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忙しないお茶会

いつもより短いです。

お姉ちゃんとたっぷり遊んで帰ってきたら、マーリエからお手紙が届いていた。

落ちついたようなら、明日、お茶しましょうというお誘いだった。

いつもはダオ経由だったので珍しいなぁって思ったら、マーリエ父も同席すると書いてある。おそらく、本当に用事があるのはマーリエ父のほうなのかもしれない。

それなら大丈夫だろうと、招待を受けることにした。


お茶会の場所は季節の花々が咲き誇る庭園で、私が着いたときにはダオとマーリエ、そしてマーリエ父がすでに着席していた。


「しょうたいありがとうございます」


「ネフェルティマ嬢、無事に戻られて何よりだ」


パウルが椅子を引き、私を乗せる。ダオのお部屋だと、すべてが子供サイズなのでこんなとこにはならないのだが、今日は外だし、マーリエ父もいるので、テーブルセットが通常の大きさなんだよね。大人用の椅子は、まだ優雅に座ることができないのだ!


「まずはネフェルティマ嬢の冒険の話を、この子たちに聞かせてあげてくれないか?」


というわけで、アニレーとトマ探しの話をいっぱいした。

セナンテ岬でナスリンをたくさん見つけて食べた話は、マーリエにとても不評だった。


「ネマったら、あんなもの食べたの!?」


「美味しかったよねー」


ダオもあの晩餐にいたので同意を求めると、うんっと笑顔で答えてくれた。


「僕は姿煮よりも焼いたものが好きだなぁ」


ナスリンの唐揚げもどきと焼き鳥もどきなら、姿煮よりもナスリンの顔が目立たないからマーリエも食べられそうだけどね。

今度、ナスリンだとは言わずに食べさせてみるのも……。


「それで、カルワーナ山脈の方はどうだったの?」


ダオに話の続きをせがまれたので、氷熊(ひゆう)族の村に立ち寄ったり、雪山で遊んだことを話した。

アリさんに名前をつけたくだりは、さすがに呆れられたけど。


「ネマ、あのね……」


一通り話し終わると、ダオが口ごもりながらもじもじし始めた。

その仕草があまりにも乙女だったので、ルティーさんのように心が女性なのかと焦る。


「これを渡したくて」


それは手紙のようだが蜜蝋にはライナス帝国の紋章が刻まれており、封筒の紙にはダオの象徴となる花がうっすらと浮かび上がる加工がされている。

普段のお茶しようとお誘いの手紙に使われるものとは違っているので、公式なことにしか使用しないものだろう。


「今度、初めて交遊会を開くことになって。それでネマにも出席してもらいたいんだ」


お、おぉぉ!ダオの初めての交遊会!!


「絶対に行くよ!」


ダオの晴れ姿はぜひとも見なければ!

嬉しい知らせにテンションが上がっていたが、ダオの衝撃発言により固まった。


「実は、明日なんだ」


明日?……あしたぁぁぁ!?

驚いて、急いで招待状を確認すると、確かに日時が明日になっている。


「ネフェルティマ嬢には申し訳ないが、ダオルーグの交遊会を取りまとめているのはマリエッタだ。ネフェルティマ嬢が留守なうちにやりたかったのだろう」


私がいつ帰ってくるかは、たぶん陛下くらいしか知り得ないはずだ。

フィリップおじさんが実際に雪山を見てみないことにはなんとも言えないと、帰る日を明確にしていなかった。

ヴィが精霊を使い陛下に教えていたから、帰る日にコス湿地帯まで飛竜兵団が迎えにきてくれたというわけだ。

私がいない間にダオの交遊会を開いたとして、マーリエ母は何が目的なんだろうか?

マーリエ父が監視をしてくれているそうだが、明日は公務のため出席できないんだって。

ダオの初めての交遊会を、めちゃくちゃにされたくないんですけど!


「マーリエにはつらい思いをさせるが、これもダオルーグのために必要なことなんだ」


マーリエ父の言葉に、私はハッとした。

マーリエの母親が悪役のような空気を作り出してしまったことに気づいたからだ。

マーリエ母が私を敵視していたとしても、母親が悪しざまに言われるのは聞きたくなかっただろう。


「わたくしも理解しておりますので大丈夫です」


いい子であろうと無理していないかとマーリエを窺えば、少し悲しげな笑みを返された。


「わたくし、お母様に言ったんです。ダオは皇族に相応しくあるために努力をしていると。それを手助けするのが、後見を名乗りでているわたくしたちの役目ではないかと」


ダオが皇子として頑張っているように、マーリエもそんなダオに相応しくあろうと頑張っているのは知っている。

そんな二人の様子が微笑ましく、最近では二人を応援する人たちも増えていると聞く。


「お母様はわらったの。他国の姫に惑わされるなんて愚かだと。ダオがあんなに頑張っているのに、それを見ようともしないで!」


大好きなダオを馬鹿にされたのがよっぽど悔しかったのか。

今にも泣き出しそうなマーリエは、ぎゅっとスカートを握って堪えている。


「どうやったらダオルーグの助けになれるのかと、私に聞いてきたが、その件があったからなのかい?」


「お父様は皇族ですから、ダオにしてあげられることをご存じだと思って。それに、お父様がダオをどう思っているのかも知りたかったの」


「私の答えは、マーリエの意に適っただろうか?」


「えぇ。お母様の行いはダオのためにならないと理解するのに十分なお答えでした」


この親子の間でどんなやり取りがあったのかはわからないが、マーリエが母親を見限る決心をするきっかけになったようだ。

それにしても、恋する乙女は強いね。マーリエが輝いて見えるよ。


「ダオ、わたくしはずっとダオの味方だから」


ダオは、自分のせいで母親との不仲を招いてしまったと元気をなくしているが、マーリエはどこかすっきりした顔をしている。

話したことで、心の整理がついたのかもしれない。


「私も、ダオとマーリエの味方だから!」


声高々と宣言すれば、マーリエから当たり前でしょうと突っ込まれた。

マーリエさん、ここはデレる場面だと思うのですよ。私に対して、ちょっとツンの割合が多くないですか?


