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閑話 俺、こき使われすぎだよな?(情報部隊隊長視点)

誰やねんこのおっさん!パート2(笑)

地道に情報収集を続け、なんとかクリト鉱山跡地の内部を知ることができた。

とは言っても、ほとんどはセラフィのおかげだ。

昔使っていたという閉山前の見取り図と、現在使われている部分の照らし合わせはすべてセラフィが行った。

クリト鉱山制圧のためには、情報部隊だけでは無理なので、ガシェ国からも増援が送られることになっている。

中にやばいものがあることもわかっているので、気を引き締めてかからないとだな。

このクリト鉱山跡地の拠点を潰してしまえば、作戦変更にともない、多くの情報部隊の者たちが帰国できる。

まぁ、国の中枢に入り込んだ奴らは、もう少し頑張ってもらうことが決定しているが。


「そう言えば、みんな戻ってきているみたいよ。貴方の悪友たち」


サワが日常的な会話を装って、得た情報を伝える。


「こんな状況じゃなかったら、酒でも飲みにいくんだがなぁ」


悪友たち、つまりは俺の部下だ。

呼び寄せた者が全員揃ったようだ。

一度、作戦会議を開きたいところだが、集団で何かやっているのがばれるとまずい。

どうすっかなぁ…。

机の上に広げた地図や見取り図を眺めながら考える。

人目につかず、大勢が集まっても不審ではない場所。

少し離れるが、国境沿いが無難か?

いや、確かここら辺に放棄された集落があったよな?

ここら辺調べた報告書、どこ行った!?

家の中には、無造作にいろいろな書類が保管されている。

あえて整理していないため、よく行方不明になるのには毎回困っている。

もし、敵が忍び込んでも、床に散らばっている書類が大事なものだとはわからないだろう。

一応、内容は暗号化されているし、重要機密はすべて頭の中だ。

重要機密は国に保管され、その複製が俺たちに送られてくる。

しかし、それには一色(ひといろ)で燃える文様魔法が施されてから送られてくるのだ。

一色以内に読んで頭に叩き込まなければ、燃えてなくなる。

危険な状況のときに送ってくる馬鹿はいないが、もし読めなかったら他の情報部隊の奴と繋ぎを取り、口頭で伝えられる。

王宮以外で文章として残すことが禁じられているからだ。


ようやく見つけた報告書を調べると、この町の近くに放棄された集落があった。

鉱山跡地から離れているし、この場所ならガシェ王国へ避難するのだと言って誤魔化すこともできる。

商人たちが集まり、安全に商売ができる国を目指して集団で旅をする。

この状況なら、怪しまれることはないだろう。

ちゃっちゃと下見して、みんなを集めるかね。


下見自体は俺がやった。

放棄された集落はすでに荒らされて、ほとんどの家がどこかしら破壊されていた。

井戸も枯れているし、畑も全滅。

もう見慣れた光景だった。

人の気配どころか、動物の気配すらない。

これならば、近くに人がいたらすぐにわかるだろう。セラフィの力を使えば、かなりの範囲を感知できる。

集落を一周し終え、俺はそう決断を下した。

拠点に戻り、早速部下たちに集合場所、日時、装備を暗号化したものを手紙で送った。もちろん、焼却魔法付きで。


「隊長、全員揃いました」


「おし。じゃあ、始めるか」


商人に扮した部下たちが揃ったのを確認し、作戦会議を始める。

今回の目標となるルノハークの拠点、クリト鉱山跡地について説明と敵の想定人数、我々情報部隊の行動予定、増援の内容を説明した。


「枯葉色の髪、黄土色の目を持った痩せ型の男が精霊術師だ。こいつは絶対に生け捕りにしろよ。こいつが死ねば、精霊が解放され、鉱山跡地にかけられている精霊の守りが消える。そうなれば、崩落は時間の問題だ」


