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見よ!これが光る剣だ!

フィリップおじさんたちが出発すると言うので、朝早くからパウルに叩き起こされた。


「カーナ、ネマ。親元離れて大変だと思うが、無理はするなよ」


いつものように頭をワシワシと撫でられるが、少しだけ手つきが優しかった。


「おじ様たちも気をつけてね」


「おう。早く終わらせて、ベルガーたちを鍛えないといけないからな」


どうやらベルガーたちには冒険者の才能があったらしく、みんなにしっかりと鍛えられているみたい。父親のような、一人前の冒険者になれる日も近いだろう。


フィリップおじさんたちをお見送りしたあと、朝食を食べているときにお姉ちゃんが今日の予定を聞いてきた。お姉ちゃんは学術殿(がくじゅつでん)を今日までお休みするらしく、久しぶりに姉妹水入らずで過ごしましょうと誘ってくれたのだ!


「ネマってば、ずっとラース様と一緒でしょう。わたくし、ちょっと妬いてしまうわ」


拗ねた表情のお姉ちゃんは凄く可愛い!!

なんでこの世界にはカメラがないんだ……写真と動画で永久保存するべきなのに!

あ、でも、パパンに持たせたらダメだな。下手したら一日中カメラで撮られるはめになるから。


「今日はおねえ様とずっといっしょにいる!」


「じゃあ、ネマにお願いされていた光る剣の完成品を見せようかしら?」


お、おぉぉぉ!ついに!

ブォンッ音があれば、憧れのライトほにゃららのまんまだったから、めちゃくちゃ楽しみにしていたんだよね。

私は、魔女っ子ステッキよりも光る剣を振り回したい!!


「ほんと!?見たい見たい!今すぐ見たい!!」


ウキウキ気分で朝食を終え、今か今かと待ち構えていたら、思わぬ邪魔が入った。


「カーナ、ネマちゃん、ちょっといいかな?」


「よくない!」


ひょっこりと現れたルイさんだが、どうせならもう少しあとに来てくれればいいのに。

恨めしい気持ちでルイさんを見つめると、今日はちゃんとした用事があるんだってと苦笑する。

つまり、いつもはちゃんとしていない用事でこの部屋を訪れていたわけだな。


「戻ってきたばかりで申し訳ないけど、ネマも気にしていた件だからさ」


私が気にしていてルイさんに話ししたことって……はっ魔道具だ!


「おかあ様に送りたいって言った魔道具のこと?」


「そうそう。陛下と相談して決まったから報告とお願いを少々」


「そういうことでしたら、こちらへどうぞおかけになってください」


魔道具と聞いて、即座にお姉ちゃんが反応した。

さっきまで私と遊ぶって言っていたのに!

今度は私が拗ねながら、お姉ちゃんの隣に座ってルイさんのお願いとやらを聞く。


「預かった魔道具だけど、こちらの研究所でも魔法構造に手を加えれば、人を殺せる武器となりえるとの見解だった。これを作ったエルフには、対策が見つかるまで売るのを中止するよう命を出してある」


「エルフ様もさぞ無念だったことでしょう」


販売中止に対して、お姉ちゃんは魔道具職人に同情を示した。

自らも魔道具を作るから、苦労して作ったものが危険だから認められないと言われたときを想像したのだろう。


「あれを作ったエルフは危険性をしっかり理解し、彼自身も改良を試みると言ってくれたよ」


エルフさんも魔道具作りのプロとして、人任せにはできないみたいだね。

子供向けの魔道具を作っていることもあり、安全ではないまま売った責任を感じてのことかもしれないけど。


「それで、どうお願いに繋がるのでしょうか?」


ライナス帝国の魔術研究所と製作者が動いていて、他に何かあるのかと本題に戻すお姉ちゃん。


「研究所の魔道具の部門には魔工匠(まこうしょう)の称号を持つ者が数名いるが、彼らがオスフェ公爵夫人……王立魔術研究所の魔法工学局長の協力があれば心強いと言っていてね。陛下に奏状を挙げたところ、協力をお願いしてみようってなったんだ」


