スカウトすべし!
「ドワーフ族野鍛冶流の長、ラグヴィズだ」
……お、おさぁぁぁ!?
子供でも長になれる種族なのかな?
私が驚いていると、ラグヴィズと名乗った少年は私たち一行を無視して通り過ぎ、カイディーテとユーシェの側に跪く。
少年の鮮やかな赤紫の髪が目に残る。
「地の聖獣様、水の聖獣様、ご挨拶を申し上げます」
少年が恭しく聖獣を讃える口上を述べるも、カイディーテとユーシェは聞いちゃいないし、見てもない。本当に、契約者とその身内以外には無関心だなぁ。
「地の聖獣様、地竜様のおられる場所をご存じでしたら、お教えいただけないでしょうか?なにとぞ、お願いいたします」
挨拶を述べていたときと打って変わって、緊迫した空気を漂わせている。
しかし、カイディーテは何も返さないし、どちらかと言えば、警戒心を強めたように感じる。
「……長殿。地竜様の居場所は何人にも教えられないことになっている」
陛下がそう告げると、少年はようやくこちらに意識を向けた。
少年の髪を見ていると、赤紫蘇を連想してしまう。梅干しの中に入っている赤紫蘇、美味しいよね。
濃い黄色の大きな目から、外見に似合わず狡猾さがにじみ出ているように思う。そのせいで、無垢な子供のようで一癖も二癖もある食わせ者という、相反する印象を受けた。
「あんた……エルフ族か?」
「いいや、先祖返りだ」
ライナス帝国は、ハーフエルフであるロスランが迫害されていた種族を集めて興した国が礎となっているため、今でも先祖返りが一定数生まれている。
「水の聖獣様に、先祖返り……。皇帝か」
これだけヒントが揃えば、誰だって皇帝だと気づくよねぇ。
そもそも、陛下って隠す気あったのかな?
陛下は正体を当てられても、何も言わずに微笑んでいる。肯定も否定もできないから、黙っているしかないのだろう。
「で、なんの用だ?」
突然、ゾゾゾゾッて総毛立つ感覚に襲われた。
いつの間にか、私の目の前にはパウルの背中があり、周りの警衛隊の人たちも剣を抜いている。
何が起こったのかと、パウルの後ろから覗いてみると、少年が岩のようなものに座っていた。
先ほどまで、岩などなかったのに……。
「ちょっと魔法を使っただけだろ。そんなに怒るなよな」
魔法で椅子の代わりになるものを出したら、みんなが超反応しちゃったってこと?
じゃあ、あのゾッとする感覚はみんなの殺気だったのか。
「ここから東にある道沿いに人の集落ができたのだが、そこで盗みが発生しているんだ」
「……それで?」
「なぜかサンテートばかり狙われる。君たちがこの森で活動しているなら、何か心当たりがないかと思ってね」
「皇帝さんよ、はっきり言ったらどうだ。僕たちを疑っているってさ」
挑発するような物言いだけど、陛下には効いていない。
それどころか聞き流して、土の魔法が使える警衛隊員に椅子を作るよう言っている。
椅子が必要になると想定していたのか、隊員は文様符を地面に置いて『成形』と詠唱する。すると、地面が盛り上がり、見えない手が粘土をこねるかのように形が整っていく。
時間にして五秒くらいだっただろうか。装飾までついていて、どこかで見たことあるような気もするけど、茶色い椅子ができあがった。
その椅子に優雅に腰掛ける陛下は、場所が森の中でも皇帝たる威厳を備えている。
「今は証拠がないからね」
精霊が犯行を目撃しているかもしれないけど、エルフと違って陛下は精霊の言葉を偽ることができるので、証拠とは言えないのだ。
偽ったら偽ったで、精霊がプリプリ怒りそうではあるが。
「それと、一つ確認したいのだが」
陛下が目配せすると、隊員が例の大剣を持ってくる。
「これは君たちが鍛えたものかな?」
少年は素直にその大剣を手にし、鞘を抜く。そして、鋭い眼光で剣身を睨めつける。
「ほぉ……。一季までは経ってないようだが、いい具合に使い込まれている。拵えを見るに、皇帝さんのものではないな」
「あぁ、大伯父のものだ。私と違い大柄で、武勇の優れた御仁だった」
百年経っていないとか、どんな人に合わせて作ったとか、どこを見ればわかるの?
