きなくしゃみを一つ。

なぜくしゃみが出たのかは明白だ。

四つが五つになっていて、一つだけ黒々としていればね。


(こく)もみんなに会いたかったんだねー」


五匹で部屋中を飛び跳ねたり転がったりしている様子を見て、兄弟スライムに会えたことが嬉しいんだろうなぁってほのぼのした。


「ネマ、ミシュリー局長から試してもらいたいってお願いされたことがあるのだけど、やってみてもいいかしら?」


スライムたちの姿に和んでいると、何やら真剣な様子のママンからお願いされた。


「稲穂に何かするの?」


「デールの魔力を与えてみたいの」


スライムなら魔力を食べる子もいるが、稲穂は普通に肉食だけど?


「稲穂……いなほーー!!」


とろけきっている稲穂の耳元で名前を呼び、こちらに意識を向けさせる。なんか、寝落ち寸前みたいになっているけど大丈夫かな?


「おとう様の魔力を稲穂にあげてみたいんだって。稲穂はどうしたい?」


パパンの魔力=気持ちいいものと認識したのか、尻尾をふりふりしながらきゅっと鳴いた。

たぶん、承諾の鳴き声だと思うけど、念のために森鬼にも確認する。


「欲しいと言っている」


だよねー。本人の承諾を得たので、飼主である私も承諾した。

ママンがパパンに目配せすると、パパンは稲穂に優しく告げる。


「痛みや気持ちが悪くなったら、すぐに教えるんだよ」


――きゅぅ!


パパンから稲穂への魔力譲渡を、みんなが興味津々に見つめている。

残念ながら、私には何が行われているのかさっぱりわからない。

そんな中で、同じ属性で魔力を与えたりできるのなら、ママンと海だって可能っていうことに気がついた。

それと、海が火属性持ちを嫌がったところを見たことがない。稲穂と海は反する属性だけど、とっても仲良しだ。何が違うんだろう?


「稲穂っ!?」


突然、稲穂の体が炎に包まれる。

嫌な記憶が(よみがえ)った。自分でも気づかないうちに体が震えていて、稲穂の側に行きたくても足が動いてくれない。


「おっと、すまない」


「ネマ、大丈夫だよ」


私の様子に気づいてくれたお兄ちゃんが、頭ごと抱きしめて視界を遮ってくれた。


「あれは溢れ出した魔力が具現化したものだから。本物の炎ではないから安心して」


あれが炎でないと聞いて気持ち安心する。震えも止まったけど、まだ体はこわばっているみたい。

パパンたちもこちらに気づき、心配そうな声が聞こえてくる。

事前に火が出てくるってわかっていればこんなにはならないんだけど、突発的な炎はとても怖い。


「ネマ、私が悪かった。もう怖い思いはさせないからね!」


――きゅぅぅん?


いつになく焦っているパパンの声と稲穂の声に誘われて、そろりと声の方に顔を向ける。視界に炎の色はない。


「……稲穂??」


しかし、稲穂の姿にはめちゃくちゃ違和感があった。

なんか、大きくなって……るんじゃなくて、尻尾が増えてる!?

別の衝撃を受けたからか、体が動くようになったので稲穂をガン見する。

いち、に、さん……やっぱり尻尾が五本になってる!しかも、体毛の色も赤の色が強くなってない?目の錯覚??


「どういうこと?」


何がどうなって稲穂の尻尾が増えたのか理解できない。

誰か説明してくれと、お兄ちゃんを見、お姉ちゃんを見、ママンを見た。

ママンの表情から、何か知っていそうなのが読み取れる。


「ミシュリー局長にお願いされたことがあると言ったでしょう?」


私がキュウビの子供と仲良くしていることを知ったミシュリー婆ちゃんは、自分が立てた仮説を検証して欲しいとママンにお願いしたそうだ。

その仮説とは、キュウビは尻尾に魔力を蓄え、魔力量によって尻尾が増えるのではないかというものらしい。

つまり、外部から魔力の供給があれば、生まれた年数にかかわらず尻尾が増えるかもしれないので、それを確かめてくれと。

ミシュリー婆ちゃんの仮説通り、尻尾は増えたね。増えるもんなんだね……。


「稲穂は体調が悪くなったりしていない?」


――きゅん!きゅぅきゅっ!


「体が温かくて元気だそうだ」


私が何か言う前に、森鬼が翻訳してくれる。

体が温かいって、パパンの魔力のせいなのか?

