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53.緊急事態

私は危うく紅茶を吹き出しそうになった…

シリウスは急に何を言い出したの?何故デビュタントの話をここでするの?しかもフリフリのキラキラって何?と、私が呆然とシリウスを見つめているとお母様が、


「畏まりました。神獣様のご期待にたがわぬ様、必ずや!アリーシアをフリフリのキラキラで着飾ってご覧に入れましょう!」


と、シリウスに力強く返事を返している…えっ待って!


「お母様!わたくし…あの…元々お母様にお願いしようかとは思っておりましたが、もっと後でいいかと…

それにドレスもティアラも、目立たぬ様シンプルな物で揃えて頂こうと考えていたのですが…」


「アリーシアよ、何を言っておる!其方そなた我をあの様に着飾るほど、フリフリのキラキラが好きなのであろう?友と約束もしておったし…せっかくの機会だ、存分に着飾って目立つがよいぞ」


「アリーシアのデビュタントであったか!

先日アリーシアからの助言もあった、土魔法と作物関連の件がジェイソンの働きもあり…順調に適用されそうなのだ。成功となる実を結ぶまではもう少しの時間が必要ではあるが、発案者のアリーシアと功労者である、ジェイソン、そしてエドワードとジュリアン達には何か褒美をと思っていた所だ!ちょうど良かった。

アリーシア、うちの宝物庫からティアラを贈ろう!」


いやいやいや…国王様?うちのって…お城の宝物庫の事ですわよね?私のちょっとしたうっかり発言が家宝レベルの褒賞になるだなんて…ダメですっ、素直に喜べるはずがございませんっ!

あぁ…ジュリアン様達やお兄様もワクワクしているわ、そしてお父様は何故あんな険しいお顔なの?

あっ!お母様、エミリーと楽しそうに何を話してるの?


「アリーシアよ、何をワタワタと慌てておるのだ?ん?もしやフリフリのキラキラでは足らんと申すか?」


「な!、な、な…なんっ」


「神獣様、もうその辺で…

アリーシア、貴女普段これと同じ事を神獣様にしてしまっているのよ?フリフリもキラキラも確かに可愛いけれど、神獣様は同じ様に好んでくれてるのかしら?

貴女が言葉も出ず、慌ててしまうぐらいなのだから…

フリフリキラキラの無理強いはやめましょうね?わたくしも貴女のドレスはシンプルな物にするわ。

という事ですので国王様もどうかご理解下さいませ。」


そう言って、キャサリンはアリーシアにやんわりと釘を刺し、女児がおらずアリーシアを娘の様に思ってくれている国王の暴走も止めた…。

デビュタントの言葉で、花嫁姿にまで妄想を飛ばし葛藤していたアドルフの事は…いつもの事なので放置した。

美しい銀髪で…絶世の美女キャサリンは穏やかな表情ではあるが、笑顔にも有無を言わせぬ迫力があった…。


「フハハハッ!キャサリンよ、かたじけない!

アリーシアも驚かせてすまなかった…。デビュタントを我も楽しみにしてる事には違いないゆえ許してくれ。」


そんなシリウスの大きな笑い声で、その場はお開きとなった…。私は反省しつつ…どんなのが好みかしら?と次なる手を考えていると、エミリーから"お嬢様と同じでシンプルな物がよろしいですよ"とアドバイスという名の先手を打たれてしまった…。


それからは学園もデビュタントの準備などで忙しい為、慌ただしい時間が過ぎていき。

私達もドレスのサイズ調整やオリビア様達との打ち合わせやらと充実した日々を送っていた。


いよいよデビュタントを三日後に控え、生徒達もソワソワとした空気に包まれた学園の中、アリーシアはいつもの自分だけの中庭で花壇の手入れをしていると…シリウスが念話で話しかけてきた。

この一ヶ月、離れた距離でも会話ができる様になっていたのだが…いつもの可愛い声と雰囲気が違う、


〈アリーシア、緊急事態である。王族で話が出来る者を連れ直ちに屋敷に帰ってきてくれ…内密に話がある〉


それだけ言われたアリーシアは、舞踏会の準備で忙しいジュリアンを避け、ジェイソンとエドワードの所へ走った。二人はすぐに承諾してシリウスの元に集った。


シリウスの話を聞くと、隣国側にある澱みから魔物が急速に生まれており、放っておくとこちらの国にも影響してしまう恐れがあるというのだ…。

シリウスから一刻を争うと断言されたエドワード達は

城に報告をして先見隊と討伐隊を編成した。

国王は隣国へ国境越えの許可申請、澱みの報告を迅速に行なった。

これまでにも魔物は発生していたし、討伐も何度も行われていた…しかし、隣国からの魔物の発生となると対処が変わる上、シリウスの話からして規模がも大きいと推察された。

その為一気に物々しい雰囲気となった城の中…アデルバート第一王子の執務室ではジェイソンを先見隊に、アデルバート、アルフレッドは討伐隊へと組み込み、エドワードとジュリアンは待機し、皆の不安を煽らない様、舞踏会も予定通りと話し合われ、国境へ向かう三人はアリーシアに手紙を書きそのまま出発したのだった…。





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