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不穏な空気を吹き飛ばすぞ!

いよいよ大晦日ですね。

陛下にお呼び出しされました!

ことの経緯(いきさつ)は、陛下も知っているのになんでだろうと不思議だったんだ。

パウルを引き連れて、なんか会議室みたいな部屋に入ると、知った顔が総揃いしてた。

つまり、この国の中枢を担う人たちってことですな。


「ネフェルティマ嬢、礼は不要なので座ってくれ」


今まさに礼を取ろうとした瞬間だったんだけど。

ちゃんとこっちでもライナス帝国の礼儀作法も学んでいるから、だいぶ板についてきたんだけど、披露できなかったよ。


「今日、ネフェルティマ嬢を呼んだのは、竜舎で起きた不祥事についてだ」


確かに私も関わったけれど、呼ばれた理由にはならないような……。


「なぜ呼ばれたのかがわからないのですね。今からご説明いたします」


宰相でエルフのゼアチルさんがふんわりと微笑んで、説明を始めた。


あの捕まった若い軍人さんが、いろいろと話してくれたようだ。

彼は、実力があるものの、ワイバーンに気に入られることがなかったために、ずっと裏方作業をやっていたらしい。

その間に、同期の獣人たちが出世していくことに焦りを感じたんだって。

ある日、酒場で同じ軍所属だという男に出会い、総帥さんが獣人を贔屓しているという話を聞く。

その男が所属している部署でも、人より獣人が出世しやすいと愚痴っていたと。

それに憤慨した彼に男は囁いた。

総帥の管理能力が問われるようなことがあれば、総帥の座から獣人を排除できるだろう。

ちょうど君は総帥の直属である飛竜兵団だ。どうか力を貸してくれないか。

その男の言葉に乗ってしまい、彼は総帥さんが来る日にワイバーンの卵を盗もうと考えた。

そして当日。

盗もうとしたものの、ワイバーンの恐ろしいほどの怒りを向けられて未遂に終わった。

私がのん気にしゃべっているとき、『他のこと』にという部分で気づいたんだって。

ただ総帥さんをよく思わない連中に利用されたのではないかと。

彼は深く反省して、一兵卒からやり直すと言っているらしい。

ただ、降格処分だけですむ話ではないので、罰金と労役が課せられた。

罰金は分割での支払いができるらしく、彼の給料から天引きするとのこと。

労役も百日ということだったが、行う作業を選べるので、彼にはいい経験かもしれない。


「彼の言う男を調べてみましたが、軍にはそのような者はおりませんでした。軍人ということ自体、嘘だったようです」


まぁ、そうだろうね。

犯罪を(そそのか)す人が本当のことを言うとは思えない。


「では、そうすいさんのことをよく思っていない人物は?」


総帥さんも同席しているので聞いてみると、たくさんいてわからないと言われた。

総帥さんのお家、ストハン侯爵家はかなり昔からライナス帝国に仕える獣人の一族なんだって。

獣人の貴族の中では一番歴史があるし、位も高い。

それを快く思っていない貴族は多いんだとか。

ある意味、権力抗争の一環とも言えると思うのだが、陛下は納得いかないらしい。


「捕まった軍人の一家は、熱心な創聖教の信者だという。唆した男も、何度も創聖教を口にしていたとも」


「つまり、彼が創聖教の信者で軍人だったから、ねらわれたとへいかは思っているのですか?」


「その可能性が高いとは思っている」


なるほど。

創聖教というよりは、ルノハークがライナス帝国に仕掛けてきたと考えるべきか?


「現在、我が帝国内での創聖教の動きを調べておりますが、面白い情報が入って参りましたよ」


ゼアチルさんがもったいつけるように間を取ると、陛下が睨みつけて先を促した。

ゼアチルさん、陛下で遊んじゃダメだよ!


「以前、我が帝国にいた、カーリデュベル神官長を覚えておいでですか?」


「あぁ。二巡前の大粛清でファーシアに戻ったんだったか?」


「はい。その彼が今度、総主祭(そうしゅさい)に就くそうです」


創聖教の内部組織が複雑すぎてよく覚えていないんだけど、総主祭は創聖教の最高位だったはず。


「で、それのどこが面白いんだ?」


「彼が我が帝国にいるときに、ルノハークへ指示を出していたという証拠を影の部隊が見つけてきました」


さすがに私も驚いた。

なんとかって人がどんな人なのかまったく知らないけど、ルノハークと繋がりがある人が創聖教のトップになるっていうことだよね!?