赤味の増した毛並みを触ってみると、またもやびっくり!


「あつっ!」


やけどするほどではないが、触るのに躊躇(ちゅうちょ)するくらいには熱い。この温度なら、長く触ると確実にやけどするだろう。


「体温が上がっているのかしら?」


ママンは研究者の顔つきになっており、熱さをものともせずに稲穂を触りまくる。

どうやら、体温ではなく、毛自体が発熱しているみたい。


「デールも触ってみてくれる?あ、魔力はまとわせないでね」


ママンにお願いされて、今度はパパンが稲穂に触れる。そしてすぐに、パパンは何か気づいたようだ。


「私が与えた魔力を放出している」


「多く与えすぎ?それとも、体が他の魔力を受けつけないのかしら……」


「尻尾が増えたということは、受け入れる余地があったということでは?」


みんな、稲穂に起きた現象について真剣に考え込んでいるので、ここは魔物に詳しい森鬼に聞いてみたらどうだろう。そう思いついて、森鬼に話を振ってみた。


「害があるものだから出しているんじゃないのか?」


人間なら体に悪いものは反射的に吐き出そうとしたりするけど、それと同じってこと?

ママンたちは森鬼の意見を聞いて、さらに議論が白熱している。

私としては、それよりももっと重要なことがある。

稲穂がこのままだと、熱くて触れない!稲穂の尻尾をもふれないとか、超一大事ですよ!!

原因解明はママンたちに任せるとして、私は星伍と陸星に稲穂に触れないよう注意することにした。


「お鼻や肉球がやけどしたら大変だからね。必ず元に戻るから、それまでお互いがまんしようね」


「わかったー!」


「がまんする!」


不用意に触れることもあるだろうから、遊ぶのも控えた方がいいかもしれない。

ただ、それだと稲穂が淋しい思いをするので、熱さに耐性がありそうな白と一緒にいてもらうか……。


「海は今の稲穂をさわれたりする?」


「今の状態は無理」


間髪を入れずに無理ときた。前はよくて今は無理ってことは、海が稲穂に触れる基準は火の魔力じゃなくて温度なのか。

海の次は森鬼に聞いてみると、海のようには即答せず、無言で稲穂を撫でている。


「これぐらいなら問題ない」


「熱くない?」


「言うほどには熱くないな」


森鬼が大丈夫と言うなら、お世話をお願いしよう。白だとお世話まではできないと思うし。

念のため、白も大丈夫なのか確かめてみたけど、稲穂の頭に乗っても普段と変わらない様子だったので、遊び相手をお願いした。


「水魔法で魔力を相殺できないかしら?」


「危険ではなくて?沸騰して茹だるかもしれないわ!」


ふと聞こえてきた会話が恐ろしい。茹だるって、稲穂が茹だるの?

その後は、お兄ちゃんが提案した冷風で冷ましてみるというのをやってみたけど、まったく効果はなかった。

ただただ、稲穂が気持ちよさそうにそよぐ風を受けただけだ。

そして、進展もないまま夕食となり、あっという間に寝る時間になった。

数時間経過しても元には戻らなかった稲穂は私と一緒に寝ることが許されず、きゅーきゅーと悲壮感漂う鳴き声を出しながら、森鬼に連れていかれる。


「ネマ、心配いらないわ。ミシュリー局長から返事が来たの」


ママンは夕食前の時間を使って、早速稲穂についての報告書を作り、ミシュリー婆ちゃんへ送っていた。

先ほど、その返事が届いたようで、ミシュリー婆ちゃんの考察では変化は一過性のものだろうということだった。

数日経っても戻らない場合、人工魔石に魔力を吸わせてみてはどうかと対処方法を書かれてあったらしい。

そう。魔石は人工的にも作ることができる。人工魔石の方が、天然の魔石より魔力の容量が大きいという特徴がある。しかし、作るのにも多くの魔力を必要とするため作り手が少なく、したがって供給も少ないので、天然の魔石よりお高かったりする。


「この国でなら人工魔石も手に入りやすいし、腕のいい職人も多いから、イナホに似合う首輪を作ってあげましょう」


ママンの囁くような声とお布団の上からポンポンされる感触が心地よく、眠れないかもって思っていたのにあっさりとスヤーしてしまった。


翌朝、稲穂は無事に元の姿に戻っており、嬉しくてもふり倒したのは言うまでもない。


稲穂も謎の進化を遂げる日が来るかもしれない……。

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