★もふなで7巻発売お礼小話 ネマ様、大好き!
ギリギリになってしまいましたが、7巻発売のお礼小話です。
スピカ視点となります。
水の聖獣に乗り、小さくなっていく姿を最後まで見送った。
「スピカ、ネマお嬢様の部屋と衣装を整えたら休んでいい。それとも、久しぶりに稽古をつけてやろうか?」
私の教育係はオルファンさんだけど、パウルさんもたくさんのことを教えてくれる。
特に、ネマ様に関しては、使用人の中で誰よりも詳しいと思う。
ただ、パウルさんの稽古はオルファンさんよりも厳しいから、ついていけないことが多い。
「セーゴとリクセーがいないことは心細いかもしれないが、お前の仲間は魔物たちだけではない。オスフェ家の使用人たちもお前の仲間であることを忘れるな」
セーゴとリクセーは、故郷を追われてからの付き合いだ。
他の氏とは違い、星読みの氏は戦う力がない。
姉様が言うには、戦いと狩りは違うものだって。
今なら姉様の言葉の意味がわかるが、当時は狩りにも出たことのない子供だった。
だから、姉様の言うことがわからなかったの。
あの頃のことは、今でもよく思い出せる。
人に追われて、群れの仲間がたくさん死んだ。
早いうちに草の氏と合流できていなかったら、姉様も私も死んでいたと思う。
姉様は星読みの氏の中でも、星の動きを読むのに長けた巫女だ。
巫女はコボルトという種族には欠かせない導き手と言われている。
合流した草の氏長が言ったんだ。
姉様がいれば、コボルトが安全に暮らせる住処まで導いてくれるだろう。だから真っ先に助けたんだって。
それから追われて、群れから逸れた氏たちを集めて、一つの大きな群れになった。
ここまで複数の氏が集まり、群れをなしたって話は聞いたことがないから初めてかもしれない。
群れの長が、巫女である姉様だからこそ、他の氏長たちも黙って従ってくれるんだ。
レイティモ山に来て、ようやく生活が落ち着き始めたときだった。
スライムたちの様子がおかしくなり、セーゴとリクセーが激しく泣き出した。
どうしたのと聞くと、ご主人様がとしか言わない。
ネマ様に何かがあったんだとわかると、とてつもない不安に襲われた。
姉様に、ネマ様のもとへ行かせて欲しいとお願いしても、だめだと言われてしまう。
焦燥感と言うらしいが、いてもたってもいられないのに、何もできない自分が悔しくて泣いた。
私のどうしようもない気持ちを聞いて、教えてくれたのはハンレイ先生だった。
ネマ様のことは、シンキお兄ちゃんが教えてくれた。
シンキお兄ちゃんとハク、グラーティアがレイティモ山に来てくれて、それでようやく知ることができた。
ヒールランやベルは何も教えてくれなかったから。
シンキお兄ちゃんがいるときは、山が賑やかで、セーゴとリクセーも元気に走り回る姿が見られるようになった。
シンキお兄ちゃんは毒に強くなりたいからって、スライムたちに襲うよう言ったのは驚いたけど。
ハクとグラーティアもシズクと一緒に何かやってて、不思議に思って聞いた。
何をしているの?と。
私には魔物の言葉がわからないので、フィカになんて言ったのか教えてもらったんだけどね。
『僕たちが強くなれば、あるじ様は起きるってシンキが言った!』
『ディーの分まで、ぼくたちがママを守るんだ!』
私はいてもたってもいられず、シンキお兄ちゃんのところに走った。
「シンキお兄ちゃんっ!!」
勢いがよすぎて、シンキお兄ちゃんに飛びつく形になってしまったけど、少しも動じないお兄ちゃんは凄いと思う。
「強くなったら、ネマ様が起きるの!?ずっと側にいられるようになる??」
シンキお兄ちゃんに遊んでもらっていた、セーゴとリクセーも私の言葉に反応して、ワンワンと忙しなく鳴いている。
「あぁ、ハクにでも聞いたのか」
「そう!ハクとグラーティアが言ってたの!」
シンキお兄ちゃんは、私が子供だからと無下にはせず、ネマ様が置かれている状況を説明してくれた。
神様の愛し子だとか、よくわからなかったけど、ネマ様が凄い人だってことは理解できた。
「ネマ様の側にいるためには、何をしたらいい?」
「いいのか?主の側となれば、俺のように群れから出なければならないぞ」
私は、自分がいつまでも群れにはいられないことを知っていた。
私はコボルトじゃないから、氏が持つ力を持っていない。だから、群れに役立つことができない。
それなら、外に出て、ネマ様を守ることで群れの役に立ちたい!大好きなネマ様の側にいられるなら、きっと淋しくない!