「皇帝さんが知っているかわからないが、僕たちドワーフにも得手不得手がある。この野鍛冶流は武器ではなく、農具や調理具といった日常に使うものを作っている。これは別の流、武具流が鍛えたものだな」
「そうか。素晴らしい一振りなので、私もお礼を伝えたかったのだが……」
「これを鍛えたのは、ドワーフ族でも名を残している名匠スラーデンだろう。彼が女神のもとへ旅だってだいぶ経つ」
ドワーフ族は人間よりちょっと長い百歳前後が寿命らしいので、さすがに剣を作ったと思われるスラーデン氏は亡くなっていた。
「この剣は大切にしてくれ。今は失われた技術で作られていて、とても貴重なものだ」
「失われた……?」
少年は陛下に大剣を返すと、ある一点を指で示す。
「この文字を使って、魔法を付与しているらしい。詳しいことはもう誰も知らないんだ」
文字?ラーシア語でないとしたら神代語か精霊文字だけど、読めないとしてもそれがどの文字くらいかはわかるはず。
ひょっとして、その文字が前に陛下が教えてくれた、ドワーフが作ったものに残されている『古代魔法』と関係あったりする?
ちょっと私も見たい!
会話の邪魔にならないよう、そろりそろりと近づいてみたけど、その文字らしきものは見えなかった。
失われた技術は、ドワーフ族の中でも条件を満たした者のみ口伝伝承できるものだと少年は言う。
そして残念ながら、多種族との交流を絶ち、複数のグループにわかれて放浪する間に条件を満たす者が減り、ついには最後の一人が亡くなったそうだ。
「そうか。それはさぞ無念だろう」
「あぁ。たぶん、流ごとにわかれたことが原因だろう。技術だけでなく、知識の共有、協調性、感性といった部分に偏りが出ているように感じる」
いつもと同じメンバーで、いつもと同じ作業を閉鎖的空間でやる。自分だけの世界に没頭しやすくはあるだろうが、刺激は少ないだろうね。
井の中の蛙、空の青さに気づかなければいつまでも世界は狭いままだ。
彼の表情はどこか追い詰められているようにも見える。
「だから、人が集まっているところに来たの?」
ここまで、私は大人しく聞いていただけだったけど、思い切って声をかけた。
少年が驚いていることから、私の存在に今気づいたっぽいね。
陛下に手招きされて近くまでいくと、ひょいっと膝の上に乗せられる。
「はぁ?子供!?」
君も子供でしょうと言いたかったけど、客観的に見たら、この集団に子供がいるのは不思議だよね。
「妹だよ」
……皇帝だってバレているのに、その設定で通すのか!?皇族と偽称して、あとで罰せられたりしないよね?
こういう無茶ぶりをしてくるところは、ルイさんと血の繋がりを感じるよ。
少年は興味なさげに、ふーんと返しただけだった。
まったく興味を持たれないのも、それはそれでちょっと淋しいものがある。
「気持ちを動かす何かを探しにいったんじゃないの?」
非日常を求めて夜の街にくり出し……いや、違うな。必要なものを買いにいったのに、ビビビッてくるものと運命的な出会いをし、それを購入してルンルン気分で帰宅したら、必要なものを買い忘れたときみたいな感じに近いか。
興奮して周りが見えなくなって、ふと冷静に返るとやっちまったなーって後悔するやつ。
ま、やっちまったのはしょうがないと、開き直るまでがワンセットね。だって運命だもの!
