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57.デビュタント会場


お兄様達の服はあらかじめ用意していたが…国王様は大丈夫なのかしら?と心配していると…

マントと王冠を乗せた国王様は


「アリーシアよ…ジュリアンが心配故、先に行くがゆっくり身体を休めてから会場に来なさい。まだまだ挨拶の途中だろうから慌てる事はない…

私はアリーシアのお陰ですこぶる元気だからな!今ならアドルフと久し振りに一騎打ちでも勝てそうなぐらい力がみなぎっておるのだ!例え会場で何があろうと私が返り討ちにするから、何も心配いらない。では、会場で待っておるぞ。」


と軽やかな足取りで会場へと向かわれた。

その姿をエドワード様が"父上は本来お調子者なのだ"と呟かれ、国王様の意外な一面を知ってしまったと

お父様を見ると"学生の頃からいつも私が勝っていた"と少し自慢げにしている。今度はお二人の意外な関係性を知ってしまったと、お母様を見ると…お兄様達の無事を改めて喜んでいる様だ…。そうだ…二人とも負傷して一人は瀕死だったのだから無理もない…。


私はエミリーの紅茶で心を落ち着かせ、シリウスが話していた事を考える…。私に関する事ですら把握出来ていないと言うのに、この会場で何か起きそうだと…ほのめかしていた。

お兄様の死と隣り合わせの場面に直面したばかりなのだ…正直勘弁して欲しい、けれど国王様が先陣を切ってしまっている…仕方ない、被害が出ない事を願って隅で大人しくしておこう…とため息をついたらエドワード様が隣に座られて、


「アリーシア…いや、"聖女様"とお呼びしようか?

ハハハッすまない、元気が無さそうに見えたんだ…

疲れたのだろう?しかし…ありがとう、俺からも礼を言わせてくれ…。例え兄上が無事だったとて、アルを亡くしていたらと思うと……兄上も辛い思いをするだけでは済まなかったと思う。

アリーシアも辛かったのによく頑張った!

疲れているだろうが、せっかくのデビュタントだから…楽しい思い出として残って欲しい。神獣様があの様に仰っていたから心配もあるが…俺達がいるからあまり気負わずに会場に来るといい。ではまた後でな…」


そう言って私の頭を撫でていかれた。

家族だけになった控え室で、先程の転移魔法を体験したジェイお兄様が…興奮気味に熱弁を振るっている。


アル兄様が「そろそろ行くか?」と腕を出してくれる、お父様と代わったの?とその私は腕にしがみついた。淑女はどこに行った?と呆れながら…綺麗だとアル兄様が褒めてくれる。良かった…兄様が変わらず側に居てくれている…私は全てに感謝しつつ会場へと向かった。



私達が会場入りすると注目を集め、次々に挨拶の為の列が出来て身動き出来なくなった…。両親は慣れているが、私は早くお友達と合流したかったので困っていると…そこへラシュカール様が、お友達が待っているから案内すると私を連れ出してくれた。その場に断りを入れ、会場内を移動していると…


「アルフレッド様のお姿を見れて安心致しました。

お側に行けなかったので…詳しい事は分かりませんが…アリーシア様も大変でしたね、でも皆様お戻りになれて本当に良かったです。」


「ラシュカール様ありがとうございます。

お兄様の事も本当に神様に感謝しております。ジュリアン様もアデルバート様がご無事で安心されたでしょう。わたくしも少し疲れておりますが…お兄様達と参加出来て嬉しく思っております…。

当たり前ですが…デビュタントの白いドレスばかりですわね、皆様とてもお綺麗ですわ…でもこれでは見分けるのが大変そう、そういえば…ラシュカール様はよくお分かりになりましたわね…お陰でわたくしはとても助かったのですが…。」


と、お礼を言うと…ラシュカール様は驚いたように


「アリーシア様?もしかして開始前に控え室で申し上げた事は冗談とお思いですか?アリーシア様はこの会場の中でも一際輝いて目立っておいでですよ?

確かにドレスも装飾品も、デザインはシンプルで落ち着いてらっしゃいますが…輝くおぐしに揺れるおく、思わず触れたくなる様な白く透き通った肌と、そして儚さを感じさせつつも凛とした佇まい!

本来、魅力的に見せる為に身に着ける筈の装飾品が、アリーシア様に限っては…アリーシア様ご自身の美しさによってその価値が引き立てられ、完成された美となっているかのごときでございます!


オホンッ、つまりは…貴女が一番美しいと、私はそう言っているのです。わかって頂けましたか?

フフッ…それではレディー、パーティーを楽しんで!」


そう言って、とても優しく微笑みながら私をオリビア様達の所へと案内してくれたラシュカール様は、足早に持ち場へと戻られた…。

きっと忙しい中私が困っているのに気付かれて助けて下さったのだろう…揶揄からかう様な口調で、不安や緊張を取り除いて安心させ、細やかな気遣いでいつも私の事を助けて下る…。そんな紳士的なラシュカール様の背中を見送っていると、オリビア様達に話しかけられた。


「アリーシア様っ!お待ちしておりました、急用との事でしたがもう大丈夫ですの?それよりも…

アリーシア様……とっても素敵ですわっ!

シンプルなAラインのドレスでありながら、その光沢とハリのある素材で存在感を増し…肩口の露出は総レースで抑え、アリーシア様の清楚さが失われる事なく存分に引き出されておりますね!ふんだんに使われている希少な生地も勿論ですが…このレース!なんですのっ?この薄さと細かさっ!職人技ってこう言う事ですのね…

あぁ…公爵家の本気が伝わってきますわ…。」


「オリビア様っ、落ち着いて下さい。オリビア様も皆様のドレスも、とてもお似合いでとっても素敵ですわ!」


私達がお互いの装いを褒め合っていると、正装に身を包んだテディーが"母さんが準備してくれたんだ"と少し照れ臭そうに会話に加わってきた。

私は装飾品を着けていないテディーに、自分のハンカチを胸のポケットに挿してあげた。すると一瞬驚いた様子のテディーは"いいのか?"なんて言いながらも嬉しそうにしてくれていた。

皆は王妃様への挨拶が終わったそうなので、私も挨拶を済ませてこようとしたが…目の前でテディーが男性にぶつかられてしまった。









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