この国にもついに、やつらが現れたらしい。
少しばかり残酷描写がありますので、苦手な方はご注意!
精霊宮にも行ったし、しばらくはゆっくりできるかなぁって思うでしょ?
それができなかったんだよね。
ロスラン計画について、マーリエ父と会うのは構わないんだよ。
ただ、マーリエ父に紹介された人物が問題だった。
ライナス帝国大工組合の長、ヴォノック親方。
ちゃんと親方ってつけないと返事してくれない変な人で、さらにはここ数日、毎日押しかけてきている。
初めて会ったとき、あの小さい塔を作ったのはお前か!って、凄い圧力で向かってきたんだよね。
「いえ、ダオとマーリエにも手伝ってもらいましたが?」
「じゃあ、あのサンテートを使う方法を考えたのは誰だ!?」
ちょっと興奮しすぎじゃないですかね?
唾を飛ばすのはやめてくれ!
一応、私は貴族の令嬢なので、不敬罪とかになっちゃうかもしれないでしょ!
「私ですが?」
くわって音が聞こえてきそうなくらい目を見開くと、強い力で両肩を掴まれた。
怖いって思った次の瞬間には、森鬼が私をすくい上げていて、マーリエ父はヴォノック親方を羽交い締めにしていた。
「ヴォノック殿、落ち着いて」
「落ち着いてられるかよ!俺たちが長年悩みの種だった強度の問題を、こんな子供があっさりとやってのけただと!!」
考えたのは私ではなくて、地球の先人たちだけどね。
「誰が考えたのかが重要ですか?それをどう利用するかを考えた方が大事だと思いますが……」
「お貴族様にとってはそうだろうよ」
うーん、よっぽどプライドを傷つけてしまったのか。
「でも、作る技術を持っているのは大工組合のみなさんでしょう?」
それは誇っていいことなのだから、こんな子供相手にマジにならなくてもいいんだよ。
「当たり前だ。ただ魔法を使えばいいってもんじゃない」
それはそうだろう。
魔法だって万能ではない。
無計画に魔法を使って積み上げていっても、すぐに壊れてしまう。
しっかりと設計をし、土台を固め、すべてを調整しながら少しずつ作り上げる。
そして、それには経験からくる熟練した腕が欠かせない。
それは地球と変わらないと思う。
「私ではあのサンテートを有効利用できるとは思えません。技術がありませんから。ですから、大工組合のみな様にお任せするのです」
その道のプロがいるのなら、お任せする方が安心安全なのだ。
素人が下手に手を出しては、大惨事を招くこともある。
「ほぅ。じゃあ、あのサンテートの技術をこちらに渡すと言うんだな」
「えぇ。平面図もそうでしたが、やはり職人さんの手にかかると、より素晴らしいものになりますよね」
平面図やH字型は、私の下手くそな絵から再現されたのだ。
平面図はより専門的に改良され、まさに設計図と呼べるものになっている。
「まさか、平面図もだと!?」
「ガシェ王国の大工組合にお願いして、シアナ計画の設計はすべて平面図にしてもらいましたよ」
「たっく、やってらんねぇな……」
ガシガシと乱暴に頭を掻く姿は、男臭い土方のおっさんだ。
ニッカボッカ姿がさぞ似合うだろう。
あと、足袋を履いて、タオルを頭に巻けば完璧だ!
ヴォノックの親方は、ぶっきらぼうに悪かったなと謝った。
親方はなんと言うか、対人関係に関しては不器用なのかも。
身分とかそういったものよりも、職人としての誇りを大切にしている感じがする。
「大人が驚くくらい、子供の着眼点は斬新だな」
マーリエ父も苦笑気味に笑っていた。
そして、親方のことを許して欲しいと言ってきたので、私は気にしていないと笑顔を向ける。
「あのサンテートは何がきっかけで考えついたんだ?」
嘘をつくのは後ろめたいけど、ここは一つ大ぼらを吹くか。
「積み木で遊んでいたら、すぐに崩れちゃうでしょう?だから、いろいろな形にくっつけてみたら、この形が一番しっくりきたの」
二人とも納得しているけど、こんなに簡単でいいの?
でも、積み木も地味に面白いよね。
三角形の積み木の上に丸の積み木を乗せたくなる気持ち、大工さんならわかってくれるかな?
「よし!ネフェルティマといったな。俺の弟子になれ!」
突然の宣言に、私もマーリエ父もポカーンとしてしまった。
弟子ってことは、私に大工になれと!?
