第九十話:ボスの報酬
そう言えば、ボスであるキングゴブリンを倒したわけだけど、宝箱って出ているのかな?
そう思って辺りを見回してみたんだけど、そしたら奥の方に大きな宝箱が鎮座していた。
初めからここにあったのか、それともボスを倒したから出現したのかはわからないけど、これがボスを倒した報酬であることは間違いなさそうである。
「にくす、あれ」
「宝箱か。開けたいなら好きにすればいい。部屋を探すのに少し時間がかかるからな」
そう言ってすたすたと歩いて行ってしまう。
自信満々に歩いていったのにもしかして場所わかってないのか。
いやまあ、他のダンジョンならここにあるだろうというのを知っているだけで、このダンジョンのここにあると正確に知っているわけではないみたいだから当たり前かもしれないけども。
ともかく、開けていいなら開けてしまおうか。あ、でも、ボスを倒したのはフェルだし、フェルが開けるべきかな?
「ふぇる、たからばこ」
「開けていいよ? 私はもう満足してるし」
一応聞いてみたが、そんな返答が返ってきた。
まあ、別に誰が開けようが関係ないとは思うけどね。
許可も得たことだし、さっそく開けてみるとしよう。
宝箱はかなり大きく、縦幅だけでも俺の身長くらいある。
受付で聞いた話によると、このダンジョンのボス報酬はキングゴブリンが使っている武器の類らしいけど、確かにあの剣を見ているとこれくらいの大きさがないといけないだろうね。
鍵とかはかかっていないようなので開けてみると、中には巨大な剣が入っていた。
見た感じ、キングゴブリンが使っていた剣と同じもののようである。
近くで見ると、かなり武骨なデザインをしている。戦いだけのために作られた戦士の剣って感じ。
材質は鉄だろうか。錆びなどは見受けられず、新品同然の状態のようだ。
持ってみると、結構な重さがあることがわかる。流石、伊達にこれだけでかいわけじゃないようだ。
「……んー」
キングゴブリンが使う大剣。貴重は貴重なんだろうけど、今回はそこまでの貴重さを感じられないなぁ。
だって、すでにこれと同じものが二本もあるんだもの。
ボスだけは倒したらすぐに消滅してしまいますというわけでもなさそうだし、さっきまでキングゴブリンが使っていた剣二本は普通にそこに転がっている。
もちろん、状態に関しては宝箱に入っていたものの方がよさそうだけど、多少汚れがついている程度でそこまで差があるわけでもないし、同じものが三本もあるのは微妙と言わざるを得ない。
そもそも、誰も使えないしね。
一応、身長180センチメートルを超えるような筋肉ムキムキの大男なら使えるかもしれないけど、俺達の中ではフェルはもちろん、ニクスだって使えないだろう。
俺は一応持つことはできるけど、背中に背負ったらもれなく引きずることになるし、完全に邪魔である。
これだったら、道中の宝箱にあるようなポーション系の方がまだ役に立つ。なんでこんなのがボスドロップなのか。
まあ、希少性はそれなりにあるようなので売ればそこそこの値段で売れるかもしれないけどね。
売るかはわからないけど、一応回収だけはしておこうか。
「ませき、だいじ」
さて、宝箱の中身は残念だったが、それよりも重要なのは魔石である。
魔石は魔物の体内に生成される魔力を秘めた石であり、魔物にとっては魔力を増やすための手段としてかなり重宝されるものでもある。
まあ、その方法は食べるというものであり、当然ながら石は石なので食べてもおいしくない。だから、俺はあんまり食べようとは思わないんだけど、魔石はそれ以外にも色々使い道があるらしい。
俺もいつかは魔石を食べなきゃならない日が来るかもしれないし、集められる時に集めておくのはいいことだ。
それに、仮にもボスの魔石となればそこそこ大きいだろうし、結構貴重かもしれないしね。
限定品とか希少品とかそう言う言葉には弱いのだ。
そう言うわけで、キングゴブリンの魔石は回収しておいた。
大きさに関しては、まあ、そこそこ?