「つまり、ネフェルティマ嬢を誘拐しようとした主犯かもしれないということか?」


「もしくは、血まなこになって探している聖主(せいしゅ)かもしれません」


「だが、確証はないのだろう?」


ゼアチルさんの発言に殺気立った者がいたため、陛下ははやるなと手で制した。


「残念ながら。入手した証拠にも、聖主の記述は見受けられませんでした」


なんとかって神官長は、ルノハークに指示を出していたということから、幹部だったのかもしれない。

そんな幹部ですら、聖主の正体を知らないのかも……。

それとも、本当にその人が聖主だったとしたら?


「ファーシアに影を送り込めそうか?」


「巡礼として街に入ることは可能ですが、組織内部まで潜り込むのは無理かと」


「そうか。とりあえず、ガシェ王国の情報部隊とともにことにあたった方がよいだろう」


陛下がそう言ったことで、方針が決まったらしい。

ゼアチルさんが美しい礼を見せて、一歩引いた。


「ネフェルティマ嬢、このライナス帝国にもルノハークは根づいているだろう。カーリデュベル神官長が、大人しく創造主様に祈りを捧げていただけとは思えん」


そうでしょうね。

つまり、油断するなってことですね!


「しばらくは不便をかけると思うが、調べがすむまで宮殿で大人しくしていて欲しい」


「はい、わかりました。きゅうでんの中は今まで通り自由にしていいのですか?」


「あぁ。だが、常に護衛はつけておくように」


森鬼かスピカのどちらかが側にいるし、星伍と陸星もいるし、大丈夫だよね?


「念のため、私の方でも精霊をつけておく。何かあればすぐにユーシェに報せが行くようにな」


おっと。また精霊が増えた。

今も、森鬼を慕う精霊を始め、ソルとラース君にも精霊をつけられているのに……。

ユーシェもそんなヤル気満々な顔しなくていいんだよ。


「それに、そろそろ精霊王方に会いにいかねばな。愛し子を守るために、力はいくらあってもいいだろう」


んんんん??

精霊王たちにも、私を守らせようって魂胆ってこと?


「では、日程を調整いたしますね」


え?精霊王をそんなふうに使っちゃっていいものなの?

誰も陛下を止めないの??

困惑していると、ゼアチルさんが恐ろしいことを口にした。


「愛し子に何かあれば、精霊様も聖獣様もお怒りになるでしょう。次も女神様のご慈悲が与えられるとは限りませんので、我が帝国、ひいてはラーシア大陸を守るためにも精霊王様のお力が必要なのです」


あれか。今度何かあったら、精霊や聖獣の怒りを女神様が抑えてくれないかもしれないから、念には念を入れてってことか。

まぁ、女神様はそんな冷たい神様ではない気もするけど、あの神様の娘だからなぁ。楽観はできないよね。

というわけで、精霊宮行きが確定しました!


陛下に宮殿で大人しくしておくよう言われてしまった次の日には、精霊宮に連れていってもらう以外、予定という予定がない暇人になってしまった。

毎日、ダオやマーリエと遊べるわけでもないしね。

二人ともお勉強やお稽古事で忙しい身だし。

たまには私もお勉強をしようということで、宮殿の図書館に向かっているときだった。


「おや、ネフェルティマ嬢。今日はどちらに遊びにいくのかな?」


うっかりばったりチャラ男と遭遇してしまった!

お姉ちゃんに近づけさせないよう言われているせいか、スピカがさり気なく私を庇える位置に移動した。


「ごきげんうるわしゅうぞんじます、アイセント殿下」


「そんなに堅苦しくしなくてもいいよ。ダオや兄上方のことは愛称で呼んでいるんだろう?」


私とも仲良くして欲しいなと胡散臭い笑顔で言われた。

チャラ男よ、この前意味深なことを言い逃げしたの、忘れてないか?


「兄弟の中で私だけ愛称で呼ばれないというのも、淋しいと思わないか?」


えー、なんでこんなに愛称呼びをプッシュされているんだろう?

だって、愛称を呼び合うほど仲良くないじゃん!


「……あいしょうで呼ぶお許しをいただけるということですか?」


愛称を呼べ呼べって言っているけど、貴方は皇族なんだから、お許しがないと不敬に当たるんですよ!


「そうだよ。私もネマと呼んでいいかな?」


「……その代わり、そのうさんくさいたいどをやめてくれますか?」


これを言っちゃう私も十分不敬だとは思うが、お互いの関係を改善するためにも必要なんだと言い訳はちゃんと用意してある!


「胡散臭い?皇子としておかしいところはないと思うけど」


ヴィに負けないくらい、分厚い猫かぶりなのは、皇子としては立派なのかもしれない。

でも、チャラ男の態度は、こう、ゾワゾワするんだよね。落ち着かない!