「お姫さんの言う通りだ。物作りというのは、使う者あってのもの。こんな暮らしをしていては、他の種族に追い抜かれるし、いずれドワーフ族すべての技術が廃れる。だから、人が何を作っているのか見にいった。まぁ、そこで面白いものがあって、精霊がささやいたのさ」
悪びれる様子もないまま、あっさりと白状した。
『精霊がささやいた』って、本当はいい意味の慣用句なんだけど?
意識せずに、なんとはなしに行った行為がラッキーな結果を呼ぶ的な。
その無意識の行為は、精霊が耳元で教えてくれたからと言われている。
それが、悪いことをした言い訳に使う人が増えた。魔が差すと同じだね。
結果、貴族など学んだことがある人は正しく使い、庶民などは誤った使い方をするようになったらしい。
もっと時間が経てば、一部の日本語みたいに誤用の方が広く定着するかもしれない。
「サンテートを盗んだことを認めるのかい?」
「あぁ」
開き直るまでがワンセットとはいえ、少しは反省している様子。それとも、もう罰せられる覚悟が決まっているのかな?
「盗みは労役が課せられるが、もうやらないと名に誓うなら罰金ですませることもできる」
今や伝説的でもあるドワーフを、他の犯罪者と同じ場所で働かせるわけにはいかないだろう。騒ぎになって、下手したら誘拐や詐欺など別の犯罪を呼び寄せることになりかねない。
「それなら、ロスラン計画の拠点で働けばいいんじゃない?へ……セリューにい様がドワーフ族と仲良くなったって言えば、みんな信じるよ!」
危ない危ない。陛下って言うところだった。
聖獣の契約者である陛下が、ドワーフ族から協力を得たことにすれば、労役で働いているとは誰も思うまい。
「それに、ドワーフたちも塔を作るのに関わることができるし」
私がそう提案すると、陛下は何やら考え込んでしまった。
「へぇ、それはいいな。あのサンテートもそいつらが作ったんだろ?」
「私も少し手伝ったのよ!大工組合の長といっしょにサンテートの形をいろいろ考えて、かじ組合の人たちに作ってもらったの」
H字型の鉄鋼も簡単そうに見えて、ああでもないこうでもないとヴォノック親方と試行錯誤して大変だった記憶しかない。
建築関係って門外漢でにわか知識しかなく、私は溶接で鉄板同士をくっつければいいと思っていたが、親方は納得しなかった。溶接でも強度が落ちることがあるんだって。
馴染みの魔工匠に加工するための魔道具を超特急で作らせたりと、親方の熱量が凄かった。
私は精霊からアドバイスをもらいつつ、口を出すだけだったので、親方や鍛冶組合の職人の技術があってこそ、作ることができたものだと思っている。
「お姫さんがぁ?」
半信半疑どころか、1ミリも信じていない顔をするな!
「大工組合の長だって、私を弟子にするって言ってくれたんだから!」
「社交辞令って言葉、知っているか?」
知ってるわ!社交辞令どころか、逆に断るのに苦労したわ!!
こやつ、ヴィと同じにおいがしてきたぞ。人をいじめて楽しむタイプだな!