他のルノハークの生死は問わないが、中には奴隷として捕まった人たちがいること。

そして、一番危険を含んでいるのが、檻に入れられた魔物がいるってことだ。


「もし、魔物が放たれた場合、外におびき出すように。増援で来る竜騎部隊と烈騎隊(れっきたい)に任せる」


烈騎隊の名が出ると、部下たちが落ち着かなくなった。

それはそうだろう。

王国騎士団に所属するものなら、名前だけは知っているはずだ。

だが、どのくらい人数がいるのか、隊長は誰なのか、詳細はまったく知らない謎の隊。

どの部隊にも属さず、人とは思えぬ強者揃い。

とは言っても、俺は知っているけどな。

まぁ、王国騎士団の中から選ばれた強者たちだ。憧れる者も多いだろう。


「烈騎隊が来るくらい、この中にいる魔物、オーグルはやべぇってことだ。お前たち、気を抜くんじゃねぇぞ」


一匹や二匹なら、ここにいる奴らでも対応できるだろう。

しかし、七匹のオーグルともなれば難しい。確実に、何人かは女神のもとへ旅立つはめになる。


「詳細も含め、変更なども本国から手紙で送る。作戦当日まで目立つ行動は控えるように」


部下全員が決意を宿した目になったのを確認し、その場を解散させた。

俺はそのあとも、本国の連中と手紙のやり取りをし、作戦を詰めて行くが、ついに陛下からの許可が下りたとの指示書がゼルナン将軍から送られてきた。


決行日に合わせて、こちらも拠点の退去などやることは多かった。

書類関係は本国の情報部隊に全部送って丸投げしたから楽だったが、人間関係の清算がな。

現地で調達した何人かの駒を解放し、協力の対価としてある硬貨を渡した。


「ライナス帝国へ向かえ」


この硬貨は我が国と同盟を組んでいる国の、軍や騎士団でしか使えないもの。駒として働いていたがために、自国に居づらくなった者たちを保護するための目印でもある。

我が国で保護しないのは、我が国の駒だったからだ。

逆にライナス帝国やミルマ国が使った駒の保護は我が国がやる。

駒の身柄を他国に預けることによって、その駒には価値がないと思わせるためだ。というか、実際に価値はない。

使える駒ならば、囲い込んでいるだろうしな。

男の駒はあっさりと硬貨を受け取ってくれるが、女の駒は揉めることもある。

色仕掛けではないが、一緒にいたいだの、貴方の役に立てるだの、鬱陶しいことも。

俺が下手なのか…。上手い奴は揉めたなんて聞かないしなぁ。俺、やっぱり下手なんだな…。

この歳になって、自分の未熟な部分を自覚するのはかなり辛い。


「やだ。また失敗したの?」


頬に手のひらの跡をくっきりつけた俺をサワが笑う。


「…失敗してねぇよ」


とりあえず、硬貨は受け取ってもらえたからな。

散乱した書類がなくなり、すっきりしたはずの部屋には、様々な魔道具が並べられていた。

決行日に向けて、ちゃんと使えるかどうか調整中だったのだろう。


「いよいよ…か」



♦︎♦︎♦︎

まだ陽が昇るには数時間かかる深夜に、俺の部下たちは全員集合していた。

最終確認と増援部隊との顔合わせも兼ねている。

と言っても、烈騎隊はまだ到着していない。

いるのは竜騎部隊の面々だけだ。


「よぉ、ダン。久しぶりだな」


隊長組の中で一番若いダンだが、竜が好きというだけで、最短で隊長に登りつめた変人だ。いや、実力は確かだがな。


「お久しぶりです。シーリオ隊長」


「竜たちはどこで待機させているんだ?」


今合流している竜騎部隊の騎士は、予定の半数といったところだが、体の大きな竜を見つからずに連れてくることは無理なので、どこかで待機させているのだろう。


「国境沿いです。開始時間に間に合うように移動します」


俺は地図を取り出して、正確な場所を示すよう言った。

そこは、ミューガ領にある砦の一つ。

砦の側ならば竜たちがいても、訓練だと言えばいいし、クリト鉱山からも比較的近い。飛竜なら一色(ひといろ)かからないだろうし、地竜でも多く見積もって二色(ふたいろ)というところか。


「ならば、開始の三幾前から飛翔隊の一班を上空からの監視に回してくれ。特に気をつけるべきはこことここだな」


人の出入りが確認されている場所を指差す。

この鉱山見取り図は、複写されて各部隊の班長たちに配られている。

こればかりは頭に叩き込むより、見取り図を確認して間違いをなくす方が安全だという判断だ。

全員が全員、俺たちのように記憶する訓練を受けているわけじゃないしな。


「わかりました。もう一班の飛翔隊はどうしますか?役割がなければ、予定通り遊撃の支援へ回しますが」


今回、増援で来た竜騎部隊の編成は、偵察や支援の飛翔隊が二班。魔法による上空攻撃の遊撃飛翔隊が二班。武器による攻撃の武走破(ぶそうは)隊がニ班。魔法による攻撃の魔走破(まそうは)隊が二班。

