神様への疑惑は確信に変わった!
明けましておめでとうございますm(_ _)m
喪が明けても、陛下は忙しかった。
そして、私が暇していることを聞いたのか、ルイさんやマーリエ父からよく声をかけられるようになった。
名産品をブランド化しようぜ計画やロスラン計画について、なぜか意見を求められるのだ。
ちょうど、ダオとマーリエがいた日。
マーリエ父が時間を取って欲しいと言うので、三人一緒でいいならと答えると快諾してくれた。
せっかくマーリエがいるんだから、会えるときには会わせてあげたいしね。
マーリエ父が足を運んでくれるというので、私たちが使用している部屋でということになった。
「実は塔の建築についてなんだが、大工組合がこのままでは造れないと言っていてね」
あぁ、強度がどうとかって言っていたやつか。
ふっふっふっ。準備は万端なんだよ!
時間だけはあったので、パウルにお願いして、材料を用意してもらったのだ。
それを使って、三人である物を作っていた。
なんてタイミングがいいんだ!
「パウル、あれを持ってきてくれる?」
パウルに調達するようお願いしたのは粘土だ。
残念ながら、私が求めていた油粘土はなかった。陶芸などに使う土で、たぶん赤土っぽい粘土だった。
この大陸にも焼き物の文化はあるのだけれど、高級品と言われている白磁器は限られたごく一部でしか生産されていないらしい。それゆえに、希少価値が高いんだけど。
そこら辺の詳しいことはルイさんに教わったのだが、凄く興味深かったので実際に見にいってみたいと思っている。
用意してもらった素材は粘土だけではないんだよ。
鉄よりも強い素材がいくつかあるということで、その中でも手に入りやすいものを選んだ。
この世界独自の素材を鉄や銅などのよく採取できる素材に混ぜ合わせて作るんだって。
ようは合金ってことだよね?
ちなみに、この世界で一番硬度の高く頑丈なのは、鉱物から作られる素材、ガイダイトと言うめちゃくちゃ希少なものだ。
あの、ガシェ王国初代様が愛用していた名剣ガンダルも、この素材で作られたらしいよ。
で、お取り寄せした合金を、鍛冶組合にお願いしてH字型の棒状にしてもらった。
鉄骨と言えばこれだよね!
それを組み合わせて、粘土で補強して、塔のモデルを作ろうと思って。
ただ、鉄骨もどきを切断できるものがなくて、最初から躓いた。
でも、すぐに救世主が現れたので、あっという間に解決したけど!
困っていた私たちに手を差し伸べてくれたのは、カイディーテだった。
この場合は、差し伸べたのは尻尾かもしれないな。
カイディーテは、これくらいの長さと言えば、スパッと鉄骨もどきを切断してしまう。
ラース君のような風の力ではないので、土の力を使って加工している感じなんだと思う。
まぁ、なんにせよ助かった。
カイディーテとダオのおかげで、凄くいい感じに作れたよ!
パウルが両手で抱えてきたのは、私よりも少し低いくらいの塔のモデルだ。
それを見たマーリエ父は、ほうっと感心したような声を出した。
「これは凄い。三人だけで作ったのか?」
「はい。ダオは手先がとても器用なので、力作ができました!」
ダオの凄いところを自慢するように言えば、優しく微笑まれた。
マーリエ父も、段々と父親の顔を見せることが増えたように思う。
それが嬉しいのか、マーリエも会話を続けようと頑張っている。その内容が、自分のことのようにダオの器用さを褒め称えているのは、恋する乙女ゆえか。
父親としては複雑だろうなぁ。
「これは、多少の揺れでこわれないようにしてみたんです」
土台を揺らすよう、パウルに指示すると、重たいモデルを表情一つ変えずに揺らす。
パウルって、鍛えているから馬鹿力なのかな?
土台の粘土はコンクリートのように固めてあるので、揺らしたくらいでは塔は倒れない。
「どういった仕組みになっているのか聞いても?」
「中に、これを使って骨組みを作り、それに粘土をはりつけたのです」
そう言って、鉄骨もどきを見せる。
興味深そうに、手に取ってまじまじと見つめるマーリエ父。
「サンテートかな?この形に何か意味が?」
立て続けに質問される。
サンテートとは合金のことで、混ぜ合わせた金属類はすべてそう呼ばれるのだ。
「軽くて丈夫だから?」
形に関しては、私もよく知らないんだよね。
鉄骨にこの形が多く使われているということは、それだけ利点が多いってことだと思うけど。
私に力学とか建築学とか、専門的な知識はないからね!