「それだ!」
突然陛下が大きな声を出したので、私の体はビクリと跳ねた。
どうしたのかと、後ろを向いて陛下を見上げる。
「この国の鍛冶師に弟子入りしてみないか?」
陛下の発言に、今度は少年が驚く。
ドワーフをどうやって受け入れるか、ずっと考えていたようだ。それで、私の発言から閃いたと。
ロスラン計画の拠点には大工組合だけでなく、鍛冶、商業、薬師と、建設に必要な分野に関わる組合が人員を派遣している。
もちろん冒険者組合もいるけど、今のところ施設を使う側として意見をたくさん出してもらうくらいだ。彼らの出番はもう少しあとになる。
陛下は仮にと前置きをして、ドワーフが鍛冶師に弟子入りするとどうなるかを説明する。
ライナス帝国で名だたる鍛冶師の多くは帝都郊外に工房を構えているそうで、まずはそこで人間のやり方を学んでもらう。
拠点での鍛冶師の仕事は大工工具や調理具の修理修繕で、野鍛冶流のドワーフに向いている内容だから、その手伝いを任せると。
労役がロスラン計画の建設期間に終わらなければ、そのまま拠点で鍛冶組合の手伝いとして継続させるそうだ。
少年がそれでは罰にならないと言えば、陛下は庶民が盗みで捕まるとどうなるかを説明する。
一応、生産者の苦労や働くことの大切さを教える更生施設があって、食べるに困ってとか、病気の家族に治癒魔法かけてもらうお金が必要だったとか、情状酌量の余地がある人が入れられるそうだ。
犯行動機がとにかくお金のスリや詐欺といった犯罪者には、私に聞かせられないような場所で働かされるらしい。
耳を塞がれた上に、ご丁寧に声まで消してくれた陛下だけど、宮殿に帰って調べればわかっちゃうよ?
少年はなぜか両手を隠すような仕草をするし、陛下はそれを見て笑っているし、どんな会話しているんだろう?
「サンテートを返却すれば、刑期は短くなる」
あ、ようやく解除された!
今度は刑期の話題か。
「あー……。もういくつかは溶かした」
「刑期がどれくらいになるかは使用した量にもよる。どうする?」
「さすがに僕だけでは決められない。中に入っていいから、ちょっと待ってろ」
そう言って少年は立ち上がり、扉を開けて私たちを中に誘う。
エルフの森とはまた違った、牧歌的な光景があった。
小さな山のように、こんもり盛られた土に半円の板がはめられているのがたくさん見える。盛られた土にちょいちょい草が生えているのが、また可愛らしいね。
あと、中央付近にある、茄子を地面に突き刺したような形をした家がめちゃくちゃ気になるのだが……。
煙突から煙が立ち上っているのもあって、全部で七つ。家ならば、数が少なすぎるよね。
そのうちの一番大きな家に入っていく少年。私たちはどうしていいのかわからず、扉の近くで待ちぼうけ。
隊員が陛下の椅子を運び込み、陛下はそれに座って塀の中を見回している。
魔物っ子たちも好奇心を抑えられずに、においを嗅ぎながらうろつき始めた。
あまり離れないよう注意していると、どこからともなくグバーンと大きな音が三回鳴り響く。
シンバルにしては低く、銅鑼にしては高いその音。
すると、盛り土の板が開いて人が出てきた。次々と盛り土の板が開くのを見て、こちらの方が家だったのかと妙に感心してしまう。
それにしても……盛り土から出てくるのは男性ばかりなんだけど?
おじいちゃんからちびっ子まで、女性が一人もいない。
大きな茄子型の家に百人ほどが集まると、少年が話し始めたようだ。
それをなんとはなしに見守っていると、全員がいっせいにこちらを振り返った。
「ひぃっ!」
急に視線が集中し、凄く怖くてパウルにしがみつく。
自分に視線が集まる経験は何度かあるけど、貴族は露骨に見てくることはないし、国民の前に出されたときはそれどころじゃなかった。それに、あのときは私じゃなくて、ラース君とヴィを見ていたはず。
人間に対する嫌悪感とか、好奇心とか、いろいろな感情がごちゃ混ぜになった視線を浴びる恐怖は、言葉では言い表せないくらい恐ろしいことがわかった。
陛下はこういった視線にも慣れっこなのか、平然と眺めているのはさすがだ。
大勢の視線から逃れるため、私は陛下の椅子の後ろに隠れる。
そんな私の様子を心配してか、カイディーテが私の横に寝そべると、それに寄りかかれとでも言うようにユーシェに鼻先で押された。
魔物っ子たちも集まってきて、白がおでこに張りつく。
フェイスマスクをした間抜けな顔は人様に見せられるものじゃないから、外では範囲を限定した冷却シートになるようお願いしたのを覚えていてくれたみたい。
おでこにひんやりふるふるな白を感じながら、気持ちを落ち着かせる。
すると、突然私の体がふわりと浮いたような感覚に包まれた。
「えっ?何事!?」
しかも、なぜかこの感覚に覚えがある。
思い出そうと唸っていると視界が歪み、それを見て閃いた。
雫の中に入ったときに似ているのだと!
