第35話『ルミナホーンフェザー』 後書き:イラスト
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《巡る霊脈の地》を出てから《絡縛の遺跡》を抜け、俺たちは再び《鉄殻の墓所》の入り口にきていた。
それじゃ、気をつけて行って来いよ──。
リディスの笑顔が脳裏に浮かび、ついぼやいてしまう。
「何か、イマイチ信用しきれないんだよな……」
ラースはくるりと回転しながら答える。
「クロ、リディスさんは悪い人じゃないと思いますよ。
指輪もちゃんと交換してくれましたしね」
「そ、そうだな……」
ふさふさの尻尾に通した指輪を改めて鑑定する。
<<耐毒の指輪。毒を防ぐ。>>
「……うん。ちゃんと効果はついてるはずだ」
ラースがふよふよと浮かびながら問いかける。
「クロ、睡眠は足りていますか?」
「もちろんだ。睡眠不足なんかじゃないし、足がもつれることもない」
きっぱりと言い切り、鉄殻の墓所へと足を踏み入れる。
漂ってくる甘い匂いに、前回の出来事を思い出して身構える。
──が、今回は問題なさそうだ。
足取りはしっかりしているし、意識もはっきりしている。
「……眠気は大丈夫そうだ」
安全が確認できたところで、早速《千里眼》と《ウィズセンサー》を同時に展開する。
《千里眼》の効果でスキャングリッドが遠方まで走り、《ウィズセンサー》によって、魔力濃度が可視化されていく。
エリア内の空間を縦に貫くように、天井から幾筋かの巨大な根が地面へと伸びている。
足元には、いたるところに錆びた鎧の破片や鎖、砕けた岩塊や貝殻が散らばっていた。
そして中央には、《機械のパーツ》らしき《特殊な魔力反響を持つ何か》がある。
しかし、より目を引いたのはその横──中央部の天井と地面、双方に穿たれた奇妙な大穴だった。
上下が吹き抜け、空間が繋がっている。
上を仰ぐと、天井の穴の先には広大なドーム状の空間が広がり、石造りの巨大な塔がいくつも立ち並んでいた。
塔の端は視界の限界に消え、どこまで続いているのか判然としない。
ドーム内の上空には何か鳥に似た生物が飛び交っている。
続いて下へと視線を落としてみる。
地面の大穴は下層の通路へ繋がっているが、もし落ちれば、空を飛べない限り戻れない高さだ。
さらにその先には開けた空間があり、木の根が複雑に張り巡らされている様子がうかがえる。
そして何より気になるのは──穴の下に漂っている魔力の濃さだ。
異様なほど濃密で、下層全体が霞んで見えるほど充満している。
「嫌な雰囲気だな。何が出てきてもいいように、注意しながら進もう」
「そうですね、気をつけて進みましょう!!」
「できるだけ、静かにな……」
「了解しました……」
エリア中央に向かっていると、足元に散らばる貝殻の中に、丸みを帯びた二枚貝を見つけた。
鑑定によると、「ミネラルシェル」と呼ばれる食材で、毒性はないようだ。
試しに一つ殻を割ってみると、淡桃色に輝く身がプルンと露出する。
生のまま恐る恐る口に含んでみると、滲んだ液体が舌に広がり、わずかな塩気と柔らかな旨味が立ち上がる。
歯で身をプツッと噛み切ると、粘度のある濃密な汁があふれ出した。
「おぉ……! リディスの言う通り、めちゃくちゃ美味いじゃないか」
その近くには、やや灰色がかった殻を持つ二枚貝が並んでいた。
こちらは「ネブラシェル」と呼ばれる食材だが、生で食べると強い眠気に襲われるとのこと。
「ゴクリ……この先、何があるか分からないからな!
とりあえず、取れるだけ取っておこう」
どちらも、鼻歌まじりに片っ端から収納膜にしまっていく。
さらに岩と貝殻の隙間を覗くと、淡黄の双葉が生えているのが見えた。
鑑定によると「ソルドの芽」と呼ばれる植物らしい。
葉を摘み取ると、清涼感ある草の匂いが立ち上がる。
口に含むと、繊細な葉の表面が舌にしっとりと触れ、噛むほどに甘さがじんわりと広がっていく。
「これもいいな! 軽い甘味で食べやすい。
……食材も多くて、いいところだな!」
周囲の気配を探りながら進んできたが、結局、何事もなく中央へ辿り着くことができた。
無造作に地面に落ちている機械のパーツをヒョイと拾い上げる。
「おぉ、無事に入手できましたね!」
「あぁ、拍子抜けだな!
