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24.優秀な側近

放課後、学園の初等科生徒会室…そこでジュリアンは

頭を悩ませていた。生徒会メンバーはそんなジュリアンの様子に気付いてはいたが、どうせアリーシア絡みだろうと自分達の仕事を片付けていた。そろそろ休憩を…とラシュカールが席を立った時…


「おいで…ラスカル…」


「?ジュリアン様?お気を確かに、アリーシア様はいらっしゃいませんよ?どうなさったのですか?朝から変だったし、敢えて触れはしませんでしたが…アリーシア様関連なのでしょう?」


「アリーシア…あぁ、アリーシアが此度の件、生徒会のメンバーにも感謝していた…ただ、処罰に至るまで私情を挟む事なき様、要らぬ敵を増やさぬ様…関わった人間の事を心配していた…。」


「あぁ…なんと健気な、ご自分がお辛い思いをしたというのに…あの女…絶対あの日接触したはず…アリーシア様が気鬱になってしまった元凶に慈悲などっ、やはり家ごと…」


「やめるんだラスカル…アリーシアはそれを心配していたんだ、俺や兄上は王族としてもだが、お前も、みんなも、生徒会の地位にいるという事は羨望の対象だけでは無いんだ…足を引っ張り、失脚を虎視眈々と狙う…そんな奴等にエサを与える事がない様、俺達の立場をよく理解した上で心配をしてくれていた。ラスカル…それがわかったら冷静になるんだ。しかもアリーシアはな、生徒会のメンバーにまで心配と手間をかけさせて申し訳ないと謝っていたぞ…」


「アリーシア様らしい……あの方はどこまでも清くていらっしゃる…ジュリアン様の腹の黒さも、私の悪知恵もアリーシア様の前では、全て浄化されてしまいますね…

ところでアリーシア様は何故今日も学園へ来ていらっしゃらないのです?確か今日からでしたよね? まさかっまた何かあったのですか?」


「ん、んんっ、あぁ、あー、あったのだ…あぁ大丈夫だ、みなも下がらなくていい、そのまま聞いてくれ意見が欲しい…あのな…あの兄上が…甘いんだ、とても、アリーシアに対して…俺は今朝兄上がどこかで誰か別人と入れ替わったのではと疑っている…明らかに違うんだ…

ただ、確認のしようがないんだ…。」


「んーー?んんっ?ジュリアン様、もしやと確認ですが、甘いとは…あの堅物のエドワード殿下がっ、またもやアリーシア様に対してっ、甘いマスクと態度でっ、ピンクなオーラを纏いっ、甘いセリフを囁きっ、無垢なアリーシア様を籠絡せんとっ、ついに動いたのでしょうかっ?」


「いや……いや、確かに甘さはその甘さだったが…

籠絡という感じではなく、いつもの兄上ではなく……

そうっ、思ったままの…すごく正直な感じだった、

アリーシアの唇を齧りたいと…言って…」


「ぬぁーーッ!ジュリアン様っ!まさかそれを黙って

見てたわけじゃないですよね?公爵家に行った後、

エドワード殿下は危険だ!と私…さんざん忠告致しましたよね?無闇に近付けてはいけないと、何の為の弟ポジなんですかっ!動けなかったでは済まされませんよ、

あっという間に横から攫われても良いのですか?

エドワード殿下ご本人の自覚があるかは定かではない様ですが…本気を出されたら…きっと私達では太刀打ち出来ないでしょう…"そんなか?"ですって?何を悠長なっ!宜しいですか?あの方は普段からアデルバート殿下を尊敬なさってますから、常に目立とうとせずご自分を主張なさる事はありませんが、美丈夫は勿論、体型体格どれも一級品です、その上…日頃厳しい表情のお顔から繰り出されるレア度の高い笑顔っ!そこに甘さが加わってごらんなさいっ!俄然、特級となられます、こうなっては百戦錬磨である娼館のお姉様方ですら、きっと為す術なし無しです。お分かりになりますか?

あぁ…アリーシア様…おいたわしや…」


ラスカルの失礼さは今に始まった事ではないからスルーするとして、意見を聞きたいと言ったのは自分だが、

そんなにか?…と思った。…これまでの兄上は常に冷静で感情を制御し、俺とも一番上の兄ともどこか一線引いている感じがあった…それなのに…ラスカルの発言に他のメンバーも同意しているようだ…別人だと思いたかった…何故なら兄上の優秀さも優しさも…誰よりも自分が一番知っているからだ…


「兄上は…アリーシアを好いているのだろうか…どう思っているのだろうか…俺は兄上の優秀さを知っている…きっと敵わない事も。そしてアリーシアも優秀だ、

兄上達に望まれるはずだ、三男の俺には……」


「ジュリアン様?何をらしくないっ!弱気になってどうするのです!諦めない気持ちは勿論のことですが、闘う前から敵わないだなんて…いいですか?…アリーシア様を想う気持ちは人それぞれなのです、ですから…私達はもっと単純に、自分の気持ちに素直であるべきだと思います…、相手を想うその気持ちを押し付けるのは…よろしくないですが、想う気持ちと同じ様に様々な愛の形があるのですから、ご自分のお気持ちに言い訳をする前に、アリーシア様とどうなりたいか、そして…ご自分がどう在りたいかを掲げるべきです。誰にも譲りたくないのであれば、努力なさいませ!それは相手が誰だろうと同じ事です。足掻き、苦しみ、たとえつまずこうとも…信念を持ち続ける事でその先にある進むべき道に全てが繋がってゆくのです。」


「ラスカル…そうだな、ありがとう…俺はアリーシアを諦めたくはない、たとえ兄上が相手であってもだっ!」


「そうですねジュリアン様、勿論私も諦めませんっ!」


途中雲行きが怪しかった生徒会室はラシュカールの最後の発言により綺麗な幕引きとなった…

その為、他のメンバー達もラシュカールを見直した。

しかしそのメンバー達の誰かにより、その後ラシュカールには“愛の伝道師“という二つ名がついてまわり女生徒から相談されたり、ラシュカールがついにジュリアンに想いを告げたと一部で噂になったという…



いざという時はしっかり苦言も提言も誠意と愛情を持って主君に諫言かんげんするラシュカールです

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