「ユーシェね!」
こんなことができるのは水を操るユーシェか海で、やるとしたらユーシェだろうと予想する。
視界がぐにゃりとなったと思ったらユーシェの鼻先が現れて、正解だと鼻息をかけられた。白に対抗してなのか、それとも私が視線を避けたことに気づいたのかわからないけど、周りから遮られたのはありがたい。
水の繭の中で休んでいると、星伍と陸星が顔を突っ込んできた。頭全体ではなく、なぜか鼻先だけ。
黒々とした鼻をちょんっと突くと、ひょいっと引っ込む。また、別の場所に鼻が現れ、それもちょんと突く。
二匹が交互に鼻先を突っ込んでいるみたいだけど、中にいる私からしたらモグラ叩きならぬマズル突き。
途中から稲穂の茶色と白の鼻先も加わって、忙しなさが増す。
これは面白い!こういった玩具を作れないかな?
「ネフェルティマ嬢、どうやら話し合いが終わったようだ」
遊んでいると陛下に声をかけられたので、ユーシェに水の繭を解いてもらい、椅子の後ろからちょこっと顔を出して周りを確認する。
まだ視線は集まっているけど、こちらに向かって歩いている少年と同行者たちを心配してのものだったので、圧力も薄らいでいた。
椅子の後ろから出て横に並ぶと、カイディーテが反対側に来た。どうやら付き添ってくれるようだ。
「悪い、まだ答えは出せていないんだが、少し聞いてもいいか?」
陛下は穏やかな表情を変えることなく、構わないと答えた。
「実は……外に出たいと望む者が多くいる。それで、皇帝さんに保護してもらえないかっていう意見が出たんだ」
「それを言ったのはぼくだけどねー」
同行者の一人、オレンジ色の髪を持つ人懐っこそうな青年が、ニッコリ笑って会話に加わる。
なんでも、最初はみんなで冒険者の登録をして、採取の依頼を交代で受けようって提案したらしい。
「保護か……さすがにここにいる全員となると……」
陛下は何やら考え込み始めたけど、私は逆に閃いた!
初心者冒険者におすすめな場所、ありますよ!!
「ライナス帝国にこだわりはある?どこでもいいのなら、ガシェ王国のシアナ特区という手もあるよ?」
私の発言に陛下は驚き、少年たちはシアナ特区を知らないからか、お互いの顔を見合わせて視線だけでやり取りをしている。
「森の外に作っている施設の見本となった町なの。冒険者も多く集まっているし、駆け出しの冒険者をきたえる仕組みもあるわ。それに、弟子入りしたいなら、ガシェ王国のかじ組合にお願いすることはできるよ」
ガシェ王国の鍛冶組合の長への交渉はお兄ちゃんに丸投げになると思うけど。
それに、野鍛冶流が得意だと言っていた、調理器具や農具を作れる者は欲しい。
シアナ特区の鍛冶組合は支店なので、工房もそこまで大きくはない。今は、武器関係を鍛冶組合が請け負い、その他をコボルトのたたらの氏に回している状況らしい。
レイティモ山で鍛冶工房を拡張するのは氏同士の縄張り的な意味で難しいので、特区の外に工房を増設する計画もあるようだ。
シアナ特区の周りは拡張予定もあってオスフェ家の直轄領になっているし、これくらいの敷地なら用意できる。
即戦力になる人員なら、ヒールランも喜んでくれるだろう。
「他国のお姫さんがそんなことできるのか?」
「大丈夫!シアナ特区をぎゅうじっているオスフェ家とはとーっても仲良しなの!」
なんせ、実家だからね!
というか、いつまで陛下の妹設定を演じればいいのだろうか?