「ヴォノック殿、いくらネフェルティマ嬢が寛大だからといっても、限度というものがある。彼女はガシェ王国からの大切なお客人だぞ」
「それでもだ!才能があるんだ。今から仕込めば、とんでもない大工になるぞ!きっとな!!」
一人ハイテンションだけど、私は大工にならないぞ!
「残念ながら、私は魔力がないので、そういった職人の職業につくことはできないと思います」
料理人みたいに下級の方が向いている職業もあるけど、私の魔力は微量すぎて一つも魔法を発動させることができない。
「何、魔法を使えなくても、腕があれば十分だ!腕一本でも食っていけるようにしてやるからな!」
確かに、魔法を使わない職人さんもいるよ?
ママンがご贔屓にしている家具の大工さんは、魔法を一切使わず、手作業だけで繊細な彫刻を施し、長持ちするよう植物から抽出した薬品を塗ったりと、地球の職人も顔負けな技術を持っている。
「ヴォノック、話を聞け!ネフェルティマ嬢をお前の弟子にすることはない」
ビックリしたー。
マーリエ父が声を荒げるなんて。
しかも、なぜかお説教モードに入っている。
お前は昔からどうのこうのって言っているけど、昔馴染みなのか?
「学術殿のときの話を持ち出すなよな」
二人にしかわからない内容だったが、昔からの知り合いで間違いなさそう。
「お二人とも、同じがくじゅつでんだったのですか?」
「あぁ、俺は親父の跡を継ぐために修業をしたかったんだが、親方になるにも学が必要だって言われてな。運よく最上学術殿に入ったら、殿下様がいたんだよ」
「こいつはご覧の通り口が悪いだろう?だから、他の貴族たちに遠巻きにされていてね」
「お優しい殿下様は、放っておけなかったってわけだ」
父親からの愛情に、身分を超えた友情か。いい話だ。
こう、ポンポンと続くかけ合いのテンポのよさからして、学生時代もこんなふうだったんだろうね。
「今まで付き合いが続いているってことは、よっぽど気が合うんでしょうね」
すると、親方が再びくわって目を見開いて叫ぶ。
「あってねぇだろうが!」
「私はこいつみたいに無骨ではないが?」
ほら!ツーと言えばカーみたいな仲じゃん!
「でもうらやましいです。私は友だちが少ないので……」
自分で言って、傷をえぐってしまった。
友達、作りたいんだよ!
私も身分を超えた友情を築きたいんだよ!
「友達なんか、外で遊んでりゃできるだろうが」
「高位貴族のご令嬢を、お前と一緒にするな」
いいなぁ。街を駆け回ったり、みんなで鬼ごっこしたりしたいよ。
「なら、俺んことに遊びにくればいいだろ。俺の息子もいるし、近所のガキどもだっている」
「……いいの!?」
急な申し出に驚いたが、行っていいのならぜひとも行きたい!
「あぁ。弟子入りする工房がどんなところか、見てみないことには決められないよな」
そう言うことじゃない!!
私はただ普通に遊びにいきたいの!
「だから、弟子入りから離れろ。それに、今はいろいろとまずい」
あ、そうでした。
ルノハークの動きが掴めないことには、私はこの宮殿から出ることができない。
早く帝都観光したいのに、ルノハークめっ!
「とりあえず、今は仕事をしてくれ」
というマーリエ父の言葉によって、塔に関する話し合いが始まった。
それ以降、毎日来る親方の相手をしていたんだけど、サンテートの改良に余念がない。
混ぜ合わせる素材を変えてみた結果だったり、H字ではなくL字やコの字など、思いつく限りの形を作り出していた。
だけど、私に専門的なことを話されても、半分も理解できていない。
それなのに、親方はこれも修業の一環だと笑う。
ということは、お土産にもらった、親方手作りのこの積み木も、発想力を高めよという修業なのか?
まぁ、遠慮なく遊ばせてもらうけどね。
親方の相手をしていたら、陛下の側近であるサリアスさんが急に訪ねてきた。
「ネフェルティマ様、ご来客中に申し訳ないですが、陛下がお呼びですので一緒に来てもらえませんか?」
いつも冷静な雰囲気をまとうサリアスさんが焦っているようだ。
こんなふうに呼び出しされるのも初めてだし、何かが起こったに違いない。
「親方さん、へいかがお呼びということですので、行ってまいりますね」
「おう!行ってこい行ってこい」
ひらひらと手を振る親方は、もうしばらくここでサボるようだ。
あとでマーリエ父に教えてあげよう。
私が動いたので、森鬼とスピカも一緒に行こうと動き出したが、サリアスさんに止められた。
「陛下より、護衛はシンキのみと言われております」
スピカを連れていけないってことは、愛し子関連なのかな?