セーゴとリクセーはネマ様と繋がっているから、シズクみたいに離れていても平気らしいけど、ネマ様の側にいることを望んだ。
シンキお兄ちゃんに気持ちを伝えてからしばらくして、オルファンさんとパウルさんって人が来た。
二人は姉様とお話をしたあと、私のもとに来た。
「君がスピカですね。そして、セーゴとリクセー。君たちの教育を担当するオルファンと言います」
オルファンさんには、本当にたくさんのことを教わった。
礼儀作法に言葉遣い、魔術師との戦い方。
遠距離からの攻撃はとても厄介で、何度も死ぬかと思った。
パウルさんは、ネマ様のことを教えてくれた。
ネマ様が好きな食べ物、嫌いな食べ物。
どんな遊びをしていたとか、今よりも幼かったネマ様はコボルトのちびちゃんたちに負けず劣らずのやんちゃっぷりに、親近感を覚えた。
でも、一緒になって遊んでは駄目だと強く念を押された。
ネマ様に仕えるようになったら、私はネマ様を止める立場になるんだと。
上手くできるか自信ない!
それと、私の得意な接近戦もパウルさんが鍛えてくれたけど、手も足も出なくて、何度悔しい思いをしたことか。
それは今でも変わらなくて、パウルさんの拳を食らってしまい、豪快に吹っ飛ばされた。
稽古を終えると、カーナ様が戻られていて、労いのお言葉をかけてくれた。
シェルも手当てを手伝ってくれて、その優しさが嬉しかった。
ネマ様が戻られて、無事な姿に凄く安心した。
それに、すぐに私の様子にも気づいてくれた。
シンキお兄ちゃんも、パウルさんと訓練したって言ったら、頭をポンポンしてくれたよ!
精霊宮はとても楽しかったようで、ネマ様はずーっと笑顔だった。
パウルさんに許可をもらって、ネマ様の隣で精霊宮での話や、精霊王様の力が宿ったとされる魔石を見た。
シンキお兄ちゃんは疲れたのか、長椅子で寝ている。
セーゴやリクセー、イナホたちまで加わって、ちょっと羨ましい。
以前、聖獣様たちと一緒にネマ様と寝たときも凄く楽しかった。
「私も仲間に入りたい……」
羨ましいという気持ちが、つい、口に出ていた。
でも、まだお仕事があるし、パウルさんも許してくれないだろう。
諦めていたら、ネマ様が一緒にお昼寝しようって。
パウルさんを言い包められるネマ様はさすがだし、私もみんなとお昼寝という誘惑には勝てなかった。
ネマ様は椅子綿を両手いっぱいに抱えて寝床を整える。
あ、それ私の仕事だったんじゃ……。
ネマ様は私が焦っていることも気にせず、スピカはここねと椅子綿を叩く。
大人しく従えば、椅子綿の柔らかさと訓練の疲れもあって、無意識に体を伸ばしていた。
ネマ様は長椅子とカイの間に寝転がったけれど、狭くないのだろうか?
それとも、ネマ様も身を寄せ合っている方が安心するのかな?
ネマ様とみんなの匂いに包まれて眠ったからか、そのとき見た夢は、みんな一緒にレイティモ山で遊んでいる夢だった。
おかげさまで、7巻が無事に発売日を迎えました!
本編の更新が止まっていますが、ようやく書けるようになってきましたので、もうしばらくお待ちください。
来月はできるだけたくさん更新する予定です!