この人たちの前ではずっと……なんてことはないよねぇ??
チラリと陛下を見てみると、うっかり視線が合ってしまった。
「ネフェルティマ……それでは、オスフェ公爵家に有利すぎやしないかい?」
それは、ほら!私がデールラント・オスフェの娘だからです!我が家に有益になるようにするのは当然だよね。
「でも、選んでもらえるようにできる限りのことを申し出るのは普通だよ?セリューにい様も帝国を選んだらこんなことできるよって売り込めばいいと思う」
帝国のトップに対して、かなり生意気な言い分だが、妹なので許して欲しい。
それに、いい人材は取り合いが起こるのもしょうがない。
オスフェ家はいつでもいい人材を求めているのだ!
「なるほど。ネフェルティマの言うことも一理あるね」
それでは、陛下による『ライナス帝国のここがいい!』をみんなで拝聴しようではないか。
「我が帝国は知っての通り、大陸の半分を占める国土を保有している。そして、聖獣がいるおかげで、各分野の資源も豊富にとれる」
ガシェ王国はどちらかというと、畜産業が好調なんだよね。資源量でライナス帝国に勝てる国はないだろう。
「あと、鍛冶だけでなく、宝飾、硝子、陶芸といった、他の物作りへの弟子入りを紹介することもできる」
うーん、それはうちではちょっと厳しいかも。
ドワーフ族であることを隠してってなると、シアナ特区以外では難しいし。
「懸念事項としては、住処に残る者たちのことだね。場所は好きに選んでもらって構わないが、守ることが難しい。軍部の獣人を駐在させるか、時々の様子を精霊に報告させるかだ」
駐在の場合は、住処に転移魔法陣を設置して、緊急時に人員を送れるようにしてくれるそうだ。
ちなみに、シアナ特区だと場所は選べない。けど、不審者が入りづらい場所ならある!
いろいろと危ないからと、シアナ特区から少し離れた場所に作られた、我がオスフェ家の私設魔術研究所だ。
この研究所の周りは、関係者以外立入禁止区域になっているし、警備はお外で活動しているオスフェ家の使用人が担っている。緊急時には、シアナ特区に滞在している冒険者たちが駆けつけ、消火活動や人命救助を手伝うという契約もしてあるらしい。
研究所が爆発する前提なのがなんとも……。
でも、その区画に住んでもらえば確実に安全だよ。
陛下の話のあとに、その辺も追加で説明しておいた。
「ちなみにだな……ライナス帝国とシアナ特区、両方は可能か?できれば、転移で行き来できるとありがたいんだが……」
それを聞いて、私と陛下は互いに顔を見合わせた。
うん、まぁ、双方のいいとこ取りをしたくなるよね……。
「国境を越える転移魔法陣の設置は、当然ながら相手国の承諾が必要となる。なので、ここで返答はできない」
思わぬ方向に話が大きくなってしまったけど、陛下はこれをどうまとめるのだろうか?
まぁ、大きくなったのは私のせいでもあるから、これ以降は大人しくしていよう。
「どちらにせよ、サンテートの窃盗に関わった者たちは一緒に来てもらうことになるので、取り調べとして拘束している間に話を詰めようと思う」
すべてを極秘に行うそうで、森から出たら軍部の特命部隊にドワーフたちのことを任せると。
特命部隊とか胸躍る存在があったなんて!
その存在は知られていても、部隊に所属する者は任務内容は絶対に口外できず、命令できるのも陛下と総帥さんだけらしい。
そんな特命部隊が少年たちを連れていき、ドワーフ族の今後が決まるまでこの村に駐在して警備と連絡役をこなす。
「わかった。まぁ、簡単に決められることではないしな」
今の話をしてくると、少年たちは仲間のもとへ戻った。
待つことしばし。
先ほどと同じ顔ぶれ……長である少年、少年と同じ年頃の男の子三人、お兄さん二人、計六名が行くことになったようだ。
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