「わかりました」
陛下の指示に従い、森鬼だけを連れていくことにする。
緊急事態だと察したパウルが、私の装備を確認する。
大丈夫。ペンダントはいつも通り防御系にしているし、うさぎさんのお腹には短剣を入れてある。
「それでは、お気をつけていってらっしゃいませ」
パウルとスピカに丁寧に送り出されたあと、サリアスさんが急いでいるので森鬼に私を抱えるように言った。
走ってはいないけど、競歩並みの速さで歩くサリアスさんについていくと、陛下がいそうな部屋ではなく、南側の庭に出た。
陛下とユーシェ、サチェがいたけど、ワイバーンたちもいるので、精霊宮ではないことは確かだ。
「ネフェルティマ嬢、すまないが一緒に来てくれ。ダグラートたちに何かあったようだ」
ダグラートって、陛下が名前をつけたオーグルか。
絋深の森で何か起こったのか!?
「とりあえず、急ぎたい」
サチェに乗せてもらい、絋深の森へと急ぐ。
道中で、陛下が何を感じたのかを話してくれた。
執務中によくない気配を感じたら、ウィーディも落ち着きをなくし、しきりにうねうねし始めたらしい。
そして、直感でダグラートたちの身に何か起こったのだと気づいた。
「普段、狩りを行っているはずだが、そういったときには感じたことはない」
私を危険だとわかる場所に連れていくことを悩んだが、愛し子がいればオーグルたちを落ち着かせることができるかもしれないと。
「もし、危険な状況になったら、遠慮なく精霊の力を使ってくれ」
そういう状況にならない方が好ましいが、警戒だけは怠らないようにしよう。
「わかりました。森鬼、頼んだよ」
精霊に関しては、森鬼に任せた方がいいだろう。
「ナノがやりすぎないようにすればいいんだな」
……うん、そうだね。そっちの方が心配だね。
ユーシェとサチェが全速力で飛んでくれたので、前回よりも早く絋深の森に着いた。
上から見た限りでは、特に変わった様子はない。
陛下はオーグルたちの場所がわかっているようで、迷うことなく森の奥側で降りた。
すると、複数の怒号が聞こえてくるではないか!
飛竜兵団と、一緒にワイバーンに乗ってきた警衛隊の面々が戦闘態勢に入る。
「できるだけ、生きたまま捕らえろ」
陛下がそう命令すると、まずは飛竜兵団のみんなが森に散っていった。
数頭のワイバーンが空に舞い、上空からの魔法攻撃が開始された。
オーグルの雄叫びとワイバーンの雄叫び。魔法による爆発。音だけなら怪獣映画そのものだ。
「敵が逃げるぞ!囲めっ!!」
「こちら二名負傷!応援を頼む!」
「くっ、オーグルのやつらも襲ってきやがる。ワイバーンで押し切れ!」
森の中という、ワイバーンたちには不利な地形だから、苦戦しているようだ。
時折上がる悲鳴は誰のものなのか……。
「陛下」
「あぁ。最低限の人数を残して、応援に向かえ」
警衛隊のみんなも数名を残して森へと駆けていく。
「負傷者をこちらへ!」
警衛隊の治癒術師が治療に当たるようだ。
「よし、捕縛した!」
「数名確保できたなら、深追いしなくていい」
陛下が精霊の力を使って、みんなに声を送る。
すると、戦闘の音が小さくなっていく。
完全に音が止むと、風の音や鳥の声が戻ってきた。
「もう、この周辺にはいないようだな」
安全が確認できると、陛下は戦闘があったと思われる方向へ進む。
軍人さんが何かを担いでいたけど、あれが捕まえたルノハークかな?
