★【冬のホラー3失敗作】 血だるま雪合戦
降り積もった朝の雪を見て、小学生たちはめいめいに楽しげな声をあげた。
校庭いっぱいに広がる白い大地は銀色の光を浮かべ、まだ誰の足跡もつけていなかった。
「おれ、いーちばんっ!」
「やあっ! あたしが最初に足跡つけるのっ!」
我先にと駆け出そうとした小学生たちの足が、止まる。
時空の裂け目から鎧兜姿の騎馬隊が現れ、ゆっくりとこちらへ向かってくるのを見たのだ。
黒馬の蹄が雪を崩しながらやってくる。
それに乗る無数の武者たちは、黒い鬼のような仮面をつけて、まるで小学生たちを睨むようにまっすぐ前を見ている。
怯えながら小学生たちは後退り、逃げようと振り返った。
すると後ろからも、やってきていた。
こちらは白い馬に跨り、白い鎧兜に身を固めた武者たちが、槍を脇に抱えている。
二軍の騎馬隊に挟まれ、小学生たちは逃げ場を失った。
とれる選択肢はただ二つだった。
その場に泣き崩れ、おそらくはもたらされるであろう死をただ待つか──
もう一つの選択肢を、小学生たちはとった。
それぞれが、地面の雪を掬い、固く丸める。
それを騎馬隊めがけて投げつけた。
「どおぅ!」
「くはぁ!」
雪玉を受けた武者たちが断末魔をあげ、肉を引き裂かれていく。
攻撃が効くことを知り、しかも思った以上に効果絶大であることを知り、小学生たちは笑いはじめた。
次々と雪玉を作っては、前後の騎馬隊に向かって投げつける。
「かはぁっ!」
「くうぅっ! あ!」
数千はいる鎧兜の武者たちが、面白いように血飛沫をあげ、雪の中に斃れていく。
やがて雪は真っ赤に染まり、広い校庭がすべて赤い大地に変わった頃、七人の小学生たちは勝鬨の声を楽しそうにあげていた。
「次は雪だるま作ろうよ」
「いいね!」
「いいね!」
真っ赤な雪を転がして、真っ赤な雪だるまを作り上げ、どろりと顔がとろけたようなそれを前に、小学生たちは記念撮影をした。
クラスで一番おとなしいユウくんがスマホでそれを撮った。
七人のクラスメイトたちは血塗れの笑顔でポーズをとった。
ちゃんと八人目の子も左上のほうにぼんやりと写っていた。