「……実際に使えるかどうかはわからないが、検証してみる価値はありそうだ。このサンテートをいくつか譲ってもらえるかな?」
「はい、どうぞ。足りなかったら、帝都のかじ組合にお願いすると、同じものを作ってくれますよ」
帝都の鍛冶組合には、私の下手っぴな絵を使用人に持たせて再現を依頼したのだ。
鍛冶師の人も、なんだこれ?って思っただろう。
それなのに、しっかりと再現してしまう技術力はさすがプロだ。
翌日、今度はルイさんが押しかけてきた。
私の大好きなペシェーネを手土産に持ってきてくれたので、追い返すわけにはいかないよね。
「さっき、大工組合の長が、凄い勢いで走って帰っていったけど、ネマちゃん何をしたの?」
「私が原因だとだんげんするのはなぜ!?」
そもそも、大工組合の長さんに会ったこともないのに!
私が悪いみたいな言い方されるのは理不尽だ!
「ネマちゃん以外いないよ。今日はロスラン計画の会議で、その主軸となる塔の建築を任されている大工組合が、顔色を変えて逃げるように帰ったんだから」
明らかに冤罪である。
何か誤解しているようなので、会議の内容を教えてもらいつつ、その誤解を解くことにした。
「ネマちゃんの為人を知っているものなら、ネマちゃんだしって納得するだろうけど、大工組合の長からしたら、面目丸潰れだねぇ」
そう言われて、初めて気づいた。
冤罪じゃなかった……。
そうだよね。大工組合の長さんからしたら、自分たちができないって言ったものを、ミニチュアとはいえ、子供が作っちゃったら立つ瀬ないよね。
長さんのプライドをめちゃくちゃ傷つけてしまったのかな?
「そんなつもりはなかったのに……」
「彼は器の大きな男だ。気にするだけ無駄だと思うよ。今頃、打倒ネマちゃん!って燃えているんじゃない?」
それはそれでなんか嫌だ。
大工さんにライバル視されるってどうなの?
私、職人じゃないんですけど!
「あ、今日はそういう話をしにきたんじゃなかった。本題は、精霊宮行きが三日後に決まったと伝えるためだった」
「ほんと!?」
「うん。前日に詳しく説明されると思うけど、聖獣様と契約者以外を連れていくことはできないから、付き添いは陛下だけだね」
もしかして、白やグラーティアとか、名前をつけた魔物もダメなのか?
森鬼はいけると思うけど、他の子たちはお留守番させていた方が安心かも。
それで、陛下と二人っていうのも不安が増すなぁ。
「陛下はネマちゃんに偉ぶったり、無体なことはしないと思うよ」
不安が伝わってしまったのか、ルイさんが慰めてくれた。
ルイさんかテオさん、どちらかでもついてきてくれたら、気まずい思いもしないだろうになぁ。
「精霊宮の周りには、そこにしか生息していない動物もいると聞いたことがある。行くまでに暇だったら、今のうちに調べてみるのもいいかもしれないね」
「あ!そうだった!」
ガシェ王国の王宮図書館にも、精霊宮の動物の本があって、凄く変わった生き物が多かったんだ!
「私が読んでも大丈夫な本かな?」
「もちろん」
本によっては、図書館から持出禁止だったり、閲覧禁止だったりする。
そういったものは、他国の者に見せることができないものばかりだ。
「今から図書館に行って、責任者を紹介しよう。そうすれば、どんな本でも読み放題になるよ?」
「ぜひお願いします!」
何度か宮殿の図書館に行ったことあるけど、やっぱりいっぱい本があるんだよね。
古今東西の様々なジャンルの本があって、飽きることはない。
時間を潰すにはぴったりというわけだ。
ルイさんと一緒に図書館に行き、責任者さんに挨拶して、なんでも読み放題の閲覧許可をいただいたら、ある部屋に案内された。
「ここは皇族用の部屋なんだけど、エリザくらいしか利用していないから、ネマちゃんも使っていいよ」
「いいの?エリザ様のごめいわくにならない?」
「大丈夫、大丈夫。エリザも、たまにしかいないし」
まぁ、皇族のみなさんが使っていないというなら、使わせてもらおうかな。
皇族専用とあって、部屋の中の調度品は上質なものばかりで、落ち着いた色合いに整えられている。
居心地がよさそうな空間だ。
今日はこのまま、この部屋でルイさんとおしゃべりしながら、ライナス帝国の動物図鑑を眺めて過ごした。
それから図書館に入り浸り、精霊宮関連の本を読みまくった。
精霊宮の周りの森は、精霊の力が影響しているようで、生態系が違うらしい。
まず、大型の肉食動物がいない。
小動物で昆虫を食べる種類はいるみたいだけど、二種類しか名前が出てこなかった。
ほとんどが草食動物で、大小多くの種類がいるらしい。
ガシェ王国の図書館より精霊宮関連の本が多いのは、代々の皇帝が契約者だからだろう。
著作名にライナスって書いてあるのもあったし。
読めば読むほど、精霊宮への期待が高まっていく。
できれば、私も精霊宮に引きこもって、全部の動物をもふもふしたいわ!
