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第四十八話:フェルの居場所

 俺は全速力で町まで飛んでいった。

 なりふり構わず、ただ早く着くことだけを考えていたからか、一時間もかからずにつけたと思う。

 以前であれば、俺がドラゴン姿で町に近づこうものなら矢を射かけられ、魔法を放たれて迎撃されていただろうけど、すでにこの町では俺の存在は広く知れ渡っている。

 だからこそ、驚く者はいても迎撃して来ようとする者はおらず、俺はすんなりと町に入り込むことができた。

 しかし、ここまで来て、どうすればいいのかわからなくなった。

 それはそうだ。フェルが攫われたということは聞いたけれど、どこにいるかまでは聞いていない。この広い町の中から、フェル一人を見つけ出すのは相当難しいことだ。

 なにより、ドラゴン姿では建物には入れない。町の上空を飛ぶくらいは許されるかもしれないが、流石に町に降り立てば事情を知らない人もいるだろうし、咎められるかもしれない。

 フェルのことは大事だけど、それでこの町の人達を怯えさせてはだめだろう。下手をしたらまた討伐リストに加えられてしまうかもしれないし、慎重に動かなくてはならない。

 だが、一刻も早くフェルを見つけないといけないのも事実。

 事情を知っているとすれば、メルセウスだろうか。ギルドマスターらしいから恐らくギルドにいるんだろうけど、どれがそのギルドなんだろう? 上空から見てみるだけではよくわからない。

 ああ、もう、面倒くさい!

 俺は適当な屋根の上に着地すると、一度隠密魔法を使ってから人化する。

 わからないのであれば聞けばいいのだ。ドラゴンの姿では言葉は通じないけど、今なら多少の単語程度なら話すことができる。

 それに、人の姿であった方が町を探しやすいだろう。本当に人化の術を得ていてよかった。

 俺は屋根から飛び降り、隠密魔法を解いて路地裏から大通りへと駆け出す。

 町の人々は皆上を見上げていて、俺の姿を探しているようだった。

 もしかしたら人化する瞬間を見られてしまったかもしれないけど、あの場所は通りからは建物で死角になっているし、隠密魔法も使っていたので見つかることはなかっただろう。

 もし見つかっていたら面倒なことになるけど、そんなこと考えている場合ではない。


「あ、あの……!」


「ん? なんだい嬢ちゃん」


 俺はひとまず適当な人に話しかけてギルドの場所を聞く。

 ただ、ギルドという単語は知らなかったので、だいぶ苦労した。それに、この姿のせいなのか、普通に喋ろうとしても舌ったらずな感じになってしまってうまく喋れない。

 急がなければならないのにうまく言葉が伝えられない。ドラゴンの時もそうだったはずなのに、人の姿でこういう状況に陥っていると考えると少し泣きたくなってくる。

 実際、若干目の前がぼやけていたので涙を流してしまっていたかもしれない。

 そのせいか、道を聞いた人は慌てて俺をギルドへと運んでくれた。

 なんだかほんとに幼女になってしまったようで少し恥ずかしいけど、とりあえずギルドまでこれたので良しとしよう。


「誰か、ギルドマスターを呼んでくれないか? この子が用があるらしい」


「ギルドマスターを? 今忙しいんだ。後にしてくんな」


 親切な人ではあったけど、冒険者の一人にそう言われてしまい困ったように顔をしかめている。

 流石に、ただの一般人がギルドマスターに面会するのは難しいようだ。

 何とかして俺がドラゴンだと伝えられればいいんだけど……そうだ、こうすれば。


「……いいから、はやく!」


「ひっ!」


 俺は胸元に抑え込んでいる魔力の玉から魔力を開放する。

 二クスは魔力が駄々洩れになっていると相手を威圧してしまうと言っていた。であれば、意図的に魔力を溢れさせれば、簡易的な威圧を発動することができる。

 こんな幼女が大の大人を怯えさせるほどの威圧を放てるはずもないだろう。つまり、俺が何らかの特別な存在であると分かるはずである。


「わ、わかった! い、今呼んでくるから!」


 案の定、ただならぬ気配を感じたのか冒険者は転がるように走り去っていった。

 あのまま逃げてしまわないか心配ではあるけれど、まあ多分大丈夫だろう。

 親切に案内してくれた人も、俺のただならぬ気配に怯えてしまったのか、ちょっと離れたところで様子を伺っているけれど、これは必要経費だと思う。

 魔力の放出を抑え、しばらく待っていると、ギルドマスターであるメルセウスがやってきた。


「君か、俺に用があるという子は」


 傍らにはあの冒険者が付き添っている。

 逃げずにちゃんと呼んでくれたようで何よりだが、俺のことをどういう風に報告したのか、メルセウスはかなり警戒した様子で俺のことを見ている。

 とにかく、俺のことを伝えないといけない。でも、俺がドラゴンであることをばらすわけにはいかない。

 そうなると、二クスと同じくドラゴンと関係のある人間という立場を取ったほうがいいか。


「しろい、ドラゴン、しりあい」


「白いドラゴンの知り合い? まさか、君は白竜殿の関係者なのか?」


 絞りだした単語にメルセウスが反応してくれたので頷いて返す。

 よかった、単語すら話せなかったら本当に詰むところだったかもしれない。


「ふぇりゅ……ふ、へる……んー! フェル!」


「フェル? 残念だが、フェルは今ここにはいない。少し、問題があってな」


 単語は何となく覚えているけど、名前に関してはちょっと怪しい。

 何とかフェルのことを聞いてみると、そんな答えが返ってきた。

 それは知っている。二クスから攫われたと聞いたのだから当たり前だ。

 俺が聞きたいのはフェルの居場所。知っているかはわからないけど、それを聞きださなければならない。


「君は二クス殿の遣いかな? 二クス殿は、きちんと白竜殿に伝えてくれたのだろうか」


「ドラゴン、きた」


「なに、もう来ているのか?」


「そういえば、さっきドラゴンが町の上空を飛んでいたような……」


 俺を連れてきてくれた親切な人がそう口添えする。

 本当はそのドラゴンはここにいるけど、まあ嘘は言っていないからいいだろう。


「なるほど。では、白竜殿に伝えてくれないか。大広場に来てほしい、そこでエドワード殿が待っていると」


「んっ?」


 なんでここでエドワードが出てくるんだろう。

 エドワードって、確か領主の代理の人だよね? あの意味不明な契約を結ぼうとしてきた。

 あれが嫌で逃げだしたというのもあるけど、それとフェルがなぜ関係するんだろうか。

 どうにも、情報に抜けがある気がする。もう少し聞いておかないとかな。


「なぜ?」


「二クス殿から聞いていないか? 領主はドラゴンと契約するためにフェルを誘拐したのだ」


「なっ!?」


 メルセウスの発言に思わず息を飲む。

 俺と契約するためにフェルを誘拐した? それってつまり、俺があの時契約を断ったから、強硬手段に出たってことだよな?

 俺があの時契約を断らなければ、というよりも、そんな汚い手を使ってまで俺を手に入れたいのかという怒りの方が強く湧いてきた。

 そんな身勝手な理由でフェルを攫うなんて……許せない!


「……わかった、ドラゴン、いう」


 とにかく、相手は大広場とやらで待っているらしい。であれば、さっさと出向いてフェルを取り戻そう。

 俺はそう思って、すぐさまギルドを後にした。

 感想ありがとうございます。

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