「そうでしたの。それで、密かにお母様に繋いで欲しいというところでしょうか?」


「こちらから使者を立てるが、接触方法はその者に任せてある。突然と現れるかもしれないので驚かないで欲しいと伝えてもらいたい」


「貴婦人が一人のところを伺うなんて、氷漬けにされても知りませんわよ?」


秘密裏に動くのであればママンが一人のときに接触するだろうけど、ママンが驚いて魔法で攻撃しないとも限らない。

身分が高いこともあり、一人のときは特に警戒するだろうしね。


「女性のアーマノスを向かわせるから、氷漬けは勘弁してあげて」


「アーマノスに女性の方がいるのですか!?」


ルイさんの言葉にびっくりした。

だって、陛下直属のって枕詞がつくと、男性ばっかりってイメージがあるからさ。


「もちろんいるよ。不正を働く者が男だけとは限らないし、罪を犯したとはいえ貴婦人を相手にするなら最低限の矜持は守ってあげないといけないからね」


そう言われて、私の方が視野が狭かったのだと覚る。

我が国でも女性が爵位を継ぐことは認められているし、近衛騎士にも王妃様を始めとする貴婦人を守るために女性の騎士が存在しているというのに。


「私の不勉強でした……」


「僕たちの警衛隊を含め、男所帯ばかりだから勘違いするのも無理ないよ」


いやいや、思い起こせば、ヘリオス領で女性の軍人さんにお世話になっていた。地方の領地で女性軍人がいるのなら、中央にはもっといてもおかしくない。

国が大きくなればなるほど、女性の力が必要となるのだろうし。

そもそも、ライナス帝国の宰相も女性だったわ!!エルフだから優秀っていう先入観もあったんだろうなぁ。反省しないと。


「それで、協力していただけるなら、その使者に名に誓ってもらうことになる。機密扱いとなっているので、オスフェ公にも知られないように気をつけてくれ」


気をつけろってことは、パパンから隠し通すのは難しいと思っているのかもしれない。

大丈夫!実は凄く簡単だ。

ママンが嫌いになりますわよと言えば、ママンの秘密を暴こうとはしない。裏で調べているかもしれないが、ママンが秘密にしていることは墓場まで持っていくに違いない。

なんだかんだ言って、パパンの一番はママンなのだ!


「畏まりました。お母様にはわたくしから知らせておきます」


じゃあ、私はパパンにお手紙書こうっと。昨日、無事に戻ったよと報告の手紙を送っているので、お返事が届いたらその返事とすれば怪しまれることはないだろう。


「よろしく頼むよ。それじゃあ、エルフの森、楽しんでおいで。ネマちゃんも気に入る魔道具がまた見つかるといいね」


ルイさんの笑顔がうさん臭いので、また魔女っ子ステッキみたいな物を見つけてくることを期待していそうだ。

まぁ、魔女っ子ステッキを越えるものがそうそうあるとは思えないから、期待には応えられないよ。

それよりも、お姉ちゃんの作ったライトほにゃららで遊びたいんじゃー!



◆◆◆

ルイさんが帰ったので、早速お姉ちゃんと遊ぼうとねだる。

ライトほにゃららを使うなら室内は危険ということで、いつもの噴水のあるお庭に向かう。

お姉ちゃんと手を繋いでルンルン気分で歩いていたら、向かいから見知った集団がやってくる。

道を空けようと壁際に寄ったが、先頭を歩く人物がいつもより元気がないことに気づく。

まぁ、いつも表情変わらないから、いつも通りっちゃあいつも通りなんだが。


「ごきげんよう、テオ様」


「あぁ、ネマとカーナか」


テオさんの素っ気ない態度に、私もお姉ちゃんも疑問に思ったが尋ねていいものか戸惑う。

すると、警衛隊の隊長さんがなんとも言えない表情で教えてくれた。


「フィリップ殿に手合わせ願いたかったようで、すでに宮殿を発たれたと聞いて落ち込んでるのです」


「落ち込んではいない……」


即座に隊長さんの言葉を否定するが、それがなおさら肯定しているようなものだ。

ほんと、フィリップおじさんのこと大好きだよね。あの自由気ままなところに惹かれるのだろうか?


「フィリップおじ様って強いんですか?」


凄いとは聞いていても、おじさんが戦っているところを見たことないので、どれくらい強いのか見当もつかない。


「以前、シアナ特区で手合わせ願ったとき、俺は一撃も決められなかった」


ほう。ボロクソに負けたのに、あんなにすっきり顔していたってことは……テオさん、ひょっとしてMっ気があるのでは?