「マーリエが冷たい……」


「ネマがわたくしたちのことを見捨てるなんて、これっぽっちも思っていないもの。だから、わたくしにとって当たり前ってことよ」


私が落ち込んだと思ったのか、マーリエが慌てて言葉を紡ぐさまがとても可愛かった。

つい、ふふっと笑ってしまい、それに気づいたマーリエは顔を真っ赤にして怒る。

私もダオも、マーリエ父も、いつものマーリエに戻ってくれたことに安心した。彼女に暗い顔は似合わないもんね。


「話は変わるが、ロスラン計画の方で不穏な動きがあるようだ。今、調べを行っているのだが、近いうちに視察に行くことになるだろう」


交遊会に関する話題が一段落ついたところで、マーリエ父がそう切り出す。

不穏な動きって、地元住民の反対運動……ではなさそうだな。

そういったものは想定していたし、ルティーさんが頑張って説得してくれたおかげで、ヘリオス領内での領民からの理解はほとんど得ていると言っていた。

となると、ヘリオス領で計画をやるのを反対する貴族の妨害か。

魔物による被害が一番大きかったヘリオス領だが、シアナ特区のように成功すれば、それ以上の利益が見込める。しかも、発展すればするほど領地が潤うのだから、我が領地でって思っている貴族も多いはず。

それなら、陛下の調査官なり、軍部の諜報部なりが把握していてもおかしくない。

利権にがめつい貴族たちの動きを監視しているみたいだし、それすらも陛下にとっては予定調和なのではと思う。

ようは、陛下ですら思いもよらなかった事態が起きている可能性があるということになるね。


「現地での調査は行っているから心配はしなくていい。ネフェルティマ嬢の薬の件が終わってから陛下は動くおつもりのようだから」


思考していた間の沈黙を不安と捉えたのか、マーリエ父は優しく語りかけてくれた。

しかし、そちらの発言の方が、大丈夫なのかと不安になる。

私に負担がかからないよう配慮してくれているのはわかるが、そんなに悠長にしていていいのだろうか?こういった問題って、迅速に対処しないと致命傷にもなりかねないよ?


「ですが、時間を置くのもいかがなものかと」


「気持ちはわかるが、調査が不十分な状態で行ったところでできることはないと思うが?私たちが行うべきは、原因に対して対策を講じることだ。調べるのは専門の者がいるからね」


陛下が現地に赴かねばならないような出来事が起きている。それで、現段階で調査を行っている。その結果を待てばいいのに、すでに陛下は現地に行くつもりだ。

矛盾と言うよりか、小骨が喉に刺さったような小さな違和感がある。


「つまり、陛下が何かたくらんでいるってことですか?」


導き出した結果なのだが、私が告げたとたんにマーリエ父が声を出して笑った。

別に、ウケ狙いで言ったわけじゃないのに。


「すまない。セリューはあれでも己を律し賢君として通っているのだが……」


途中で、思い出したようにまた笑うマーリエ父。

どこがツボにはまったのか、さっぱりわからない。


「ネフェルティマ嬢のような年端もいかない子供に疑われているのが面白くて」


まぁ、本来であれば、陛下に何かお考えがあって、こんな子供には到底及びもつかないことだろうと流すのがいいのかもしれないけど。

考えてもみて。あのルイさんの兄で、テオさんやエリザさん、アイセさんといった曲者の父親だよ?何か裏があると思っても不思議じゃないでしょう。


「……血は水よりもこいと言いますから」


血縁は他人よりも絆が強いという意味の言葉ではあるが、この皇族に対しては中身が似ているという意味で、この言葉がぴったりだと思う。まさに、血は争えない、だ。

そうなると、いずれダオもあんなふうになってしまうのかな?

計算高いダオ……この可愛らしい顔立ちで腹黒は嫌なので、せめて賢いキャラに成長して欲しいな。腹黒はあやつだけで十分だよ。


ダオの顔を見て、ちょっと大きくなったダオを想像する。

十代までなら爽やか少年って感じだろうけど、このまま剣を極めていけば体つきもしっかりして、陛下よりの美丈夫に進化する可能性は高いと思う。

そうなれば、他のご令嬢たちも放っておかないだろうし、マーリエも少し焦ったりするかもねー。

マーリエは今でもめちゃくちゃ可愛いから、どうあがいても美人にしかならない。

逆に、マーリエがモテモテになって、ダオが焦るというパターンも……。

超可愛い!絶対可愛い!!この目で見たい!!

自分の妄想に悶えていたら、マーリエからジト目で見られた。


「ネマ、気持ち悪いわよ」


でも、二人が可愛いからやめられない!


サブタイトルには、頭に「ネマの内心が」がつきます(笑)

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