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76.力と感情のコントロール(制御)…


王宮の庭園でお茶を楽しんでいるアリーシアと、三人の王子達…。アリーシアの要望により実現した小さなお茶会に兄達は参加出来ず離れた場所で待機している…。

あの日のアリーシアの"旅に出る"発言から…こうして更に過保護となり…外出の際は必ずどちらかが付き添い離れず、エミリーとヘレンの仕事の邪魔をしている。




「あの時を思い出すな…幼いアリーシアの姿に私は本当に驚いたんだ…。小さく可愛らしい子がアルを庇う姿が健気でねぇ…」


「ああ、とてもしっかりとしていて、とても歳下とは思えないほどだった。俺はジェイ達よりアリーシアとも城で過ごしたかったんだがな…」


「大体…アリーシアは俺の事が好きだったのではないのか?…あの時の事は…記憶がおぼろげではあるが、その事だけは覚えているぞ!アリーシア俺と婚約しよう!」


王子達の話をアリーシアは微笑ましく聞いていて、庭園を眺め…口を開いた。


「昔の事なのに…覚えていただいているのですね…

それとジュリアン様、フフフ…ありがとうございます。まるで恋愛小説のヒロインになれた様ですわ。しかし、その様な事を勢いで仰ってはいけませんよ!わたくしが本気にでもしたらどうなさるのですか?

まぁその事はさておき…

今だからお話しますが…あのお茶会の時のわたくしは、早く帰りたくて…あまり褒められた態度ではなかったと記憶しています…。確か一人で花を眺めていて、ため息の一つもついていたはずですもの。

でも、こちらのお庭にいた妖精達がずっとわたくしの側に居てくれたのだと知って…わたくし、とっても嬉しかったのです!その時のわたくしは持たざる者で…この子達の存在にすら気付かない様な、ただの子供であったのに…この子達はずっと見放す事なく寄り添ってくれていたのです…そんなこの子達に今度はわたくしが、感謝を込めてお返しをしたいと…そう思っているのです。」


「アリーシア、君の考えるそのお返しとは?私達にも何か協力出来る事があるのかな?」


「はい、アデルバート様…実はシリウスが言うには、わたくしの持つ聖力は有り難い事に、治癒や浄化の力に特化しており…わたくしの感情に強く左右されるらしいのです。ですので無闇矢鱈むやみやたらに聖力を暴走させない様、感情をコントロールせよとシリウスにも言われたのですが…わたくしそういった事は得意と自負しておりますのでそれについては、ご心配には及びません。

ただ…わたくし自分の目で見て状況を把握した上で…妖精達の住み良い居場所を増やしていきたいのです。ひいては…その土地やそこに住む人達への貢献にもなるのではないかと信じております…。

ですので…手始めに妖精信仰の残る隣国への留学か、精霊の泉があるとされる母の故郷へ向かうか…迷っているのです。」


ガタンッ!と大きな音を立て、三人の王子達が立ち上がった。王子と言えどマナーがどうのと言う者はこの場にはおらず…エミリーが静かに椅子を戻し、こぼれた紅茶を淹れ直してくれている。

王子達は驚きの表情を浮かべ、誰が先陣を切るか窺っている様だ…。

いち早く落ち着きを取り戻したアデルバートが、離れた席のアルフレッドとジェイソンを見やり口を開いた。


「えー、アリーシア?私は別に了見りょうけんが狭い事を言うつもりはないのだが…まずはこの国の妖精達を増やすのはどうだろう?君も目覚めた当初よりは随分元気になったし、ペイフェリークの泉が心配なのはわかるけど…もしかして急がなくてはならない理由があるのかい?」


「アリーシア!兄上の仰る通りだっ!ペイフェリーク国はともかくとして…ヴァナルガンドへの留学など認めないぞ!兄上っ、兄上も何か言ってください!」


「よすんだ…ジュリアン、婚約の話もそうだが…お前はなんでも頭ごなしに言い過ぎる。冷静になれ、いいか?ここで大事なのは三つだ。

まず一つ目、アリーシアはこの国を出る事ではなく、ペイフェリークかヴァナルガンドで迷っている事。

二つ目、兄上も言っていた俺達に出来る協力とは何か?

三つ目…アリーシアが俺の側から離れるという事…

そして四つ目、感情のコントロールについて…アリーシアは得意と言っているが、俺にはそうは思えない。

泣いたり笑ったり、照れて頬を赤く染め…怒って頬を膨らませる…そんなアリーシアが好きなんだ。そもそも、シリウス様もコントロールが出来てからと仰っているのであれば、許しはまだ出ていないのではないか?」


エドワードの発言を聞いた兄と弟は、口には出さず頭をフル回転させていた。


『エド…ジュリアンに冷静になれと言っていながら、お前が一番動揺しているじゃないか…三つと言いつつ、今四つあったぞ!それに内容の半分は、単にお前の感情がダダ漏れしてるだけで…ジュリアンのそれと大差ないんだよ…』


『兄上…今、さらっと好きって言いましたよね?俺に冷静になれと言っておいて?三つ目に堂々と俺の側からって言ってるし、そこはせめて"俺達の"でしょうが!』


『…ぇ?エドワード様?あらっ?…聞き間違いかしら?エドワード様が私の事を好きだと仰った様に聞こえたのだけれど…すき…すき…好き? …んなっ!だっダメよアリーシア、落ち着きなさい。あれよ、妹的かつ人間的に〜的なあれよ!惑わされてはダメ。今こそコントロールの出番だわっ!一旦落ち着くのよ…お二人も何も仰らないし、華麗にスルーされているのだから、私の聞き間違いの可能性だって無きにしも非ずね…』


自分では冷静なつもりのエドワードと、二の句が継げずに無言でツッコミをいれる兄王子と弟王子…そして理性を総動員しているアリーシア…

その四つどもえとも言える四人のテーブルにアリーシアの兄達が乗り込んで来た。


「はい、そこまでだよ…アリー。

殿下方ご心配をおかけして申し訳ございません。この度アリーが申しました通り、本人は今すぐにでも両国どちらかに旅立つつもりではあったのですが…いかんせん本人の意図せぬ"力"が及ぼす影響が強過ぎるので…お師匠様からもストップがかかっておりました。この状況から見ても…アリーの感情はともかくとしても、力のコントロールが出来ない事には他国に出さないと判断致しましたので、御三方もどうぞご安心ください。

この件は国王陛下ならびに、我が師シリウス様、そして公爵家の判断であり決定ですので悪しからず。

アリーもいいね?」


「ジェイお兄様!何を言ってるの?わたくしは至って冷静です!聖力も流しておりませんし、妖精達も落ち着いております。そしてアルお兄様?なぜそんなあからさまに目を逸らされるのですか?」


「アリー…あれ程気が弱く、自分に自信が持てなかった君が、自分の意思で行動を起こそうとしている事はね…意志の強さと成長を感じられて、とても喜ばしい事だ。


だけど君の持つ力は…君が思う以上に強力で尊いものなんだ。君がその力を…必要な時に必要な場所で必要とする量をきちんと見極めて使える様になるまでは、大人しく守られていなさい。国を出るのはそれからだ…。ん?納得がいかないかい?それじゃあ周りを見てごらん…」


ジェイソンに促されアリーシア達は周囲を見渡した…







補足

ヘレンは下級メイドではありましたが、毒や薬草に詳しい事と…アリーシアとの同調があった為か意思疎通出来る事を考慮され、アリーシア付きのメイドとなった。

何より本人がアリーシアに身を捧げている。

エミリーは"お嬢様に仕えるなら"と厳しく指導している…(決して嫉妬からではない…)


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