「ネマ、失礼なことを考えてはいけませんよ」


お姉ちゃんに注意されて焦った。顔に出さないよう気をつけていたのに、なぜバレた!?


「……顔に出てた?」


「出てはいないけれど、ネマの考えそうなことくらいお見通しよ」


おっと、パウルの視線も鋭いぞ!

テオさんのようなポーカーフェイスになるには、まだまだ修業が足りないね。


「ネマがそういう顔をしているときは気をつけるとしよう」


……逆にすまし顔している方がバレるようになるってこと?

じゃあ、私はどんな顔をしたらいいんだ!!


「それはともかく、フィリップ殿は予想外な手を使ってくるし、何より先読みが凄い」


予想外って……確かに、おじさん正攻法とか鼻で笑ってそうだけど、先読みって?


「フィリップ小父様はこちらが動いたと同時に手を封じ込めるのよ。まるで、どう動くか知っていたようにね」


「テオヴァール殿下は警衛隊隊長と同等の腕をお持ちですが、それ以上となると軍部でも一握りしかおりません。しかも皆、獣人です」


()がよければ、力の込め方や筋肉の動きで先を読むことは可能かもしれないが、それでも野生的な勘のよさが必要となる。

つまり、フィリップおじさんは獣人並みの野生の勘を持っていることになる。

獣人と同じくらいと言えば、ゴーシュじーちゃんが真っ先に思い浮かぶけど、彼はどちらかというと素手で熊と戦うタイプだよね。


「そんなにすごいんだ。じゃあ、フィリップおじさんにまた来てってお願いしてみる!」


みんながそんなに絶賛するなら、ぜひとも見てみたい!

冒険者組合から頼まれたという依頼が終われば、また宮殿に立ち寄れる時間ができるだろうし。


「本当か!」


あ、テオさんの表情が動いた。嬉しそうにわずかだけど口角が上がっている。

目に見えるほどの変化は珍しいね。


「無理強いはしたくない。ネマも伝えるときはその点を注意してくれ」


好きな人には迷惑をかけたくないというファン心理。その気持ちは理解できるので、わかったと了承する。


「そうとなれば、早く終わらせて鍛錬をする」


と、テオさんは警衛隊を引き連れて去っていく。

その様子に面食らっていたら、まだ残っていた隊長さんが一生懸命笑いを堪えていた。


「殿下、本日のご公務に乗り気ではなかったので助かりました」


「……いえ、隊長さんも大変ですね」


テオさんの側近たちがなんとか宥めすかして部屋を追い出したものの、歩みが凄く重かったんだって。

推しと会えるかもしれないとなると、そりゃあテンションも上がるよね。

お役に立てたようで何より。


隊長さんもテオさんのあとを追いかけていき、私たちだけになるとお姉ちゃんがクスクスと笑い始めた。


「テオ様の意外な一面が面白くて」


確かに、一国の皇子がアイドルのファンみたいな言動をするのは面白いと言えば面白いか。

フィリップおじさんにも教えてあげよーっと!

それから誰に遭遇することなくお庭に到着し、お姉ちゃんからライトほにゃららを受け取った。


「発動詠唱は覚えているかしら?」


「もちろん!」


私は頭の中で有名な映画の曲を再生しながら、呪文を唱える。


「出でよ、赤き光!」


――ぷぉぉぉーーん


……ん?

気のせいかと思い、出現した剣を振ってみる。


――ぷぉぉん


気のせいじゃなかった!


――ぷぉん、ぷぉ、ぷぉぉぉーん


何度振っても、失敗したトロンボーンのような音がする。

力が抜けるその音に、私は膝から崩れ落ちた。


「やっぱり、ネマの思っていた音と違ったのね……」


ごめんなさいと謝るお姉ちゃんだが、お願いしたときに望んだ音になるかはわからないと言われていた。

それに、これが限界だったんだと思う。

考えてみれば、あの音は電子的というか自然界にはない音だから、魔法で再現できないのだろう。

期待が大きかっただけにショックも大きいが、ここで立たなければお姉ちゃんを悲しませることになる!


「大丈夫!ちょっとびっくりしただけ」


グッと立ち上がり、何度も素振りをしてみせる。

想像力でこの音も脳内変換できるはず!