「アイセ様がそのたいどのままだと、仲良くなれる気がいたしません。わたくしもこうしゃくれいじょうとして対応せねばいけなくなるので」


「ネマは物語に出てくるような王子様は苦手なの?」


「……王子といえば、へんたいきちく腹黒いんけんなので……」


ある人物を脳裏に浮かべながらそう言うと、チャラ男がお腹を抱えて笑い出した。


「ヴィル兄上のことをそこまで言う奴は初めてだ!」


ヲイ!私は一言もヴィだとは言っていないぞ!!

やめろ!精霊たちがチクったらどうしてくれる!!


「ヴィとは言っていません!かんちがいです!!」


「いやいや、君が言う王子像に当てはまるのは、ヴィル兄上くらいしかいないだろう」


ヴィよ。他国の皇子にも、変態鬼畜腹黒陰険王子だと思われているぞ!


「まぁ、そういうことなら、態度は変えるよ。でも、素を見せることはないからそのつもりで」


「どうしてですか?」


「敵がどこに潜んでいるかわからないからさ。ネマも気をつけた方がいい。ここは化け物たちの巣窟だからね」


うーん。なんとなく想像はつくんだけど、それ程酷い場面に遭遇したこともないのでピンとこない。


「ガシェ王国では、国王陛下も王太子であるヴィル兄上もしっかりと貴族を御しているから平気だったのかもしれないけどね。ここでは、皇族と言えど誰が皇帝になるかわからない。だからこそ、権力争いが過激になるのさ」


なるほど。

我が国では長子相続が基本で、嫡子は国王が許可した者となっている。

なので、不幸があったか、相続させられないほどの瑕疵(かし)がない限りは変更を認められることはない。


「アイセ様は他の兄弟を皇帝にしたい人たちとたたかっているの?」


「さぁね。私が敵だと思った者が敵だよ。誰を皇帝に推しているとかは関係ない。だから、ネマも行動しだいでは、敵になることもありえるってこと」


難しいなぁ。

私としては、平穏に行きたいんだよ!

まったりもふもふを満喫できればそれでいいのに。


「じゃあ、アイセ様の敵にならないようにするにはどうしたらいいの?」


「私が誰かと仲良くするなと言ったところで、ネマは聞き入れるのかな?私としては、陛下方の庇護のもと、大人しくしていてくれればそれでいいよ」


つまり、いろんなことに首を突っ込まず、大人しくしていろってことですね。


「うん。無理!」


「……だろうと思ったよ。まぁ、敵になったときは容赦しないから、楽しみにしているといい」


つか、敵になると決めつけないで!

ならない可能性の方が高いでしょ!


「あ、そう言えば、アイセ様はヴィと仲良しなの?」


突然話を変えた私に、アイセさんは苦笑しながらも答えてくれた。


「同じ国を背負う者として尊敬しているよ。実の兄たち以上にね」


別にテオさんやクレイさんがヴィに劣っているということはないと思うんだが?


「ヴィル兄上の凄さは、ネマが大きくなったらわかるだろう。それこそ、彼が王位についたときにでもね」


アイセさんがそれ程傾倒しているとは、ヴィの奴、なかなかやるな!

というやり取りがあったことをお姉ちゃんに言ったら、パチパチと怒り出した。

魔力が漏れて、火花が散っているんだよ。


「ヴィルヘルト殿下に懸想する輩なんて、今まで以上に警戒を怠ってはなりませんわよっ!」


社交もそつなくこなす優秀な姉だが、ヴィのことは蛇蝎のごとく嫌っている。

まぁ、婚約させられないための演技という一面もあるのだろうが、お姉ちゃんが嫌なら私も及ばずながら手助けするつもりではある。


「畏まりました。相手もなかなか尻尾を掴ませない曲者ですからね。久し振りに腕がなります」


パウルも怖いよ。

パウルに曲者って言わせるアイセさんも凄いけどね!!


「アイセ様、そんなにすごいの?」


「えぇ。表向きは、皇帝陛下の治世を快く思っていない貴族たちと交流を持ち、上手く御しているようです」


表向きと言うからには、もちろん裏もあるわけだよね。

口を挟まずに、パウルの言葉を待つ。


「裏の顔をお持ちのはずですが、そちらを一切見せることがありません」


「今回連れてきた者たちが、というならまだわかるけれど、もしかして以前からいる我が家の者でも掴めていないってことかしら?」


「左様です」


我が家の使用人は多い。

私もどれだけの人数がいるのか、まったく知らない。

しかし、上級貴族であれば、国内外問わず間諜を放っているものらしい。

それだけ、情報が重要であると、貴族が認識しているからなのだろう。

我が国で一番間諜を抱えているのはディルタ公爵家だとヴィは言っていたけどね。

ディルタ公爵家が個人的に雇っている間諜の数を把握している王族もどうかと思うけど。

で、もちろん我が家もあちらこちらに諜報活動をする使用人がいるわけだが、我が家の使用人は例に漏れず非常に優秀なのだ。

そんな彼らがアイセさんの裏の顔を掴めないと言う。

アイセさん、いったい何者なんだ!!


