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ルロロロローの民
民が流れていった
空襲から避難するように
権力者を非難するような目で
民が
民が
民が
流れていく
「タミさんっ!」
坊主頭の戦闘機乗りの青年が呼びかけた。
「タミさあーんっ!」
しかし民の中にそんな名前の少女はいなかったようだ。
民は変わらず流れ続けた。
ルロロロローと
ルロロロローと民は流れ続けた
それはまるでうんこの川のように
それはまるでゲロをバケツで流すように
海へ
海へ
海へ
還っていくのだ
「タミさん……」
青年はねこを抱き、その背中を撫でながら、涙した
「タミさんなんて女の子、僕は知らない」
まるであの日見た名前を知らぬ花の名を呼ぶように
青年はその名を呼んでいたのだ




