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第36話『前へ』

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《鉄殻の墓所》の上層、巨大なドーム状の空間。


腕を組んだまま、俺の体は左右に揺られていた。


真上には、視界を覆い尽くすほどの巨大鳥(ルミナホーンフェザー)の青黒い翼。

眼下には、石と木で築かれた巨大な建造物群が広がっている。

見渡すと、はるか遠くに外壁が霞んでいた。


「ちくしょう、この鳥野郎……!」


このサイズだと攻撃なんて効くわけがない。

下手に刺激してこの高さから落とされたら、死ぬ気がする。


「……しばらく我慢するしかないか」


深いため息がこぼれた。



しかしあの時、兎人の少女は何をしてたんだろう。


巨大鳥の羽ばたきに巻き込まれて、一緒に下層へ落とされていた。

心配だが、ラースなら性格的に助けてるはずだ。


ただラースは浮上する気配がなかったんだよな……。


「……二人とも無事だといいけどな」



しばらく揺れに身を委ねていると、エリア内で最も高くそびえる建造物が徐々に近づいてくる。

それは外壁に木の根が絡みつき、縦に長い円筒型の遺跡だった。


……まさか、そのまま突っ込まないよな……。


そう思った瞬間、前触れもなく俺の体は空中へ放り出された。


「えぇっ!」


思わず声が漏れ、慌てて滑空の姿勢を取る。


風を切りながら塔の頂上へ向けて落下し、積み上げられた武具や装飾品の山が目前へ迫る。

着地の衝撃で金属や宝石片が散らばり、ガシャリと音を立てた。


すぐさま身構えるが、周囲は静寂に包まれており、巨大鳥が襲い掛かってくる気配もない。



目の前には、薄青く光を帯びた一本の巨木が根を張っていた。


巨大鳥はその太い枝の一つに爪を掛け、力なく視線を根元へ落としている。


その仕草が妙に気にかかり、思わず鑑定を走らせる。

──《エルグラシア。悠久の時を刻む古樹。》


どうやら、《巡る霊脈の地》にあるものと同じ種類の巨木らしい。

だが、目の前のそれはどこか活力を失い、弱々しく見えた。


「……こいつ一体、何がしたいんだ……?」


少し興味はあるものの、敵意がないなら、今のうちに離れるべきだ。

視線を逸らさぬよう注意しながら、じりじりと後ずさりを始める。


しかし巨大鳥はうなだれたまま、こちらに興味を示す様子がない。

そのまま慎重に後ずさりを続け、やがて建物の内部へと身を滑り込ませた。


背後が気になって幾度も振り返ってみるものの、追ってくる気配はないようだ。



足場を確かめながら、ゆっくりと建物を下っていく。


「随分遠くまで連れてこられたようだが……ここはどこなんだ?


とにかく元の場所に……いや、待てよ。そもそもあの大穴に戻ってどうするんだ。

あの高さから下に飛び降りるのは無理だ。滑空してどうにかなるとは思えない。


……となると?」


言葉にしてみるが、返事をする者はいなかった。

これからどうする──。


ふいに、小さな風が鼻先をかすめた。


立ち止まって視線を外へ向けると、眼下には木々が光に照らされて淡く輝いている。

遠くには《鉄殻の墓所》と繋がる穴がうっすらと見えていた。


ラースなら、こんな状況でも、「キレイな景色ですね!」とか言いそうだ。

あいつがいると不思議と安心するんだよなぁ……。


考えを整理するときだって、ラースが答えてくれるから形になっていく気がする。

ちょっとトボけた話し方で、いつも正しい道を示してくれて。



……あの時、ラースはゆっくり下層に落ちていってた。

まさか故障……?


いや。ラースは、エコロームの攻撃が効かないくらい頑丈なんだ。

きっと無事に決まってる。

エコロームと戦った時も、囮役を引き受けてくれたから乗り越えられたんだ。



……そういえば、あいつには今まで助けられっぱなしだったな。



戦闘だけじゃない。

いつもあいつが素直で前向きに返してくれるから、変なやつばかりのこの世界でも、なんとかここまで来られたんだ。



明滅するラースを思い出すと、肩の力が抜けるようだった。

ふっと笑みがこぼれる。


「今度は俺が助けに行かないと。


ま、何よりラースがいないと静かすぎてつまらないしな」



そうと決まれば、まずは周辺の探索と、情報の収集からだ。


「……しかしこの建物、デカすぎだろ。どこに向かえばいいんだ。

飛び降りられる高さじゃないし、外には変な生き物も飛んでるし……」


一息ついて《千里眼》と《ウィズセンサー》を同時に発動させた。


魔力を帯びた格子状の光が周囲へ走り、空間全体の輪郭を浮かび上がらせていく。


石材と樹木が絡み合ってそびえる、縦に長い巨大な建造物。

周囲を見渡しても、これより高いものはない。


どうやら自分は、その最上部近くにいるらしい。


さらに視線を下へ滑らせると、この巨大な建造物の内部に広がる平地に、五十棟ほどの建物からなる小さな集落が見えた。

ただ、外に出ている者は少なく、ほとんどは家の中に身を潜めているようだった。


まずはあそこへ行って、情報を得るしかなさそうだ。




クロは、何かが吹っ切れたように、足が前へと進みだしていた。


そんなクロを追うようにして、物陰に潜んでいた一つの影がそっと後をついて動き出した。


------------


身体強化系:《高速木登り》《高速滑空》《千里眼》

便利系:《サーチ》《鑑定》

皮膜系:《収納膜》《防御膜》《隠密膜》

尻尾系:《ファントムテール》《スラッシュテール》

肉球系:《ジャンプスタンプ》《ショックスタンプ》《エアスタンプ》《ヒールスタンプ》

ヒゲ系:《ウィズセンサー》《ウィズスピア》


ラースのパーツ:

《言語パーツ》《通信パーツ》《観測パーツ》《??パーツ》


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次回2026/2/14、0:10頃、次話を更新予定です

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― 新着の感想 ―
ルミナホーンフェザーから解放されてひとまず安心しました(*´꒳`*) ですが、ルミナホーンフェザー何か伝えたかったのかとか、気になりますねえ(*'ω'*) ラースがいる安心感はんぱないですね!(笑)…
最後まで追いついちゃいましたね。 ラースを今度は俺が助けに行くと決意する姿は、まさに相棒としての成長っすね。 面白かったのでブクマと評価しました。もちろん超絶最高評価でございます! これからも頑張って…
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