「ネマ、アイセント殿下には気を許してはならないわよ!ヴィルヘルト殿下の話題を出されても、ついていったりしては駄目ですからね」


本当にろくな人を寄せつけないわね、あの陰険王子は!と、再びパチパチが発生している。

陛下にも身の回りを気をつけるよう言われているので、アイセさんのことも一応気をつけておこう。


「最終手段はカイに欲を食べてもらってもいいわ!外交よりも、ネマの方が大事だもの」


お姉ちゃんや、宰相を務めるオスフェ公爵家の令嬢として、その発言は誰かに聞かれたらヤバいんじゃないの?


「そういえば、(かい)は何をやっているの?」


稲穂と遊んでいた海に声をかけると、お茶飲みにいっていると返ってきた。


「お茶?」


正直、そんなもので海の腹が膨れるわけがない。


「ご令嬢?に呼ばれる」


あぁ、マーリエが言っていた噂の発生元はそれか!


「美味しいの、なかなかいないよ」


海の言う美味しいの基準がよくわからないけど、美味しい人がいない方がいいってことなのか?


「どんな欲望が多かったのかしら?」


お姉ちゃんの問いに、海は少し考え込み、色欲みたいなのと答えた。

ご令嬢の欲で、なんでアダルティーなことになるの!?


「まぁ!条件のいい殿方に取り入って、今以上によい生活がしたいってわけではなさそうね」


そういうシンデレラストーリーに夢見る少女だったら、色欲なんて単語は出てこないだろうね。


「愛妾になるには、経験がいるって思っているの、多かった」


「お嬢様方にはまだ早いお話ですね。カイ、あとで私が聞きますから、それ以上は言わないように」


パウルの判断により、会話は強制終了されてしまったが、カイはわかったと言って稲穂の相手に戻る。

意外だったけど、海は稲穂や白たちの相手をするのが上手い。

どうやら、遊びたいという欲を少しだけもらい、どんな遊びをしたいのかを把握して、可能な限り叶えてあげているようだ。

軍施設から帰ってきたとき、お風呂場で海が作ったウォータースライダーで遊んでいた三匹を見て羨ましく思ったのは口が裂けても言えない。

今度、ユーシェかサチェにお願いしてやってもらおうと心に決めたけどね。



◆◆◆

ゼアチルさんが日程を調整すると言っていたが、その前にある訃報が精霊によって届いた。

ワジテ大陸にいるという水竜が亡くなったと--。


原竜である水竜が死ぬということ自体驚きだった。

だって、ソルも死ぬことがあるってことでしょ!?

私は慌ててソルに念話を飛ばした。


-ソル!ソルも死んじゃうの!!


-何事だ、慌ただしい。


水竜の訃報を聞いたことを説明した。

あぁ、それかと、ソルも納得したようだ。


-ソルも女神様のもとへ行くの?


-いや、聖獣は神のもとへ行く。というか、神のもとへ帰ると言った方が正しいか。


理解ができなかったので、じっくりと話を聞くことにした。

そもそも聖獣は神様の分身……いや、力を分けたミニチュア的な存在なので、役割が終われば神様の中に戻る。

つまり、死というもの自体はない。


-水竜さんは神様に吸収されたってこと?


-それは知らん。


さすがのソルも死んだあと、と言うか魂状態になったあとのことまでは知らないのか。

でも、いい機会なので、ソルにいろいろと聞いてみることにした。


-今、原竜って何頭いるの?


……竜の単位って頭でいいの?匹と言うには大きすぎるよね?

気分的には何人って感じなんだけどなぁ。


-何事もなければ属性ごとにおる。


じゃあ、今はソルの他に風竜と土竜……はモグラになっちゃうから、地竜がいるってことか。

やっぱり、緑色と黄色なのかな?


-会ってみたいなぁ。


-運がよければ会えるだろう。風の奴はじっとしておれんのでな、どこをさまよっているのか。土の奴は逆に、めったに地上へは出てこん。


それを聞いて、ソルがまともだということがわかった。

というか、ソルだったから、あの召喚用の魔法陣に反応してくれたのかも。

神様の気まぐれでも、魔法陣を拒否しようと思えばできたと思うんだよねぇ。


-ソル。私のところに来てくれてありがとう!