そう思い、まずは自分が主人公なのだと想像する。

となると、やはり相手が欲しくなるよね。敵と戦ってこその主人公だし!

パウルは容赦なく叩きのめされそうだから却下。森鬼は動いてくれないだろうなぁ。お姉ちゃんは敵というより姫だね!

誰が敵役に相応しいのか。ルイさんなら面白がって相手してくれるだろうけど、さっきの様子を見る限り忙しそう。

それに、あんなんでも外見は儚げ美人だ。玩具とはいえ剣を打ち込むのはためらわれる。

……いっそのこと、あのマスクを作っちゃう?鎧みたいなスーツとマントもセットで。

あ、でも黒い色は身につけてもらえないや。だからといって色を変えたら、私が笑ってしまってそれどころではなくなるな。

あれこれ考えてみたものの、いいアイデアは浮かばなかった。


「ネマ、ただ振るだけではつまらないでしょう?わたくしが相手になりますわ」


お姉ちゃんも光る剣を取り出すと、不敵に微笑む。


「出でよ、青き光!」


お姉ちゃんの剣は刀身がサファイヤのように青く輝くものだった。

おぉ、青も凄く綺麗だ!これは、黄色と緑も綺麗に違いない!


「さぁ、どこからでもかかって来なさい」


光る剣を構えるお姉ちゃんはとても格好いい!

燃えるような赤い髪に青い刀身がよく映える。これで映画一本撮れそう。

さて、お姉ちゃんの胸を借りるべく、私は勢いよく駆けだした。


「ていやーー!」


玩具とはいえ、竹刀ですら握ったことのない私の攻撃なんて、お姉ちゃんにはあくびが出るほどつまらないだろう。

現に、さりげなーく攻撃を受けるために迎えにきている。


――ぷぉぉん


刀身同士が触れあうと、気の抜ける音が響き渡る。


「えい!やぁ!」


――ぷぉん、ぷぉぉん


段々コツを掴んできたぞ。

こうなると何か必殺技が欲しくなるなぁ。

元ネタ繋がりの技……は無理だし、漫画やアニメの必殺技もお姉ちゃんには伝わらないから恥ずかしいことになりそうだし。

これという必殺技が思い浮かばないまま十数回繰り返すと、腕が重くなり疲れた。お姉ちゃんは息すら乱していないというのに。

あれだけ遊び回ってつけた体力はどこにいったんだ?


「少し休みましょう」


お姉ちゃんも光る剣を下ろしてしまったので、パウルから飲み物をもらおうと後ろを振り向いた。


「下手だな」


ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべているヴィがいた。

うぅぅ。悔しいが、こやつは無視しよう!


「ラース君!」


今日はお姉ちゃんを優先する日だが、挨拶もふもふはノーカウントでもいいだろう。

ラース君の首元に飛びつくと、お日様の匂いがした。

ラース君は朝に日光浴をすると聞いているので、その名残かな。

頬に当たるふわふわな感触とお日様の匂いが、ディーを思い出させる。

ディーもよくこの匂いをさせていた。

毎朝、屋敷の敷地を散歩するのが日課で、草の匂いや土の匂いがすることもあった。ディーとしては縄張りのパトロールだったのかもしれないけど、泥まみれになるとパウルとジョッシュが二人がかりで洗って、石けんの匂いのときも。

でも、ディーといえばお日様の匂いなんだよね。ひなたぼっこが大好きだったから。


「また、愉快なものを作ったな」


ラース君のもふもふに埋もれていると、ヴィが興味深そうに光る剣を振り回して遊んでいた。

いつ私の手から奪ったのかわからなかった。

それに、素振りの速度が速いせいか、効果音がおかしなことになっている。


――ぷぷぷぷぷぷぷぷぷぉっん


コメディーによくあるおならの音みたいだと思ったのは私だけだろう。

お姉ちゃんはそんな下品な発想しないし、ヴィにいたってはおならをしたことあるのか疑問に思う。


「ネマでは相手にならないだろう。俺と手合わせするか?」


「まぁ、殿下。女性を誘うのが下手ですのね」


うん。素直に面白そうだから相手になってくれって言えばいいのにね。


「ヴィは素直じゃないねー」


からかうようにラース君に話しかければ、がうっと肯定が返ってくる。


「これは失礼。カーナディア嬢、ぜひともわたくしめのお相手をしていただけないでしょうか」


今度はダンスにでも誘うかのような大げさな動作で、お姉ちゃんに申し込んだ。

ここがお庭でなく、大ホールとかだったらさぞ見映えがよかっただろう。


「そうまで切望されては断れませんわね」


暇つぶしくらいにしか思っていないことを知っていて、お姉ちゃんは切望という言葉を使ったようだ。

それに、なぜか嬉しそうなのは目の錯覚かな?