そういえば、リディスも危険はないって言ってたし……ん?」
肩の力を抜いて笑ったその瞬間、視界の端でぴょこ、と影が揺れた。
反射的に目を向けると、地面の大穴の傍で、下層をのぞき込んでいる者がいた。
ウィズセンサーで見てみるが、大した魔力は感じられない。
<<──兎人亜種。雪耳の跳兎。>>
よく見ると、俺よりちょっと背が高い、灰色の大きな兎耳をした少女のようだ。
ラースがふよふよと近づいていき、回転しながら声をかけた。
「こんにちは、お嬢さん!」
少女がゆっくりと振り向く。
白と緑のロングコートにショートパンツ。
手にはスケッチブックを抱え、腰には青い巨大な羽毛を一本差している。
そして──片目と腕には乱雑に包帯が巻かれており、ただならぬ怪我を負っているように見える。
「え、あ、こんに──!?」
兎耳がピクリと跳ね、声を詰まらせる。
少女の反応に疑問を抱いた瞬間、何かが俺の首筋に食い込んだ。
呼吸が詰まり、思わず声が漏れる。
「ん……!?」
次の瞬間、グンッと引き上げられ、急激に体が浮上する。
「うおおっ! なんだ!」
慌てて首を振り、腕をばたつかせるが、びくともしない。
胸が圧迫されて呼吸が詰まる中、必死でもがいて見上げる。
目に飛び込んできたのは、視界を覆う鉤爪。
その持ち主は──青黒い羽を持つ巨大な鳥だった。
<<──ルミナホーンフェザー。雷紋の角翼。>>
「なんだ、こいつはっ!!」
巨大な翼は空を覆い、鋭利な羽根の一本一本が、稲妻のような光を帯びている。
頭部からは、不思議な文様の浮かぶ一本の角が突き出していた。
どうやら巨大鳥の爪の先で首の皮を掴まれているようだが、抜け出せる気がしない。
地面は一瞬で遠ざかっていき、視界が左右に揺れる。
「くっ……!」
「まずいです! クロ!!」
必死にもがく俺の目に、回転しながら突っ込んでくるラースの姿が映った。
だが、次の瞬間。
ルミナホーンフェザーが巨大な翼を振り下ろし、爆ぜるような轟音が響き渡った。
耳をつんざく衝撃とともに、周囲の景色が一気に揺さぶられる。
突風は壁のように一直線に走り抜け、ラースを吹き飛ばした。
兎人の少女も爆風に巻き込まれ、周囲のガラクタと共に、地面の大穴へと吹き飛ばされていく。
「ラァーースーーーーッ!!」
「クローーーーーーーー!!」
ラースの声は、次第に遠ざかっていった。
ルミナホーンフェザーは天井部の吹き抜けを通り抜け、上層エリアに入り、さらに浮上していく。
すでに《鉄殻の墓所》は遥か遠く、飛び降りてどうにかなる高さを超えていた。
爪先に掴まれてプラプラと揺れながら、ポツリと呟く。
「ラース……」
スキルを使ってラースの姿を追ってみるものの、なにやら様子がおかしい。
いつものように浮上する気配が見られず、兎人の少女と一緒に《鉄殻の墓所》下層へ落ちているようだった。
「……くっそー、ラース!!
……無事でいてくれよ!」
叫びは風に呑まれ、ただ空へと消えていった。
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身体強化系:《高速木登り》《高速滑空》《千里眼》
便利系:《サーチ》《鑑定》
皮膜系:《収納膜》《防御膜》《隠密膜》
尻尾系:《ファントムテール》《スラッシュテール》
肉球系:《ジャンプスタンプ》《ショックスタンプ》《エアスタンプ》《ヒールスタンプ》
ヒゲ系:《ウィズセンサー》《ウィズスピア》
ラースのパーツ:
《言語パーツ》《通信パーツ》《観測パーツ》《??パーツ》
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