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第八十話:報酬の規定

「ルミエール、お疲れ様」


「んっ」


 フェルは俺のことを褒めるように優しく頭を撫でてくれる。

 別にそこまで褒められるようなことはしていないと思うけど、フェルの手つきは優しいので撫でられるのは普通に好きだ。

 ただ、ニクスは今の結果に少し不満なようで、いらだったような表情をしていた。


「なんだ今のは。貴様、やる気がないのか?」


 まあ、やったことと言ったら、不意打ちで一発当てただけだもんね。

 というか、一撃当てるだけでいいのなら後ろから一撃当てた時点で終了だし、最初の光球は全く必要なかったと言える。

 わざわざあれを用意したのは、一応魔法が使えますよというアピールのためであって、攻撃しようという意図はあまりなかった。

 でも、本気で放ったらそれこそ訓練場が消し飛んじゃうし、ルッツさんに怪我をさせるわけにもいかなかったから不意打ちを含めてあの程度の威力が限界だった。

 むしろあれでも強すぎるくらいである。その証拠に、最後に当たった一撃でうつ伏せに倒れかけていたルッツさんは仰向けに強制的に倒されたわけだし。

 いくら制御がうまくなってきたとは言っても、それはドラゴン基準であり、人からしたらそれでも十分な威力を持っている。それこそ、最低限加減したとしても鎧を砕くほどの威力を持っているのだ。

 だから、怪我をさせないように魔法を当てるというのはかなり難しい。

 そう考えると、あの程度で済ませられたのを褒めてほしいくらいだ。


「けが、だめ」


「まったく、貴様は甘すぎる。向こうから挑んできているのだから、手加減してやる必要などないだろうに」


 確かに、こちらは実力があると言っているのに、向こうがそれを信じずに試させてほしいと言ってきたのだから、本気で叩き潰して向こうが再起不能になったところでこちらに責任はないだろう。

 恐らく、俺が仮に怪我をさせてしまったとしても、無罪放免になる可能性が高い。

 だけど、悪人とかならまだしも、ただこちらの実力を確かめたいというだけの人に本気を出すのは流石にダメだろう。


「はぁ、まあいい。おい貴様、これで文句はないな?」


「え、ええ……正直こんな幼い子があれほどの魔法を放てるとは思いませんでしたが、流石はニクス様のお連れ様でしょうか」


 呆然としていたメリアさんだったが、ニクスに言われてハッと正気に戻ったようだ。

 正直、魔法の軌道だけを見ていたならそこまで強いようには見えなかっただろう。

 ルッツさんが凄い吹っ飛び方をしたけど、あれはルッツさんが俺のために大げさに演技をしたと言われても通りそうなくらいだ。

 しかし、メリアさんはそれをきちんと見極め、ちゃんと威力のある魔法を放ったと認めたようである。


「ですが、流石にお二人の身に任せるには不安が残ります。ニクス様、修行ということは、監督をなさることでしょう。もしもの時は、手を貸していただけませんか?」


「それしか道がなくなったのなら、な。まあ、そんなことは起こらんだろうが」


 ただ、いくら俺が年齢に見合わない魔法を放てるとしても、だからと言って守護者に勝てるというわけではない。

 フェルと俺が力を合わせても勝てるかわからない以上は、やはり実力的に信頼のおけるニクスを引っ張り出した方が無難だ。

 だから、メリアさんはニクスに監督をさせることで、いざという時は手を出すように仕向けたわけである。

 まあ、それだけだとまだ不安はあるだろうけど、全然戦ってくれないよりはましだろう。


「わかりました。それでは、一度室内に戻って報酬の話と参りましょう。ナルサス、ルッツを頼みます」


「任された」


 そう言って、メリアさんは訓練場を後にする。

 去り際にちらりとルッツさんの方を見ていたが、ぽかんとした表情で何が何やらわかっていないと言った感じだった。

 まあ、怪我はしていなさそうなので何よりである。うまい具合に吹き飛んだのが功を制したのかな。


「ダンジョンコアの調査。規定では、まず最低限金貨100枚とされています。今回はダンジョンのランクの低さもあってそれに近い金額とされる場合がありますが、現状では猶予がなく、町への被害も考えるとそれでは不誠実だと考えます。ですので、金額を上乗せし、このくらいでいかがでしょうか?」


 さっきの部屋に戻り、メリアさんが報酬の話に入る。

 金貨100枚というと、かなりの高額だ。前世の基準で考えるなら、1000万円くらいの価値があるだろう。

 それだけでも十分だとは思うが、メリアさんはさらにそれに上乗せして、倍近い金額を提示してきた。

 これだけあれば、しばらくはお金に困ることはないだろう。

 それだけ守護者というのは強力なのだろうか。ダンジョンのランク的には弱い部類に入るらしいけど、いくら緊急とはいえこれだけの金額を提示されるとなるとやばいように感じてしまう。

 大丈夫かなぁ。


「報酬に興味はない。好きに決めるといい」


「ありがとうございます。では、こちらで正式に依頼を受理させていただきますね」


 ニクスは全く興味がないと言わんばかりにふんぞり返っている。

 お金には興味ないみたいなことは言っていたけど、これだけの金額を見ても目線一つ動かさないとはさすがだ。

 まあ、元が魔物なのだからお金に執着がないのはわかるけど、ニクスはSランク冒険者として人間として活動することもあるようだし、多少はお金の大事さを知っていてもおかしくなさそうだけどな。

 必要になったらその時稼げばいいというスタンスなのだろうか。実際、この町に着いた時もお金は道中で狩った魔物の素材を売って作ったものだし。


「依頼に関してですが、ダンジョンコアの場所は町の方で管理している結界があり、許可がないと入ることができません。ですので、結界を解除する役として、一人案内役が同行します。よろしいですか?」


「面倒な。そいつは守る必要があるのか?」


「一応、元冒険者ですので多少の護身の心得はありますが、完全ではありません。ですので、守っていただけると助かります」


 ダンジョンコアの場所は一般の冒険者には知らされていない。なので、そこへ行くためには案内役が必要であり、その人を護衛する必要があるようだ。

 てっきりこの三人で行くものと思っていたから少し予想外である。

 よく考えてみたら当たり前だけど、これ大丈夫かな。

 元冒険者らしいけど、守護者はボスを凌ぐほどの強さらしいし、いざ戦いになった時に足手まといになる可能性が非常に高い。

 それとも、結界とやらを解除してくれるだけで戦いの場には来ないのかな? それだったら少しは楽になるけども。


「仕方がない。さっさと済ませるとしよう」


「よろしくお願いします」


 まあ、もし一緒に来たとしてもニクスがいればどうとでもなるだろう。

 ニクスがいてもどうにもならないのなら、それは俺達では初めから勝ち目のない奴だったということになるし。

 そうなった時は、何としてでもフェルだけは逃がさないといけないね。

 俺は守護者との戦いを想像しながら、どう立ち回ろうかとイメージトレーニングをしていた。

 感想ありがとうございます。

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足手まといがオマケに着いてくる……
やっぱり白竜のかわいい子
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