前日に説明を受けた。
まず、契約者以外の人は精霊宮の森にすら入れない。
なので、陛下と私だけで行くのだ。
森鬼は連れていけるけど、移動方法をどうするか。
「サチェに同行してもらうので、ネフェルティマ嬢はシンキと同乗するといい」
およ、サチェも一緒?
というか、ソルを呼べばいいのでは?
「ソルにお願いしましょうか?」
「一度、精霊を通じて炎竜殿にお伺いを立てたのだが、私とユーシェが同行するならば不要だろうと言われてな」
ちょっと!
ソルさん、冷たくない!?
一緒に行ってくれてもいいのにぃ。
ソルの冷たい態度にふて腐れていると、陛下はソルを庇う発言をした。
「そう頻繁に水の縄張りに入っては、ユーシェもサチェもいい気分はしないだろうと、こちらを気遣ってくださったのだ。そして、我々を信用してくれている証でもある」
「信用の証ですか?」
「あぁ。自分の契約者を他の聖獣に預けることは、契約者の立場を思い、そして、その周囲にいる者たちを信用していないとできない。我々は炎竜殿の信用を裏切るような真似はけっしてしないと誓った」
よかった。ソルは私のことをちゃんと考えてくれているのか。
相変わらず、わかりづらいというか、素直じゃないというか。
「炎竜殿は理解されているんだよ。彼ら原竜は他の聖獣とは違い、体も大きく、力も強い。契約者とともに過ごすことができないことをね」
「あ……」
青天馬も天虎も地虎も、私が知っている聖獣はみんな契約者と離れずにいる。
ソルだけが、契約者の側にいないんだ。
「他の聖獣はみんな、けいやく者と一緒にいられる大きさなんですか?」
図書館の本で知ったんだけど、聖獣の種類はまだいくつかある。
水の聖獣は青天馬と氷猿の二種類が確認されている。
面白いのが、氷猿には対となる聖獣がいて、それが火の聖獣の一種、火猿と言うらしい。
いろいろと神様に物申したくなるよね!
面倒臭いからそうしたのか、それとも『対』ってことに厨二病心がくすぐられたのか……。たぶん、後者だな!
対だから、天虎が生まれれば地虎が生まれるし、氷猿が生まれれば火猿が生まれる。
なんか、神様が好きそうな臭いがプンプンするもん!
「ラーシア大陸で確認されたことのある聖獣はすべて、契約者とともにいることができる大きさだったとされている」
地球産のトラより大きなラース君も、王宮で生活できるサイズではあるしなぁ。
この宮殿も聖獣が動き回ってもいいように工夫されているし。
原竜だけが契約者の側にいられないって、淋しいよね。
だから、原竜は契約者に竜玉を与えて、念話ができるようにしたのかな?
「ソル、淋しかったのかな?」
陛下に聞いたことがあるんだけど、有史以来、ソルが契約者を迎えた記録はないんだって。
有史と言っても、残っているのは二千年前後までらしい。
それ以前は、言語系統が違うため、記録が見つかっても読めないの。
コンピューターがないので、解析にも時間がかかる。
エルフなど、寿命の長い種族が、生涯のライフワークとして研究している人もいるらしいけど、まだまだ当分解析が終わることはないようだ。
「ユーシェが言うには、繋がりがあるだけでも幸せを感じるが、側にいるときの喜びに勝るものはないと」
陛下に甘える仕草をするユーシェ。
聖獣であるユーシェが言うなら本当だろう。
竜玉で繋がりを感じられていても、側にいるときの方がいいに決まっているよね。
よし!もっとソルとおしゃべりすることにしよう!