一班五人編成と考えると人数は少ないが、竜がいることで場所も取るし、動きづらくなることもあって少数精鋭だ。

中に突撃するのは、武走破隊のみ。

魔法で崩落する可能性が高いため、魔走破隊は外に逃げるであろうルノハークの処理を任せることになっている。


「あぁ、それで構わない。あと、鉱山に向けての魔法は絶対に禁止だからな。仲間を殺してくれるなよ」


「わかっていますって」


さらに、細かいことを話し合い、準備を終えた部下たちには仮眠を取るよう指示をして、拠点が静まった頃に彼らは来た。


「ご足労いただき、ありがとうございます」


目の前の人物に、臣下の礼を取る。


「楽にしろ、シーリオ。それにしても、しばらく見ないうちにむさくなったな」


「そりゃ、半巡も商人の真似事をしていましたからね」


俺を揶揄うのが面白いのか、彼は声を殺して笑う。

いっそのこと、声を出して笑ってもらった方が、こちらとしても清々するんだが。


「それはご苦労だった。それより、変更がいくつかある。時間は大丈夫だな?」


ここに来ての作戦変更だと?

上の奴らが欲を出したのか、それとも外務が何かしくじったのか…。

悪い方向に行かなきゃいいが。


「わかりました。こちらへどうぞ」


それから聞かされた変更に頭を抱えるはめになるのだが、正直、なるようになれと開き直るしかない。

優秀な部下たちを失うわけにはいかないので、最初から全力を出す…。


「つか、この作戦だと、俺が行かなきゃ成り立たないですよね?」


「当たり前だろう。お前以外に精霊と意思疎通できる者がいるか?」


「…いないです。はい」


俺、もういい歳なのに。少しは労ってくれてもいいじゃないか。

本気でそろそろ引退を視野に入れるべきだな。

いや、この方がすんなりと引退させてくれるわけないよな…。

俺って可哀想。


さて、まもなく作戦決行だが、その前に全員に名に誓ってもらうことがある。


「増援として来てもらった烈騎隊だ。紹介する前に、烈騎隊の者たちの素性をけっして他言しないと『名に誓う』ことを命ずる」


本来なら、他の部隊と一緒に行動する隊ではなく、裏で人知れず動く烈騎隊。

彼らの今後の任務のためにも、正体がばれることは絶対に許されない。

なので、命令として名に誓うことを強要したが、誓いたくなければここで任務から外れてもらっても構わない。

それくらい、彼らが危険な任務についているということだ。

そう説明し、全員が名に誓ってくれたことに胸を撫で下ろした。


「本当に我が王国騎士団の忠誠は厚いな。今は烈騎隊の隊長としてここに立っているので、礼は不要だ」


彼が現れると、部下たちの緊張が一気に高まったようだ。

それもそうだろう。

一介の騎士では、王族を近くで拝見することなど、生涯一度あるかないか。

しかも、聖獣を連れてともなると、忠誠心の厚い奴は、膝を折りたくてしょうがないはずだ。

不要と言われたのでできないが。

同じことを竜騎部隊の方でもやっているので、士気は上がっているだろう。


「他の者の身分は明かせないが、国のためにともに戦おう」


そう告げると、空にリンドブルムが舞った。

監視要員の飛翔隊だ。


「まもなく時間だ。全員配置につけ。合図を間違えるなよ」


俺の指示とともに、敬礼をして散っていく部下たち。

俺はクリト鉱山内に入るため、外の指揮は烈騎隊に任せることになる。


「では、あとは頼みます」


「あぁ。この作戦はシーリオ隊長、貴殿にかかっている。…俺の許可なく死ぬんじゃないぞ」


まったく。素直じゃないな、未来の王様は。

もちろんですと答えて、俺は配置へと向かった。

さて、やりますかね。


空に上がったのは合図となる魔法。

強く赤い光を発するそれと同時に、俺は部下を引き連れて鉱山内へと突入した。

見張りに立っていた者はすぐさま無力化して放置だ。

俺たちの後ろには、武走破隊が続いている。

もう少し行くと分岐路があり、そこで二手に分かれる。

俺は奥へ奥へと行かないければならない。

なので、ルノハークの確保は部下たちに任せると伝えてある。

