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【純文学】とても凄い彼の肛門
「や……、山あり谷ありだな」
その肛門を見てわたしがそう言うと、彼は澄ました顔をして、
「そう? それほどのものでもないでしょ。自分ではふつうだと思うよ」と言った。
しかし、鍛えられている。
これほど鍛えられた肛門をわたしは未だかつて見たことがなかった。
きっと、とても強い風を産み出すのだろう。
しかし、それだけだった。
それだけで終わった。
わたしはそれに指を触れることもなく、物語は終わってしまった。
そこに指を触れる理由など、わたしにはなかったのである。
ぐるぐると、季節は巡った。
美しくて優しい春が、また来ることだろう。