お姉ちゃんがヴィに相手してくれって言われて、面倒臭いと思うことはあっても、嬉しいと思うことはないはずなんだが……。

まぁ、どうなるのかちょっと様子見するか。


ラース君が芝生の上に寝そべったので、私も定位置と化しているお腹に寄っかかった。


「俺からは行かないので、いつでもどうぞ」


お姉ちゃんの目が本気モードに変わった。

フィリップおじさんに鍛えられて剣が使えるお姉ちゃんでも、やはり幼少期から鍛錬しているヴィには敵わないと思うけど、こうもあからさまに手加減宣言されては腹立つよね。


「おねえ様、がんばって!!」


「では、遠慮なく行かせていただきますわ!」


お姉ちゃんが低い構えのまま、ヴィに斬りかかる。

ヴィはそれを片手で流すが、ぷぉぉぉぉんという音を聞いて笑いそうになっている。そこをすかさず攻撃するお姉ちゃんだけど、軽く身を(ひるがえ)すだけで(かわ)された。お姉ちゃんが体勢を整えるまで待ち、かかってくれば光る剣を叩き落とす。


「隙が多い。脇を締めろ」


アドバイスをする余裕ももちろんある。


――ぷぉん、ぷ、ぷぉぉぉぉん


悔しそうにお姉ちゃんは何度もヴィに挑み、笑顔を浮かべたままあしらうヴィ。その姿は勇猛果敢なヒロインをもてあそぶ悪役そのもの。あの黒いお方のテーマ曲が聞こえてきそうだ。

鼻歌で歌ってみると、やっぱりヴィに似合っている気がする。

私が鼻歌で盛り上げている間も剣戟は激しくなっていく。

ヴィの動きが素早いせいで、扇状の残像が見える。バトンみたいにクルクルできれば、綺麗な丸ができそう!

ちょっとやってみたいけど、私の光る剣はヴィに奪われている。


「そこだ」


ヴィが声を出した一瞬で、お姉ちゃんの二の腕に刀身が当たった。空気が抜けるようなぷぉんがすると、刀身は煙となって消える。


「ちゃんと怪我をさせないようにはなっているのか」


「当たり前です。ネマが怪我するようなものを与えるとお思いで?」


「予想外のことをしでかすのがネマだから、安全でも信用はできないぞ」


遊びは安全第一を心がけているというのに酷い言われようである。

パウルから耳にタコができるほど言われてもいるので、ここ最近は激しい遊びはしていないぞ!雪合戦もヴィがガチになったから、あんなバトルゲームみたいになったんだから!

ここで言い返すと百倍の嫌味になって戻ってくるので、ラース君のお腹に顔埋めて我慢する。


「カーナディアは攻撃を受け止められるとそちらの方に意識が行き、左側に隙ができる傾向がある。利き手が右なら左でもある程度使えるようするといいぞ」


真っ当なアドバイスだったからか、お姉ちゃんも大人しく聞いていた。

もう一回やるかとヴィが聞いたので、私は慌てて止めに入る。


「ダメ!おねえ様は私と遊ぶんだから!」


これ以上お姉ちゃんを取られてたまるか!

お姉ちゃんのドレスにしがみついてそう主張すると、お姉ちゃんは嬉しそうだった。


「ネマとの約束がありますので、どうぞ殿下はお引き取りください」


「まったくお前たちは……」


自国の王子にしていい扱いではないが、ヴィはこれくらいで不敬だと怒るような器量の小さい男ではない。


「まぁいい。ネマはほどほどにしておけよ」


筋肉痛が来るぞと言い残して、ヴィとラース君は去っていった。

余計なお世話じゃい!


一文字伏せ字にしたくらいでは権利に引っかかるそうなのでほにゃららで誤魔化していますがラ〇トセイバーです(笑)

今時の小学生は箒でちゃんばらごっごはしないよね?

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