★【たぬき祭り失敗作】たぬくんが好きすぎて辛い
「今日はどのようなことでお越しになられましたか?」とお医者さんが聞くので、 私は率直に相談をした。
「たぬくんが好きすぎて辛いんです」
「は?」
「どうにか薬で抑えられないでしょうか」
「すみません。事情がさっぱりわからないので、今のところは無理です。詳しく話してみてください」
「ペット用のたぬきが最近になってペットショップで販売されはじめていることはご存知でしょうか?」
「あぁ……はい。なんだかちっちゃくて細長いたぬきですよね?」
「それをお迎えしたんですが……あまりのかわいさに辛くなってしまって──」
私はスマホを取り出し、たぬくんの写真を次々と先生に見せた。
「かわいいでしょう?」
「たぬきとは思えないかわいさですね。ファンシーです」
当たり前だろう。へそ天のたぬくん、楽しそうにぬいぐるみと遊ぶたぬくん、私を恋する目で見つめるたぬくん──どの写真も実物のたぬくんよりは百倍劣るものの、たぬくんがかわいすぎるのでそれでも殺人級だといえた。
「しかも見た目だけじゃなくて、やることなすことすべてがかわいいんですよ」
「そうなんですか」
「私が歩くとあとをついて来て、私が外へ出ようとすると寂しそうな顔で見送ってくれて、私が帰ると嬉しそうに部屋じゅうを駆け回るんです」
「なるほど……。それで、それの何が辛いんです?」
「わかりませんか? 失礼ですが先生、誰かを好きになったことは?」
「ありません。女房とは半ば強制的に結婚させられましたので」
「愛しすぎると辛いものなんですよ」
「うーん……。私にはわかりませんね」
「信じらんない! そんなのでよく心療内科の先生が務まりますね!?」
「いえ、ここ、泌尿器科ですけど……」
うわ……。
恥ずかしい……。
なんか間違えた。
「とりあえずお薬、出しておきますね」
「な、何の薬ですか?」
「辛さを抑える薬です」
「たぬくんが好きすぎる気持ちを抑えてくれる薬なんですか?」
「いえ、頻尿を通常程度の回数に減らしてくれます」
「たぬくん関係ないじゃん!?」
「はい。ここは泌尿器科ですからね」
最近失敗ばかり