「ダグラート、無事か?」
警戒させないようにするためか、姿が見える前に陛下が声をかける。
パキッミシッと地面を踏みつける音がして、ダグラートが姿を現す。
「その傷……」
ダグラートは血塗れで、思わず目を背けてしまうほど傷ついていた。
ダグラートだけでなく、他のオーグルたちも似たり寄ったりの深い傷を負っている。
「大丈夫ではなさそうだな」
ダグラートは私と陛下だということがわかると、力が抜けたように座り込んだ。
「あいつらだ。群れを襲ったあいつらが来た」
「お前たちを捕えた者たちか?」
「あぁ。とても強くて、みんな殺された。主と同じか、それ以上だ」
陛下よりも強いと聞いて驚いた。
ダグラートと戦ったときはユーシェの力を使っていなかったとはいえ、陛下は水の特級魔法が使えるし、剣術だって警衛隊の隊長より強いらしい。
「ひとまず、お前たちの治療をしよう」
飛竜兵団の治療を終えた治癒術師を呼び、治癒魔法を施していく。
陛下や私以外が近づくのを嫌がる子もいるので、宥めながら進める。
「いくら強いとはいえ、お前たちをこれほど傷つけるとは。何人くらいいたのだ?」
「……たくさんとしか」
そんなにたくさんの人が森にいたら、ロスラン計画の準備をしている人たちが気づきそうだけどね。
陛下もそう思ったようで、拠点に行ってみるかと呟いた。
「お前たちはどうする?このまま森にいるのは危険かもしれないぞ」
「この森にいる。主以外の人とは一緒にはおれん」
ダグラートのしかめっ面は、なかなか恐ろしかった。
こんな目にあったんじゃ、人がいる場所になんて行きたくないよね。
「わかった。何かあったらすぐに行くから、無理に戦おうとするな」
「我らは戦うべく生まれた種族だ。そんなことはできない」
好戦的な種族だとは聞いていたけど、戦闘種族だったってこと?
戦うことが本能に刻み込まれているの?
「仕方がない。森の精霊たちよ。この森に立ち入る者たちが現れたら、すぐに教えて欲しい」
またルノハークらしき者たちが現れたら、襲われる前に駆けつけられるよう精霊たちにお願いした。
「では、私たちは拠点に向かおう」
傷が治ったオーグルたちは陛下にお礼を言って、森のさらに奥へと去っていった。
ルノハークは魔物たちがどこに逃げても追いかけているように感じた。
レイティモ山の子たちは大丈夫だろうか?
強い冒険者たちが集まっているので、ルノハークもそうそう手出しはできないと思うけど、警戒するようパパンに言っておくべきだな。
捕まえたルノハークは四名。
魔道具によってワイバーンに括りつけられ、あの本部へと輸送される。
私たちは再び空に飛び立ち、道に沿って飛ぶと、あっという間に拠点が見えた。
驚いたことに、前回来たときよりも広場が広くなっており、小さな村のようになっていた。
「陛下、急にお越しになってどうされたのですか?」
ルティーさんが駆け寄ってきたけど、何度見ても男性だとは思えないくらい可愛い人だなぁ。
民族衣装を着ていることも相まって、背景にアルプス山脈の山々が見えてくるような……。
「絋深の森にルノハークと思しき集団が現れたと情報が入ってな。この周辺に冒険者の格好をした集団を見なかったか?」
「ルノハークが?」
ルティーさんは怪訝そうな顔をしているけど、何か心当たりでもあるのだろうか?
「今、人の出入りが激しくて、見落としてしまったのかもしれませんわね」
人が集まるところに商機ありと、商業組合が屋台みたいなのを出した。
すると、旅人たちも利用するようになり、どんどん屋台の規模が大きくなっていき、最終的に食堂を作ってしまったらしい。
そうしたら、わざわざ町に帰るのが面倒だと言い出した大工さんが宿泊できる小屋を作り、それもどんどん大きくなり、今では旅人も泊まったりしているそうだ。
さすが商業組合。商売の気配には敏感だね!