そう意気込んで、ふと思った。
素直じゃないソルのことだ。頻繁に念話を送って、まともに相手をしてくれるだろうかと。
「あぁ、それと、名を与えた魔物たちも皆連れていくように」
ソルをどうやって攻略するかを考えていたから、陛下の言葉を理解するのが遅れた。
「……うぇ!?連れていって大丈夫なんですか?」
「精霊王たちに、彼らを覚えてもらうべきだ。『騎士』であるシンキのことは、すでに彼らも知っているだろうがな」
連れていって大丈夫なら、私としてもその方が安心する。
ダメだった場合でも、精霊たちがうちの子たちに何かをするとは思えないけど、危険があっては大変なので、精霊たちに確認しておくべきだろう。
陛下と別れて部屋に戻り、森鬼たちに明日のことを伝えた。
事前に、明日はお留守番だと言って聞かせていたせいか、行けることになったことを白たちは喜んでいた。
「ネマお嬢様。小さいハクたちはいいとして、セーゴやリクセー、カイはどのような手段で精霊宮まで連れていくのですか?」
パウルに聞かれて固まった。
何も考えていなかったよ。
白とグラーティアは私に乗っかっていればいいけど、サチェに森鬼と一緒に乗ったら、海は乗れないな。
星伍、陸星、稲穂もいるし、抱っこしても厳しいかもしれない。
「……どうしよう?」
「主、僕、飛べるよ?」
海が不思議そうに首を傾げている。
……そうだった!すっかり忘れてた!!
最近、人の姿ばかりだったから、鳥の姿に変化できるの失念してたわ。
ということは、分乗できるな!
「じゃあ、星伍と陸星を運んでくれる?」
「わかった」
ただ、セイレーンの鳥の姿だと、腕が翼になって使えなくなるので、籠か何かを用意しないといけない。
それはパウルにお願いしよう。
-ピィッ!
ぼくは?というふうにノックスが鳴いた。
はて?ノックスは連れていって大丈夫なのだろうか?
陛下は魔物たちとは言っていたけど、動物のことは何も言っていなかった。
「精霊さん、ノックスは精霊宮に入れるかな?」
私には精霊は見えないし、声も聞こえない。
でも、周りにいることは知っているので、普通に話しかけることはできる。
返答はすべて、森鬼に通訳してもらえば、意思疎通も問題ない!
「主が連れていれば大丈夫だと。それと、森の生き物を食べるな、外の動物には毒だと言っている」
「どくぅ!?」
予想もしていなかった言葉に、声が裏返ってしまった。
読んだ本には、そんなこと書いてなかったけどな。
出発前に、お腹いっぱい食べさせておけば……。
いや、そうすると、飛行が難しくなるか。
「ノックス、ご飯をがまんできるよね?」
-ピィィ?
うん、わかった。森に入ったら、飛ぶの禁止ね。
私が抱っこしていれば、ご飯を食べようにも飛び立てまい!
そうして、なんだかんだと準備を進めていたら、あっという間に時間は過ぎていく。
星伍と陸星を運ぶ籠だが、海の要望により、ショルダーバッグみたいなやつになった。左右の肩に斜めがけにした方が飛びやすいとのこと。
そのバッグが気になるのか、稲穂はしきりに臭いを嗅ぎ、中に入ろうとする。
まさに、頭隠して尻隠さず。
入りきれない四本の尻尾がゆらゆら揺れている。
「稲穂、もう寝るよ!」
稲穂は勢いよくバッグから抜け出すと、白とグラーティアを引き連れて、寝室へ駆けていく。
すでに星伍と陸星は、専用のクッションをベッドにして丸くなって、あくびをしていた。
森鬼と海は隣の使用人用の部屋で寝ているので、部屋に戻ったようだ。
パウルと同室とか、なかなか気が抜けないのではなかろうか?
寝る前に、明日のことをソルにお話しようと思ったら、稲穂がうさぎさんを抱き込んで寝ていた。
はえーな、ヲイ。
つか、そのうさぎさん、私のだよ!
たぶん、ソルの強い火の力でも感じているのか、うさぎさんの側が落ち着くらしい。
仕方がない。ソルへの念話は、明日起きてからにするか。
気持ちよさそうに眠っている稲穂を横目に、私はハンレイ先生のぬいぐるみを枕代わりにして眠る体勢に入った。
「明日は寝坊厳禁ですからね」
掛け布団をかけてくれるパウルに、はーいと間延びした返事を返して、就寝の挨拶をした。
「優しき夜に安らぎを」
パウルがおやすみの言葉を口にすると、部屋が薄暗くなる。
お姉ちゃんがまだ起きているので、これ以上暗くしないようだ。
グラーティアがもそもそ動いているが、寝るポジションが決まらないのか?
もう目蓋が重いので、私は寝るぞ!
ほんと、一年過ぎるのが早い!
というわけで、今年ももふなでをよろしくお願いしますm(_ _)m
神様の厨二病疑惑が確信に変わった回でした(笑)
ある意味、俺の創った最強の世界的な臭いが漂っておりますw
そして、次回は未知との遭遇!不思議なもふもふワールド全開!(できたらいいなぁ……)




