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【物語詩】タコのくちびる
ちがうちがう
わたしの唇はそこじゃないよ
えっ
いかにもチュウして欲しそうな形の唇
顔を近づけたら『そこじゃない』と言われてしまった
彼女の甘いストレートロングヘアー
たまらなく指をうずめたくなって
うずめてみたら
後頭部がいやに柔らかかった
彼女の潤んだ宝石の瞳
閉じたからキスしてもいいんだと思って
近づいたら
魚類っぽく目を開けた
すぼめた唇
キラキラの赤い唇
輪ゴムみたいに動いて喋る唇
中に歯がなかった
ちがうちがう
わたしの唇はそこじゃないよ
どこ?
ここじゃないならどこだっていうの?
そう聞くと彼女は大股を開き
そこについてるおおきな穴を見せた
ぱっくり開いたおおきな穴の中に
びっしり鋭い歯が生えてた