「冒険者はここを利用しているのか?」
「うーん、わたくしは見かけておりませんが、他の者に聞いてみましょうか?」
というわけで、ルティーさんが拠点に寝泊まりしている大工さんたちを中心に話を聞いてくれた。
しかし、冒険者を見かけた者はいなかった。
「誰にも見られずに森に入ったということは、小国家群の方から周り込んだのか」
「しかし、今あそこは無法地帯と化しているはずですわ。たとえルノハークだとしても、抜けるのは厳しいのでは?」
ヘリオス領は小国家群に面してはいないものの、距離は近い。
情報も比較的入手しやすいらしく、姉から聞いたというルティーさんが詳しく教えてくれた。
小国家群に面している領地では、国境付近で戦闘騒ぎも起きている。
もちろん、ライナス帝国軍も国境に派遣されており、難民の保護を行っていた。
「……難民に紛れて入り込んだか」
「だからと言って、難民を受け入れなければ、より惨事になってしまいます」
助かるために、難民たちは命がけで国境を越えようとするだろう。
それはそれで大問題だ。
助けてくれないライナス帝国への恨みつらみが、平穏に暮らしている民たちに向かうかもしれない。
民を守るためにも難民を受け入れる。
そうすると、敵であるルノハークも入り込む。
まさに痛し痒しだね。
「遣る瀬ないですわよね。陛下のお気持ち、お察しいたしますわ」
ルティーさんも神妙な面持ちで、我が家は協力を惜しまないと言ってくれた。
「ルノハークはネフェルティマ様をつけ狙っているのでしょう?そんなろりこんは抹殺ですわよ!」
グッとファイティングポーズを取るルティーさん。言っていることは物騒だけど、可愛い人がやると本当に可愛いな。
「しばらくは、こちらにも軍を派遣する」
「畏まりました。受け入れ体勢を整えておきますわね」
そうして、私たちは宮殿に帰ったんだけど、それだけじゃなかったんだ。
翌日になり、宮殿が慌ただしくなった。
テオさんが様子見がてら、私に何が起こっているのかを教えにきてくれた。
「国境での戦闘が激化した」
「……それは、まずい状況なの?」
「小国家群の軍の生き残りが組織を編成したようだ」
なるほど。軍人同士であれば、戦闘が厳しくなるのも頷ける。
今までのは小競り合いというか、農民が農具片手にといった様子だったものが、本格的な軍隊との戦闘になってしまったと。
「現地からの情報では、一部の民も武装しているらしい」
現地からの情報では、武器を供給している組織があるのではないかということだった。
それがルノハークかもしれないし、別の軍の生き残りかもしれない。
そこら辺は調査中だって。
「昨日捕まえた者たちの調査もある。詳しい情報が得られれば、陛下が説明してくれる」
まだ情報が少ないから、もう少し待っていろと。
まぁ、待つ以外何もできないんだけど。
「一度、ネマを帰国させてはどうかと言ったのだが、戦闘に発展したのはあちらも同時だったという情報が入った」
「えっ!?ガシェ王国も?」
我が国の騎士団だって、かなりの戦力があるので、負けるなんてことはないと思うが心配だ。
ダンさんやレスティンが戦闘に参加しているかもしれない。
竜舎や獣舎の動物たちも。
動物たちは戦うために育てられているし、騎士たちもそのために訓練してきた。
でも、知っている誰かが死ぬかもしれない。
それがとてつもなく怖い。
「心配だろうが、今は耐えろ」
そう言い残して、テオさんは帰っていった。
私は急いでパパンに手紙を送ることにした。
少しでもガシェ王国の状況が知りたかったからだ。
さすがに酷い状況であれば、パウルから一言ありそうだけど。
「ネマ、少し落ち着きなさい」
「でも……」
私と違って、お姉ちゃんはいつもと変わらなかった。
「では、パウル。ネマを安心させるために、貴方が持っている情報をすべて話してちょうだい」
「旦那様より申しつかっておりますので」
つまり、パパンから私たちに話すなと命令されている?
「でも、必要ならばパウルの判断で話してもいいと言われているはずよ。そうでしょう?」
にっこりと微笑むお姉ちゃんにパウルは何も言わなかった。
お姉ちゃんの言う通りなのだろう。
「このままでは、ネマは精霊様や聖獣様のお力を使って無茶をしてしまうかもしれないわ。もちろん、わたくしだって使えるものはすべて使うわよ?」
と、お姉ちゃんがパウルを脅す。
お姉ちゃんはそのつもりがないのかもしれないが、そう聞こえてしまう。
「パウル、カーナディア・オスフェが命じます。すべて、話してくれるわよね?」
使えるもの、それは主人として命じることだったのか。
だが、優先されるべきはオスフェ家の当主であるパパンの命令だけど、パウルはお姉ちゃんと私の専属執事でもある。
お姉ちゃんはパウルに、パパンか自分かを選べと言っているのだ。
「……畏まりました。お嬢様方に無茶をされては、旦那様に消されてしまいます。私たちが得たことをお話しします」
お姉ちゃんの脅しは、そっちが主だったのか!
確かに、私たちに何かあれば、パパンは烈火のごとく怒って、消し炭にしてしまうかもしれない。
それにしても、言葉で追い詰めていく感じがママンと同じで、お姉ちゃんを怖いと思ったのは内緒だ。
何やらよくない気配が……。
あいつらはGのごとくしぶといのだ!