もう一方から突入した部隊の方が、先に戦闘し始めたようだ。

微かに怒号が聞こえてくる。

分岐路で武走破隊と分かれ、俺の部下たちは囚われている人のもとへ向かった。

俺一人だけであの場所へ。

俺ならできると、自分に言い聞かせて。


目的の場所に到着すると、武装したルノハークが数名いた。

おそらく、見張りだろう。

気づかれずに、無力化することができるか。

足元に落ちていた手頃な石を拾い、届くギリギリの檻を狙う。

石は檻に当たることなく、中にいるものに当たった。

感触からして、風の精霊が協力してくれたようだ。

お礼はあとで伝えるとして、檻に閉じ込められていたものが暴れ出す。

それを見て慌てて集まるルノハークの背後を取り、一気に意識を刈り取っていく。

一人、二人…。

そこでようやく気づいた者たち。

だが、大振りする武器では、俺の暗器は防げないぞ。

強力な睡眠作用のある毒と麻痺の毒がそれぞれ塗ってある短剣で、敵の足を裂く。

この作戦のみに許可された、特殊な毒だ。

その効き目は、正直俺も引くくらい効きがいい。

まじで、一瞬だとは聞いていたが、こうもとは…。

確かに、世には出せない毒だな、これは。


「風の精霊たち。助かった。ありがとな。あと、鎮圧したと伝えてくれるか?」


俺の周りにいた風の精霊たちにそう告げると、嬉しそうに笑いながら散っていった。


「セラフィ。合図が来たら頼むぞ」


『任せて!ラース様と一緒だなんて、ワクワクしちゃうわね』


やり過ぎるなよと釘を差しながら、意識のないルノハークを拘束していく。

そして、邪魔にならない場所に積み上げる。


『いくわよー!!』


セラフィのとても楽しげな声がしたと思ったら、まるで雷鳴のような激しい音とともに天井が崩れた。


「おー、見事に空が見えるなぁ」


ほんとに、土の精霊と風の聖獣様のなせる技だな。ここが鉱山の奥で、上層部に何もなくてよかったよ。

檻に閉じ込められているものたちが、一際暴れ始めた。

鼓膜が破けそうな雄叫びと、激しい金属音。

それだけで肝が冷えるわ!

檻が壊れないことを祈るしかない。


一仕事終えて、次に移ろうとしたら、何者かがこちらへ駆け込んできた。

白い装束に特徴のある文様。

オスフェ家より集められた情報の一つと一致するな。


「いったい何が…」


見えるはずのない空があることに呆然と立ちつくす人物に、わざと声をかけた。


「そりゃあ、お前たちが神様の怒りを買ったからだよ」


創聖教との繋がりは断たれたように言っていたが、実際はそんなことはない。

こうしているわけだし。


「貴様、何者だ!いや、どこの国の者だっ!!」


きったねぇな。唾を飛ばしてしゃべらないでくれ。

しかし、そう聞かれて答える馬鹿がいると思うのかね?


「俺のことは言えないけど、あんたたちのことなら知っているぜ。神様の名を騙る不届きものってな」


「ふんっ。騙っているのではない!我々は創造神様より使命を授かったのだ!」


行きすぎた信仰ってのも恐ろしいね。

ここまで盲目になれるとは…。


「では聞くが、お前たちの組織に治癒術師はいるか?」


「それがどうした!治癒術師くらい…」


考えずに言葉の方が先に出たようだが、言われて気づいたみたいだな。

そう、ずっと疑問に思っていたんだが、捕まえたルノハークに治癒魔法が使える者がいなかった。

戦闘の場面で、後方から味方を癒す姿も誰として見ていない。

治癒魔法が使える者は、程度の差はあれど、すべて女神クレシオール様の加護がある。

つまり、女神様が加護を与えた者を守り、ルノハークに接しないようにしているか、ルノハークに加担した者の加護を取り上げているかのどちらかだろう。

よって、ルノハークという存在自体が、神様の意思に反しているということだ。


「普通、大きな組織になればなるほど、必ず治癒魔法が使える者がいるはずだ。それなのに、お前たちの組織の者を捕まえても治癒術師がいない。戦闘職と違って、治癒術師は戦いに慣れていない者が多いから、捉え損ねたというのは考えられない。つまり、組織そのものが神様の反感を買っていて、加護持ちを遠ざけられている」