正直、以前いた森の魔物と比べるとそこまで大きくはない。
これはあの森の魔物が強いのか、キングゴブリンが弱いのかどちらなんだろうか。あるいは、ダンジョンの魔物は魔石が小さい性質でもあるのかな?
そこらへんはわからないけど、まああるだけましである。気にしないでおこう。
「白竜の、ちょっとこい」
と、魔石を取り出す作業をしていると、ニクスからお呼びがかかった。
ダンジョンコアの場所がわかったのかな?
そう思って声のする方へ行って見ると、そこには意外な人物がいた。
そこにいたのは、四人の子供。皆男の子で、年齢は10~14歳ってところだろうか?
そんな男の子達が仏頂面のニクスの後ろの隠れている。
これは一体……?
「にくす?」
「この先のくぼみに寝かされていた。恐らく、貴様が無責任にも捜索を請け負った子供の生き残りだろうよ」
ダンジョンに潜る子供、すなわちポーター。なるほど、確かにベル君が言っていた人数とも合致するし、間違いではないかもしれない。
彼らが生きていたことは喜ばしいが、なぜこんな場所にいるんだろう?
子供のポーターが潜るのはせいぜい10階層まで。それ以降はほとんど進むことはなく、無理矢理進んだとしたらそのまま帰ってこられないなんてこともよくある。
だから、普通はこんな深く、それもボスがいる階層にまで潜ることはなく、ここに子供がいるのは明らかにおかしい。
いったい何があったのだろうか。
「我はダンジョンコアの捜索で忙しい。相手をしていろ」
「あ、うん」
そう言ってニクスは不安そうに見てくる子供達を無視してすたすたと別の方向へと歩いて行ってしまった。
相変わらずだねぇ……。
「んー、とりあえず、おちつく」
涙目になって震えている子供達を前にひとまず落ち着かせる作業に入る。
一応、同じ子供だからか、親近感はあるらしく、子供達はそれなりに色々話してくれた。
まずここにいた理由だが、どうやらゴブリン達に連れ去られたかららしい。
普通、ゴブリンは冒険者などと出会うと戦闘行動に入る。大抵はそのまま殺すか殺されるかしてそれ以上のことはしないようだが、相手が子供の場合は変わってくるらしい。
なぜだか、ゴブリンの中でもホブゴブリンは子供を見かけると殺さずに攫って行き、このボス部屋へと送り届けられるらしい。
察するに、恐らくキングゴブリンへの献上品ってところだろうか?
実際、子供達はキングゴブリンの目の前で放り出され、キングゴブリンは子供達を値踏みするように見たかと思うと足蹴にしてきたのだという。
殺されることはなかったが、一撃でフェルに致命傷を与えるような相手だ。ただの軽い蹴りでも子供にとってはかなり堪える。
ボロボロの状態ではあったけど、きっと助けが来ると信じ、耐え忍んでいたところに現れたのがニクスだったようだ。
ニクスは一応、最低限の治療は施してくれたらしい。服こそボロボロではあるが、致命傷レベルの怪我を負っている子は見当たらなかった。
流石はフェニックスだね。
「ほか、いる?」
「いや、俺達だけだ。そ、それより、早く脱出しないと! 早くしないとキングゴブリンが……」
「だいじょうぶ、たおした」
「倒した? キングゴブリンを?」
俺は倒れているキングゴブリンを指さす。
子供達はそれを見て、ぱあっと表情を明るくし、これで助かると喜んでいた。
まあ、ここから外までは相当遠いからまだ脱出には時間がかかるだろうけどね。
とにかく、道中で殺されたりしていなくてよかったと言ったところ。これでベル君を悲しませずに済む。
問題は、これからダンジョンの意思と戦わなければいけないということだよね。
流石に、今から子供達をダンジョンの外に送り届けてから再びここに戻ってくるのは効率が悪い。それだったら、ダンジョンの意思を倒した後、一緒に戻ってくる方が時間的にもいい。
ただ、子供達にとってはせっかく助けに来たのにまた危ない目に遭わなければならないということでもあるから少し可哀そうかもね。
まあ、こればっかりは納得してもらうしかない。こちらも、そこまで気を配っていられないのだ。
俺は子供達にどう説明しようかと頭を悩ませた。