-急にどうしたのだ?


-だって、ソルを召喚した魔法陣、本当は無効にすることもできたんじゃないの?


-そんなこと、もう記憶にない。


照れたのか、都合が悪くなったのか、念話をブツリと切られてしまった。

本当に素直じゃないんだから!

でも、ソルがいてくれて心強いのは本当だよ。


水の聖獣と縁の深いライナス帝国は、水竜を悼むために五日間喪に服すという。

ただ、日本的なものと違い、水竜が神様のもとへ行くのを盛大にお見送りしようって感じだ。

なので帝都はお祭り騒ぎだし、あちらこちらに水竜を模した氷の像が作られているらしい。

宮殿にも、めちゃくちゃ大きな水竜の氷像が作られた。

それを作ったのは先代様だというから驚きだ。

先代様は一度だけ水竜に会ったことがあるらしく、そっくりに作れたとご満悦だった。


不謹慎だけど、なんかいいなって思ってしまった。

地球とは宗教のあり方が違うので、死者への考え方が違うのもわかる。

死ぬことを「女神様のもとへ旅立つ」と表すように、死とは新たな生を受けるための旅の始まり。

だからこそ、その旅路が安全なものであるように、次の生で幸せが多くおとずれるようにと皆祈るのだ。

なので、こちらの葬儀は華やかなものになり、王や皇帝など身分の高い者が亡くなるとお祭り騒ぎになってしまう。

お祭り騒ぎになればなるほど、その人物が慕われていた証となる。

だからといって、慕われていなかったり、罪を犯した者だからと死者を冒涜(ぼうとく)することはけっしてない。

そういった者には、女神様のご慈悲を与えてくださるよう祈るのだ。

今の生では辛い思いをした、道を誤った。だから次の生では少しでも多くの幸せがあるよう、罪が少しでも償えるようにと。

次の生があると信じているからこそ、そうやって明るくお見送りができるんだね。

でも、悲しいよね。また会いたいって思うよね。

親しい、愛しい存在ならなおさら。

ディーのことを思うと、まだ悲しい、淋しいって気持ちが湧き上がってくる。

それでも、ディーは次の生でも、私たち家族の側に来てくれるって信じている。

きっと、みんなも同じなんだよね。

だから私も明るくお見送りしよう!

会ったことのない水竜でも、次は会えるかもしれないから。

そうと決まれば……。


「森鬼、海、お庭に行くよ!」


「……何をする気なんだ?」


私の様子から、また変なことをするつもりかと、少し呆れた顔をする森鬼。

失敬な!


「いいから行くの!」


スピカも含めて三人を引き連れてお庭に来ると、今度はサチェとユーシェも呼び出す。

スピカを除けば、水を操ることができる面々だ。

彼らに作戦を話すと、聖獣たちは乗り気で、森鬼は淡々とした様子で、海はご飯くれるならと承諾してくれた。


「じゃあ、やるよー!」


私の合図でみんなが同時に力を振るう。

巨大な水球が宮殿の上空に現れ、さらにその大きさを増す。

そして、徐々にある形になり始めた。

それは、宮殿にある水竜の氷像にそっくりだったが、大きさは倍以上だ。

目立つようにと、実際の水竜より大きくしてもらったからだ。

その水でできた水竜を、帝都周辺を周回するように飛行させる。

優雅に、堂々と翼をはためかせる姿は、陽の光を反射して、宝石よりも美しかった。

最後に、小さな小さな粒となり、優しい雨として帝都に降り注いだ。

帝都には大きな虹がかかり、まるで女神様が降臨されたごとく光り輝いていたと、大陸中に伝わることとなった。

あとで、ソルにも派手にやったなと笑われた。

ソルのときにはもっと派手にやるねと言えば、断るとあっさり断られてしまった。

だがソルよ。魂になってしまえば、私を止めることはできないのだよ!

何かしら不穏な空気を察知したのか、愛し子を置いて逝くことはないから、お主の企みは叶わぬと言うソル。

それはそれで私が嬉しいから、いいことなのでは?


-ずっと一緒だね!


はっΣ(・□・;)

今年最後の更新だというのに、もふもふ成分がないだと!!

来年はもっともふもふするぞー!


今年一年、コミカライズもあって、たくさんの方に読んでいただけました。

昔からいる読者さんも新しい読者さんも、本当にありがとうございますm(_ _)m

それでは、皆様、よいお年をお迎えください。

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