「精霊術師がこちらにいるのにか?精霊が我らに『愛し子』の存在を教えたのだぞ?つまり、創造神様が我らに愛し子を守れと仰っているのだ!」


例の精霊術師はおそらく、精霊が神の意思を聞けなくなった頃にルノハークに加担したのだろう。

その段階で、他の精霊はその精霊術師に力を貸すことはしていないはずだ。

穢れた力は精霊を穢す。

精霊術師が契約した精霊を頼れば頼るほど、『消滅』と『堕落者』になる時間は加速する。

神様にも精霊たちにも、捨てられた存在だ。


「はっ。お前たちが守る…ねぇ」


男が語る戯れ言が、あまりにも哀れで、おかしくて笑えてくる。


「愛し子は世界に守られているんだよ。神に見放されたお前たちが何をしようと、世界は愛し子を守る。お前たちに待ち受けるのは破滅だけ」


愛し子とは、もっとも神様に近い存在だ。

聖獣が、精霊が、そして世界のすべてがかの存在を守る。

俺たち人が何をどう足掻こうと、愛し子を守るべく動かされているのだ。

神の意思によってね。


「じゃあ、あとでゆっくり話を聞かせてもらうから」


睡眠毒が塗ってある針を打ち込めば、すぐに深い眠りについた男。

聖主(せいしゅ)とやらの情報が手に入れば、めっけもんなんだがなぁ。


『シーリオ!あの子、消滅するわよ!』


セラフィを仰ぎ見れば、悲しみの表情を浮かべていた。

同胞とも言える存在が消えるのだ。

セラフィだってやるせない思いを抱えているだろう。


「ここの地盤は大丈夫だな?」


『えぇ。ここは端の方だし、地力も弱っていないから…』


ならば、この魔物たちが解き放たれる危険性は低い。

あとは、内部の制圧がどれくらい進んでいるかによる。

この鉱山が崩れるのは自然のこと。つまり(ことわり)だった。

それを今まで保ち続けたことは、世界の理に反するがゆえに、あの精霊の『消滅』が早まった。

保ってはいけないのなら、崩落自体を緩やかなものにしたら?

理に触れるか触れないか、やってみなければわからないが…。


「セラフィ、命令だ。この鉱山の崩落を人がいない部分から崩れるようにしてくれ」


『…シーリオ、正気なの?確かに私にはできるわ。でも、貴方の力がもたないかもしれないのよ!?』


セラフィができると言うのなら、理に反しないのだろう。

しかし、現象が大きい分、彼女に与えなければいけない力の量も大きいということか。

昔の精霊術師であれば、そう大きな問題ではない。昔の精霊術師は与えられた力が多かったから。

今の精霊術師であれば、大きすぎる問題だ。昔よりも力がずっと少ないから。

精霊術師という力は、神様からもらった力を精霊に与えて力にするのだ。

精霊は神様の力を蓄えて、より上位の精霊になる。

俺は任務でその力を使ってきた。

ここでセラフィに現象を起こしてもらうと、神様から与えられた力が底をつくのだろう。

だが、ここには多くの仲間や被害にあった民たちがいる。


「あぁ。たとえ、お前を見ることができなくなっても、相棒であることは変わらない」


『…そうね。貴方は私が見込んだ人だもの。創造神様に祈っていてね』


そうだな。

神様。セラフィが『消滅』することなく、上位の精霊になって、あんたの役に立って笑う姿が見たいんだ。

この力を授けてくれたあんたに感謝してる。

セラフィのこと、頼んだぜ。


魔道具を取り出し、発動させる。

空高く、白い光が強く瞬くと、あちらこちらから笛の音が響き渡る。

緊急退避の合図だ。

監視している飛翔隊が風の魔法を使って、鉱山内部にも笛の音を届けてくれている。

さて、俺も部下たちと合流を急ぐか。


おっさん、まだ続くよ!(笑)

でも、次回こそはもふもふのターン!!

あ、烈騎隊の隊長わかった人は挙手(=゜ω゜)ノ


さて、おっさんから見た神様や世界は、ネマから見たものとは違っています。

精霊術師のおっさんからしたら愛し子は世界、というかすべてのものに守られていると感じているんです。

実際はそんなことないのですが。


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